南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

三宅式記銘検査

2006年03月16日 | 高次脳機能障害の検査方法
 三宅式記銘検査とは、記憶の検査方法です。
 2つずつ対にした言葉を呼んできかせ、それを被検者に復唱させます。10対が終わったら、対語の一方を検査者が言い、被検者に他方を言わせます。これを3回反復します。
 1つできたら1点で10対全部できれば10点(満点)です。
対になっている言葉には、関係があって類推できるもの(有関係対語とか有関連対語といいます)と、そうでないもの(無関係対語とか無関連性対語といいます)があります。
 対語表の例として、精神医学の教科書に載っていたものをあげておきます。(標準精神医学第2版)

有関係対語では
人‐猿
田舎‐たんぼ
親切‐情
医者‐病人
手‐足
池‐河
軍人‐戦争
馬車‐自動車
勉強‐試験
狐‐いなり
です。それぞれ関係のある言葉が対になっていることがわかります。

無関係対語は
谷‐鏡
酒‐村
下駄‐坊主
忠義‐椅子
仕事‐冬
蛙‐巡査
柳‐電話
娘‐石炭
行列‐空気
書生‐袋
です。それぞれの対には関係がありませんので、この方が有関係対語のときよりも、覚えにくくなります。

 この検査は、きちんとした標準化はなされていないようですが、有関係対語で1回目8,5点、2回目9,8点、3回目10点、無関係対語で1回目4,5点、2回目7,6点、3回目8,5点と記載されているものがありました。(吉本智信:高次脳機能障害と損害賠償)
三宅式記銘検査は、別名「脳研式記銘検査」又は「東大脳研式記銘検査」と呼ばれています。いずれも同じ検査方法を指しています。

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WAIS-R(ウエクスラー式知能検査) 下

2006年03月15日 | 高次脳機能障害の検査方法
これらの検査を行って、点数をつけ、さらにIQを算出する仕組みです。
言語性IQをVIQ(Vは”verbal”の略)
動作性IQをPIQ(Pは”performance”の略)
といい、総合IQをFIQ(Fは”full”の略)といいます。

精神医学の教科書によると、
IQ100 が中心となる値
IQ85以上あれば 正常値
IQ71~84 境界知能
IQ50~55からおよそ70 軽度知的障害
IQ35~40から50~55 中等度知的障害
IQ20~25から35~40 重度知的障害
IQ20~25以下 最重度知的障害
となっていますので、これを参考にIQ値をみるとよいのではないでしょうか。

もっとも、IQで高次脳機能障害の全てを表すことができるわけではありませんから、その点は注意して下さい。

WAIS-R検査は、知能テストであり、言語機能や記憶機能、遂行機能等はまた別の検査を行わないと明らかにならないからです。


コメント (4)
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WAIS-R(ウエクスラー式知能検査) 上

2006年03月13日 | 高次脳機能障害の検査方法
WAIS-Rとは、知能検査の一種です。
「ウエイス・アール」と呼ばれています。
”ウエクスラー式知能検査”のことで、
WAIS-Rは、Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised の略語です。
“ウエクスラーさんが作った成人用知能スケール(改訂版)” という意味になります。

ウエクスラーさんが作ったのは、1939年というから大分前に作られた検査ですが、日本版のWAISは1958年に最初のものが作られ、1990年に改訂版が作られて、現在に至っています。
知能の標準検査としての信頼度が高いのですが、長谷川式検査やミニメンタルステートといった簡易検査が5~10分でできるのに、WAIS-Rは2時間近くかかるといわれており、検査に時間をとられます。
大きく分けて、言語IQの検査と動作IQの検査があり、
言語IQの検査の中には、知識、数唱、単語、算数、理解、類似の各検査があります。
動作IQの検査には、絵画完成、絵画配列、積木模様、組合せ、符号の各検査があります。



