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投信不信 迷うマネー 金融庁批判で「毎月分配」自粛 14年ぶり資金流出

2017年05月07日 | 金融
投信不信 迷うマネー 金融庁批判で「毎月分配」自粛
14年ぶり資金流出
2017/5/7 8:36 日経朝刊

 個人の代表的な資産運用商品である投資信託がパッタリと売れなくなった。2016年度は14年ぶりに解約と償還額が購入額を上回る資金流出を記録した。主因は圧倒的な人気を誇った「毎月分配型」の急ブレーキだ。長期で資産を形成する投信を増やしたい金融庁と売れる商品を提案できない金融機関のはざまで、行き場を失った個人マネーがさまよっている。



 「消費者の真の利益を顧みない生産者の論理が横行している。そんなビジネスを続ける社会的な価値があるのか」。先月、日本証券アナリスト協会が都内で開いた資産運用のセミナーで、金融庁の森信親長官は強い口調で投信業界への批判を展開した。多くの証券関係者が集まった会場は水を打ったように静まり返った。
 金融庁が目指すのは投信市場の正常化だ。長期で資産を増やす投信本来の役割を期待している。

 批判の矢面に立つのが運用益の一部を投資家に月々支払う毎月分配型の投信だ。森長官は「顧客本位ではない商品」と断じた。

■6000本乱立し選べず

 投信は株や債券などに投資して得られた利益を再び投資に回して資産を増やしていく。この「複利効果」は長期運用の最大の利点だ。利回り5%で運用した場合、資産を2倍に増やすのに単利なら20年かかるが複利なら15年だ。

 運用益を払い戻せば複利効果が得られにくくなる。しかも世界的な低金利で運用難に直面し、分配金に投資家が払い込んだ元本を充てるファンドは多い。分配金が全て元本の投信さえある。投資家が毎月得る分配金の一部は運用益ではなく自分たちが払ったお金だ。

 投信販売の現場には自粛ムードが広がる。「お上の方針には逆らえない」。ある証券会社の営業幹部は、昨年から毎月分配型の販売を控えていると打ち明ける。

 問題は毎月分配型が最大の売れ筋商品だったことにある。QUICK資産運用研究所の調べでは10年度は新規設定ファンドの購入額の37%を毎月分配型が占めた。16年度に2%まで減ると投信市場は失速した。公募投信(ETF、MRF、MMFを除く)の購入額は22.6兆円と前の年度より38%も減り0.8兆円が投信市場から流出した。行き場のない資金は証券会社や銀行の口座で眠っている。

 投信全体の販売額すら左右する毎月分配型。なぜこれほど個人に人気があるのか。

 神奈川県の40代の主婦は「分配金は精神安定剤。毎月ちゃんと出ていれば安心できる」という。京都市の60代の主婦も「投信は基準価額の変動が大きすぎて心配。元本割れしたとしても毎月分配型以外は買わない」と話す。個人は長期運用に不安を抱いている。

 アベノミクス相場に沸いた日本株だが今の日経平均株価は1万9000円台半ばだ。過去最高値圏にある米国株と異なりバブル期の最高値3万8915円に遠く及ばない。長期運用に自信が持てなければ投資の果実をこまめに現金化するのが合理的に映ってもおかしくない。毎月分配型はデフレ経済に慣れきった日本人の不安心理に見事に合致した商品だった。

 都内在住の20代の男性会社員は投資に興味を持ち様々な種類の投信を試していたが、ある日購入をやめた。「数が多すぎて選ぶのが面倒くさくなった」からだ。

 日本で売られている公募投信は今や約6000本に上る。10年前の2倍だ。上場企業は4000社弱なので投信は個別株の1.5倍の選択肢がある。フィンテック、AI(人工知能)、トランプ氏。投信業界は旬の投資テーマを探しては新商品を投入してきた。

■金融知識は必須に

 国内の大手運用会社は大半が金融グループに属する。販売を担う証券会社や銀行の声を無視できず売りやすい商品を優先してきた。三井住友アセットマネジメントの長尾誠取締役は「他の業界は消費者の嗜好に合わせようと必死で考えているのに」と自戒する。

