次は九か月健診です。ここで「しつけの仕方」を教えます。体罰はだめです。こつがあります。
乳児健診と生活のアドバイス Ⅴ
☆9ヵ月の赤ちゃん
[栄養]
◇食欲はありますか--食べる楽しさを教えていますか。
食事の時間は、チュッと吸う、チュルチュルする、もぐもぐする、ストローで吸う、独りで食べるなど食欲を満たす楽しい時間です。こどもの食事は半分遊びなのです。いけませんと叱って食べる楽しみを奪わないで下さい。
◇コップの練習はしていますか。ミルクや牛乳をコップで飲むことを教えて下さい。
もう固定観念ができていて、ミルクをコップで飲まなかったらかなり難しいです。でもまだ母親にその気があれば、治りますがこの時期が最後のチャンスです。
◇始めはコップでミルクか牛乳を1日1回、食後の授乳の際に与えるようにし、いやがらなければ、これを毎日続け、1ヵ月位したら1日2回にふやし、だんだん授乳をコップでミルクか牛乳を飲ませるようにしていきます。いやがったらやめて、数日後またやってみます。母乳や哺乳ビンでの授乳をだんだんコップで牛乳に飲むようにかえていくのです。うまくいけばこれで断乳ができます。
コツは6ヵ月以後、母乳を眠り薬や安定剤の替わりにしないで、あくまで食事の一部として、食事の時に与えるようにしておくことです。寝る時や泣いた時に母乳やミルクを飲んでいると、習慣になり、飲まないと眠れなくなり、断乳に抵抗します。食事の一部として与えていれば、だんだん牛乳に替えていき、離乳がスムースにいくことができます。
◇幼児食--離乳の早い赤ちゃんは、もう幼児食、つまり大人の食事の中のやわらかそうな物を、食べられるようになります。歯がないからとドロドロの物ばかり与えていると硬い物を食べなくなります。(ドッグ・フードばかり食べて成長した犬は骨を食べません。)
そろそろ手を使って食べることができるようになりますから、自分で食べるようにマンナやビスケットなどを与えます。
歯はなくとも、呑み込める程度に小さくしてあれば、嫌がらない限りどんどん与えて構いません。赤ちゃんが嫌がらずに飲み込めれば良いのです。大人でも大食いの人や、早食いの人はほとんど噛んでいませんし、それで胃をこわすこともありません。食べる食べないは赤ちゃんが決めます。
ムラ食いが目立つ時期。赤ちゃんは1口食べてみて、その味で食べるか食べないか決めます。これは好き嫌いではありません。その時によって食べたり、食べなかったりします。
大人でも食べたい時も食べたくない時もあります。
[健康]
◇靴は、とがったものからと、寒さから、足を守る為にだけ必要です。靴はやわらかく、きつくないものがよいです。靴底はすべりにくい素材で、上は通気性のよいものがよいです。
◇睡眠。
幼児は規則正しい就寝時間と、就寝習慣が必要です。でも夜中に目をさますこともあります。夜泣きするのは、まず寝る前に十分お腹を満たしているかどうかです。寝る前に食べるのは身体によくないと言うのは思い違いです。なにも根拠はなく、寝ている時でも胃腸は働いています。その場合は、寝る前にしっかり食べると起きません。
次に、のどが渇いているかです。水やうすいお茶を飲ませると寝ます。
悪い夢を見た時は、目を覚ますと泣き止みます。しっかり目を覚まさせることです。
それでも泣き止まない場合は、夜泣きですから、続く場合は小児科医に相談しましょう。
[安全]
◇自動車内ではチャイルド・シートを使いましょう。
助手席で母親がしっかり抱いていたつもりでも、急ブレーキの瞬間抱いていた子どもが、母の腕の中から飛出して死亡した事故が10府県で2年間に3件あったそうです。
◇電気コードやコンセントで遊ばせない。冬はストーブ、夏は扇風機。ファン・ヒーターも熱風の吹き出し口が危険です。
◇庭やベランダでの転落、墜落。--決して赤ちゃんから、目か手を離してはいけません。まだできないだろうと思っていると、赤ちゃんはある日突然立ったり、歩いたりします。
窓や階段には安全柵をつけましょう。
◇テーブルクロスを引張り、テーブル上の物が落ちて、やけどやけがをします。
