
長野から30分ほどで小布施に裏側から入っていく。駐車場は無料駐車場を持つ店もあるが、休日などはかなり混み合うので100/Hの有料に停めてしまった方が楽で、中央の幹線道路は横切るだけにしたい。この町は葛飾北斎と栗菓子で売出し、今や町の中心部は蔵を曳家してまで修景して、有名店を集中移転配置させ、美術館などは周辺に配するなどと観光への注力の執念はまことに見事!としか言いようがない。
20年以上前に初めて訪れた時には北斎館が駐車場脇にポツンと、栗菓子などの有名店などは離れ離れにあってそんなに観光客も居なかったのに、大手栗菓子屋などが音頭をとって町を挙げて、一昔前の和の風情ある町の演出に徹底した成果がこの繁盛だ。竹風堂が夏は軽井沢にその昔から売店を開き小布施通信を出していて、その中にあった写真で一部の建物の表情が良さそうじゃないかと、当時小学校低学年の子供達も連れて訪れて、竹風堂の無料駐車場に停めて散策したものだ。
駐車場に落ちて転がっているイガ栗を子供達が拾って遊んでいる所に行くと、窓から竹風堂の女性従業員が「あのー、その落ちている栗はうちの畑のものじゃないんですけど」と。少しばかり拾ってしまった栗をまぁこの位なら返すこともないかと持帰って、茹でて食べると大きく実が詰まって美味しいのなんのということもあって、ゴメンナサイネ。なんでもこの土地は川には魚が棲まないほどに酸性が強くて、栗にはその酸性土壌が最適なんだそうです。
その栗菓子を名物にする店々は栗お強もある竹風堂、老舗で栗御飯の桜井甘精堂、高井鴻山の子孫筋で蔵元でもある小布施堂、ケーキもある岩崎、それに風味堂、松仙閣などなど、栗お強では元祖寿々喜華壇<まだ健在かどうかは不明>、さらにこれらの菓子店の一つが経営するケーキ喫茶栗の木テラス、カフェレストラン傘風楼、食事処蔵部、味噌の老舗穀平やその裏手には面白いカフェBUDなどと趣ある飲食と食材の店が集まるのも観光客を惹きつけている。
工芸雑貨では竹風堂がやっている国内外の民芸品店や和紙の中條などの店もある。美術館等では北斎が描いたと言う屋台を展示する北斎館、北斎を招いたという高井鴻山記念館、竹風堂併設の日本のあかり博物館などは中心部に、中島千波美術館、北斎の天井画八方睨みの鳳凰で有名な岩松院、盆栽美術館、フローラルガーデンなどは周辺にと盛沢山で、始めてだったら見て回るのに一日中朝から晩までかかりそう。
栗の小径
やましち山野草店の庭
中心部で僕のお薦め散策コースは竹風堂をスタート、北斎館に向かい傘風楼を曲がって栗の木ブロックを敷き詰めた栗の木の小径を進み、鴻山記念館(有料)に入って反対側に出て右手に曲がり、やましち山野草店の脇から見事な山野草庭園を見せて貰って、桜井甘精堂の庭園に抜けながら私設美術館(無料)を見学というもの、途中の店などにも大いに寄道して行くと楽しいですよ、大通りに面して骨董屋もありからね。
その道向いには始めて訪れた頃には確か原銅器といった手打出しの銅食器などを製造販売していたお爺さんの店があって、小型カンテラランプ風銅細工とコーヒーカップらしきものを買ったことがある。そのカップでコーヒーを入れて飲んだとたん、唇を火傷なんて笑い話ももう20年前になりますか。
さて帰りがけの温泉となると、この小布施にもナトリウム塩化物泉の穴観音の湯(隣にもう一つ建設中の建物があったが)というのがあって、北信三山(飯綱・黒姫・妙高)と小布施を一望する高台の上というロケーションの露天風呂もあり、湯上りにはここから一寸戻った所にあるトゥーエルでアイスクリームというのも女子供に喜ばれるはず。女房は東部町湯楽里館の方が牛乳の味が濃くて好きだそうだが、なにせ種類が多いので人気になっているようだ
でも今日は菅平を通って帰ろうと須坂を抜けて、途中にある仁礼地区に新しく出来た公共温泉の湯っ蔵んどに入ることにして、果樹園が続く道を須坂温泉などは通り過ぎて南へ進む。須坂は蔵の街を名乗っているように、豪商の館田中本家があるなど小布施と同じく北信の商業で栄えた町、いくつか老舗が残っているので時間があれば寄るところだが、この日は町の端っこを素通りしてだけで温泉に到着となる。