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ミニメンタルステート

2006年03月11日 | 高次脳機能障害の検査方法
 ミニメンタルステートとは、長谷川式検査と同様、痴呆のスクリーニングのための、簡易な検査方法です。
 長谷川式は全部で9項目でしたが、ミニメンタルステートは全部で11項目あります。長谷川式検査と似たような質問もあります。
 第1問は、今年は何年ですか。今の季節は何ですか。今日は何曜日ですか。今日は何月何日ですか。
 第2問は、ここは何県ですか。ここは何市ですか。ここは何病院ですか。ここは何階ですか。ここは何地方ですか。
と続いていきます。
 詳細をお知りになりたい方は、こちら(めるくマニュアルのHP)をどうぞ。

 最高得点は30点です。痴呆の疑いのあるのは、不思議なことに、ある教科書(標準精神医学)では、24点以下となっていましたが、別の教科書(標準脳神経外科学)では23点以下となっており、たった1点だけなのですが違っています。
こういう細かいところで違いのある記載に出くわすと、一般人としては、ひどく戸惑ってしまいます。
 どちらが正しいのでしょう?
 記載の違いといえば、正式名称もこの2つの教科書では異なっており、かたや
  ミニメンタルステート(mini-mental state , MMS)なのですが(標準脳神経外科学)、かたや
  Mini-Mental State Examination (MMSE)
と”Examination”がついておりました。(標準精神医学)

 おそらく、これらの差は微妙なものであって、特に意味のないところなのだと思いますが、素人がはじめてその言葉にふれるときは、違いがあるのかないのか、すぐにわからないのが悲しいところです。

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長谷川式検査 下

2006年03月09日 | 高次脳機能障害の検査方法
 長谷川式検査はあくまで簡単な検査ですから、20点以下になっても、痴呆の「疑い」になります。診断を確定させるには、さらに正確性の高い検査(それだけに時間のかかる検査)が必要になってきます。

 医学用語は、やたらとアルファベットの略号で標記されることがあり、これまた一般人からはとっつきにくい印象を与えるのですが、この長谷川式も HDS-R という略号があります。
 正式には
Development of the revised version of Hasegawa’s Dementia Scale
(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)といいます。
  Dementia = 痴呆
ですから、
  HDS = 長谷川さんの痴呆スケール
という意味になります。
「-R」 がついていると、大抵 revised (改訂版)
の意味ですから、当初のバージョンから、改訂されたことを意味します。
ということで、HDS-Rは長谷川さんの痴呆スケール(改訂版)という意味になります。
 
 長谷川式の全質問項目をご覧になりたい方は、こちらのサイトに載っていましたので、ご参照ください。




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長谷川式検査 上

2006年03月07日 | 高次脳機能障害の検査方法
 高次脳機能障害者のケースを取り扱ってきますと、色々な検査方法に出くわします。
 医療関係の方にとっては、あたり前のことでも医療の素人にとっては、チンプンカンプンな言葉というものがあります。
 比較的よく出てくる用語や、検査方法について自分なりにまとめてみました。

 長谷川式検査とは、痴呆か痴呆でないのか、を簡単に検査するためのものです。改定長谷川式知能評価スケールともいいます。
「痴呆」というと、徘徊する人を、頭に思い浮かべてしまいがちですが、医学的には、
  痴呆=記憶と判断能力の障害
をいいますので、徘徊する人だけが痴呆なのではありません。
 また「痴呆」というと、もう治らないというイメージがありますが、医学的にはそういうものではなく、治療可能な痴呆もあるとされています。

 長谷川式検査は、痴呆か否かを「簡単に」検査するものです。
「簡単に」というのは、短時間で終わるということです。多分5~10分程度でできるのではないでしょうか。
簡単な検査であるだけに、正確性は多少犠牲になります。こういう検査を「スクリーニング検査」というようです。
 大雑把に、患者さんが痴呆か痴呆でないか、スクリーニングするということです。