◇何でも口に入れるのが激しくなり、肺への誤飲事故がふえます。赤ちゃんに与えてはいけないものは、ピーナッツ、塩豆、ポップコーン、グリーンピース、とうもろこし、豆、生の棒状にんじん、セロリ、生のりんごやレーズン。
◇低いテーブルの上にのっているものを片付ける。コイン、ガラス製品、ビーズ、ピン、薬、工芸品、道具など。おもちゃより大人のものが好きです。
◇ナイフ、はさみ、かみそりなど、とがったものや鋭いものは、安全な場所に保管しましょう。
◇毒物をジュースやコーラなどの空きびんや空き缶、コップなどに入れておかないこと。
◇水の事故
お風呂の浴槽に、水をためておかないこと。少しの量でもおぼれます。実際に、台所のあがりまちに転げて落ちて、下にあったバケツの中に顔を突っ込み、中にあったわずかの水で鼻と口がふさがれて溺れてしまったケースがありました。
先日は、浴槽に満杯にしてあったお風呂場で一歳の子が溺れた事件が報道されました。
お風呂での事故は、乳幼児と高齢者で非常に多い事故です。
[社会的発達]
◇赤ちゃんの声をまねる。赤ちゃんが声をだしたら、声をだして答える。
二人目、三人目の子は、上の子がしてくれるので、しなくてもすみそうです。でも上の子が男の子で赤ちゃんに興味を持たない子はしてくれません。
◇相互関係や、模倣の発達を助けるため、社会的な遊びをしてあげましょう。
「いないいないバー」、手拍子をとる、など。
◇自発性をのばす。自己主張がでてきたら、親への反抗と考えず、正常な、むしろ望ましい発達であるから、認めてあげましょう。探検をどんどんさせる。あちこち探検して回ります。
◇しつけ(教育)はこの時期から始めます。ただし内容を覚えてはいませんが、しつけをされることが必要なのです。マナーは4~5才からで充分です。
◇体罰はなぜ怒られたか覚えていないので、効果はありません。怒られたことだけ覚えていますから、余り叱ると親の顔を見て行動するようになります。幼稚園から小学校低学年までの子に体罰が効果がある場合もありますが、一般的には体罰はほとんど有効性がありませんし、逆効果になることも少なくありません。強くたたかず、叱っていることを表す行動として軽く手やお尻をたたくことが良いです。
(犬の場合は新聞紙をまるめたものでたたくと良いと云い、ムチなどで体罰を加えると性格が悪くなると云います。)
ですから、虐待を受けて、タバコの火を押し付けられた跡があったり、骨折があったりしますが、それでも子どもには通じないのです。何をしたらそうされるのかを、覚えていないのです。
虐待を受けた子は、レントゲンで全身の骨折の跡を探します。私が日本で初めてではないかと思われる虐待を受けた子を診たのは、国立埼玉病院にいた時でした。昭和50年代です。今は日常的に見られますが、その頃は少なかったのです。親の考え方が変わったのだと思います。
◇しつけは教育であって、強制や矯正ではありません。
◇しつけの基本は、興味を持たせて自分からさせることです。強制してはいけません。
まず母親がやって見せることです。そのうちに子どもが真似をするようになります。
一番効果があるのは少し年上の兄弟か、近所の年上の子のやっているところを見せることです。そしてやりたがったら始めから正しいやり方を教えることです。悪いくせがついたらなかなか直りません。間違ったやり方を覚えてしまうと、直すのに何年もかかります。
いけないことや危ないことをしそうになったら、何か他の面白そうなことに子どもの興味をひきつけて、いけないことから関心をそらすことです。
悪いことをした時に、「悪い子ね」と叱ってはいけません。「あなたは良い子だからこういう悪いことはしてはいけません」と叱り、その後なだめてあげて下さい。
危ないことをした時には、叱らずに危険なことを繰返し話し、親の云うことをきくまで云い続けることです。叱られていうことをきいたなら、叱られない所でするだけです。親や大人のいない所でするのです。それが事故につながります。
◇「赤ちゃんだから(または子どもだから)構わない」という論理は、こどもをだめにする論理です。こどもの時の記憶をもち続けると、おとなになった時に失敗をします。