 日本の投信といえども海外の株や債券、不動産投資信託(REIT)などに幅広く投資している。日本株への不信感があるなら海外資産の投信を選べばいいが、乱立する投信は複雑で分かりにくい金融商品の代表格になってしまった。欲しい商品を探すには一定の金融知識を得る努力が不可欠だ。

 米国ではバンガード・グループの長期運用に適した低コスト投信が400兆円を超える投資マネーを集める。個人の金融資産に投信が占める比率は米国が約11%、欧州が約9%なのに対し日本は5%だ。資産を増やすツールとして十分に機能しているとは言い難い。

 毎月分配型の販売自粛があぶり出したのは根深い投信不信だった。投信業界は新たなマネーの受け皿を見つけられていない。個人が手軽に資産形成に取り組める「正常な市場」はいつ実現するのだろうか。

(嶋田有、野村優子)

外為14時 円、114円台前半で小動き 新規の取引材料乏しく

2017年01月16日 | 金融
外為14時 円、114円台前半で小動き 新規の取引材料乏しく
2017/1/16 14:19 日経 為替概況

 16日午後の東京外国為替市場で円相場は1ドル=114円台前半の高値圏で小幅な動きとなっている。14時時点は1ドル=114円16~18銭と前週末17時時点に比べ53銭の円高・ドル安だった。新規の売買材料に乏しく、積極的な取引は手控えられている。「英ポンドを巡る欧州の市場参加者の反応を見極めたい」との空気もある。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

ビットコイン投資の落とし穴

2017年01月14日 | 金融
ロイターコラム:ビットコイン投資の落とし穴=村田雅志氏

ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨ストラテジスト


 1月13日、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト、村田雅志氏は、中国当局の規制リスクや、価格変動が短期間で大きくなりやすい性質を考えると、ビットコインを投資の1つとして捉えるのは合理的ではないと指摘。提供写真(2017年 ロイター)
[東京 13日] - 昨年12月以降、仮想通貨ビットコインの値動きが派手なものとなっている。昨年1月から5月まで400ドルちょうど近辺で取引されていたビットコインは12月下旬には800ドルを突破し、今年初めには1000ドル台に到達。1月5日には1160ドル台と過去最高値を更新した。

しかし、過去最高値を付けた同じ5日に、ビットコインは一時900ドル割れまで急落。翌6日には1000ドル台を回復する場面もあったが、12日には700ドル台半ばと昨年12月中旬以来の安値を記録し、本稿執筆時点の13日は800ドル台で上値の重い動きとなっている。ビットコインは年初の高値から30%以上も下落したことになる。

ビットコインとはインターネット上で流通する暗号化された電子通貨の名称だ。ビットコインは、ドルや円のように法的に定められたものでもなく、中央銀行や政府機関によって発行されるわけでもない。取引の正当性の確認は、マイニング(採掘)と呼ばれる計算作業を通じて行われ、同作業に協力した者(マイナー=採掘者)には一定量のビットコインが交付される。

ただ、最大発行量はプログラムにて2100万と決められており、既存の貨幣のように発行量が無制限ではない。発行主体がなく、発行量が有限という点で、金やプラチナといった貴金属に近いとの見方をする者もいる。

ビットコインの特徴の1つに、秘匿性の高さがある。ビットコインは、暗号化されたデジタル情報でしかなく、既存の貨幣のようにコインや紙幣といった物質(モノ)ではないため、物理的に発見されにくい。

また、ビットコインの保管や送受信に使われるソフトウェア(ウォレット)を利用する際には、本名などのプライバシー情報を開示する必要はなく、メールアドレスを登録するだけである。このため行政当局は個々人のビットコインの取引状況を把握することができず、取引を強制的に停止したり、課税することも難しいとされている。

