「じゃあ、メイ。またあとでね。わたしは
ケイのためにやることがまだ残ってるの。さ
あ、ケイ、行きましょう。決してわるいよう
にはしないわ。わたしたちを信頼して」
そういって、アステミルはケイを連れ、洞
窟の奥に消えた。
メイとニッキは一言も発せない。
ただ黙って、うなずくしかなかった。
「お母さん、ケイをお願いします」
「ええ」
ケイの肩を抱くようにして、アステミルが
突き出た岩を曲がってしまうと、あたりは急
速に暗くなった。
「ああ、真っ暗になっちゃった。どうする
ニッキ?困ったわ」
メイが窮状を訴えるのと、洞窟が再び明る
さを取り戻すのがほぼ同時だった。
「まあ、あなたって。すごいわ。そんなラ
イト持ってるなんて。まるで真昼の太陽のよ
うね。うちにあるのは、ほんの少ししか照ら
せないのに」
「そりゃそうさ。世界で一番、よくできて
るんだから当り前さ」
「良かったわ。あのね、ニッキ。この洞窟
って、ほんとに奥に出口があるのかしら」
「それはぼくにもわからない。まあ、きみ
のお母さんにまかせよう。ポリドンさんがつ
いていらしゃることだし」
「ええ、わたしのお父さんが……」
メイの目に涙がにじんだ。
天井がキラキラと輝く。
夜空の星々がまたたくようだ。
洞窟は文字通りのパワースポットだった。
白髪の老人に扮した、年老いたヒヒが命が
けで教えてくれた洞窟である。
うわべは水晶とさほど変わりないように思
われたが、掘り出して太陽の光に照らされる
と、それはすぐに紫色を変わった。
地球防衛軍の監識部隊は、すぐさま、鉱石
の成分やら、その働きを突き詰めようとここ
ろみた。
だが、表向き、目立った力を発見すること
ができないでいた。
それから間もなくのこと。
メイが長い長い間待ち望んでいた一家団欒
の時が訪れた。
ダイニングの食卓の場。
グラス一杯のミルクを飲み干すメイを、ポ
リドンとアステミルは、あたたかな眼差しで
見つめた。
「どう、おいしかった?」
メイはぷっと吹き出した。口に残っていた
ミルクが少し、テーブルの上にかかった。
「もちろんでしょ。こんなふうにいっしょ
に食事をとりたかったもの」
「ごめんなさいね、メイ。でもこれからは
ずっといっしょにいられるわ」
「わたしだって、もう大人よ。行けといわ
れても、断れるから」
ポリドンは豊かにたくわえた口ひげを右手
でそっとなでた。
メイは、彼女のわきにあった箱から、ひと
つかみの紫色の鉱石を手のひらにのせた。
「どうしたんでしょうね?あんなに、わた
しのお友だちが苦労して見つけてくれ、守っ
ていたのに……」
「まあ、そんなに急ぐことはないさ。みな
もがんばって、敵の攻撃をけちらしてくれて
るから」
「うん。でも……」
メイの手のひらが温かくなってくる。
「お父さん、見てみて、これって。とって
もあたたかいわ。とってもいい気持ちになっ
てくる」
「そうかね。それは面白い。わたしに寄こ
してみなさい」
「はい」
ポリドンはメイから左手で受け取った鉱石
を、右手にものせてみてから、ちょっと考え
込む表情をした。
「確かにメイの言うとおりだ。手のひらが
あたたかくなってくる。それに気持ちまでさ
わやかになって、すべての雑念が消えてなく
なりそうだ」
アステミルも、彼女の手のひらに、それら
をのせてみた。
「あなた、これって、わたしたちの光線銃
の内部に入れてみたらどうかしら。ひょっと
して、私たちに仇なす連中のこころを変えて
しまうことができるかもしれないわ」
「うん、そうかもな。円盤を破壊すること
ができなくても、乗組員のこころを良くする
ことができれば……」
「そうよ、そうだわ、きっと。あのヒヒさ
ん、だてに年を取っていなかったと思うわ」
ポリドンの命令で、すぐさま、光線銃の改