◇しつけのポイントは、
①おとながしてはいけないことは、こどもや赤ちゃんでもしてはいけないのです。
しても良いことと思い込むと大きくなってもします。他人に注意されても、なぜいけないのか分らないので、また繰り返します。
②ひとりでしてはいけないことは、大人がついていてもやらせてはいけないのです。 高い所にのせてやったり、窓やベランダから下をのぞかせたりすることで、一度覚えますと、大人がいない時に自分でやろうとして、事故を起こします。こどもは頭の重さが体重の3分の1もあり、手で支えきれずに、簡単にベランダや窓から下に落ちるのです。
窓やベランダには下をのぞけないように、柵をつけましょう。アメリカのある州では、法律で義務付けたら、こどもの転落事故が3分の1に減ったといいます。
③こどもがしてはいけないことは、親がしている所を見られてはいけません。こどもに覚えて欲しくなければ、やはりしている所を見られないようにしましょう。
真似されたくないことは、やっている所を見られないようにしましょう。ガス台の点火、スイッチ、テレビのボタンなど。1度見たらしっかり覚えていて親が忘れた頃にします。
ガス台の点火栓をひねっている所とか、テレビのスイッチなどで、できるだけ身体で隠してどこを動かしているか見られないようにするのです。
◇悪い言葉を使った時に叱ってはいけません。叱るとその場はやめるかも知れませんが、何か他のことで親に叱られた時に、仕返しにパッとその言葉が出て来ます。
叱らずにその悪い言葉を無視して、全く違う話題にすり替えてしまうことです。
小学校3~4年生位になると、なぜいけないか説明して、その言葉を使わないように納得するように説明してやめさせます。してはいけないことも同じです。
◇「いけない」と言ったら決して親の面子にかけても撤回してはいけません。こどもが泣いたり暴れたりしたら、「仕方がない。今度だけは良いでしょう。」と1度でも認めてしまうと、こどもは次に親が「いけない」と言っても、また認めてもらうまで2時間でも3時間でも泣き続けます。認めてもよいことなら、始めから「いけない」と言わないことです。赤ちゃんやこどもが泣き続けた時に、それに勝てる母親はほとんどいません。
◇親(特に母親)から離れて祖父母や親戚、近所の人などといられるようにしていきます。
母親から離れていられる練習です。早期に保育所へ預けている場合には、必要あません。
◇知らない人につれていかれないようにしましょう。
知らない人について行ってはいけないとか、話をしてはいけないと教えてはいけません。
他人に誘われた時に、知らない人だけでなく、知っている人でも、お母さんの許可を得なければついていかないように教えます。知っている人に誘拐されたり、殺されたりしている事実があります。
◇一般的な断乳のやり方--だめと決めたら決して与えないことです。こどもがあきらめるまで頑張るのがコツで、一度だめといったのにこどもに負けて母乳を与えてしまうと、次にやめる時が非常に大変になります。ですから母親の身体とこころが健康な時に、3日間は毎日泣かれるのを覚悟してすることです。
--なぜ断乳をするかというと、乳離れ即ちこどもの精神的な成長を図る為です。こどもの為にするのです。
子どもを自立させることが大切です。子どもの人権、個人の権利を認めてあげて下さい。
よく、まだ母乳が出ているから飲ませるという人がいますが、いつまで出ているかというと、飲ませ続けていれば、15年というインドでの記録があります。その子どもは、6歳くらいの体格でやせ細り、知能の発達も遅れ、3~4歳程度であったと言います。
江戸時代や戦前までは乳母という職業があった程で、次々と赤ちゃんを預かって飲ませていると母乳は出続けます。
ある小説家は、小学校に入った頃まで、哺乳を飲んでいたそうです。学校から帰ってきて、母乳を吸ってから遊んだと言っています。それが良いかどうかは、親が考えることです。
日本では、遅くまで母乳を飲ませてもよいと言う小児科医がいますが、欧米では、1歳までにやめるように指導しています。子どもの自立と母親の子離れのためです。
