![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/2f/92c079bb9f022db1e1dbff164404d3a2.jpg)
『君はこの国を好きか』にしても『ほんとうの夏』にしても、一見すれば幸せそうで何の不自由もない主人公だが、その胸の奥や物語の進行の中で見せると言うか現れる姿には、苦いものや不幸を見せ、マジで?と思えるのと同時に単なるハッピーな展開でなくなるシーンに思わず読む姿勢を正される様なものがあり、この記事でも書いたが口をへの字に曲げてしまうものがあった。それはある意味では、「世の中そんな思うように全てはうまく行かない」と現実を語っているように思えた。
2作品とも、まるで昨今放映されている深夜アニメ『実は私は』のタイトルの様に、カミングアウトが出てくる――主人公の出生に関するカミングアウトがある。外国系日本人である、と言う事にそれはなるのだが、カミングアウトしたりされたりでの反応は様々であろうが、その外国がアジア圏なので見た目にはわからないものがある所がこれらの作品のキーになる。私も日系南米国出身の2世とその親族の3世にあったことはあるが、2世は1世が両方とも日本人だったので言葉を発するまでは、日系南米国産出身である事は解らない。3世は、2世と欧州国人との間に生まれたので、見た目でああ、と解ったが、現代はインターナショナルなので、国籍が違うとかハーフだクオーターだとかはある意味当たり前と思わないとダメかと私は勝手に思う。しかし、見た目で判断がつかず、カミングアウトとしないと解らない――というのだと、カミングアウトした相手のハンノウが気になって言い出せない、バレたくないと言う気持ちはよく解ったし、純然たる日本人ではないことへの自身への抵抗に、たとえ国籍とされている国に行っても戻っても生まれ育ちが日本では流石に、何らかのショックには耐えきれないものがあるのも何となく解った。
『君はこの国を好きか』と言うタイトルでは、「あなたは日本が好きか?」と言う問いか?と最初は思ったが中味を読んでみて、そうじゃない、と言う事に気付く。自分の本当の国籍の国を、自分がそこで生まれ育ち長くいた国ではない国の事を好きか?と言うのがこの作品でのキーになる。その作品の主人公達は、その自分達が籍をおかれている国を好きになれないうえに、生まれ育った国からも籍をおかれている国からもどこかで受け入れられなかったり、理解されなかったりがある事は相当な圧力がかかるのは言うまでもなく、そこに苦しむ心の傷ばかりに私は目が行ってしまった。しかし、それでも日々を生きていこうとする姿は凄いなと思う。そんな作品であった。