工作台の休日

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C62-2号機が入線しました

2021年05月03日 | 鉄道・鉄道模型
 黎明期のジェット機の話などをしておりましたので後回しにしておりましたが、先日発売されたKATOのC62-2東海道型が3月末に我が家にやってきました。
 C62は戦後登場した幹線の旅客列車向けに製造された蒸気機関車でした。機関車というのは旅客列車用、貨物けん引用と用途を考えて開発、製造されており、これは電気機関車でも変わりませんが、C62の場合は貨物機のボイラーと旅客機の足回りを合わせたようなハイパワー・高速機でした。当時後は東海道で「つばめ」、「はと」などの特急列車をけん引したのを皮切りに、山陽(呉線)、常磐線、函館本線などで特急、急行列車けん引の任につきました。ご存じの方も多いと思いますので今更ですが、2号機にはデフレクタにつばめのマークを入れていることからとりわけ人気がありました。
 他の方が既に書かれていますが、KATOのC62は製品としては昭和40年代からありました。山陽路などで活躍していたタイプをモデル化していましたので、スハ44系客車の「つばめ」の先頭に立つには細部が異なっておりましたし、最後の活躍となった北海道型とも大きく異なっていました。昔は最大公約数的なところでモデラーは妥協していたわけですが、それに満足しない方もいるわけで、より実物に近づけたい、という向きは腕とお金に合わせて各社から発売のパーツなどを買ってきてリアルさを追求していくことになります。
 1990年代にマイクロエースが蒸気機関車を多数モデル化するようになり、その中にはこれまで高価な金属完成品しか無かったものや、線区・時代ごとの特定番号機として製造したものも含まれていました。出来も繊細な金属完成品というわけにはいかないものの、当時の「とれいん」誌のレビューにありましたが「SWATCHの腕時計を一本買う感覚でSLが手に入る気軽さ」に惹かれて購入されたモデラーも多いのではと思います。
 私自身、値段、クオリティというところでカトーの製品を物差しにして他社製品と比べておりましたが、C62などは「真打ち」の東海道型が出ないかなあと思っておりました。ようやく近年になり、カトーもC62をリニューアルしていきました。北海道型、東海道(名古屋機関区)、常磐線仕様など、線区、時代に合わせて製品化が続きました。従いましてつばめマークがデフについた2号機の、それも東海道型(宮原機関区)が発売されたというのは、昔のたばこのセールスコピーではありませんが「そのうち出ると思ってました」という気持ちだったのと、何十年も待ってやっと発売になって嬉しい、という気持ちが混ざったものとなりました。
 製品の写真です。


模型は「宮原の2号機」そのものであり、特徴的なライニングなども美しく再現されていますし「つばめ」マークもばっちりです。特に手を入れる必要もなく、我が家の「つばめ」の先頭に立てそうです。
以前のブログに書きましたが、C62の旧製品は父親が持っておりました。私もC62が欲しく、私が成人してからですが、ワールド工芸が東海道型を発売しており、購入したうえでさらにあれこれいじって2号機にしたのがこちらです。

黒一色じゃつまらないし、実感的じゃないからとばかり、タミヤカラーエナメルで煙室を艶消しの黒で塗ったり、逆に他の部分を艶ありにしたり、さらにはライニングなども入れて、製品のつばめマークは白いインレタで実感的じゃないからとレボリューションファクトリーのつばめマークを付けたりと、若気の至りというかやりたい放題ではありますがご笑覧ください。
 C62の東海道での運用ですが、そのころ東海道本線は浜松(のちに名古屋)まで電化が進み、下りを浜松、名古屋の機関区が、上りを宮原が受け持つという形をとっておりました。2号機は「つばめ」や「はと」といった看板列車の先頭に立ったほか、さらには以前ご紹介したスハ43系の臨時特急「さくら」けん引を務めたことがありました。
 名古屋機関区のC62です。こちらは前回生産分の製品です。

17号機は「リニア・鉄道館」の保存機としておなじみの速度記録保持機です。
2号機と並べてみました。細かな違いがお判りいただけますでしょうか。



 同じ時代、同じ線区でも蒸気機関車は1輌ごとに細かな違いがあり、そこが趣味の対象としての面白さでもあるのですが、それゆえに「〇号機はここがこうで・・・」となりかねません。外形だけでなく、性能や癖も1輌1輌違いがあり、機械とは言っても何とも人間的な乗り物だろうかと思います。

本稿と直接関連はありませんが、常磐線の「ゆうづる」けん引機はこちらです。

 KATOの最近の製品は手を入れる必要がないくらいですが、蒸気機関車は線区・時代によっても手入れの仕方が違っていたそうで、それが黒一色と思われる姿でも微妙な色つやなどに違いをもたらしていました。特急けん引機には余計な汚しを入れたりしない、というのは私自身のルールみたいなものですが、C62に限らずほかのSLについても、線区による違いなどを上手に再現できたらなと思っております。
 C62が好きということでちょっとマイナー好きのmarcoさんも意外に王道行っちゃうんですね、とか保存運転などもされているC57じゃないんですか、などと聞かれる向きもあるわけですが、かつての「つばめ」、「はと」は国鉄の看板列車で、そのけん引機に相応しい堂々とした風格があること、また近い将来訪れるであろう動力近代化を前に行きつくところまで行きついたSLの姿としても魅力があります(同時代のフランスの241Pという蒸気機関車も同じような印象を持ちますが)。常磐仕様を買ったのは上野口の列車が比較的我が家のコレクションに多いというのも理由として挙げられますし、20系客車も好きな形式ですからね。
 そう言いつつも私は北海道型は持っておりません。物心ついたときには北海道からC62はほとんど姿を消し、2号機は「梅小路で展示されている機関車」という認識で、原体験としてはほとんど知らないからです。そういう意味では「ニセコ」も「ゆうづる」も「つばめ」も私の経験していない歴史のひとこまなのです。そこが「ニセコ」を追いかけて青春時代を過ごされた方との世代の違いとなりましょう。
 また、宮原機関区のC62については2号機だけでなく特徴的な機関車がほかにもあります。お召列車とは無縁のC62でしたが、お召列車の「先導列車」として運転された「つばめ」の先頭に立った25号機など、お召機関車並みに飾り立てられ、こちらもKATOさんのクオリティなら、と製品化を期待してしまいます。
 いろいろ書き連ねてまいりましたが、C62は「つばめを動かす人々」や「ある機関助士」など鉄道の記録映画の名作にも出演の「名優」でもあります。現役として活躍していたころの雄姿が映像として残されているというのはモデラーにとってもありがたいものです。
 今回はしめくくりにこのような写真を。

プレスアイゼンバーンの形式シリーズなどの単行本は高価でなかなか手が出ませんが、実家を出て一人暮らしを始めた頃に買った記憶があります。隣は天賞堂製のつばめマークネクタイ。

つばめが巣を作るこの季節によくつけています。年々高温多湿になり、クールビズという風潮もあってネクタイ好きにはつらい季節ですが、せめてつばめが飛ぶさわやかな五月晴れのような気分でありたいものです。




 

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