






以下、上記リンクよりストーリーのコピペです。
=====ここから。
1862年。クリミア戦争で活躍した騎兵隊長ジョルジョ・バケッティ(ベルナール・ジロドー)は、ピェディモンテの町でクララ(ラウラ・アントネッリ)という人妻と恋に落ちていた。しかし、ジョルジョは第4国境守備隊ヘの転属命令を受け、クララと遠く離れ離れに暮らすことになったのだ。休暇には必ず会いに来ると誓って旅立つジョルジョ。
寂しい山あいの町に着いた彼を大佐(マッシモ・ジロッティ)が歓迎した。大佐の屋敷で寝起きすることになったジョルジョは、しかし、食卓の席で奇妙なことに気づいた。大佐の従妹の席がいつも空席なのだ。みなは彼女が病気だと弁明したが、どこか様子がおかしかった。
数日が過ぎ、ジョルジョの興昧は、部屋にこもったきりの大佐の従妹のことに集中した。その女性フォスカ(ヴァレリア・ドビチ)に、ジョルジョは遂に対面した。
しかし、そのあまりの醜さに彼は声も失う思いだった。一方、フォスカは、凛々しいジョルジョに一目惚れした。執拗につきまとうフォスカから逃れるように、彼は一ヵ月の休暇をとってクララの許ヘと急いだ。情熱的なクララとの愛の時を過ごして、ジョルジョが戻ってみると、フォスカは発作のために寝込んでいた。フォスカには過去に結婚した男がいたが、その男は結婚式の夜、持参金をもち逃げして姿をくらましてしまったのだった。
男に恵まれないフォスカのことをかねがね心配していた軍医(ジャン・ルイ・トランティニャン)は、彼女のために一緒に夜を過ごしてやってくれとジョルジョに頼んだ。しかし愛のないジョルジョの態度は逆にフォスカを傷つけ、ジョルジョは、再びやすらぎを得るためクララの許へと向かった。汽車に乗る彼をフォスカが追った。無理に彼女を汽車から降ろすジョルジョ。
しかし、勇んで訪ねていったクララは冷たかった。「フォスカにはあなたが必要なのよ」と、言い放つクララ。40日の休暇を2日で切り上げた彼は、ローマヘの転属命令を受けた。クリスマス・パーティーの夜、人前でジョルジョを愛していると絶叫するフォスカ。それを見た大佐がジョルジョに決闘を申し込み、ジョルジョの剣に倒れた。
その夜不思議なことに、ジョルジョは、自然にフォスカの許へと足が向いた。夜明け、フォスカは生涯で最高の幸福感にひたりながら息を引きとるのだった。
=====ここまで。
悪女の深情け、、、を地で行く「美女と野獣」の男女逆バージョン。
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エットーレ・スコラ監督の本作、タイトルは時々耳にしていたけれど、DVD化されていなかったのでなかなか見る機会がなかったのだけど、昨年DVD化されたみたいで、このほどレンタルにてようやく見ることが出来ました。かなりヘンな映画という噂は聞いていたけど、まあ、そこまでヘンだとは思わなかったけれど、一度見たら忘れられないインパクト特大作品でありました。
◆フォスカ、、、嗚呼、フォスカ。
さて、本作の主役は、一応、ベルナール・ジロドー演ずるジョルジョなんですが、実質的な主役は、なんといってもフォスカでしょう。で、このフォスカ、ジョルジョが“一体どんな女性……?”と興味を抱くのに併せて、その初出のシーンは、開始から30分ほど経ってからと、かなりもったい付けてのご登場。しかも、その最初に映るフォスカの姿のインパクトの凄さは、もう、一見の価値アリ。
上記あらすじには“醜い”とあるけど、醜女というよりは、病的。とにかく異様に痩せていて、異様に目が大きくて、鷲鼻に出っ歯と、、、こう書くと、やっぱし醜女かな。確かに、美しくはないけど、造作の善し悪しというよりとにかく、彼女の不幸な(というか充たされない)人生がそのまま顔に出ちゃっている、というお顔なわけ。