乳児健診と生活のアドバイス Ⅴ
☆9ヵ月の赤ちゃん
[栄養]
◇食欲はありますか--食べる楽しさを教えていますか。
食事の時間は、チュッと吸う、チュルチュルする、もぐもぐする、ストローで吸う、独りで食べるなど食欲を満たす楽しい時間です。こどもの食事は半分遊びなのです。いけませんと叱って食べる楽しみを奪わないで下さい。
◇コップの練習はしていますか。ミルクや牛乳をコップで飲むことを教えて下さい。
もう固定観念ができていて、ミルクをコップで飲まなかったらかなり難しいです。でもまだ母親にその気があれば、治りますがこの時期が最後のチャンスです。
◇始めはコップでミルクか牛乳を1日1回、食後の授乳の際に与えるようにし、いやがらなければ、これを毎日続け、1ヵ月位したら1日2回にふやし、だんだん授乳をコップでミルクか牛乳を飲ませるようにしていきます。いやがったらやめて、数日後またやってみます。母乳や哺乳ビンでの授乳をだんだんコップで牛乳に飲むようにかえていくのです。うまくいけばこれで断乳ができます。
コツは6ヵ月以後、母乳を眠り薬や安定剤の替わりにしないで、あくまで食事の一部として、食事の時に与えるようにしておくことです。寝る時や泣いた時に母乳やミルクを飲んでいると、習慣になり、飲まないと眠れなくなり、断乳に抵抗します。食事の一部として与えていれば、だんだん牛乳に替えていき、離乳がスムースにいくことができます。
◇幼児食--離乳の早い赤ちゃんは、もう幼児食、つまり大人の食事の中のやわらかそうな物を、食べられるようになります。歯がないからとドロドロの物ばかり与えていると硬い物を食べなくなります。(ドッグ・フードばかり食べて成長した犬は骨を食べません。)
そろそろ手を使って食べることができるようになりますから、自分で食べるようにマンナやビスケットなどを与えます。
歯はなくとも、呑み込める程度に小さくしてあれば、嫌がらない限りどんどん与えて構いません。赤ちゃんが嫌がらずに飲み込めれば良いのです。大人でも大食いの人や、早食いの人はほとんど噛んでいませんし、それで胃をこわすこともありません。食べる食べないは赤ちゃんが決めます。
ムラ食いが目立つ時期。赤ちゃんは1口食べてみて、その味で食べるか食べないか決めます。これは好き嫌いではありません。その時によって食べたり、食べなかったりします。
大人でも食べたい時も食べたくない時もあります。
[健康]
◇靴は、とがったものからと、寒さから、足を守る為にだけ必要です。靴はやわらかく、きつくないものがよいです。靴底はすべりにくい素材で、上は通気性のよいものがよいです。
◇睡眠。
幼児は規則正しい就寝時間と、就寝習慣が必要です。でも夜中に目をさますこともあります。夜泣きするのは、まず寝る前に十分お腹を満たしているかどうかです。寝る前に食べるのは身体によくないと言うのは思い違いです。なにも根拠はなく、寝ている時でも胃腸は働いています。その場合は、寝る前にしっかり食べると起きません。
次に、のどが渇いているかです。水やうすいお茶を飲ませると寝ます。
悪い夢を見た時は、目を覚ますと泣き止みます。しっかり目を覚まさせることです。
それでも泣き止まない場合は、夜泣きですから、続く場合は小児科医に相談しましょう。
[安全]
◇自動車内ではチャイルド・シートを使いましょう。
助手席で母親がしっかり抱いていたつもりでも、急ブレーキの瞬間抱いていた子どもが、母の腕の中から飛出して死亡した事故が10府県で2年間に3件あったそうです。
◇電気コードやコンセントで遊ばせない。冬はストーブ、夏は扇風機。ファン・ヒーターも熱風の吹き出し口が危険です。
◇庭やベランダでの転落、墜落。--決して赤ちゃんから、目か手を離してはいけません。まだできないだろうと思っていると、赤ちゃんはある日突然立ったり、歩いたりします。
窓や階段には安全柵をつけましょう。
◇テーブルクロスを引張り、テーブル上の物が落ちて、やけどやけがをします。
◇何でも口に入れるのが激しくなり、肺への誤飲事故がふえます。赤ちゃんに与えてはいけないものは、ピーナッツ、塩豆、ポップコーン、グリーンピース、とうもろこし、豆、生の棒状にんじん、セロリ、生のりんごやレーズン。
