「虚構の絵の具」
ある時、私は、記憶に残る夢を見た。
大概、見た夢なんて忘れてしまうのだが、何故かそれは、朝、目が覚めても覚えていた。
ベッドから起き上がり、薄茶色のカーテンを開けると、いつもの晴れた空がそこにあった。
(何で、空に関係する夢なんか見たんだろう、不思議なもんだな)
しばらく何も考えず、私は窓の向こうを見つめてみた。
その夢は、こんな感じに始まった。
自分の部屋とはどこか雰囲気が違う中、銀色のテーブルがあり、そこには、日頃、先ず飲まない缶ビールとつまみが置いてあった。
私は、そのテーブルの正面にあるテレビを何とはなしに見ていた。
時刻は、好きな深夜3時位で、どこか蒸し暑い夏に近い時期だった。
(なんか面白い番組ないかな)
携帯でテレビの番組表が掲載されているページを何とはなしに観ていると、どうもこの後、出しているチャンネルでは、映画が始まるという事が解ったので、そのまま観ることにした。
やがて定刻になり、番組が始まった。
どうも洋画の様で、何故か文字がはっきろと見えないが、多分、出演者やら何やらのキャストの名前が出ているんだろうと思った。やがて、ヨーロッパ系と見られる男性が現れた。どうやら、友人を家に招いてた様で、久しぶりの再会を2人は喜んでいた。
(なんか昔どっかで観たような感じだな)
そう思ったのは、テレビを見つめる自分ではなく、夢を見ている自分自身だった。まるで、夢の中に自分が出ているようで、とても変な感じがした。
やがて2人は、小さな部屋の中で、ワインを交わし昔話に花を咲かせ始めた。そして、
「こんな絵の具を手に入れたんだ」
主人公と思われる男優が、友人の前にヨーグルトが入っていそうなガラス瓶を3つ、2人が取り囲んでいるテーブルの上に出した。それは、薄い青と白、そして清楚で静かな光沢のある銀色の絵の具と思われる液体が入っていた。
「ほう、鮮やかな色だね」
友人が、しげしげと瓶を見つめる。
「だが、見てくれ」
そう主人公が言うと、絵筆を薄い青の絵の具が入った瓶の中に入れて、近くにあった紙に塗ってみるが、色が出なかった。
「不思議だろ、どうやっても色が見えないんだ。ちなみに見て解るように、この瓶は透明なんだ」
主人公は、薄い青の液体が入った瓶を別の透明の容器に流し入れ、もと入っていた瓶が透けた瓶である事を友人に確かめてみせた。
「ほう、これは珍しい。本当に色が残らないんだね」
ここで、2人が出る映画のシーンは終わった。
次に出てきたのは、何故か顔の見えない18歳から20歳位に見える、日本人とおぼしき男性が出てきた。そこには十字枠を白く塗られた4枚のガラスで出来た小窓がある、その向こうには海が見えた。部屋の壁は茶色系で暖炉がある。そして木製のテーブルが出てきて、そこにはさっきの映画に出てきた3つの絵の具が入った瓶があり、男性がそれを眺めているシーンだった。
「これで、描けるものって、なんだろうな・・・あれならいけそうか?」
男性がつぶやくと、そこでそのシーンが終わった。
第3のシーンでは再び、映画に戻った。
だが、そこにはさっきの絵の具は既になく、やはり顔が見えないが部屋の中の様で、窓が開き、夜空が見え、パイプを口にした1人の男性が居て、もう1人別の男性がそこには居た。やがて、パイプをくわえた男性が
「こんな話を聞いてくれ」
と言って、パイプを口から外すと、ふーと長く息を吐いて、話を始めた。
すると、両脇を草原に囲まれた場所にシーンが移り、目の前には、白い建物が見えた。何の建物かは解らないが、テレビアニメなんかで出てくる宮殿風だった。草原の中を歩くシーンが続く。不思議な事に、音声聴こえなかった。やがて字幕が現れた。どうやら朗読調にそれは続いている様だった。
――キャンバスに絵を描く1人の青年に、ある時、出会った。
「何を描いているんだい?」
