読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

いちえふ -福島第1原子力発電所労働記- 竜田一人 週刊モーニング2015.2.5

2015-01-24 18:29:25 | 読んだ
連載再開とのことである。

この漫画は作者が実際に福島第1原子力発電所に行き労働したことで、見たり聞いたり感じたりしたことを描いているもので、「原子力発電反対!」といった信念というかイデオロギーで行動したことを書いているものではない。

この漫画を見ると、原子力発電がどうのこうのというより、今回の事故の後始末にあたっている労働者たちの現実の目の前の出来事なので、労働者たちを派遣する会社が「安全」より「金」が優先していることや、労働者たちも使命感というよりは「生きる=金」が優先していることがわかり、人間ってやっぱり「強い」ことが感じられる。

今回の再開の最初に描かれているのが、近頃1Fに女性が増えたということ。

さらに、常磐自動車道が開通したこと、国道6号線が通行可能になったことで、作者は復興の速度は早いと感じている。
これも、一般マスコミが遅い復興といっていることとは違った感想である。

ちなみに、私も海岸のほうに行く機会があるが、時々見ることもあるだろうが、復興の速度は早いと感じている。
被災直後の状況から見れば、ものすごく時間がかかるだろう、と思っていた。

いわき側に住む作者は、国道6号線の開通にともなって南相馬へドライブし、南相馬の「凍天(しみてん)」を食べる。

その帰途に見聞きしたことを表現しているのだが、これはやはり悲惨な光景であった。
その描き方が、ちょっと離れたというか覚めた視点であるため、なおさら胸に染みる。
このあたり、異様ともいえる思い入れで描かれている「美味しんぼ」とは違う。

車で走っていて「高線量区間」に入ると、車からは降りてはならないとか窓を開けてはならない、ということから作者はこんなことを言っている。

作業現場は、この区間より3桁以上高い線量である。
あるいは、2年前は窓を開けて走っていたが、その時に乗っていた人たちは、一度も内部被曝検査に引っかからなかったし、車からも汚染が出たこともなかった。

だから

『2年までこうだったのだから、さらに汚染や道路補修の進んだ今、汚染拡大の心配は杞憂だと、俺は思いますよ。あくまでも個人の感想ですが』

んー、そんなに気楽でいいのか?
と思うのだが・・・

だったら、自分でその場所に行って自分で働い見ればいい、という反論がありそうだ。
やっぱり現場でみて聞いて実感している人の感想は強いと思う。

辺りから見てアレコレいうのは勝手だが、そこに住んでいる人や働いている人の事情も、考えるべきではないだろうか?

作者は、楢葉町で「分譲中」というのぼり旗を見て「不屈の闘志」を感じ、休耕田一面に咲くコスモスを見て、この水田に満面の稲穂が揺れる口径を願う。

そして、あの山口百恵のコスモスの歌

♪苦労はしても 笑い話に時が変えるよ 心配いらない・・・と♪

そうなってくれよと、こちらも願いを込めて読み終わり、胸が熱くなったのである。


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