で、このお顔が、あの“ノスフェラトゥ”にそっくり、とネット上で書いている人が複数いらしたけれど、まあ、確かに、、、目が落ちくぼんでいて異様に大きいところと、出っ歯なところは似ているかな、、、。でも、ノスフェラトゥはいくらなんでもちょっとヒドいと思うんだけど。……とはいえ、どうせなら、もっと圧倒的なブスにしてもらいたかったような気もする。
とにかく、このフォスカが、本作の全てをかっさらって行く感じ。それくらい、キョーレツな存在感。演じているのは、ヴァレリア・ドビチというイタリアの舞台女優さんらしいのだけど、素は普通に美人で、ジロドーとカンヌでの素敵なツーショット画像もネットにはありました。フォスカになるに当たっては、かなり時間を掛けて特殊メイクをしたそうな(そらそうだろうな)。このヴァレリアさんの演技がとにかく、凄い、、、としか言い様がない。フォスカの病んだキャラを実に巧く演じていて、この演技があってこそ、本作が成立していると思う。
フォスカは、いわゆるヒステリーで、何か些細なことで神経に障ると、突然ギャ~~~ッと怖ろしい雄叫びを上げてその場に昏倒する。その様は、かなり怖い。
ジョルジョに異様に執着し、ジョルジョに「フォスカ、って言って」と自分の名を呼ばせる。ジョルジョが渋々言うと、さらに「ジョルジョとフォスカ、って言って」と頼み、それにもジョルジョが応じると、さらに「フォスカとジョルジョ!!」と要求はエスカレート。全部付き合ってあげるジョルジョが気の毒とは思うが、フォスカは、ジョルジョにとっては上官の姪御だから、無下にも出来ないのが辛いとこ。なりふり構わず、ジョルジョにしなだれかかったり、キスして!とおねだりしたり、そらもう、ジョルジョにしてみりゃ何の罰ゲームだ、って感じ。
大雨の中、やっとの思いで、フォスカの下を逃げ出し汽車に乗って、晴れ晴れとした気分になったジョルジョの目の前に、ずぶ濡れになったフォスカが現れたシーンは、ほとんどホラー。私がジョルジョなら、走る汽車からフォスカを突き落として終わりだけど、ジョルジョは、飽くまで紳士。次の駅でフォスカと共に降り、軍の宿舎まで送るのだから。
おまけに、軍医には「一度でイイからヤッてやれ」(下品ですみません)などと言われ、もうジョルジョは踏んだり蹴ったり。イイ男も時には災いするモノなのね。
◆一途とストーカーのきわどい紙一重。
本作の面白いところは、醜い女が、一途にイイ男を思い続けたことによって、男の心をゲットする、という、男と女が逆ならたくさんある話を敢えて、男女逆転させているところ。「悪女の深情け」なんて言葉もあるくらいだけど、それを地で行く物語って、パッと浮かんでこない、、、。醜女が美男と色恋沙汰、というオハナシは、源氏物語の末摘花くらいしか思い浮かばない。他にもきっとあるとは思うけど、それらの話はどういう結末になってんだろ?
大分前に、脚本家の大石静氏がTVのトーク番組で「美女は切迫感がないからダメだけど、ブスは切迫感があるから、必死で思いの丈をぶつけ続ければ、男の人って“そこまでいうなら仕方ない”ってなるものよ~」みたいなことを話していたことがあって、それはご本人の体験からそう言っていた(彼女の著書「私ってブスだったの?」にも似たような記述がある)んだけど、そんなもんかねぇ、、、と思ってそのときは聞き流していたが、本作は、まさにそれを描いているわけだ。美女と言えども、全ての男を手玉にとれるわけじゃないことは分かるが、ブスは一途さで何とでもなる、ということか?