そういって、キャンバスを覗いてみると、そこには何も描かれていなかった。
不思議に思って、青年が手にしているパレットと筆を見ると、水気はおびはしても、やはり色はなかった。 そしてキャンバスの近くにおいてある小さな台には、鮮やかな薄青が入った瓶と白が入った瓶そして静かに輝く様に光る銀色が入った瓶がおいてあった。
「空を描いているんですよ」
すまし顔で青年は、キャンバスの上で、筆を動かし続けた。だが、やはりそこには何も見えない。
「何も描かれていなんだけれど」
「そうなんです。色なんて本当は無いんですよ。光の反射でそう見えるだけで」
少し表情を緩めて、青年はそう言った。
「その絵の具、不思議ですよね。色があるのに色が出ないんですよ、ほら」
得心の行っていない私を気遣ってか、青年は、筆を薄青が入った瓶にすくう様にして見せたが、やはり色は無かった。
「信じられない」
「形ある全ての物が、掴める訳じゃないって事みたいですね。ちなみに、この白も銀も色はあっても、この青同様に、何も色はつきません。虚構の絵の具です」
私は、各色が入った瓶とキャンバス、そして空を見上げてみて、どことなく青年が言わんとする意味が解った気がした。
「形があって無いものを形にしたい。それで、この虚構の絵の具を手に入れたんです。私の目には映りませんが、きっと描けている筈です。この青々とした空が」
まだ、描き上がっていませんけれど・・・と青年は口にし、再び手を動かし始めた――
そこで夢はぷっつりと切れ、話が終わった。
「この空は、描けないか・・・」
私は、晴れ渡った空を見上げてそうつぶやいた。
(あの雲も、太陽も・・・か。言われればそうかもな)
原色と同じ物を出すのは、難しいと言われる。幾ら近づけ様としても、やはり、その場の微妙な雰囲気までは出せない。だからこそ美しいんだろうか?私は今の段階では、その答えは出せそうになかった。
(もし、空を掴む事が出来ても、あの色までは手に出来ないって事か)
そう考えると、こんなにも近くに見える空が、遠い遠い所にある様に見えた。
(自分の目に映らないものを描くったって、難しそうだよな)
あの白いキャンバスには、本当に何も描かれていなかった。青年は、ただひたすらに筆を動かし、何も形にならない物を形にしようとしていた。しかも、出来上がる事のない絵を。かく言う青年には、案外、見えていたりしたんだろうか?あのまっさらなキャンバスにしっかりと色が。
あまりに印象的な夢だったので、私は、それから数日経った日に、友人にこの事を話してみた。
「なるほど。そいつは面白い夢だね」
なかなか無いんじゃないか?と友人は言う。
「海もそうだけど、青系の色してるてても、波打ち際行くと単なる透明だし、飛行機で上空からダイブする番組みても、青くないもんな」
そう言われれば、そうか、と私は思う。
「けどまぁ、‘‘虚構の絵の具,,なんて、随分硬い表現だよな。まぁその方が映画らしいっちゃそうかもしれないけど、なんか小説が夢で画像化されたような感じだな」
「うん。確かに」
「虚構・・・青い鳥と同じで、掴んでみると青くなかった、のノリで、見かけは青だったり白だったり銀色だったりしても、手にしてみると違う。俺らはそんな空の下で生きてるのかもな」
存在しているものが全て、本当の物である訳ではないって事なんだろうが、友人のその言葉を私は、あまり認めたくは無かった。だが物語は時としてそんな事を形にする面があることは否めない。だからこそ面白い。
「お前、なんか夢でもあるの?」
不意に友人が、訊いて来た。
「夢?」
「空って、ほら、大きいじゃん。それに、まっさらなキャンバスが、さっきの話で出てきたろ。しかも、描いている描けていない。ってことは、お前自身のどっかに、そういう・・・なんて言うのかな、絶対無理って解ってても、叶って欲しいなって言う何かがあるんじゃないかな、って思うんだ」
