Harryカテゴリの“My Own Country”に関連し、英語の面からちょっとコメントしておきたい。
このCDには、"A Recital of English Song" とサブタイトルがついているが、これを見て最初私は、なぜEnglish songsと複数ではないのか大いに悩んだ。まさか間違えたままリリースしているはずは・・・と。
Googleしてみると、確かに recital of French song とか、sのついていないパターンがかなりある。それで考えたのが、曲ひとつひとつの集まりという意味ではなく、イギリス歌曲という芸術そのものを指す不可算名詞、さらに細かく言えば抽象名詞として用いられているのではないかということである。例えば、cancerという単語も、癌という病気を一般的に抽象概念としてとらえて、癌は怖いなどというときは、抽象名詞として無冠詞だが、子宮癌、胃癌、乳癌・・といろんな癌の種類を述べているコンテクストでは普通名詞でcancersとなるのと同じである。
songという単語について、辞書で調べてみる。(こんな中学1年の単語でも、バカにしないでちゃんと辞書を読んでみると新たな発見があるものだ。)英和辞書よりも英米の定評ある英英辞書を調べるほうがいい。
たとえば、Oxford Advanced Learner's Dictionary のオンラインサイトhttp://www.oup.com/elt/catalogue/teachersites/oald7/lookup?cc=global には次のとおり、songに3つのエントリーがあり、2番目にちゃんと書いてある。
1 [C] a short piece of music with words that you sing: a folk / love / pop, etc. song We sang a song together. She taught us the words of a French song. see also SWANSONG
2 [U] songs in general; music for singing: The story is told through song and dance. Suddenly he burst into song (= started to sing). Their voices were raised in song. see also PLAINSONG
3 [U, C] the musical sounds that birds make: the song of the blackbird

このような例でわかるように、英語の名詞の多くが、コンテクストにより(つまり書き手の主観次第で)「抽象」と「具象」という概念の間を自由に行き来する。英語を日本語に訳している場合はさほど困る問題ではないが、日本語を英語に訳す場合、s 一つの使い方にも気を遣わなければならない。とりわけバイオ医薬系の英語では、一つの文書内で両方の表現を使い分けなければいけないものがよくあり、だいたい抽象的思考力の貧弱な私はいつも青息吐息である。具体例はまた後日詳しく紹介したい。
ところで、上記に貼り付けたOxford Advanced Learner's Dictionary のサイト以外にも、無料で英米の代表的辞書が利用できるサイトがいろいろあるので、大いに活用しよう。
お薦めは、
Longman Dictionary of Contemporary English
Merriam-webster Collegiate Dictionaryictionary
http://www.merriam-webster.com/)
などである。英英を読んでいると面白くてつい時間がたつのを忘れてしまうのだが、こんな膨大なリソースがインターネットにさえつなげば使い放題なのだから、全く有難い世の中になったものです。