レーガン大統領がアメリカの対ソ政策を「体制転換」へと路線変更できたのはなぜか(後編)
2022.02.27(liverty web)
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《本記事のポイント》
- 「コスト戦略」を強いることができたレーガン政権
- 「力による平和」を実現した
- レーガンが大統領を三期務めていたら中国も滅ぼしていた!?
前編はレーガンが言葉による攻勢と軍事力の増強によって前政権の方針を転換し、完全に「ソ連崩壊」モードに入ったことを述べた。
その構想自体は、1976年に大統領候補として立候補するも落選し、次に大統領候補として立候補するまでの雌伏の時に温められていたものだった。
ラッファー博士によると、レーガンの最初の安全保障のアドバイザーのディック・アレン氏がレーガンと外交について検討する会合をする中で、レーガンはこう述べたという。
「サプライサイド経済で同盟国を豊かにし、スター・ウォーズ計画でソ連を縮み上がらせる」
博士は、レーガンがこの冷戦に勝利する確信を得た瞬間となったという。
「コスト戦略」を強いることができたレーガン政権
サプライサイド経済学は、トランプ政権でも採用された供給側の経済学。トランプ氏がクリスマスプレゼントとして贈った2017年12月の大型減税法(「減税・雇用法」)により、経済は活況を呈し、コロナ直前で平均的な家計所得は約8000ドル(91万円)も増えたことは、本欄でも論じた通りである(「就任から1年経つバイデン大統領 トランプ前大統領就任1年目と決定的な落差は景況感」)。
貧困率や黒人の失業率も過去最低となり、経済成長は弱者救済そのものとなった。
だが減税は歳入を減らすと考える政治家は多い。
それは経済のダイナミックさを捉え損ねた考えだ。
トランプ氏の大型減税によっても歳入は、その前の2年間よりも早いペースで伸びたことが確認されている(2021年7月号参照)。
それは民間が設備投資を行ったことで、生産性が上がり、経済成長したからである。
経済を静的にとらえると、このからくりはまったくの茶番にしか映らないが、サプライサイドのよき理解者となったレーガンは、この仕組みをいち早く理解した。
76年に大統領選に立候補した時点で、「減税すると税収が減るのでは」と記者に聞かれたレーガンは、「歳出の無駄遣いを減らして減税分を補います」と答えていたが(連載第5回、リバティ2020年12月号関連記事参照)、カリフォルニアの住民による減税運動の勝利を目の当たりにし、サプライサイド経済の威力を学んだ後、80年にこう答えている。
「減税分を支払うとはどういうことだね。減税すると、経済が成長する。生産が増え繁栄し、雇用が増えるので税収が増えるのです」
アメリカでは83年1月、減税法が完全に施行されると、かつてないほどの高度成長期が到来。83年1月から84年の6月までの1年半は、12%(年率で8%)の経済成長を遂げるにいたった。
この経済パワーがあったからこそアメリカは、冷戦末期に「コスト戦略」をソ連に強いることができたのだ。
またラッファー博士が支えたサッチャー政権も、最終的に個人所得税の最高税率を83%から40%に引き下げるという減税政策を実施。87年には、経済成長率が年率換算で5%を超えるなど、イギリスに繁栄の時代がもたらされた。
「同盟国をサプライサイドで豊かにして、スター・ウォーズ計画で縮み上がらせる」という、レーガンの雌伏の時代の構想が10年後に実現し始めた瞬間だった。
80年代末、米ソが激しい軍拡競争を繰りひろげる中、その裏付けとなる経済力には大差がついていた。
アメリカの国防予算は、GDP比約6%だったのに対し、ソ連の国防予算は数10%だったと推測されている。国家予算の約半分を国防予算に費やすのは、誰が考えても正気の沙汰ではない。瀕死の病人がマラソンをしようと持ち掛けられたようなものだった。結果ソ連は、コストに耐え切れず、経済から崩壊した。
「力による平和」を実現
ラッファー博士がゴッド・ファーザーと仰ぐ人物に、レーガン政権時代に国務長官を務めたジョージ・シュルツ氏がいる。
博士はちゃめっけたっぷりに、「彼が僕を5回も雇ったことが失敗だった」と筆者に語ったことがあるが、ジョージ・ショルツ米元国務長官は1984年、「Power and Diplomacy(力と外交)」と題するスピーチでこう述べている。
「力の裏付けのない外交は効果的ではない。善意のみならず、優位性を持つこと(leverage)が必要なのです」
