――売れない歌手ねえ――
幡山 日光(はたやま にっこう)は、ある時、web上で、
「売れない歌手に、やってみませんか?」
と言うオーディション広告をみた。
――妙な企画だな、これ――
一体、どんな感じでやろうって言うのだろう…と言う、興味が幡山 日光(はたやま にっこう)に生まれた。
――で、オーディション用の楽曲デモテープを、企画している事務所まで、取りに来い…と。これは、また、アヤシイ――
だが、冒頭にもあるように、売れない歌手、なのだから、怪しいくらいが、妥当なラインかも知れない、と、幡山 日光(はたやま にっこう)は思い、騙されるの覚悟で、この話に、手を出したのだった。
「連絡頂いた、幡山さんですね。こちらが、オーディション用の楽曲テープになります。詳しいことは、こちらの封筒の中の書類に、書いてありますので、熟読して、受けてください」
幡山 日光(はたやま にっこう)が、指定された場所で、オーディション用の楽曲テープと、案内が書かれた書類を貰った。
――自分で楽器を奏でる
、か、カラオケ演奏で歌うかを、選択か。どっちにすると良いのかねえ――
幡山 日光(はたやま にっこう)は、帰りの道すがらに、オーディションの案内書を読みながら、考える。
――使用出来る楽器は、アコウスティックギターとキーボードか。ギターは、無理だから、やるなら、キーボードか――
その場合、このカセットテープの楽曲の難易度次第だけれど、と、幡山日光(はたやま にっこう)は、思った。幡山 日光(はたやま にっこう)のキーボードの演奏の腕は、そこまで、良いと言う訳ではなかった。
幡山 日光(はたやま にっこう)は、家に戻って、オーディション用の曲を聴いてみた。歌詞カードと弾き語り参考用の譜面がついていたので、眺めながら聴いてみた。無論、歌声は入っておらず
、メロディが流れる演奏が、テープに入っていた。
――へぇー。結構好きかも、この歌…――
幡山 日光(はたやま にっこう)は、メロディと売れない歌手募集、とは言えど、始めとその前へを、テーマにした形で、構成された詞が良い、と感じがした。
――これなら、やれるかも知れない――
幡山日光(はたやま にっこう)は、数度テープを聴き、歌詞カードを、覚える意味も込めて、ノートパソコンでタイプ打ちして、印刷をかけた。
――オッケイ。じゃあ、早速、弾いてみよ――
幡山 日光(はたやま にっこう)は、キーボードの電源を入れ、自分の歌いやすい様に、音階をいじって、やってみた。人間音を、自由に奏でて、思った通りに、最初から最後まで、周囲の迷惑を考えず、演奏出来ると、至福の一時を、手に入れる事があるからだ。
――うーん、良いねえ…でも、まだ、メタメタだけどな…――
出来るように、なんのか俺?と、幡山日光(はたやま にっこう)は、思った。100%マスターは、幼い頃より、苦手な幡山 日光(はたやま にっこう)。だから、今、こんななのかもな…と、思いながら、もう一度、頭から、修練に出たのだった。