◇低いテーブルの上にのっているものを片付ける。コイン、ガラス製品、ビーズ、ピン、薬、工芸品、道具など。おもちゃより大人のものが好きです。
◇ナイフ、はさみ、かみそりなど、とがったものや鋭いものは、安全な場所に保管しましょう。
◇毒物をジュースやコーラなどの空きびんや空き缶、コップなどに入れておかないこと。
◇水の事故
お風呂の浴槽に、水をためておかないこと。少しの量でもおぼれます。実際に、台所のあがりまちに転げて落ちて、下にあったバケツの中に顔を突っ込み、中にあったわずかの水で鼻と口がふさがれて溺れてしまったケースがありました。
先日は、浴槽に満杯にしてあったお風呂場で一歳の子が溺れた事件が報道されました。
お風呂での事故は、乳幼児と高齢者で非常に多い事故です。
[社会的発達]
◇赤ちゃんの声をまねる。赤ちゃんが声をだしたら、声をだして答える。
二人目、三人目の子は、上の子がしてくれるので、しなくてもすみそうです。でも上の子が男の子で赤ちゃんに興味を持たない子はしてくれません。
◇相互関係や、模倣の発達を助けるため、社会的な遊びをしてあげましょう。
「いないいないバー」、手拍子をとる、など。
◇自発性をのばす。自己主張がでてきたら、親への反抗と考えず、正常な、むしろ望ましい発達であるから、認めてあげましょう。探検をどんどんさせる。あちこち探検して回ります。
◇しつけ(教育)はこの時期から始めます。ただし内容を覚えてはいませんが、しつけをされることが必要なのです。マナーは4~5才からで充分です。
◇体罰はなぜ怒られたか覚えていないので、効果はありません。怒られたことだけ覚えていますから、余り叱ると親の顔を見て行動するようになります。幼稚園から小学校低学年までの子に体罰が効果がある場合もありますが、一般的には体罰はほとんど有効性がありませんし、逆効果になることも少なくありません。強くたたかず、叱っていることを表す行動として軽く手やお尻をたたくことが良いです。
(犬の場合は新聞紙をまるめたものでたたくと良いと云い、ムチなどで体罰を加えると性格が悪くなると云います。)
ですから、虐待を受けて、タバコの火を押し付けられた跡があったり、骨折があったりしますが、それでも子どもには通じないのです。何をしたらそうされるのかを、覚えていないのです。
虐待を受けた子は、レントゲンで全身の骨折の跡を探します。私が日本で初めてではないかと思われる虐待を受けた子を診たのは、国立埼玉病院にいた時でした。昭和50年代です。今は日常的に見られますが、その頃は少なかったのです。親の考え方が変わったのだと思います。
◇しつけは教育であって、強制や矯正ではありません。
◇しつけの基本は、興味を持たせて自分からさせることです。強制してはいけません。
まず母親がやって見せることです。そのうちに子どもが真似をするようになります。
一番効果があるのは少し年上の兄弟か、近所の年上の子のやっているところを見せることです。そしてやりたがったら始めから正しいやり方を教えることです。悪いくせがついたらなかなか直りません。間違ったやり方を覚えてしまうと、直すのに何年もかかります。
いけないことや危ないことをしそうになったら、何か他の面白そうなことに子どもの興味をひきつけて、いけないことから関心をそらすことです。
悪いことをした時に、「悪い子ね」と叱ってはいけません。「あなたは良い子だからこういう悪いことはしてはいけません」と叱り、その後なだめてあげて下さい。
危ないことをした時には、叱らずに危険なことを繰返し話し、親の云うことをきくまで云い続けることです。叱られていうことをきいたなら、叱られない所でするだけです。親や大人のいない所でするのです。それが事故につながります。
◇「赤ちゃんだから(または子どもだから)構わない」という論理は、こどもをだめにする論理です。こどもの時の記憶をもち続けると、おとなになった時に失敗をします。
◇しつけのポイントは、
①おとながしてはいけないことは、こどもや赤ちゃんでもしてはいけないのです。
