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《本記事のポイント》
- 男性を奮い立たせ理想に向けて邁進させる女性の力
- 人の心の温かさを思い出させる"精神的な故郷"としての日本
- 許しと救い、魂の新生をもたらす聖地巡礼
リバティ本誌6月号で紹介されていた映画「青春18×2 君へと続く道」を観てきた。
若くしてゲーム会社を作った台湾の起業家のジミーは、36歳にして社内のクーデターにより追放され、すべてを失う。絶望と挫折を味わうなか、ジミーは18歳の時、日本女性・アミとの出会ったことが人生の転機になっていたことを振り返り、アミの故郷、福島県只見へと旅することを思い立つ。
「余命10年」の藤井道人が監督・脚本を手がけた日台合作のラブストーリー。ジミー・ライの紀行エッセイ「青春18×2 日本漫車流浪記」を映画化し、18年前の台湾と現在の日本を舞台に、国境と時を超えてつながる初恋の記憶をエモーショナルに描き出す。
3月に台湾で初公開され、香港、マカオ、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、べトナム、カンボジアとアジア各地で続々公開、ベトナムでは日本の実写映画の歴代1位の興行収入を記録。中国大陸でも大ヒット、日本の実写映画で歴代7位を記録している。韓国でも600を超えるスクリーン数での大規模公開され、タイでの公開も予定している。
男性を奮い立たせ理想に向けて邁進させる女性の力
この映画は、高校時代バスケットボール選手として嘱望されていたジミーが、ある女性との出会いをきっかけに、起業家へと登りつめるストーリーを描いたもの。
出会いは日本人女性アミの台湾訪問がきっかけだ。とある事情をかかえ、アミは、ジミーが心を寄せていることに気づくも、ジミーのもとを去る。別れ際に、「これからの人生に夢や希望を持とう、そして夢を実現した時に、もう一度会いましょう」と言い残して。
その後アミとの約束を守ろうと一生懸命がんばったジミーは世界的ヒット作品を生むゲーム会社の創業者兼ゲームクリエイターへと成長する。そしてアミに連絡をとるも、家族からその死を告げられ愕然とする──。
このジミーとアミの関係はアンドレイ・ジットの小説「狭き門」のジェーロムとアリサを彷彿とさせる。
男性があこがれる女性のために奮起することの大切さについて、『原説・『愛の発展段階説』~若き日の愛の哲学~』のなかで大川隆法・幸福の科学総裁は、こう語っている。
「十代に既に異性との交渉を持ち、肉欲の眼でもってしか異性の美醜を見られない若者たちが気の毒に思える。異性に対するあこがれの気持というものは、年齢を重ねるとともにやがては薄れてゆくものだ。けれども、いかに長くあこがれの気持を抱きつづけたかということが、その人の後半生に大きく影響すると私には思われる。
単純化していうならば、人間には精神の人と肉の人とがあり、物質万能的な要素が稀薄になる程、精神の人へと脱皮してゆくものだ。あこがれの気持をもって異性を眺めるということは一等完全な形で美を発見するということでもあるのだ」
ジミーを奮い立たせ、夢の実現に向けて邁進させたアミの姿には一種の聖なる力を感じさせる。古風とも言える二人の男女関係が、この青春恋愛映画を一味違った眩しいものにしている。
世界の故郷としての日本人の心の温かさを思い出す
アミの故郷である福島県の只見を目指すジミーは、遠回りして、長野や新潟を経由しながら旅を続け、松本市に一泊する。
そこで出会った居酒屋の大将は台湾出身の人物であったことから、話が展開。二人の会話を通して、平和な国民性を作り上げてきた日本が、世界の人々にとって一種の"心の故郷"となっていることがさりげなく示されている。
日本文化の精神的な価値について、大川隆法総裁は、『未来の法』のなかで、「現在、アメリカという国は非常に強い力を持っていますが、歴史的には、わずか二百数十年の国なので、本当は未経験のことがたくさんあるのです。日本は、それよりずっと以前から、さまざまな文化を経験してきています。まだ十分に世界に知られてはいませんが、教えるべきものは数多くあると思います」と指摘している。
長い歴史と文化に彩られた日本という場所の尊さを、私たち自身が改めて再認識することも必要だろう。
大川隆法総裁による公開霊言『孫文のスピリチュアル・メッセージ』で、孫文の霊が「日本というのは、やはりトップランナーの一つだし、無限の智慧を秘めているよ。だから、中国人には、日本人の英知に学ぶべきところが多いと思う。(中略)中国人は、日本人の勤勉性とか、不屈の精神とか、道徳性とか、こういうものに学んだほうがいいよ」と提言している通り、日本は世界に対して、ある種の精神的高みを持っていること誇りを持ち、あるべき姿を示す責任があるという自覚を持つことも大切ではないだろうか。
聖地を巡ることは、許しと救い、魂の新生をもたらす
この映画は、"聖地巡り"が中心テーマになっている。ジミーが高校時代に熱中したアニメ「スラムダンク」の舞台となった鎌倉をスタートして、松本、長岡を経由して、ジミーにとっての聖地、アミの生まれ故郷である只見がゴールだ。
ジミーは、すべてを失ったという絶望感の只中にあるわけだが、この"聖地巡礼"を通じて、人の温もりや優しさに触れ、「まだ失っていないものがある」という感覚を取り戻していく。
そしてJR飯山線に乗車したジミーは長いトンネルを抜けて一面に広がる雪景色に息を呑む。
アミから聞いていた一年中雪に閉ざされる世界を実際に見ることで、自分の人生に大きな影響を与えたアミの心に近づいたように思えたのだろう。
落ち着いていて、静かに笑顔を絶やさず、いつも周りのことを気にかけてくれたアミ。自分にとっての理想の女性だったアミが、冬の厳しい自然環境にじっと耐えることでその人格を育んできたことを、ジミーは間近に体験し、アミをより深く理解できたように思ったに違いない。
幸福の科学では、大川総裁の生誕の地である徳島県吉野川市の川島を聖地にしている。
大川総裁が育った質素な生家や山や川に恵まれた、のどかな自然を実際に訪れることで、大川総裁を間近に感じるという人も多い。
聖地巡りを通じて、自分が理想とする人の人生を追体験することは、自分を今一度奮い立たせていく上でも、とても重要である上、特に仏陀・救世主と呼ばれる偉大な方の足跡を辿ることは、許しと救い、魂の新生をもたらす。
弘法大師空海がつくったとされる四国巡礼、八十八カ所巡りが、お遍路さんと呼ばれる巡礼の人々にとって、心の重荷からの解放につながることはよく知られている。
ジミーは旅の終着地である福島県只見のアミの実家に着くと、アミの母親の案内で位牌と対面し、アミが最後の日々を過ごした部屋で、彼女の手書きのスケッチブックを紐解く。
そこには、ジミーをはじめ、台湾の人々との出会いで得られた、心の喜びがつづられていた。ここで初めてジミーは、18年前に出会ったアミが、既に間近に迫った死を念頭に置きながら、ジミーに接していたことを知る。
そして、ジミーが考えていた"夢の実現"と、死を予期したアミのそれとの違いに思い到り、号泣するのだ──。
本映画はアジア各地で大ヒットを記録しているという。最後にアミがジミーに遺した"優しさ"としての夢の実現という美しい理想。これが、人々の心を揺さぶっているのは間違いないだろう。