「パワーと外交は2つの別個のものだ」と、よくある間違いを批判し、「この2つは揃っていなければならない」とも述べている。
このいわゆる「力による平和」路線を踏襲したのがトランプ氏だ。国内が強くなれば、海外でも強くなる!(Strong at home, Strong abroad!)と常々述べ、中国との新冷戦に打ち勝つため「宇宙軍の創設」「海軍の艦艇を355隻体制にする」「核戦力の近代化」などを掲げ、年間国防予算を10年後には3割増やす予定だった。その原資は、サプライサイド経済による経済成長であり、歳入増だったのである。
バイデン現政権、そして日本の岸田政権はレーガンやトランプ氏が実現した、「国内が強くなれば、海外でも強くなる」という「力による平和」という考え方が完全に抜けている。
他人に頼る人が増えれば国力が落ちて、国が衰退する。衰退した病人の状態で、覇権争いというマラソンレースを走りきることができないということが分からないのである。
レーガンが三期務めていたら中国も滅ぼしていた!?
「自由のために戦うことは正義」そのものだというアメリカの保守の系譜がある。
自由の勝利という究極の目的のために、あらゆる資源を動員したレーガン政権だったが、レーガンを継承するはずだったジョージ・H. W. ブッシュ政権は、レーガン流の「悪は滅ぼされなければならない」という道徳的明晰さを踏襲しなかった。
天安門事件後、日本が90年に無償の円借款を再開し突破口を開くと、西側からの中国に対する直接投資は急増した。
ベルリンの壁の崩壊が善だと信じていたレーガンが3期大統領を務めていたら、全体主義国家中国の存在を許していたとはとても思えない。
1982年の演説で、レーガンはこう述べた。
「自由は一握りの幸運な人の特権ではなく、全ての人間の奪うことのできない、普遍的な権利であるという信念を断固として持ち続けなければなりません」
自由が普遍的権利であるのは、それが神の光の別名だからである。
大川隆法・幸福の科学総裁は、この点についてこう述べている。
「『自由』とは神の別名であり、神の光の別名なのです。それが、自由です。自由とは、神からの愛のことであり、神の愛が人々に自由を与えるのです。彼らは、自由が許される政治体制の中で、国民が政府に奉仕するのではなく、国民に奉仕する政府を築かなければならないと思います」(未来への羅針盤「愛は憎しみを超えて」)
日本は現代の「鉄のカーテン」の向こう側にいる魂にも責任を持てるのか。自由という神からの愛を届けられる人道的な国家に、日米がともに生まれ変われるかどうかの岐路に立っている。
レーガンのレガシー(遺産)は、それを私たちに教えてくれているように思う。
【関連記事】
【関連書籍】
『メシアの法』
幸福の科学出版 大川隆法著
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2022年2月13日付け本欄 レーガン大統領がアメリカの対ソ政策を「体制転換」へと路線変更できたのはなぜか(前編)
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2022年2月4日付本欄 天安門事件後、日本はなぜ西側の対中包囲網を率先して破ったのか 海部俊樹元首相の霊言で暴露された当時の判断の背景とは?
https://the-liberty.com/article/19208/
2020年12月号 レーガンとの出会い - Divine Economics サプライサイド経済学の父 ラッファー博士 Part 05
https://the-liberty.com/article/17742/
2021年2月号 冷戦を平和裏に終結 - Divine Economics サプライサイド経済学の父 ラッファー博士 Part 07
https://the-liberty.com/article/17902/
2021年11月号 メシアの警告 - Part 3 ─2100年から見た歴史の分岐点とは─
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2022年1月28日付本欄 「神仏への信仰心を持つ国家 対 無神論・唯物論国家」の対立で勝てる可能性はある - 大川隆法総裁 講演Report
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2022年1月10日付本欄 世界が中国の軍門に下るのを防ぐには 外交・安全保障の中心に「信教の自由」を据えるべき