良が始められた。
ケイのためにやることがまだ残ってるの。さ
あ、ケイ、行きましょう。決してわるいよう
にはしないわ。わたしたちを信頼して」
そういって、アステミルはケイを連れ、洞
窟の奥に消えた。
メイとニッキは一言も発せない。
ただ黙って、うなずくしかなかった。
「お母さん、ケイをお願いします」
「ええ」
ケイの肩を抱くようにして、アステミルが
突き出た岩を曲がってしまうと、あたりは急
速に暗くなった。
「ああ、真っ暗になっちゃった。どうする
ニッキ?困ったわ」
メイが窮状を訴えるのと、洞窟が再び明る
さを取り戻すのがほぼ同時だった。
「まあ、あなたって。すごいわ。そんなラ
イト持ってるなんて。まるで真昼の太陽のよ
うね。うちにあるのは、ほんの少ししか照ら
せないのに」
「そりゃそうさ。世界で一番、よくできて
るんだから当り前さ」
「良かったわ。あのね、ニッキ。この洞窟
って、ほんとに奥に出口があるのかしら」
「それはぼくにもわからない。まあ、きみ
のお母さんにまかせよう。ポリドンさんがつ
いていらしゃることだし」
「ええ、わたしのお父さんが……」
メイの目に涙がにじんだ。
天井がキラキラと輝く。
夜空の星々がまたたくようだ。
洞窟は文字通りのパワースポットだった。
白髪の老人に扮した、年老いたヒヒが命が
けで教えてくれた洞窟である。
うわべは水晶とさほど変わりないように思
われたが、掘り出して太陽の光に照らされる
と、それはすぐに紫色を変わった。
地球防衛軍の監識部隊は、すぐさま、鉱石
の成分やら、その働きを突き詰めようとここ
ろみた。
だが、表向き、目立った力を発見すること
ができないでいた。
それから間もなくのこと。
メイが長い長い間待ち望んでいた一家団欒
の時が訪れた。
ダイニングの食卓の場。
グラス一杯のミルクを飲み干すメイを、ポ
リドンとアステミルは、あたたかな眼差しで
見つめた。
「どう、おいしかった?」
メイはぷっと吹き出した。口に残っていた
ミルクが少し、テーブルの上にかかった。
「もちろんでしょ。こんなふうにいっしょ
に食事をとりたかったもの」
「ごめんなさいね、メイ。でもこれからは
ずっといっしょにいられるわ」
「わたしだって、もう大人よ。行けといわ
れても、断れるから」
ポリドンは豊かにたくわえた口ひげを右手
でそっとなでた。
メイは、彼女のわきにあった箱から、ひと
つかみの紫色の鉱石を手のひらにのせた。
「どうしたんでしょうね?あんなに、わた
しのお友だちが苦労して見つけてくれ、守っ
ていたのに……」
「まあ、そんなに急ぐことはないさ。みな
もがんばって、敵の攻撃をけちらしてくれて
るから」
「うん。でも……」
メイの手のひらが温かくなってくる。
「お父さん、見てみて、これって。とって
もあたたかいわ。とってもいい気持ちになっ
てくる」
「そうかね。それは面白い。わたしに寄こ
してみなさい」
「はい」
ポリドンはメイから左手で受け取った鉱石
を、右手にものせてみてから、ちょっと考え
込む表情をした。
「確かにメイの言うとおりだ。手のひらが
あたたかくなってくる。それに気持ちまでさ
わやかになって、すべての雑念が消えてなく
なりそうだ」
アステミルも、彼女の手のひらに、それら
をのせてみた。
「あなた、これって、わたしたちの光線銃
の内部に入れてみたらどうかしら。ひょっと
して、私たちに仇なす連中のこころを変えて
しまうことができるかもしれないわ」
「うん、そうかもな。円盤を破壊すること
ができなくても、乗組員のこころを良くする
ことができれば……」
「そうよ、そうだわ、きっと。あのヒヒさ
ん、だてに年を取っていなかったと思うわ」
ポリドンの命令で、すぐさま、光線銃の改
良が始められた。