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「オセロー」 舞台内容 五幕二場 (2)

2009-10-15 13:31:18 | 「オセロー」

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 エミリアが登場し、キャシオーが、ロダリーゴーを殺したこと、そしてキャシオーは、死んでいないとを告げに来る。
本当はイアーゴーが、止めを刺したのだけれど。




 オセローは、キャシオーが死んでいないことを知ると、復讐を果たしたことにならないと言ってがっかりするのだった。


 その時、オセローに窒息させられて、すでに死んでいたと思われていたデズデモーナが、少しだけ息を吹き返しエミリアと言葉を交わすのだった。
 'A guiltless death I die.'
 (罪もなくわたしは死ぬのよ)


 ひょっとしたら、まだ、うまくいくかもしれない。しかし、もう遅い、遅すぎた。
死に臨んだデズデモーナの唯一の思いは、彼女の夫にして殺人者のオセローを許す。


 Emilia: O, who hath done this deed ?
 Desdomina: Nobody; I myself. Farewell:
          Commend me to my kind lord. O, farewell !
 (エミリア:ああ、いったい誰がこんなことを?
 デズデモーナ:誰でもないわ。わたしが自分でやったの、
       さようなら。わたしの優しい主人によろしく。ああ、さようなら!)


 デズデモーナは、オセローを許すのだ。彼からいわれのない嫌疑をかけられ、不当な仕打ちを受けて、窒息死させられる。にもかかわらず、彼女はオセローを許す。究極の愛ではないのだろうか。

 これをキリスト教的解釈によれば、デズデモーナがイエス・キリストになぞられ、一度、死んだ彼女が復活し、彼女の至高の愛と許しによって、オセローの罪も許される。

 そうしてはじめて、二人は天国で改めて結ばれることが出来た。
このデズデモーナの許しと犠牲がなければ、言い換えれば、この場面がなければ、オセローの罪は許されず、彼は地獄の業火に焼かれたに違いない。

 この一点だけをみれば、オセローは幸せな男だったかもしれない。




 オセローは、エミリアに自分がデズデモーナを殺害したことを告げる。
 'Twas I that kill'd her.'
 (俺が殺したのだ)


 この直後、オセローは、自分が犯した誤りのことをエミリアから聞かされる。
彼が真相を知らされて苦悶している最中に、イアーゴーと一群の将校が登場し、続いてエミリアとイアーゴーとの間に激しい口論が起こる。


 イアーゴーは、エミリアを言いくるめようとするが、上手くいかないとみるや、彼女を刺し殺し、命からがら逃げ出すのだった。


 しかし、さすがのイアーゴーも運が尽きる時がきて、将校たちがどっと飛び出して彼を逮捕する。
オセローが、彼を切りつけるが、周りの人々に阻まれた。


 イアーゴーは、罪のすべて告白させるために生存を許され、さらに残酷な責苦を受ける。
 Iago: Demand me nothing. What you know, you know.
     From this time forth I never will speak word.
 (イアーゴー:俺に何を訊いたって無駄だ。知っていることは
       知っているだろう。これから先は、一言も喋らない)


 イアーゴーのポケットから発見された書類とキャシオーの証言とが、オセローの犯した誤りの重大さ明らかにする。


 彼にとっての将来は、もうない。彼の罪を償うには、死のみであった。
彼は自らの手で、その償いをつけるのだった。
 Othello:                           Then must you sprak
        Of one that loved not wisely, but too well;
 (オセロー:その時は、この私のことをこう伝えてください。
     賢くは愛せなかったが、あまりにも深く愛し過ぎた男として)


 本当にオセローは、「あまりにも深く愛し過ぎた」のだろうか?
そうではない、と思う。やはり、妻が浮気をしたからといって、嫉妬に狂って殺してしまうのは、本当の愛ではない。

 ましてや、オセローは、イアーゴーに騙されたのだが、結局は、愛する妻の必死の訴えよりも、この天使を装った悪魔の言葉を信じた。

 このことは弁解の余地はなく、所詮、オセローの愛は、未熟な自己愛に過ぎなかったのだ。
つまり、ナルシストくんだったわけである。




 しかし、何という結末なのか。
デズデモーナ、エミリア、ロダリーゴーが殺され、オセローは自害する。デズデモーナの父ブラバンショーは、娘の死を悼むあまり死んでしまった。
キャシオーとイアーゴーのみが生き残ったが、イアーゴーの生涯は残酷な拷問の中で間もなく終わるであろう。



湯屋番 (一)

2009-10-15 01:42:46 | 落語
 古い川柳に「居候(いそうろう)置いて合わず居て合わず」と言うのがありますが、どういうわけか居候と川柳とは仲が悪い。