私は女だが、立場を逆にして考えた場合、好みでないイケメンにしつこくされるのも、醜男にしつこくされるのも、どっちも等しくイヤなんですけど、、、。
ただ、世の中には、“情にほだされる”という現象もあるらしく、男女を問わず、必死に思いをぶつけてくる相手に、情が湧く人もいるらしい。私にはこういう感覚が分からない(ダメなものはどこまで行ってもダメなだけ)のだけど、相手のタイプによっては、一念岩をも通す、ってことにもなるんだね、、、。
しかし、そういうパターンがあるからこそ、そこに一縷の希望を託してストーカー化してしまう人々もいるわけで。
ジョルジョの恋人クララが言うセリフが凄い。「ご覧の通り、私は美人でしょ? だからそれで良しとしなきゃ。私はあなたがいれば幸せだけど、彼女(フォスカ)には生きていくためにあなたが必要なのよ」、、、って。つまり、「あんた、美人の私はほっといても大丈夫だから、そのブスが生きる気力を失わないためにそばにいてあげなさい」って言ってるわけでしょ? すげぇ辛辣なお言葉。ジョルジョは嫌がっているのに、そらないだろ、、、と思うんだけど。
ネット上の感想を拾い読みしたところでは、人によっては、ジョルジョがフォスカの情にほだされるのを納得できるみたいだけど、私にはゼンゼン。フォスカは気の毒だと思うけど、ジョルジョが「彼女を愛している」と軍医に言う場面は、もう、ジョルジョも正気を失っていたとしか思えない。
こういうオハナシを見聞きして、「自分も一途にあの人を愛し続ければ、いつかその思いがあの人に通じるはず!!」などと勘違いする輩が生まれなきゃいいけれど、、、。
◆その他もろもろ
フォスカも暮らす将校達の宿舎の造りが本作の魅力を引き出している。ジョルジョ達が食事をする食堂が、階段のすぐ脇にあるのだけど、その階段と食堂は磨りガラスで仕切られており、階段を降りてくる人の姿は、磨りガラス越しにハッキリは見えないのである。フォスカが初めてジョルジョの前に姿を現すシーンも、この階段の造りそのものが演出になっていた。一体どんな女性が降りてくるのだろう、、、、と磨りガラス越しに階段を降りてくる女性の影を観客は固唾をのんで見守るのである。そして、、、バ~~ン! と現れるのだよ、あのフォスカの顔が。
時代感も美術や衣裳等から雰囲気が出ていて、視覚的にもなかなか楽しめる。
ジョルジョは、最後、フォスカの伯父である上官と決闘するハメになり(もちろんフォスカのせいで)、この決闘に勝ちはするものの、その後のジョルジョは軍を辞めて廃人のようになっていることがラストシーンで分かる。廃れた酒場で、小人の男が「男がオレみたいので、女がクララみたいの二人の話なら分かるけど」とジョルジョの話を聞いて嘲笑う。そう、小人の男は、美女と野獣の話なら分かる、と言っているのだ。
ベルナール・ジロドー、若い! なかなかの美男子。こういう、女性に振り回される役が合っている気がする。調べたら、もう亡くなっていたのね、、、知らなかった。ジロドーといえば『趣味の問題』の印象が強いけど、『ヘカテ』とかでもやっぱし女難の役だったような、、、。
ちなみに、「一発ヤッてやれ」(何度も下品ですみません)と酷なことをジョルジョに命じる軍医は、あのジャン・ルイ・トランティニャンが演じているんだけど、すごいテキトーで無責任なキャラを巧く演じておられました。ジョルジョがフォスカにほだされかかっているとき「喰われたい願望が芽生えたか?」なんて言ったりして、かなりのクセモノ。
エットーレ・スコラの『特別な一日』が好きなので本作を見たんだけど、『特別な一日』とは、ゼンゼン、内容も味わいも違う作品だったけれど、十分面白かった!
是非、あなたもフォスカを一度はご覧あれ。
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