「平和をつくろうとしたトランプと、戦争の時代を招いたバイデン」 国際政治学者・川上高司氏インタビュー
2022.11.28(liverty web)
<picture></picture>
米バイデン政権は中間選挙で"大敗"を免れたとされるが、外交の見通しはどうか。日本政界にも高い洞察力を持つ国際政治学者に聞いた。
プロフェッサー
川上 高司
川上高司氏:バイデン政権の外交は、見ていて不思議に思うほど、不必要な脅威を高めています。
そもそも私はウクライナ戦争を、アメリカ側がロシアを罠に誘い込んで引き起こした、代理戦争だと考えています。「アメリカおよび北大西洋条約機構(NATO) 対 ロシア」という構図ですね。プーチン政権を転覆させて、ロシアの体制を崩すというところまで、最初から戦略として考えていたと見ています。
アメリカはウクライナに武器を投入し続け、今に至るまで戦争が継続しているわけです。
バイデン政権以降、世界は「体制間紛争」に向かって動いているように見えます。アメリカとNATOを中心とする「自由民主主義体制」と、中国やロシアをはじめとする「非自由民主主義体制」との戦いです。
本来であれば、世界にとって最大の脅威となっている中国に対し、ロシアと協力して包囲網を張るべきでした。しかし、バイデン政権がロシアを敵に回してしまったため、世界全体がギシギシとした「戦争の時代」に入っています。
一方でトランプ前大統領は就任当時、プーチン大統領と手を取り合って、世界を平和にしていこうとしていたのだと思います。しかし、多方面から邪魔が入り、ロシアとの協力体制を築くことは叶わなかった。それでも、侵略的意図を隠さない中国に対して関税をかけるなど、勢いを削いできました。
これは、バイデン政権が進める「体制間紛争」ではなく、「アメリカ 対 中国」の「大国間紛争」だったと言えるでしょう。
日本が「戦場」になる危機に目を向けるべき
私としては、2024年にトランプ大統領が復活することを期待しています。ただ、少なくともそれまでの2年間は、世界にとっても、日本にとっても非常に厳しいものになることが予想されます。
バイデン政権の「体制間紛争」という構図が続き、いよいよアメリカと中国が切迫した状態になった場合、日本が「戦場」になる可能性が非常に高いと、切実な危機感を持っています。つまり、バイデン政権が進める「体制間紛争」に巻き込まれる形で、日本が戦場となり、日本国民が甚大な被害を受けるのではないか、ということです。
台湾をめぐって中国と軍事衝突があった場合、バイデン政権は直接的な介入を避けるでしょうから、ヨーロッパのポーランドのように、武器や食料物資の「供給地」になることを日本に要請するのは間違いないと予想されます。
日本がそれを承諾すれば、中国の攻撃対象は日本になります。つまり、日本と中国が事を構え、アメリカはそれを後ろで"見ている"という、非常に危ない構図になります。その時に、果たして本当にアメリカが守ってくれるのか、というのが大きなポイントです。
現状、自衛隊はほとんど米軍の指揮下に入っています。バイデン政権のシナリオに基づいて戦いが展開した際、どのような事態が起きるのかを具体的にシミュレーションし、その上で、被害を限定するにはどのような備えが要るのか、真剣に議論する必要があります。
トランプ政権の外交は賢かった
バイデン政権は、「自由民主主義体制 対 非自由民主主義体制」という構図の「体制間紛争」を進めてきたと、前述しました。
もし、2024年にトランプ大統領が復活すれば、ロシアとの関係を回復し、中国に焦点を絞って勢力を削ぐはずです。つまり、中国とロシアを相手取る「二正面」作戦から、対中国に集中する「一正面」作戦に戻すと予想されます。
「敵を減らし、味方を増やす」というのが、外交の原則ですから。バイデン政権よりトランプ政権の方がずっと賢いと言えますね。
トランプ氏は対中国を含め、「二国間」で外交を展開したわけですが、日本も同じように二国間外交を進めてゆくべきです。
残念ながら現状としては、基本的に日本はアメリカの枠組みに入る形で外交を行っており、そのために、諸外国から「一つの国」として扱ってもらえないという課題があります。日本に交渉するのではなく、アメリカに交渉すればいいという具合に思われ始めている。
特にここ何年間かは、アメリカの戦略に引きずられ、「日本外交」が少し手薄になっているように思います。自民党内でも、アメリカありきで政策を動かすというのが前提となっており、そうした議論は禁句になっています。
ですが、世界がどうなるか分からない中、迫り来る危機を直視し、自分の国は自分で護れる国に変わっていく必要があります。
【関連書籍】
『ウクライナ問題を語る世界の7人のリーダー』
大川隆法著 幸福の科学出版
【関連記事】
2022年11月13日付本欄 牙をむく三期目の習近平 バイデン政権の備えは十分か【HSU河田成治氏寄稿】(前編)
https://the-liberty.com/article/20043/
2022年11月20日付本欄 牙をむく三期目の習近平 バイデン政権の備えは十分か【HSU河田成治氏寄稿】(後編)
https://the-liberty.com/article/20055/
2022年9月11日付本欄 ウクライナ紛争が加速させる世界の分断【HSU河田成治氏寄稿】(前編)
https://the-liberty.com/article/19867/
2022年9月19日付本欄 ウクライナ紛争が加速させる世界の分断【HSU河田成治氏寄稿】(後編)
https://the-liberty.com/article/19883/
2022年3月号 バイデン・ピンボケ大統領 ─コロナ敗戦、世界の分断、ハバナ症候群─
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます