【迎撃ミサイルPAC3やSM3があれば本当に安心なのか】
3月 31st, 2012 | Author: 高木 よしあき 氏より転載
3月27日、北朝鮮が人工衛星と称して発射を予告している弾道ミサイルが日本に落下する場合に備えて、防衛相は自衛隊に「準備命令」を発令しました(※)。
具体的には、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオットPAC3と、海上自衛隊の海上配備型迎撃ミサイルSM3搭載のイージス艦を展開する準備を行うものと思われます。
発射された弾道ミサイルを迎撃する手段として自衛隊が保有するのは前述の2つですが、有事の際に実際に機能するかは疑問があります。
今回の北朝鮮による発射予告は、いつ、どこから、どこへ向かって、幾つ発射するのか、事前に概ねわかっているので、迎撃するとなれば、成功する確率は高いのですが、有事の際はそれらの事前情報の把握は困難です。
実際、北朝鮮が保有する日本を射程内に収める中距離弾道ミサイルのノドンは、数百基が実践配備済みとの観測があり、その発射台は固定式に比べて位置の特定が困難な移動式とされています。
従って、数に限りがあり、射程距離も限られ、試射でも命中率が100%ではないPAC3やSM3で、有事の際に日本を守り切ることは難しいのが現実です。
こうした状況を踏まえると、日本政府は迎撃体制を整えつつも、北朝鮮にミサイルを「撃たせない」ように、米国、韓国、ロシア等と連携し、外交上の圧力を強めることが賢明です。
しかし、北朝鮮のミサイル発射に際し、事前に対処することができる方法がほかにもあります。
それは、以前、国会でも議論のあった敵地先制攻撃です。
相手国が日本に対して明確な攻撃意図を持っているとしても、戦争行為に直結する先制攻撃が可能か議論の余地はありますが、抑止力という意味でも敵地先制攻撃のオプションを日本が保持することは重要です。
現状で、自衛隊が保有する敵地攻撃が可能な兵器は、護衛艦による艦砲射撃と、航空自衛隊のF-2戦闘機と精密誘導弾JDAMの組み合わせ程度です。
前者は、攻撃可能なエリアが海岸近辺に限られ、相手に察知されないように近づくことが困難なうえ、浅い海では2年前の韓国の哨戒艦撃沈事件のようなリスクがあります。
後者は、空中給油を行えば、比較的広範囲に作戦が可能ですが、同じように人的被害のリスクを考慮しなければなりません。
従って、現状で自衛隊が敵地先制攻撃を行うことは困難です。
そこで、今後、考慮すべきが、以前から一部で議論のあった、自衛隊による巡航ミサイルの保有です。
米軍が保有する巡航ミサイルのトマホークは潜水艦から発射可能なタイプがあり、海上自衛隊が配備すれば強力な敵地先制攻撃手段になります。
巡航ミサイルは、既に、中国、ロシア、韓国、台湾など日本周辺の多くの国が保有しています。実際に、巡航ミサイルですべての移動式発射台を叩くことは困難ですが、戦略的に強力な抑止力となります。
2009年の北朝鮮によるミサイル発射の際には、米国の国防次官補が「日本が敵基地攻撃能力の獲得を決めれば、米国は当然できる限りの方法で支持する」と述べています。
今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射を機に、こうした敵基地攻撃能力についての議論を進めるべきではないでしょうか。
※:3月27日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120327/plc12032708090014-n1.htm
3月 31st, 2012 | Author: 高木 よしあき 氏より転載
3月27日、北朝鮮が人工衛星と称して発射を予告している弾道ミサイルが日本に落下する場合に備えて、防衛相は自衛隊に「準備命令」を発令しました(※)。
具体的には、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオットPAC3と、海上自衛隊の海上配備型迎撃ミサイルSM3搭載のイージス艦を展開する準備を行うものと思われます。
発射された弾道ミサイルを迎撃する手段として自衛隊が保有するのは前述の2つですが、有事の際に実際に機能するかは疑問があります。
今回の北朝鮮による発射予告は、いつ、どこから、どこへ向かって、幾つ発射するのか、事前に概ねわかっているので、迎撃するとなれば、成功する確率は高いのですが、有事の際はそれらの事前情報の把握は困難です。
実際、北朝鮮が保有する日本を射程内に収める中距離弾道ミサイルのノドンは、数百基が実践配備済みとの観測があり、その発射台は固定式に比べて位置の特定が困難な移動式とされています。
従って、数に限りがあり、射程距離も限られ、試射でも命中率が100%ではないPAC3やSM3で、有事の際に日本を守り切ることは難しいのが現実です。
こうした状況を踏まえると、日本政府は迎撃体制を整えつつも、北朝鮮にミサイルを「撃たせない」ように、米国、韓国、ロシア等と連携し、外交上の圧力を強めることが賢明です。
しかし、北朝鮮のミサイル発射に際し、事前に対処することができる方法がほかにもあります。
それは、以前、国会でも議論のあった敵地先制攻撃です。
相手国が日本に対して明確な攻撃意図を持っているとしても、戦争行為に直結する先制攻撃が可能か議論の余地はありますが、抑止力という意味でも敵地先制攻撃のオプションを日本が保持することは重要です。
現状で、自衛隊が保有する敵地攻撃が可能な兵器は、護衛艦による艦砲射撃と、航空自衛隊のF-2戦闘機と精密誘導弾JDAMの組み合わせ程度です。
前者は、攻撃可能なエリアが海岸近辺に限られ、相手に察知されないように近づくことが困難なうえ、浅い海では2年前の韓国の哨戒艦撃沈事件のようなリスクがあります。
後者は、空中給油を行えば、比較的広範囲に作戦が可能ですが、同じように人的被害のリスクを考慮しなければなりません。
従って、現状で自衛隊が敵地先制攻撃を行うことは困難です。
そこで、今後、考慮すべきが、以前から一部で議論のあった、自衛隊による巡航ミサイルの保有です。
米軍が保有する巡航ミサイルのトマホークは潜水艦から発射可能なタイプがあり、海上自衛隊が配備すれば強力な敵地先制攻撃手段になります。
巡航ミサイルは、既に、中国、ロシア、韓国、台湾など日本周辺の多くの国が保有しています。実際に、巡航ミサイルですべての移動式発射台を叩くことは困難ですが、戦略的に強力な抑止力となります。
2009年の北朝鮮によるミサイル発射の際には、米国の国防次官補が「日本が敵基地攻撃能力の獲得を決めれば、米国は当然できる限りの方法で支持する」と述べています。
今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射を機に、こうした敵基地攻撃能力についての議論を進めるべきではないでしょうか。
※:3月27日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120327/plc12032708090014-n1.htm
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