本日2つの記事を投稿しています。この下にある恵之介の記事も併せてお読みいただければ嬉しいです。
第46回「頼朝挙兵」 あらすじ、ダイジェストムービーなどはこちら。
いやあ、本当に凄かった・・・・。
月曜からずっと、何度もブログを書こうとしたのですが、私の貧弱な語彙ではとても語れるようなものではなく、月並みすぎる言葉ですがやはり
「松ケン清盛は凄い~~~!」
これしかないです。
最高権力者(独裁者)となった途端、自分を見失って底なしの暗闇にとらわれ、激しくもがき苦しむ清盛。その狂気は、逃れようとする白拍子を射殺させようとしたとき頂点に達します。清盛は「もののけの血」のうずきに負けてしまうのか?!
そこへ、なんと追い打ちをかけるように頼朝挙兵の知らせ!ああ、、、、どうなる、、、、狂気と怒りは清盛をどこへ連れて行くのだろう、、、、私は一瞬絶望的な気分になり、ここからいったいどうやって、清盛が「救い」を見出すというんですか、藤本さんーーー見出すとしてもまだずっと先のことでしょう、死ぬ間際なんでしょうーーーもう辛くて見れないよお。。。と言いたくなってしまいました。
ところが、、、、頼朝という言葉を聞いたとたん、清盛の表情から怒りも狂気もむしろさっと引いていき、何かを真剣に探るような目になっていました。「光だ・・・・光が見える」とでも言っているようです。そして、はいつくばって、はいつくばって、向かう先は、自らの宋剣でした!彼の武士としてのアイデンティティの象徴であるこの剣に必死にしがみつき、赤子のような泣き声を発しながら、力を振り絞って立ち上がります。このときの清盛を映すカメラアングルがまた素晴らしい。そして音楽はもちろん、「アクアタルカス」!
よれよれのもものけはもうどこにもいない。そこには、宋剣を握りしめる雄々しいもののふの姿が!!!
松ケンさんの表情、特に目の変化に、すっかり心奪われてしまいました・・・。ドラマのスタッフがツイッター上で、「清盛演じる松山ケンイチさんのお芝居の、ある意味、極限値を見ることができる回だと思います。」と言っていますが、極限値=「何かが限りなく何かに近づいた時に得られる解」とすると(Yahoo知恵袋より)、まさに今平清盛と重なった松山ケンイチの全身全霊の最高のものが炸裂しているのですね・・・もうテレビドラマのレベルをはるかに超え、シェイクスピア舞台劇のようです。
もののけを闇から救い出し、もののふに引き戻したのが、頼朝だというシナリオには、正直複雑な思いはありますが、ともかく清盛にはもうあと1年しか時がありません。これからは、もののふとしてどんなに彼が力を尽くそうとも、なにかと裏目に出るばかりで、最愛の一門の破滅を食い止めることはできないのです。
しかし、現代のわれわれは、頼政が最期に問うた「清盛入道は、この国の宝か禍か?」の答えを知っているのですから、どんなに悲しくとも一門の最期をしっかり見届けてあげなければなりませんね・・・。最終回を想像するだけでも、今から涙ぐんでしまうんですけどね。。
さて、細かい話を2点だけ・・・・・
1.妓王と仏御前
清盛の寵愛を受けたこの二人の白拍子のことは、『(古典)平家物語』にも『新・平家物語』にも出てくる有名なエピソードで、史実であるようです。ただし、清盛が50代後半のことで、『新・平家物語』では、仏御前を気に入った清盛はちゃんと「妓王には暇を出せ」と指示していて、『平清盛』46回のような残酷な仕打ちはしていません。それから、あちこちのブロガーさんが、仏はせいぜい15、6のはずなのに、木村多江さん(現在41歳)では年齢が行き過ぎと言っていますが、私は彼女の大人らしい優しい表情がとてもよかったと思います。清盛は仏に母舞子を見た。そして、仏も、母のように清盛を癒やし、包もうと懸命に務めた。それだけに、そんな仏を「殺せ!」と叫ぶ清盛の痛々しい錯乱ぶりが、胸に迫りました。
2.頼政と以仁王の最期
『平清盛』では、頼政は、宇治にて仲綱と共に自害、 以仁王については、「討ち死にあそばされた」というナレーションで簡単に片づけられてしまっていましたが・・・・(注1)『新・平家物語』では、頼政と以仁王が馬で奈良へ逃げる道中、 もはやこれまでと覚悟を決め、以仁王が頼政に首を刎ねるように頼んで頼政が刀を振り下ろす場面があって、二人の気品ある最期の会話が丁寧に書いてあります。そのシーンは総集編DVDにも収められており、頼政は芦田伸介、以仁王は、北大路欣哉という大ベテランのコンビ。
以仁王はもう心残りもないといって、「頼政、おことはさぞ満足であろうな。老い木に花というものぞ。・・・・が、若木のまろは」と寂しげに言います。このとき、北大路欣哉さんの「若木に花というものぞ」というところの語尾「ぞ」がちょっと上がっていて、優しく頼政をいたわる感じがよく出ています。すると頼政は、「・・・いいえ、老い木の花は、花だけに過ぎません。若木の花こそ、身を結ぶ花。(中略)たとえ、おん命は光明山のふもとにお果て遊ばしましょうとも、令旨は死んではおりませぬ。令旨は生きて諸国の源氏に、新たな望みを息吹して翔けましょう」と応えます。それを聞いて、以仁王は自分の死にも大きな意味があることを感じて、大きく頷き、「頼政、討て」といって目を閉じます。新平家総集編DVDの中でも名シーンの一つです。(『新・平家物語』(七)p.132 「馬いかだ」より。DVDのほうの頼政の言葉はやや異なっているのですが、込められた思いは同じ。)
まだ、語りたいことは山ほどありますが、本日はここまで。
注1)ただし、以仁王は平家によって討たれた(頼政の手によって討たれることを選択できたのではない)というのが、史実である模様です。