 長谷川式は大きくわけて、9つの項目の質問から成り立っています。
 例えば
第1問 お歳はいくつですか?
第2問 今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか?
第3問 私たちが、いまいるところはどこですか?
というような感じです。(第4問以降はもうちょっと難しくなりますが。)
このような9つの質問をして、満点が30点です。そして、20点以下だと「痴呆の疑いあり」とされます。
 このように、どこかの点を基準にするわけですが、こういう基準点を「カットオフポイント」といいます。
 医学の教科書ですと
カットオフポイント:20/21
というような書き方になっています。
 これで先ほど説明したように、20点以下が痴呆の疑いありという意味になるようです。



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女性の顔面醜状と逸失利益 下

2006年03月05日 | 未分類
 最近見た裁判例の中で、逸失利益を否定したものには、こんなものがありました。
 被害者は、3年前まではモデル、レースクイーンしていましたが、事故当時は派遣社員などをしていました。
 事故に遭い、顔面醜状7級の後遺障害が残りましたので、逸失利益を請求しましたが、裁判所は認めませんでした(京都地裁 H17.9.22 自保ジャーナル1626号10頁)。
 被害者は後遺障害が残ったので、引きこもりがちになり、仕事が出来なくなり、家事手伝いのみをしていたのですが、裁判所は「それは精神的に大きな衝撃を受けているのであって、顔面醜状自体の影響で仕事が出来なくなっているのではない。」と判断し、逸失利益を認めませんでした。

 もっとも、このように逸失利益を否定した裁判例があるかと思えば、自保ジャーナルの同じ号では、
  20%の労働能力喪失を20年間に限り認めた裁判例
も載っていますし、裁判所に対する立証の問題もあるのかもしれません。

 なお、更に深く勉強したい方は、2001年版赤い本306頁の論文も参照されたらよいと思います。



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女性の顔面醜状と逸失利益 上

2006年03月03日 | 未分類
 交通事故にあって、頭部、顔面部、頚部といった外貌に、醜状が残ることがあります。
 これを「外貌醜状」(がいぼうしゅうじょう)といいます。
 
 このような外貎醜状は、自賠責の後遺障害等級として認定されますが、男性と女性で等級が違います。
 男性の場合は、
「外貎に醜状が残る」→14級
「外貎に著しい醜状が残る」→12級
ですが、
 女性の場合は
「外貎に醜状が残る」→12級
「外貎に著しい醜状が残る」→7級
です。

 労働能力喪失率表にすると
12級=14%
 7級=56%
ですから、これだけでみると男性と女性の労働能力喪失率は42%も差がついてしまうことになります。

 ところが、裁判例では女性の顔面に醜状が残っても、56%の労働能力喪失を認めることは、ほぼありません。
 というよりも、労働能力喪失を認めない裁判例も結構あるのです。


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学生に休業補償? 下

2006年03月01日 | 未分類
 学生さんの場合は、学費という問題があります。
 これはどうなるでしょう?
 例えば、入院が長期化したために、学校を休学しなければならなくなりますが、その学費は支払ってもらえるでしょうか。
 自動車保険ジャーナル1626号には、京都地裁のこんな事例が載っていました。
 被害者は短大生
 H13.3.29に交通事故に遭い
 H13.4.1から1年間、学校を休学しました。
 この休学した1年分の学費が20万円だったので、加害者に20万円を請求しました。

 加害者側は、「H13.10には被害者は、剣道ができる程度にまでは回復していた。」と主張して、前期分の10万円だけなら認めるが、後期分は認めないと主張しました。
 裁判所は「事故当時の被害者の症状からすると、被害者が休学する必要性はあった。途中で学校に出られるまでに回復しても、半期休学したら卒業は一年遅れになってしまうのだから、1年分の休学に伴う学費は請求できる。」と判断しました(神戸地裁H17.4.17 自保ジャーナル1626号6頁)。
 このように学生さんが、被害者となった場合は、社会人の場合とは違った問題が出て来ますので、注意が必要です。



コメント (3)
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