どうよ、と友人に言われたが、私は首を横に振った。そんなものはない。そもそも、夢なんて、いつからか、どうせ叶う訳も無い、と言って逃げてきた私である。それに、これという「理想」すらも特に無く、今のままで居られればいい、という保守的な姿勢しかなかった。そんな自分と夢は、どう考えても無縁だった。
「推測になるけど、3つの色の絵の具は、きっとお前の中に、ちらっと陰を見せる何かだろう。それを形にしたいって言う思いがあるって事だろうな」
「おいおい何か、いつかのロープレゲームに出てきそうな台詞だな、それ」
「あっ、バレた?でもさ、そんなもんじゃないの?詳しいことは解らないけどさ。でも、凄い良い話だったよ」
友人は、満足そうに笑顔を浮かべていたので、私は少しほっとした。
「いつかさ、今はないかもしれないけど、その3つの‘‘虚構の絵の具,,でさ、描いてみろよ。お前が描きたい未来をさ」
「だから、何でロープレの台詞になるんだよ」
「話はパクってなんぼよ」
と言って、友人は笑った。
それ以降、その話の続きの夢を見る事は無かった。
しかし、澄み切って晴れ渡る空を見ると時折、こっそりと思い出していた。
「この色は出ないんだよな」
胸の中でつぶやきながら。そして、
「出せたらどんなにきれいなんだろう」
とも、つぶやきながら・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/57/dc/24f6810e86365a7c084c4adee808c94d_s.jpg)
<あとがき>
小春日和といっても寒い晴れた日に、見上げた空がとても綺麗だった。この空の色を、瓶か何かに詰めてたら、良いなぁ・・・と絵なんか下手糞で描く気すらないにもかかわらずそんな事を思った。そして、更新の為に記事を書いた日も快晴で、空の青がきれいだった。
タイトルよりも、文章が先に出てきてこの話は息をし始めた訳だが、形して果たしてよかったのだろうか?と迷ってみたりもする。主人公が、「私」って、いつか読んだある小説のパクリそのもので、何をしてるんだ自分・・・と言う話である。
青という色が好きな事や、空の薄青だけを写した画像を貼り付けて、こんなだった・・・みたいな話を書いたり、「綺麗でいい」とか思ったりしてはいたが、物語にしようなんて言う気持ちは、まったく無く、いきなり文書がボロっと出てきて、焦ったと言えば焦った。
おりしも季節は春に向かっていて、これから先は、雨が多くなりそうな気配がある。そうなると、澄み切った青い空は、お預け、という事になる。
空、と言うと、私は以前紹介した、アニメ『ロミオの青い空』を連想してしまうが、そんなドラマチックな日常がある筈も無く、また、あまりにも晴れた空が当たり前過ぎて、いつしか、そんな話を忘れてしまう始末である。
広く大きな形のならない想いが強いと、空の夢って見るのか、私はまったくもって解りはしないが、適当に、そう思ったので書いた次第。
夢、というと、私は昨年2008年は、「既視感」に何度か出会った。それは、この場所来た夢を見た、という事と、こんなシーンに遭遇したな、という2つの印象が強い。一方で、今年2009年に入って、見た夢の話を書いたりしていて、割と身近に関係するの寝ている時に見る夢。実際の世界で、未来をこうしたい、という夢と眠っている時に見るそれは、違うと言われた事もあるが、私は眠っている時に見る、幸せだったり、良い想いが出来たりする夢を見るのは大好きで、実際の社会の中で、未来にかくありたい、という夢は残念ながら、今は描けて居ない駄目駄目人間だったりする。
明日の空は、今日の空は一体何色の顔を見せるのだろうか?そしてそれぞれの未来の色は一体どんな色をしているんだろうか?自分にしか描けない空を自分しか見えない絵の具で、まっさらなキャンバスに描いてるうちに、何かを掴めたら理想的な気がする。
ある時、私は、記憶に残る夢を見た。
大概、見た夢なんて忘れてしまうのだが、何故かそれは、朝、目が覚めても覚えていた。
ベッドから起き上がり、薄茶色のカーテンを開けると、いつもの晴れた空がそこにあった。
(何で、空に関係する夢なんか見たんだろう、不思議なもんだな)
しばらく何も考えず、私は窓の向こうを見つめてみた。
その夢は、こんな感じに始まった。
自分の部屋とはどこか雰囲気が違う中、銀色のテーブルがあり、そこには、日頃、先ず飲まない缶ビールとつまみが置いてあった。
私は、そのテーブルの正面にあるテレビを何とはなしに見ていた。
時刻は、好きな深夜3時位で、どこか蒸し暑い夏に近い時期だった。
(なんか面白い番組ないかな)
携帯でテレビの番組表が掲載されているページを何とはなしに観ていると、どうもこの後、出しているチャンネルでは、映画が始まるという事が解ったので、そのまま観ることにした。
やがて定刻になり、番組が始まった。
どうも洋画の様で、何故か文字がはっきろと見えないが、多分、出演者やら何やらのキャストの名前が出ているんだろうと思った。やがて、ヨーロッパ系と見られる男性が現れた。どうやら、友人を家に招いてた様で、久しぶりの再会を2人は喜んでいた。
(なんか昔どっかで観たような感じだな)
そう思ったのは、テレビを見つめる自分ではなく、夢を見ている自分自身だった。まるで、夢の中に自分が出ているようで、とても変な感じがした。
やがて2人は、小さな部屋の中で、ワインを交わし昔話に花を咲かせ始めた。そして、
「こんな絵の具を手に入れたんだ」
主人公と思われる男優が、友人の前にヨーグルトが入っていそうなガラス瓶を3つ、2人が取り囲んでいるテーブルの上に出した。それは、薄い青と白、そして清楚で静かな光沢のある銀色の絵の具と思われる液体が入っていた。
「ほう、鮮やかな色だね」
友人が、しげしげと瓶を見つめる。
「だが、見てくれ」
そう主人公が言うと、絵筆を薄い青の絵の具が入った瓶の中に入れて、近くにあった紙に塗ってみるが、色が出なかった。
「不思議だろ、どうやっても色が見えないんだ。ちなみに見て解るように、この瓶は透明なんだ」
主人公は、薄い青の液体が入った瓶を別の透明の容器に流し入れ、もと入っていた瓶が透けた瓶である事を友人に確かめてみせた。
「ほう、これは珍しい。本当に色が残らないんだね」
ここで、2人が出る映画のシーンは終わった。
次に出てきたのは、何故か顔の見えない18歳から20歳位に見える、日本人とおぼしき男性が出てきた。そこには十字枠を白く塗られた4枚のガラスで出来た小窓がある、その向こうには海が見えた。部屋の壁は茶色系で暖炉がある。そして木製のテーブルが出てきて、そこにはさっきの映画に出てきた3つの絵の具が入った瓶があり、男性がそれを眺めているシーンだった。
「これで、描けるものって、なんだろうな・・・あれならいけそうか?」
男性がつぶやくと、そこでそのシーンが終わった。
第3のシーンでは再び、映画に戻った。
だが、そこにはさっきの絵の具は既になく、やはり顔が見えないが部屋の中の様で、窓が開き、夜空が見え、パイプを口にした1人の男性が居て、もう1人別の男性がそこには居た。やがて、パイプをくわえた男性が
「こんな話を聞いてくれ」
と言って、パイプを口から外すと、ふーと長く息を吐いて、話を始めた。
すると、両脇を草原に囲まれた場所にシーンが移り、目の前には、白い建物が見えた。何の建物かは解らないが、テレビアニメなんかで出てくる宮殿風だった。草原の中を歩くシーンが続く。不思議な事に、音声聴こえなかった。やがて字幕が現れた。どうやら朗読調にそれは続いている様だった。
――キャンバスに絵を描く1人の青年に、ある時、出会った。
「何を描いているんだい?」
そういって、キャンバスを覗いてみると、そこには何も描かれていなかった。
不思議に思って、青年が手にしているパレットと筆を見ると、水気はおびはしても、やはり色はなかった。 そしてキャンバスの近くにおいてある小さな台には、鮮やかな薄青が入った瓶と白が入った瓶そして静かに輝く様に光る銀色が入った瓶がおいてあった。
「空を描いているんですよ」
すまし顔で青年は、キャンバスの上で、筆を動かし続けた。だが、やはりそこには何も見えない。
「何も描かれていなんだけれど」
「そうなんです。色なんて本当は無いんですよ。光の反射でそう見えるだけで」
少し表情を緩めて、青年はそう言った。
「その絵の具、不思議ですよね。色があるのに色が出ないんですよ、ほら」
得心の行っていない私を気遣ってか、青年は、筆を薄青が入った瓶にすくう様にして見せたが、やはり色は無かった。
「信じられない」
「形ある全ての物が、掴める訳じゃないって事みたいですね。ちなみに、この白も銀も色はあっても、この青同様に、何も色はつきません。虚構の絵の具です」
私は、各色が入った瓶とキャンバス、そして空を見上げてみて、どことなく青年が言わんとする意味が解った気がした。
「形があって無いものを形にしたい。それで、この虚構の絵の具を手に入れたんです。私の目には映りませんが、きっと描けている筈です。この青々とした空が」
まだ、描き上がっていませんけれど・・・と青年は口にし、再び手を動かし始めた――
そこで夢はぷっつりと切れ、話が終わった。
「この空は、描けないか・・・」
私は、晴れ渡った空を見上げてそうつぶやいた。
(あの雲も、太陽も・・・か。言われればそうかもな)
原色と同じ物を出すのは、難しいと言われる。幾ら近づけ様としても、やはり、その場の微妙な雰囲気までは出せない。だからこそ美しいんだろうか?私は今の段階では、その答えは出せそうになかった。
(もし、空を掴む事が出来ても、あの色までは手に出来ないって事か)
そう考えると、こんなにも近くに見える空が、遠い遠い所にある様に見えた。
(自分の目に映らないものを描くったって、難しそうだよな)
あの白いキャンバスには、本当に何も描かれていなかった。青年は、ただひたすらに筆を動かし、何も形にならない物を形にしようとしていた。しかも、出来上がる事のない絵を。かく言う青年には、案外、見えていたりしたんだろうか?あのまっさらなキャンバスにしっかりと色が。
あまりに印象的な夢だったので、私は、それから数日経った日に、友人にこの事を話してみた。
「なるほど。そいつは面白い夢だね」
なかなか無いんじゃないか?と友人は言う。
「海もそうだけど、青系の色してるてても、波打ち際行くと単なる透明だし、飛行機で上空からダイブする番組みても、青くないもんな」
そう言われれば、そうか、と私は思う。
「けどまぁ、‘‘虚構の絵の具,,なんて、随分硬い表現だよな。まぁその方が映画らしいっちゃそうかもしれないけど、なんか小説が夢で画像化されたような感じだな」
「うん。確かに」
「虚構・・・青い鳥と同じで、掴んでみると青くなかった、のノリで、見かけは青だったり白だったり銀色だったりしても、手にしてみると違う。俺らはそんな空の下で生きてるのかもな」
存在しているものが全て、本当の物である訳ではないって事なんだろうが、友人のその言葉を私は、あまり認めたくは無かった。だが物語は時としてそんな事を形にする面があることは否めない。だからこそ面白い。
「お前、なんか夢でもあるの?」
不意に友人が、訊いて来た。
「夢?」
「空って、ほら、大きいじゃん。それに、まっさらなキャンバスが、さっきの話で出てきたろ。しかも、描いている描けていない。ってことは、お前自身のどっかに、そういう・・・なんて言うのかな、絶対無理って解ってても、叶って欲しいなって言う何かがあるんじゃないかな、って思うんだ」
どうよ、と友人に言われたが、私は首を横に振った。そんなものはない。そもそも、夢なんて、いつからか、どうせ叶う訳も無い、と言って逃げてきた私である。それに、これという「理想」すらも特に無く、今のままで居られればいい、という保守的な姿勢しかなかった。そんな自分と夢は、どう考えても無縁だった。
「推測になるけど、3つの色の絵の具は、きっとお前の中に、ちらっと陰を見せる何かだろう。それを形にしたいって言う思いがあるって事だろうな」
「おいおい何か、いつかのロープレゲームに出てきそうな台詞だな、それ」
「あっ、バレた?でもさ、そんなもんじゃないの?詳しいことは解らないけどさ。でも、凄い良い話だったよ」
友人は、満足そうに笑顔を浮かべていたので、私は少しほっとした。
「いつかさ、今はないかもしれないけど、その3つの‘‘虚構の絵の具,,でさ、描いてみろよ。お前が描きたい未来をさ」
「だから、何でロープレの台詞になるんだよ」
「話はパクってなんぼよ」
と言って、友人は笑った。
それ以降、その話の続きの夢を見る事は無かった。
しかし、澄み切って晴れ渡る空を見ると時折、こっそりと思い出していた。
「この色は出ないんだよな」
胸の中でつぶやきながら。そして、
「出せたらどんなにきれいなんだろう」
とも、つぶやきながら・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/57/dc/24f6810e86365a7c084c4adee808c94d_s.jpg)
<あとがき>
小春日和といっても寒い晴れた日に、見上げた空がとても綺麗だった。この空の色を、瓶か何かに詰めてたら、良いなぁ・・・と絵なんか下手糞で描く気すらないにもかかわらずそんな事を思った。そして、更新の為に記事を書いた日も快晴で、空の青がきれいだった。
タイトルよりも、文章が先に出てきてこの話は息をし始めた訳だが、形して果たしてよかったのだろうか?と迷ってみたりもする。主人公が、「私」って、いつか読んだある小説のパクリそのもので、何をしてるんだ自分・・・と言う話である。
青という色が好きな事や、空の薄青だけを写した画像を貼り付けて、こんなだった・・・みたいな話を書いたり、「綺麗でいい」とか思ったりしてはいたが、物語にしようなんて言う気持ちは、まったく無く、いきなり文書がボロっと出てきて、焦ったと言えば焦った。
おりしも季節は春に向かっていて、これから先は、雨が多くなりそうな気配がある。そうなると、澄み切った青い空は、お預け、という事になる。
空、と言うと、私は以前紹介した、アニメ『ロミオの青い空』を連想してしまうが、そんなドラマチックな日常がある筈も無く、また、あまりにも晴れた空が当たり前過ぎて、いつしか、そんな話を忘れてしまう始末である。
広く大きな形のならない想いが強いと、空の夢って見るのか、私はまったくもって解りはしないが、適当に、そう思ったので書いた次第。
夢、というと、私は昨年2008年は、「既視感」に何度か出会った。それは、この場所来た夢を見た、という事と、こんなシーンに遭遇したな、という2つの印象が強い。一方で、今年2009年に入って、見た夢の話を書いたりしていて、割と身近に関係するの寝ている時に見る夢。実際の世界で、未来をこうしたい、という夢と眠っている時に見るそれは、違うと言われた事もあるが、私は眠っている時に見る、幸せだったり、良い想いが出来たりする夢を見るのは大好きで、実際の社会の中で、未来にかくありたい、という夢は残念ながら、今は描けて居ない駄目駄目人間だったりする。
明日の空は、今日の空は一体何色の顔を見せるのだろうか?そしてそれぞれの未来の色は一体どんな色をしているんだろうか?自分にしか描けない空を自分しか見えない絵の具で、まっさらなキャンバスに描いてるうちに、何かを掴めたら理想的な気がする。