生徒のために、あらゆる努力を惜しまない熱血教師を描いたメキシコ映画「型破りな教室」【高間智生氏寄稿】
2025.01.05(liverty web)
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全国公開中
《本記事のポイント》
- 生徒たちを信じ、可能性を引き出す
- 生徒の"将来の成功"を願い続ける
- 自らの可能性に気づき、夢を抱くことの大切さ
犯罪と貧困が日常化したメキシコ・マタモロスの小学校に赴任した教師が、型破りな授業で子供たちを全国トップの成績に導いた実話を映画化。
アメリカとの国境近くにあるマタモロスの小学校。子供たちは麻薬や殺人といった犯罪と隣り合わせの環境で育ち、教育設備は不足し、教員は意欲のない者ばかりで、学力は国内最底辺だった。
6年生の半数以上が卒業を危ぶまれるなか、出産のため辞職した6年生の担任の代役として、マタモロス出身の教師フアレスが赴任してくる。子供たちはフアレスのユニークで型破りな授業を通して探究する喜びを知り、それぞれの興味や才能を開花させていく。
『コーダ あいのうた』の音楽教師役で注目を集めたエウヘニオ・デルベスが教師フアレスを熱演。2023年サンダンス映画祭にてフェスティバル・フェイバリット賞(映画祭観客賞)を受賞した。
生徒を信じ、可能性を引き出す
この映画の主人公である教師フアレスが心がけているのは、生徒の好奇心を刺激し、自分の頭で考えさせることを通じて、子供たち一人一人が宿している可能性を引き出すことである。
そのためにフアレスは、他の教師が進める学力テストの準備を無視し、カリキュラムから逸脱して、子供の知的好奇心に寄り添いながら、さまざまな実験や議論を重ねていく。
それが原因で、他の教師の密告に遭い、2週間の停職になってしまうのだが、そこまで突き進むフアレスの信念は見上げたものだ。
大川隆法・幸福の科学総裁は著書『勇気の法』の中で、子供の中に何らを残そうと願って、真摯に向き合う教師は、それだけで成功者であるとして次のように語っている。
「子供たちの一人ひとりが、『いかにして長所を伸ばし、短所を抑えながら、すくすくと大人になっていけるか』ということに心を砕き、生徒を導いた教師は、やはり、成功者と言えるのです。
教師のなかには、『とにかく、その日一日を過ごせばよい』と考え、その日の授業時間を潰している人もいますが、そういう駄目教師が幸福になることは、おそらくないでしょう。英語では『時間を潰す』と言うときに、『kill time』という、きつい言葉を使いますが、まさしく、時間を"殺して"いるのです。
『自分のクラスにはいろいろな生徒がいるが、このクラスに巡り合えたのは、一生に一度の機会である。一期一会である』と捉え、『それぞれの人に何らかのものを残そう』と思って生きている教師が、やはり、成功者であろうと思います」
劇中でフアレスは、自らの車を売り払って教材を調達するなどして、向上心という、人間が持つ輝きを生徒たちの中から磨き出していったが、その情熱と行動力には、改めて驚かされる。
生徒の"将来の成功"を願い続ける
映画は、一人一人の生徒が背負う、どうしようもなく過酷な"重荷"の描写を通じて、メキシコ社会が抱える複雑な現実を巧みに映し出している。
悲惨な生活のなかにあって、フアレスは、その中にある素朴な疑問を次々と生徒たちに問いかけることで、日常を超えた、純粋な"学問の世界"、"真理の世界"を垣間見せようと奮闘する。そして生徒もまた、フアレスとの出会いを通じて、学びや人生に前向きな人間へと変化し始める。
フアレスが、子供たちの心の中に芽生えた"将来の可能性"への希望を後押ししながら、生徒たちがぶつかる"現実の壁"を乗り越えようと、共にもがき苦しんでいくところは、この映画の見所にもなっている。
優れた教師の条件について、大川隆法総裁は著書『教育の使命』の中で、次のように指摘している。
「先生というものは、自分が追い抜かれていくことに喜びを感じるような不思議な種族でなくてはなりません。教え子たちに追い抜かれていくことに喜びを感じなければいけないところがあると思うのです。
それは微妙に生徒に伝わります。そして、『先生は、〈自分のほうが偉くなくてはいけないのだ〉と考えているのではなく、〈自分を超えていけ〉と考えてくれている』と思うことが、何とも言えない信頼感になるのです。
教師は、どうか縁の下の力持ちになってください。これも一種の菩薩行なのです。人様を頭の上に乗せ、大井川を渡しているようなものであり、これは菩薩行です。教師というものは、縁の下の力持ちであり、人が偉くなって出世していくのを喜ばなくてはいけない職業なのです」
実際にフアレスのクラスは全国最底辺だったが、子供たちが探求する喜びを知ることで、成績は飛躍的に上昇。そのうち10人はメキシコで全国上位0.1%のトップクラスに食い込んだのだという。
自らの可能性に気づき、夢を抱くことの大切さ
この映画の印象深い点の一つは、メキシコ社会の底辺で生きていた子供たちが、フアレスとの出会いを通じて、考えもしなかった自らの可能性に目覚め、夢を抱き、未来に向かって前向きに生きることの喜びを感じ始めていくところだ。
特に、廃品回収を手伝っている少女が、自らの数学や物理の類稀な才能に気づき、宇宙飛行士を目指すという、今まで考えたこともない夢を抱いていく姿は、感動的でさえある。
大川隆法総裁は著書『Think Big!』の中で、夢を抱くことの大切さについて、次のように指摘している。
「まず、大きな夢を持ってください。そして、夢を持ったなら、次に、その夢を実現しようと努力してください。これが大事です。夢を持たなければいけませんが、夢を持っただけでは駄目なのです。夢を持ち、さらに、その夢を実現しようと努力することが大事です。
これは、一見、当たり前のことのようですが、実は、当たり前のことではありません。そういう努力ができるだけでも、すでに未来の開拓が始まってきつつあるのです」
犯罪が日常茶飯事の荒廃したメキシコ社会の中にあって、教育の力に懸ける情熱溢れた教師。そして、自らの可能性に気づき、夢を抱いて前向きに生きることに目覚めた生徒たち。彼らの熱い交流を描いたこの映画は、"貧困からの脱出"を成し遂げるために必要な、自ら学び努力することの大切さについて、改めて気づかせてくれる。
『型破りな教室』
- 【公開日】
- 全国公開中
- 【スタッフ】
- 監督:クリストファー・ザラ
- 【キャスト】
- 出演:エウヘニオ・デルベスほか
- 【配給等】
- 配給:アットエンタテインメント
- 【その他】
- 2023年製作 | 125分 | メキシコ