放送大学で、学んでいます

大学を出ているので、編入で全科生になりました。心理学を中心に学びまして、今は、再入学により、再び学びを始めました。

中井久夫監修・解説「統合失調症をたどる」ラグーナ出版、2015年、その2

2016年03月13日 | 読書日記

役に立つ本は、残念ながら、すべてのひとに有益ではない。

たとえば、神田橋條治「改訂 精神科養生のコツ」岩崎学術出版社、2009年では、初版本からみると、かなり変更されたが、「もしこの本があなたに合わなかったらコツを試さないでください」というような主旨のまえがきが書かれているように、どのような書物であっても、誰にでも有益であるとは限らない。

全くないことはなかったが、神田橋先生の書物以外で、かなり実用になるものは、それほどなかった。

そういう意味でも、本書は、胃腸の調子がよくないときに、安中散なのか、半夏瀉心湯なのか、黄連湯なのかを選択する際に役立つ漢方の実用書に似ている。


こころ、あるいは、脳に関係する病気も、また、胃腸の調子が悪くなるのに、たとえば、食べ過ぎたとか、ストレスがかかりすぎたとかいった原因があるように、そのような何かの経験なり、環境があったりするようだ。


神田橋先生流に言えば、具体的な工夫の積み重ねも役立つということになろうか。


続刊を待ちたい。 


中井久夫監修・解説「統合失調症をたどる」ラグーナ出版、2015年

2016年03月13日 | 読書日記

私が、「中井久夫」という名前を初めて聞いたのは、朝日カルチャーセンター(大阪)の山中康裕先生の講座であった。

ちょうど、「中井久夫著作集」が刊行中でもあった。

幸か不幸か、中井久夫先生には、写真を除くと、テレビでもラジオでも目にも耳にもしたこともないので、

著作物を通したイメージがあるのみだ。

「著作集」に収載された論文の多くは、ちくま学芸文庫になっているので、入手しやすくなった。

中井久夫監修・解説「統合失調症をたどる」ラグーナ出版、2015年は、それらの中井久夫の著作物を患者さんも交えて読み解いていく

書物である。

統合失調症の有病率は、100人に1人ぐらいと言われてきているので、人生に於いて、統合失調症の患者さんと全く関わらないひとも

それほどないのだと思われるが、病気を発症しているときに会えるのは、家族と医療者ぐらいかもしれない。

医学の進歩により、初期に治療が開始されるようになり、てんかんの大発作を目撃するひとが少なくなったので、

多様なてんかん発作があることも知られなくなった。

クレッチマーの類型論が流行っていた頃には、三大精神病として、上記二つと、躁鬱病が精神の病とされていたように思う。

木村敏は、「うつ病は対象として関心を惹かない」というような趣旨のことをいずれかの書物で吐露していたが、

現代の病である「うつ病」は、日本の文化に親和的なので、社会との関わりという点で、きわめて困難なことは少ないかもしれない。

 

社会というか、ひととの関わりというか、そういうようなことに問題を抱えているとするなら、「統合失調症」に関する書物の方が

役に立つ。

 

この書物は、より実践的な内容なので、処世術としても読めるだろう。