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Deep Ones

2009-10-17 13:09:51 | クトゥルフ神話

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「人間社会に深く静かに潜伏し、人間と交配して、その数を増やしながらGreat Cthulhu(大いなるクトゥルフ)の復活の日を待ち望み、準備を進める人類の敵対者」


・「Deep Ones(深きものども)」は、種族の最高長者である父なる「Dagon(海神ダゴン)」と、その妻母なる「Hydra(ハイドラ)」、そして水棲生物の支配者である「Great Cthulhu(大いなるクトゥルフ)」を崇拝し、仕え、どのような用向きにも応じられるように海底に棲んでいる。


・マルケサス諸島において、お守りとして身に付けられているティキの偶像は、両生類の頭部を備えた人間の形をしており、ニュージーランドのマオリ族が用いている彫刻入りの天井石などと共に「Deep Ones(深きものども)」の姿を象ったものと考えられている。


・「Dr. Laban Shrewsbury(ラバン・シュリュズベイリイ博士)」の助手となり、「Deep Ones(深きものども)」との闘争に身を投じたアンドルー・フェランは、初めて目にした「Deep Ones(深きものども)」の印象について、ジョン・テニエルの描く「不思議の国のアリス」の蛙男の挿絵を思い描いたと述懐している。


・「Deep Ones(深きものども)」の血を引いている者は、生れてからある程度の年齢まで普通の人間と変わらない容姿であるが、同族との接触や極度のストレスなどにより、「Innsmouth(インスマス )」面と呼ばれる 「Deep Ones(深きものども)」特有の蛙めいた容貌へと急激に変容し、その後は年経るに従って人間離れした姿形へとなる。


・盛り上がった眼は決して閉じられることがなくなり、灰緑色に変じた肌は冷たく湿っぽくなって、表面に鱗が生じ、指の間に水かきができる。皺の寄った首には、鰓が刻まれるなど、両生類そのものの容姿となるのにそう長い時間は掛からない。


・吼えるような声で会話し、地上で移動する際は、蛙のように跳びはねて移動する。


・「Deep Ones(深きものども)」は、老化によって死ぬことはなく、事件・事故等による外的な要因よらずして死ぬことはない。


・サイクロプス式の巨大な円柱が列をなす彼らの海底都市が、世界中の海に点在しており、そのうちの一つが「Innsmouth(インスマス )」の沖合い、悪魔の暗礁先にあるイハ=ントレイである。



湯屋番 (三)

2009-10-17 01:27:30 | 落語
 周りが人に見られていることも知らずに、若旦那は続けます。


 「無理に引っ張り上げられて、座布団に座ると、『ちょいと、清(きよ)、お支度を……』
目配せすると、小さなちゃぶ台に酒肴の膳が運ばれてくる。
 『さ、何にもないですよ』盃洗(はいせいい)の猪口(ちょこ)をとると、『あの…… おひとつ、いかが?』、『ありがとう存じます』と言って、酌(つ)いでもらって飲むんだが、この飲み方が難しいなあ。


 いきなりグイッと飲んじゃ『あ、この飲みっぷりだと、この男はくらいぬけ(大酒飲みという意味)だよ』って、ズドーンッと肘鉄(ひじてつ)を食っちまわあ。
 といって相手が飲める口だと『あたくしは、ご酒のほうは…… 』なんて言うと『この男、お酒も飲めないなんて、話せない奴だねえ』ってんで、ズドーンと肘鉄…… この駆け引きてえのが難しいなあ。


 ここんとこはどっちにつかずに『頂けますれば頂きます。頂けませんければ頂きません』それじゃ乞食だよ。
 杯を受けてちょいと口につけて、あと煙草かなんか吸いながら世間話でちょいとつなぎを入れるやつだ。


 あんまり喋ってばかりいると、女が言うねえ『あら、さっきからお話ばかりしていらしゃって、お盃が空かないじゃありませんか』グイッと飲んで盃洗でゆすいだやつを『へい、ご返盃』てんで、返し酌をする。


