潜在意識が人生をつくる 精神科医がおすすめする心を浮かせる名作映画(13)
2018.07.30(liverty web)
仕事や人間関係に疲れた時、気分転換になるのが映画です。
その映画を選ぶ際に、動員数、人気ランキング、コメンテーターが評価する「芸術性」など、様々な基準があります。
アメリカでは、精神医学の立場から見て「沈んだ心を浮かせる薬」になる映画を選ぶカルチャーがあります。一方、いくら「名作だ」と評価されていても、精神医学的に「心を沈ませる毒」になる映画も存在します。
本連載では、国内外で数多くの治療実績・研究実績を誇る精神科医・千田要一氏に、悩みに応じて、心を浮かせる力を持つ名作映画を処方していただきます。
世の中に、人の心を豊かにする映画が増えることを祈って、お贈りします。
今回は、潜在意識を活用したいという人に向けたものです。
◆ ◆ ◆
(1)「インセプション」(★★★★☆)
まずご紹介する映画は、「インセプション」(2010年、アメリカ映画、110分)です。他人の夢に入り込み、無意識に行動をコントロールするというサスペンス・アクション映画。
ドム・コブ(レオナルド・ディカプリオ)は、人が夢の中にいる時に、その潜在意識に潜り込み、他人のアイデアを盗み出すという犯罪のプロフェッショナルで、企業スパイの世界で引っ張りだこでした。ただ、リスクも高く、コブは最愛のものを失い、国際指名手配犯となってしまいました。
そんな彼に、業界から足を洗って、平穏無事な人生を取り戻せるかもしれない絶好のチャンスが訪れます。そのミッションとは、「インセプション」と呼ばれるもの。アイデアを盗むのではなく、他人の潜在意識に「別の考えを植え付ける」仕事で、ほぼ不可能だとされていました。それでもコブは、それを最後の仕事と決め、取りかかります。斉藤(渡辺謙)らとチームを組み、業界トップの才能をフル活用した布陣で挑みます。
しかし、予測していなかった展開が彼らを待ち受けます。はたして、彼らのミッションは無事成功するのか――。
20世紀最大の発見の一つと言われているのが、人間の「潜在意識(無意識)」です。
普段起きている時、私たちは「表面意識」を使って活動しています。ところが、表面意識だけでなく、通常意識されていない潜在意識が、私たちの人生に大きな影響を及ぼしているのです。例えば、過去のトラウマが潜在意識に潜み、不眠症の原因になったりします。
潜在意識がよく現れるのが、夜寝ている時の「夢」です。夢では、私たちが潜在意識に抑圧している欲求が現れてきます。また、日中に起きている時であっても、フッと湧いてくる思いに潜在意識が現れることもあります。
また、潜在意識は「個人的潜在意識(個人的無意識)」と「普遍的潜在意識(集合的無意識)」の2つに分けられます。普遍的無意識を発見したことで有名なのが、カール・ユングです。彼によれば、普遍的無意識において、人は個人的意識を超えて、他人の意識や高次元意識(いわゆる、ハイヤースピリット)ともつながるということです。
心理学では、一般的に表面意識と個人的潜在意識の部分を一個人の意識領域と見なしますが、前者の力は、後者と比べて1割にも満たないと考えられています。したがって、表面意識だけではなく、個人的潜在意識の力も活用することで、より幸運な人生が開けてくるのです。
潜在意識の力を発揮する方法として、「肯定的自己暗示(アファメーション)」があります。
アファメーションで大切なポイントは、以下の4点です。
1.イメージ
ビジュアライゼーションともいうが、自分が達成したい目標や夢をありありとイメージすること。
2.言葉
いわゆる、言霊(ことだま)のことであり、実際に声に出して肯定的な言葉を発していく。広義の意味では、頭の中で思考を深める「セルフトーク」や、他人に公言する「パブリックトーク」も含まれる。
3.感情
知性レベルにとどまらず、感性も総動員する。自分の目標、夢を実現した結果、自分はどのような思いを抱くのかを心に問いかけ、感情を伴うイメージにしていく。
4.反復
こうした暗示を繰り返すことで、潜在意識に落とし込んでいく。意識は思考の流れであり、その流れを変える最善の方法が習慣化である。
潜在意識は、表面意識の10倍以上もの力があるため、うまくコントロールできれば、幸福や成功を手に入れやすくなります。詳しくは、拙著『現世療法』(クラブハウス)や『ポジティブ三世療法』(ピープレス)をご一読ください。
(2)「マシニスト」(★★★☆☆)
次にご紹介する映画は、「マシニスト」(2004年アメリカ・スペイン映画、102分)という、1年間、眠れない男を描いたサイコ・サスペンス映画です。主役のクリスチャン・ベールは、役作りのために30キロも減量したというだけあって、迫真の演技でした。