 「居候足袋の上から爪をとり」


 「居候角な座敷をまるく掃き」


 「居候しょうことなしの子煩悩」


 「居候三杯目にはそっと出し」


というのは、まことにしおらしい居候だが、


 「居候出さば出る気で五杯食い」


なんて図々しいのがいる。中でも困るのは、


 「出店迷惑様付けの居候」


どうにも扱いに困り、置くほうで逆に居候に遠慮するなんていうのもある。


 お出入りの鳶頭(かしら)が、お店の若旦那が道楽が過ぎて勘当されたのを預かるというのが、よくある話で…… 。
 「ちょいと、お前さん。どうするんだい」


 「何を?」


 「何をじゃないよ。二階の居候だよ。いつまで置いとく気なんだい」


 「うん、弱ったな。居候を置くったって猫じゃねえから、はっきり日を切って置いたわけじゃねえ。
まあ、あの人のおとっつぁんに、俺は昔ずいぶん世話になったからなあ。
あの人が居るところがないっていうのに、見て見ぬふりもできねえじゃねえか。まあ、少しのことは我慢しなよ」


 「お前さんは、世話になったかどうか知らないけれど…… 本当にあんな無精な人はありゃあしない。
一日中ああして、寝たっきりなんだから、そのくせ飯時分になると二階からぬうっと降りてきて、お飯(まんま)を食べちまうと、また二階へ上がって寝てしまうんだから呆れるよ。掃除もしたことあないし、汚いったらありゃしないよ。
 あんまり何にもしないから『若旦那、あなたは横のものを縦にしようともしないんですね』って言ったら、『じゃあ、その長火鉢を縦にしようか』だって、癪(しゃく)に障るったらありゃしない。
 お前さんが口を利いたのが災難の始まり、こうやって家へ引っ張って来たのは、お前さんだからいいけど、あたしゃ、ご免だよ」


 「そこを何とか我慢して、まあ、世話をしておけば、先行き、またいいこともあろうから…… 」


 「何がいいことがあるものかね。だってそうだろう。親身の親でさえ呆れる代物(しろもの)だよ。
もうご免だよ。嫌だよ。どうしてもお前があの人を置くというなら、あたしが出て行くからいいよ」


 「おい、馬鹿なことを言うなよ。居候とかみさんと、とっかえこしてどうするんだよ。
じゃ、まあ、何とか話をしよう」


 「頼むよ」


 「しかし、そこでおめえが、ふくれっ面をしていたんじゃ具合が悪いから、隣の婆さんのところへでも行ってろ。 ……うちのかかあもうるせえが、なるほど二階の若旦那も若旦那だ。
もう昼過ぎるってえのに、よくもこうぐうぐう寝てられたもんだよな。
 ……もし、若旦那、おやすみですかい。ちょいと、若旦那ッ」


 「へっへっ、いよいよ来ましたよ『雌鳥(めんどり)すすめて雄鶏(おんどり)時刻(とき)をつくる』ってやつだ」


 「もし、若旦那ッ」


 「このへんで返事をしないと気の毒だな。 ……なーに寝ちゃいないよ」


 「起きてるんですかい?」


 「起きているともつかず、寝ているともつかず…… 」


 「どうしてるんです?」


 「枕かかえて横に立ってるよ」


 「何をくだらないことを言ってるんです。ちょっと話があるんですよ。降りてきてください」


 「急ぎの話か?」


 「大急ぎですよ」


 「じゃ、お前が上がって来たほうが早いよ」


 「無精だね、まったく。さっさと降りておいでなさい」


 「いま降りるよ。うるせえなあ。ああ、嫌だ。家にいる時分には、若旦那だの坊ちゃんだの…… 滑った転んだ言いやがった。つくづく人生居候の悲哀を感じるってえやつだな」


 「何をそこに立って、もぞもぞ言ってるんです。早く顔を洗いなさい」


 「洗うよ、洗いますよ。朝起きりゃ猫でも顔を洗ってらあ。況や人間においてをやだ。
 ……しかし、顔を洗うったっておもしろくないね。道楽している時分には、女の子がぬるま湯を金たらいへ汲んで、二階へ持って来てくれる。口をゆすいで、いざ顔を洗う段になると、女の子が後ろに回って、袂(たもと)を押さえてくれるし、ものが行き届いている。
 それにひきかえ、ここの家はどうだい。金だらいぐらい買ったっていいじゃないか。この桶(おけ)というものは不潔きわまりない。嫌なもんだね。
 雑巾(ぞうきん)を絞っちゃ、またこれで顔を洗うんだからなあ。衛生の何たるやを知らねえんだ。
 第一、この桶に顔を突っ込んでいると、まるで馬が何か食ってようじゃないか」


