この物語が文芸春秋に連載が開始されたとき、大いに迷ったのである。
で、三国志といえば気が遠くなるような物語であることと、月刊連載を読み続けるためには相当のエネルギーが必要、更に登場人物たちを頭の中にいれるのも大変、と思ったので読むのをやめた、という経緯がある。
でも、宮城谷昌光の書いたものだしなあ・・・と未練があった。
私が夢中になって読んだ三国志は、柴田錬三郎のいわゆる「シバレン三国志」の『英雄ここにあり』と『英雄生きるべきか死すべきか』である。週刊小説に連載されていた。
『講談調』というか非常にリズムのある文体でワクワクドキドキの物語であった。
また小さい時にも三国志を読んだことがあった。
で、いずれも冒頭の場面は「桃園の誓い」、劉備、関羽、張飛が義兄弟の誓いを立てるところである。
しかし、本書は違う。
「四知」
ということから始まる。
この言葉を残した、楊震という人物が物語の序盤の主人公である。
と思いきや、三国志の主人公の一人である曹操の祖父にあたる曹騰が登場する。
本書のあとがきで著者がいうように、三国志はこの時代から知らねばならないのかもしれない。
後漢創設から、この王朝の危うさがあり、幼い皇帝が擁立されてもなんだかんだと続いたのは、儒教を学んだ官吏と、皇太后、外戚、そして宦官が、割と優秀だったからと思う。
物語は編年調ではなく、時代が行きつ戻りつするので、戸惑うところが多いのだが、学ぶところも多い。
さすが、宮城谷昌光!である
さて「四知」である。
楊震が、出世をした時に旧来の知人に出会った。知人は楊震にいわゆる賄賂を贈った。
楊震は「明経博覧」「関西の孔子」と呼ばれた人物である。
賄賂など受け取るはずがない。
そこで相手は「二人きりで、暮夜ゆえに大丈夫だ」と言った。
楊震は
「天知る。地知る。我知る。子(なんじ)知る。たれも知らないとどうして謂えるのか」
と言った。
時代がどうあれ、高潔に生きるということは難しい。それはいわゆる「やせ我慢」にも見える生き方である。
三国志、これからやせ我慢をする人が英雄と呼ばれるのかもしれない。
というわけで、これから長い三国志の時代につきあうことになった。禁断の書に足を踏み入れてしまったのだ。
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で、三国志といえば気が遠くなるような物語であることと、月刊連載を読み続けるためには相当のエネルギーが必要、更に登場人物たちを頭の中にいれるのも大変、と思ったので読むのをやめた、という経緯がある。
でも、宮城谷昌光の書いたものだしなあ・・・と未練があった。
私が夢中になって読んだ三国志は、柴田錬三郎のいわゆる「シバレン三国志」の『英雄ここにあり』と『英雄生きるべきか死すべきか』である。週刊小説に連載されていた。
『講談調』というか非常にリズムのある文体でワクワクドキドキの物語であった。
また小さい時にも三国志を読んだことがあった。
で、いずれも冒頭の場面は「桃園の誓い」、劉備、関羽、張飛が義兄弟の誓いを立てるところである。
しかし、本書は違う。
「四知」
ということから始まる。
この言葉を残した、楊震という人物が物語の序盤の主人公である。
と思いきや、三国志の主人公の一人である曹操の祖父にあたる曹騰が登場する。
本書のあとがきで著者がいうように、三国志はこの時代から知らねばならないのかもしれない。
後漢創設から、この王朝の危うさがあり、幼い皇帝が擁立されてもなんだかんだと続いたのは、儒教を学んだ官吏と、皇太后、外戚、そして宦官が、割と優秀だったからと思う。
物語は編年調ではなく、時代が行きつ戻りつするので、戸惑うところが多いのだが、学ぶところも多い。
さすが、宮城谷昌光!である
さて「四知」である。
楊震が、出世をした時に旧来の知人に出会った。知人は楊震にいわゆる賄賂を贈った。
楊震は「明経博覧」「関西の孔子」と呼ばれた人物である。
賄賂など受け取るはずがない。
そこで相手は「二人きりで、暮夜ゆえに大丈夫だ」と言った。
楊震は
「天知る。地知る。我知る。子(なんじ)知る。たれも知らないとどうして謂えるのか」
と言った。
時代がどうあれ、高潔に生きるということは難しい。それはいわゆる「やせ我慢」にも見える生き方である。
三国志、これからやせ我慢をする人が英雄と呼ばれるのかもしれない。
というわけで、これから長い三国志の時代につきあうことになった。禁断の書に足を踏み入れてしまったのだ。
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