機械工(マシニスト)として工場で働くトレヴァー(クリスチャン・ベール)は、原因不明の不眠症ですでに1年も眠っていません。食事も極度に減り、痩せ細ってミイラのようです。そんなトレヴァーを、次々と奇怪な事件が襲いかかります。パニックになったトレヴァーは、精神異常者と見なされ、ついに工場をクビになってしまいます。
実は彼は以前、子供をひき逃げで殺害しており、その罪悪感から、不眠症と幻覚を引き起こしていたのでした。そのことを思い出し、警察に自首することで、ようやく眠りにつくことができます。
本作は、人間の「表面意識」と「潜在意識」の不思議な関係について、明快に表現しています。人は自分のトラウマを、無意識のうちに潜在意識に押し込め、表面意識から消し去ってしまいます。精神医学では、これを「防衛機制(ぼうえいきせい)」と呼んでいます。
ただ、防衛機制は完璧ではありません。たとえ表面意識では忘れていても、潜在意識に存在するトラウマは、不眠症、食欲不振、うつ、パニック発作、幻覚などの症状として現れてきます。したがって、潜在意識に押し込めたトラウマを整理することが、根本治療になるわけです。
(3)「フラワーショウ!」(★★★★☆)
最後に紹介する映画は、「フラワーショウ!」(2015年、アイルランド映画、100分)という、ガーデニング世界大会の最年少記録を塗り替えたアイルランド女性を描いた実話映画です。
アイルランドの片田舎で育ったメアリー(エマ・グリーンウェル)には、大自然を尊重したガーデニングで全世界を変えるという夢がありました。その夢を叶えるため、メアリーは、有名なガーデンデザイナーのアシスタントに応募。晴れて採用されます。しかし、長時間労働でコキ使われ、長年温めてきたデザインノートも盗用され、挙句にはクビにされてしまいます。
どん底のメアリーですが、英国王立園芸協会が主催し、世界中が注目するガーデニング世界大会「チェルシー・フラワーショー」で金メダルを獲ることを思いつきます。
ただ、大会に参加するだけでも、2000人の応募者の中から、わずか8枠だけ。コネもお金も経験もないメアリーですが、「主催者から金メダルを頂いた」という言葉を紙に書き、壁に貼って、"自己暗示"をかけます。
彼女の「強い思い」に引き寄せられ、庭師や植物学者クリスティ(トム・ヒューズ)らと縁ができ、ついに参加資格が得られます。メアリーを応援するラジオメディアの協力もあり、約2500万円もする制作費も、助成が得られることに。
はたして、メアリーは最優秀賞の金賞を受賞できるのでしょうか?
メアリーが行った自己暗示は、まさしく前述の「アファメーション」です。将来の夢を、言葉にして、何度も繰り返し唱えることで、「潜在意識」が動き始めたと言えるでしょう。私たちも、自分の潜在能力を発揮したいものです。
他には、以下のような映画がオススメです。
「リミットレス」(★★☆☆☆)
主人公、エディ・モーラ(ブラッドリー・クーパー)は作家志望で、出版契約を交わしたにもかかわらず、原稿を一行も書けず、酒に溺れ、ホームレスのようになり、恋人にも逃げられてしまいます。しかし、エディは偶然にも、ふらついていた街で開発されたばかりの新薬「NZT48」を入手します。なんとその薬は、通常20%しか使われていない脳を100%活性化する薬だといいます……。
「ドクター・ストレンジ」(★★★★☆)
天才外科医のドクター・ストレンジが、人智を超えた魔術を身につけ、世界を滅亡から救う超常アクション映画。彼は、この病気をきっかけに潜在能力に目覚め、頑固な唯物論者から、「神秘の世界」に心を開くようになったのでした。
精神科医
千田 要一
(ちだ・よういち)1972年、岩手県出身。医学博士。精神科医、心療内科医。医療法人千手会・ハッピースマイルクリニック理事長。九州大学大学院修了後、ロンドン大学研究員を経て現職。欧米の研究機関と共同研究を進め、臨床現場で多くの治癒実績を挙げる。アメリカ心身医学会学術賞、日本心身医学会池見賞など学会受賞多数。国内外での学術論文と著書は100編を超える。著書に『幸福感の強い人、弱い人』(幸福の科学出版)、『ポジティブ三世療法』(パレード)など多数。
【関連サイト】
ハッピースマイルクリニック公式サイト
http://hs-cl.com/
千田要一メールマガジン(毎週火曜日、メンタルに役立つ映画情報を配信!)
http://hs-cl.com/pc/melmaga/hsc/?width=550&height=500&inlineId=myOnPageContent&keepThis=true&TB_iframe=true
【関連書籍】
幸福の科学出版 『幸福感の強い人弱い人 最新ポジティブ心理学の信念の科学』 千田要一著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=780
【関連記事】
「精神科医がおすすめする 心を浮かせる名作映画」過去記事一覧
過去記事一覧はこちら