 「何をいつまで、ぐずぐず言ってるんです。早く顔を洗っちまいなさいよ」


 「もう洗ったよ」


 「洗ったって、あなた、顔を拭かないんですか」


 「吹きたい気持ちはあるんだけどね。この間、手拭(てぬぐい)を二階の手すりへ掛けておいたら、風で飛ばされちゃったんだ。それからというものは、顔を拭かない」


 「どうするんです?」


 「干すんだよ。お天気の日には乾きが早い」


 「だらしねえな。どうも…… 手拭あげますから、これでお拭きなさい」


 「ああ、ありがとう。やっぱり顔は干すよりも拭いたほうがいい気持ちだ。ちょいと待ってくれ」


 「ぷッ、さんざ朝寝をして拝んでる。何を拝んでるんです?」


 「何を拝む? 朝起きりゃ、今日様へご挨拶するのが当たり前だ」


 「お天道様を拝んでる?」


 「そう」


 「もう西へ回ってますよ」


 「そうか、じゃあ、お留守見舞いだ」


 「お留守見舞いさんざ、いいやね。 ……まあ、くだらねえことを言ってないで、お茶が入ったからおあがんなさい」


 「いや、ありがとう。朝、お茶を飲むってえのはいいね。朝茶は、その日の災難を除けるなんてえことを言うくらいだから…… 早速、頂こう…… うん、だけど、もう少しいいお茶だといいんだがなあ。
不味いお茶だ。これ、買ったんじゃないだろう? お葬式(とむらい)のお返しかなんかだろう?
それにお茶請けが、何にもないっていうのは情けないな。せめて塩せんべいでも…… 」


 「うるさいね、あなたは…… 」


 「ああ、どうもごちそうさま。では、おやすみなさい」


 「何です。おやすみなさい…… って、いい加減にしなさい。実はね、こんなことはわたしも言いたくはないんだ」


 「そりゃそうでしょう。あたしも聞きたくない」


 「じゃ、話ができない」


 「へへ、おやすみなさい」


 「まあ、待ちなさい。 ……実はね、今、うちのかかあの奴が…… 」


 「わかった、わかった。お前の言わんとすることは…… 。さっき雌鳥がさえずった…… 」


 「「雌鳥? 何です?」


 「うん、つまり、おかみさんが、わたしのことについて、ぐずぐず文句を言ったわけだ」


 「いえ、うちのかかあのほうも悪いには違いないが、 ……ねえ、若旦那、あなたもいつまでもうちの二階で、ごろごろしててもしょうがありませんから。
 どうです、あたしはあなたのことを思って言うんだが、一つ、奉公でもしてみようなんてえ気持ちになりませんか?」


 「ああ、奉公かい。いいだろう、奉公もなあ。あたしが居るために、お前がおかみさんから文句を、ぐずぐず言われるのでは、あたしとしても忍びない。
 まあ、あたしさえ居なければ、揉め事もなく、まるく納まるのなら、その奉公っての、行こうよ。
え? 何処なんだい、その奉公先てえのは?」


 「そうですか、行きますか。場所は小伝馬町ですがね。あたしの友だちで桜湯をやってまして、奉公人が一人欲しいと言ってます。どうですか、湯屋は?」


 「ほう、湯屋。女湯、あるかい?」


 「そりゃ、女湯はありますよ」


 「うふふふ、行こう、行こうよ」


 「じゃ、手紙書きますから、それを持ってらっしゃい」


 「そうかい、じゃあ行ってみよう。お前の家にもずいぶん世話になったな」


 「いえ、まあ、お世話てえほどのことはできませんでした」


 「ああ、そりゃまあそうだが」


 「何だい、ご挨拶ですねえ。 ……まあ、お辛いでしょうが、一つ、ご辛抱なすって…… またお店のほうへは、わたしが行って、大旦那に会って、よく話しておきますから」


 「ああ、わかったよ。おかみさんによろしく言っとくれ。そうだ、世話になったお礼といっちゃなんだが、お前の家へ何か礼をしたいなあ」


 「礼なんざいりません」


 「いや、何か礼をしたいね。そうだ、どうだい、十円札の一枚もやろうか」


 「若旦那、そんな金持ってるんですか?」


 「いや、持ってないから、気持ちだけ受け取って…… そのうちの五円を、あたしにおくれ」


 「馬鹿なことを言っちゃいけませんよ」



*こちらにGyaoで放映中
[ 古今亭菊志ん 「湯屋番」 http://gyao.yahoo.co.jp/player/00291/v01038/v0103800000000516353/ ]