しても良いことと思い込むと大きくなってもします。他人に注意されても、なぜいけないのか分らないので、また繰り返します。
②ひとりでしてはいけないことは、大人がついていてもやらせてはいけないのです。 高い所にのせてやったり、窓やベランダから下をのぞかせたりすることで、一度覚えますと、大人がいない時に自分でやろうとして、事故を起こします。こどもは頭の重さが体重の3分の1もあり、手で支えきれずに、簡単にベランダや窓から下に落ちるのです。
窓やベランダには下をのぞけないように、柵をつけましょう。アメリカのある州では、法律で義務付けたら、こどもの転落事故が3分の1に減ったといいます。
③こどもがしてはいけないことは、親がしている所を見られてはいけません。こどもに覚えて欲しくなければ、やはりしている所を見られないようにしましょう。
真似されたくないことは、やっている所を見られないようにしましょう。ガス台の点火、スイッチ、テレビのボタンなど。1度見たらしっかり覚えていて親が忘れた頃にします。
ガス台の点火栓をひねっている所とか、テレビのスイッチなどで、できるだけ身体で隠してどこを動かしているか見られないようにするのです。
◇悪い言葉を使った時に叱ってはいけません。叱るとその場はやめるかも知れませんが、何か他のことで親に叱られた時に、仕返しにパッとその言葉が出て来ます。
叱らずにその悪い言葉を無視して、全く違う話題にすり替えてしまうことです。
小学校3~4年生位になると、なぜいけないか説明して、その言葉を使わないように納得するように説明してやめさせます。してはいけないことも同じです。
◇「いけない」と言ったら決して親の面子にかけても撤回してはいけません。こどもが泣いたり暴れたりしたら、「仕方がない。今度だけは良いでしょう。」と1度でも認めてしまうと、こどもは次に親が「いけない」と言っても、また認めてもらうまで2時間でも3時間でも泣き続けます。認めてもよいことなら、始めから「いけない」と言わないことです。赤ちゃんやこどもが泣き続けた時に、それに勝てる母親はほとんどいません。
◇親(特に母親)から離れて祖父母や親戚、近所の人などといられるようにしていきます。
母親から離れていられる練習です。早期に保育所へ預けている場合には、必要あません。
◇知らない人につれていかれないようにしましょう。
知らない人について行ってはいけないとか、話をしてはいけないと教えてはいけません。
他人に誘われた時に、知らない人だけでなく、知っている人でも、お母さんの許可を得なければついていかないように教えます。知っている人に誘拐されたり、殺されたりしている事実があります。
◇一般的な断乳のやり方--だめと決めたら決して与えないことです。こどもがあきらめるまで頑張るのがコツで、一度だめといったのにこどもに負けて母乳を与えてしまうと、次にやめる時が非常に大変になります。ですから母親の身体とこころが健康な時に、3日間は毎日泣かれるのを覚悟してすることです。
--なぜ断乳をするかというと、乳離れ即ちこどもの精神的な成長を図る為です。こどもの為にするのです。
子どもを自立させることが大切です。子どもの人権、個人の権利を認めてあげて下さい。
よく、まだ母乳が出ているから飲ませるという人がいますが、いつまで出ているかというと、飲ませ続けていれば、15年というインドでの記録があります。その子どもは、6歳くらいの体格でやせ細り、知能の発達も遅れ、3~4歳程度であったと言います。
江戸時代や戦前までは乳母という職業があった程で、次々と赤ちゃんを預かって飲ませていると母乳は出続けます。
ある小説家は、小学校に入った頃まで、哺乳を飲んでいたそうです。学校から帰ってきて、母乳を吸ってから遊んだと言っています。それが良いかどうかは、親が考えることです。
日本では、遅くまで母乳を飲ませてもよいと言う小児科医がいますが、欧米では、1歳までにやめるように指導しています。子どもの自立と母親の子離れのためです。
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