 向こうが飲んでゆすいで『ご返盃』とこっちへくれるやつを、俺が飲んでゆすいで向こうへやる。
向こうが飲んで俺にくれた盃を口につけようとすると、女のほうで凄いことを言うよ。
『兄さん、今のお盃、ゆすいでなかったのよ。あなた、ご承知なんでしょうねえ』なんて…… 女がじっと俺を睨むんだが、その目の色っぽいこと…… ううっ、弱ったなあ、弱ったなあ」


 「何だい? あの野郎、弱った弱ったって、独りでおでこを叩いて騒いでやがら…… おいおい、六さん、どうしたんだ?」


 「何だい」


 「鼻の頭から血が出ているぜ」


 「あの野郎が変な声を出しゃあがるから、あの野郎に気を取られて、手拭(てぬぐい)だと思って軽石でこすっちゃった」


 「おもしれえから、もう少し見てみようじゃねえか」


 「そのうちに、お互いだんだん酔いが回ってくる。こうなると、このまま帰るのもあっけないかなあ…… そうだ、雨が降ってくるなんていいね。やらずの雨というやつだ。
『あら、雨ですわよ。もう少し遊んでいらしゃいな。通り雨ですもの、じきに止みましょうから』


 ところがこれが止まないよ。だんだん振りが強くなる。ここで雷なんか鳴ってもらいたいな。
少しくらい祝儀をはずんでもいいから、威勢のいいのをなあ。ガラガラガラ、ガラガラガラッ…… 
『清や、雷だよ。怖いから、蚊帳(かや)吊っておくれ』目関(めぜき)寝ござを敷いて蚊帳を吊ると、女中は怖いからてんで、くわばらくわばら万歳楽(ばんざいらく・ここでは祈りのこと)と自分の部屋へ逃げて行ってしまう。


 女は蚊帳へ入ると、わたしを呼ぶね『こっちへお入んなさいな』なんてんでね…… 雷がどこかへ落っこちてうらおう。あんまり近くへ落っこちると、こっちも目を回しちまうからなあ。
ほどのいいところへ落ちてもらいたいねえ…… ガラガラガラッ、ピシリッとくると、女は持ち前の癪(しゃく)てえやつで、歯を食いしばって、ムッ…… てんで気を失っちゃうねえ。


 『女中さん、大変ですよ』たって気を利かせて出てこない。しょうがないから、こっちは蚊帳をくぐって、中へ入る。女を抱き起こして水をやるんだが、歯を食いしばっているから、盃洗の水をぐっと口へ含んどいて、口から口へのこの口移してえことになる。てへへへ、わーいッ」


 「何だ、おい。あの野郎、番台で踊ってるぜ」


 「口移しの水が女ののどへ通ると、女は気がつくねえ。目を細めに明けて、あたしを見てにっこり笑うんだが…… そうだ、ここからのセリフは歌舞伎調でいきたいね…… 『もし、ねえさん、お気がつかれましたか』、『はい、今の水のうまかったこと』、『雷さまは怖いけれど、わたしがためには結ぶ神……』、『それなら今のは空癪(そらしゃく)か……』、『うれしゅうござんす、番頭さん……』」


 「何を言ってやんでえ、ばかッ」


 「あいたッ、痛いよっ、あんた。乱暴して……」


 「何を言ってやんでえ、おかしな声を出しやがって、この野郎。何がうれしゅ……だ。俺は帰るんだ」


 「どうぞ、ご遠慮なくお帰りなさい」


 「帰れったって、やい、俺の下駄がねえじゃめえか」


 「あなた、下駄、履いてきたんですか?」


 「張り倒すぞ」


 「分かりましたよ。そう大きな声を出しちゃいけません。下駄があればいいんでしょ…… じゃ、そこの隅の、その本柾(ほんまさ・いい木目の木という意味)の、いい下駄だあ。
鼻緒だって本天(ほんてん・いい生地ということ)で、安かありませんよ。その下駄履いてお帰りなさい」


 「これ、おめえの下駄か?」


 「いいえ、違います」


 「何だと?」


 「誰か中へ入っているお客ので」


 「その客はどうすんだ?」


 「ええ、いいですよ。怒りましたら、順に履かせて、一番お終いの人は裸足で帰します」


 お後が、宜しいようで……


*こちらにGyaoで放映中
[ 古今亭菊志ん 「湯屋番」 http://gyao.yahoo.co.jp/player/00291/v01038/v0103800000000516353/ ]