読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

<独占 ガン闘病告白>残実録・晩秋‐我もまた死刑囚 団鬼六 小説新潮12月号

2010-12-15 18:16:14 | 読んだ
団鬼六は好きな作家である。
といっても、SM小説はあまり読まない。
将棋の小池重明とか責絵師の伊藤晴雨の伝記などがよい。
またエッセイも面白かった。
ちなみに「花と蛇」は全10巻中4巻で挫折してしまった。

さて、その団鬼六が食道ガンになった。
その闘病記をときどき小説新潮に発表している。

今回は、ガンの宣告をされて「死刑囚」になったような気持ちということから、世界の死刑制度を考え、そして「公開処刑」ということに思いをはせる。

SM小説家としての観点から公開処刑を考えると、ちょっとどことなくエロチックである。
公開処刑というのは死刑を一般大衆に公開することで、それは世界のいたるところで行われており、そしてそれは多くの人が見に行ったのである、というか娯楽になっていたという。

人が殺されるところを観たい、という気持ちは今では信じられないことのようだが、人の心の奥底にはそれを望んでいるものがあるらしい。それは人が持っているエロチックな部分から来るものではないだろうか。

さて、団鬼六はそんなことを考えながらある人物に思いをはせる。
それは「豊臣秀次」である。
豊臣秀次は殺生関白として秀吉の跡継ぎから一転して切腹させられ、さらにその妻(正室・側室)子供39名が公開処刑された。

団鬼六の故郷は彦根、豊臣秀次が統治した近江八幡の隣で、若いときから秀次に興味を持っていたとのこと。
そしていつか秀次のことを小説にしたかったとのこと。

だから、団鬼六は熱く秀次を語る。
ちょっと軽い気持ちで読みはじめたのだが、徐々に重く熱くなるので、思わず居住まいを正して読んだのだ。

団鬼六が語る秀次は、決して殺生関白などではなく、運命に翻弄された憐れな男だった。
殺された或いは滅びた者は、勝った者や生き残った者に悪者にされるのである。

それにしても、39名の処刑のありさまを語る団鬼六の筆は素晴らしい。
ガンを克服して、短編でいいから秀次のことを書いてほしい。

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