ここはかなりの大型施設で各種の趣向風呂があるのが人気のようだが、なんと観光バスの団体客まで来ているのにはこりゃダメダ!と。でもこれからほかに回るのもと入浴料650円なりで入った温泉は、単純泉の軽い感じの湯であった。湯上りに南極室という初めての経験の部屋があって、湯ほてりを早くとるにはこれだけは気持ちが良かった。
湯っ蔵んどを出て菅平への坂道に入る手前左手にはJA須坂の販売所があって、ここで売っている栽培シメジは天然ではないものの風味が強く、炊込御飯にお薦めだ。さらにすぐ近くの洞窟風呂で有名な仙仁温泉岩の湯はかなり前に予約しないと満室で断られるのほどの人気宿で、少々高い料金だがそれなり納得のおもてなしと評判である。菅平へはかなりの急坂でクネクネと、登りきるとラクビー合宿のメッカ、ここにあるホテルでも外来入浴可能なところがあるようだ。夏は一本だけのメイン道路はかなり混雑するので、最近は渋滞ができる信号の手前で早稲田大学合宿所の裏側を通る抜け道をしている。反対からの場合もここを抜けるようお薦めします。シーズンは抜道案内の看板も出ているようだから目を凝らして走って行ってちょうだいな。
<追記>
その後も小布施には毎年一回は必ず尋ねているが、町は集積度は益々高まっている。あのやましち山野草店はサライにも紹介されていたのでまた寄ってみると、前からのもう一つの商売である衣料店を縮小して骨董と現代版画の啐啄堂という店を開いているではないか。何でも親父さんが好きでこれまでに集めたものをネタに商売替えしたんだそうで、比較的良心的な値段付けには、バブルの頃には買っていないからとの返事。金継ぎ直しも自分でやるそうで、その直し代はサービスになっているというのには感心感心。この前サライで見たよと話し込めば、あの記事が出た直後から全国の愛好家からの電話が多くて大変だったとか。山野草売場も奇麗になって益々充実している。記事には庭の表土の下に砂利を入れたと書いてあったのでどの位の厚さで入れたのかと聞けば、1mも敷き詰めたそうで、それからは雑草がほとんど生えず今の山野草ガーデンになったそうだ。小柄で人のよさそうなこの親父、見た目とは別人のただものではない爺さんだぞ。
また増設された温泉はあけびの湯と名づけられ、まぁ新しい宿泊もできる施設になったとは言えるが、やや硫黄の臭いがある温泉は穴観音と同じで、展望も北信濃三山を眺められるようになっていて料金も同一で500円。最近ここの奥の方にある草むらの駐車場に車を回したときに、ナント目の前の斜面に佇むカモシカと突然にご対面なんてことがあって、こんな人里近くでお目にかかるのは初めてでビックリしたことがあったなぁ。かなり大きい雄のようだったが、あけびの湯ができてからはこちらに駐車する人はあまりいないので、ひょっとするとこれからも出没するかもしれませんよ。
温泉とは町の反対側、高速道路小布施パーキングエリアに隣接のハイウェイオアシスには一般道との共用のミュージアムや物産館が設けられ、併設の農家による農産物直売所では山菜の季節どれでも1パック100円、切花などや野菜類も同様に全て100円とすこぶる安いので是非とも覗いていって下さい。
店データ
トゥエル 小布施町大字中松 138 026-247-2578
穴観音の湯 小布施町雁田観音下 1194 026-247-2525 <宿泊もできるあけびの湯も加わった>
栗の木テラス 小布施町中町 784 026-247-5847
BUD 小布施町伊勢町 735 026-251-4033
穀平味噌 小布施町 734 026-274-2134
やましち山野草店(啐啄堂) 小布施町中町 781 026-247-2032
<鈴花 小布施町小布施 102 026-247-6487 日本料理で追加>
小布施中心部