<元建て資産の逃避先に>

ビットコインの値動きが大きくなった理由の1つとして、人民元の先安観を背景とした中国の外貨需要の高まりがある。

中国当局は昨年、約3200億ドルの外貨準備を使い元買い介入を続けたものの、年末の人民元は1ドル=6.9450元と、2008年6月以来の元安を記録。下落率は6.5%と、アジア通貨の中で最も大きかった。中国景気の減速、資本流出の継続、外貨準備の減少などを理由に人民元は今後も下落が続くとの見方が大勢で、1ドル=7元を突破するのは時間の問題とみられている。

中国人投資家の立場で考えれば、元安が今後も続くと見込まれるのであれば、元建ての保有資産を外貨建てに換えることが合理的となる。元建て資産を外貨建てにすれば、元安による資産価値の目減りを防ぐことができるだけでなく、元安進展による差益を得ることも可能となるからだ。

しかし中国当局は、さらなる資本流出を抑えるべく外貨買いの動きに対し規制を厳しくしている。例えば昨年11月から、500万ドル以上の海外送金、両替、海外企業買収については当局による事前審査が義務付けられた。

また、中国人観光客が海外での買い物で広く利用している銀聯カードは、昨年12月下旬より新規発行が停止された。今年からは、中国国民が人民元を外貨に両替する際に提出する申告書に、両替した外貨を外国での不動産購入、証券投資、生命保険・投資性還元保険類に使用してはならない旨が明記された。

こうした状況では、ビットコインは元建て資産の逃避先として非常に魅力的となる。上述したようにビットコインは秘匿性が高い。人民元でビットコインを購入すれば、中国当局によるさまざまな資本規制をくぐり抜ける形で元建て資産を外貨(ビットコイン)建てに換えることが可能となる。

<中国当局の規制リスク>

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ビットコインは過去にも資本規制をくぐり抜ける手段として注目され、価格が高騰したことがあった。タックスヘイブン(租税回避地)として世界各国から資本を呼び込んでいたキプロスは、2012年後半から大規模な資本流出に直面。同国政府は、2013年3月に銀行預金の引き出し制限などの規制を実施するとともに、銀行預金への課税を実施した。

当時、ビットコインは一部のマニアの間でしか知られていないものだったが、当局の資本規制をくぐり抜ける有力な手段であるとの見方から世界的に知名度が上昇。キプロス当局による資本規制・銀行課税が決まる前に13ドルにすぎなかったビットコインは急騰し、同年4月には200ドルを超えた。

仮に人民元の下落や中国の資本規制の強化が今後も続くとすれば、ビットコインの価格上昇が続くとの見方も、一見正しいように思えるかもしれない。しかし政府樹立以来、社会主義国として国民に対し、さまざまな規制や干渉を行ってきた中国当局が、ビットコインに対して手をこまぬき続けるとは考えにくい。

現に中国人民銀行(中央銀行)は11日、中国でビットコイン取引所を運営する主要3社に対し調査を始めたと発表。中国当局がビットコイン取引の取り締まりを強化するとの思惑が、ここ数日のビットコイン価格の急落につながったと考えられる。

キプロスの資本規制・銀行課税をきっかけに世界的に知られるようになったビットコインは、2013年末に1100ドル台まで上昇したが、2014年からは売りが先行し、同年末には300ドル台まで下落した。また、上述したように昨年初めは、400ドルちょうど近辺にすぎなかったが、今年初めには(一時的とはいえ)1160ドル台と過去最高値を更新するなど、ビットコインの値動きは非常に大きい。

そもそもビットコインの価格は、供給がマイニングを通じて緩やかにしか増加しないため、需要の変動に大きく左右される性質を持つ。資本規制などのイベントで需要が急激に増えれば、価格は高騰しやすくなるが、今回の中国人民銀行の動きのように先行き不透明感を強めるイベントが発生し、需要が後退すれば、価格が急落しても不思議ではない。

また、ビットコインはインターネット上での取引がほとんどであるため、需給動向の変化スピードは他の実物資産に比べて早い。このため短期間で価格が大きく変動しやすい。

投資の世界では、資産価格の評価をする際に、得られるリターンと同時に価格の変動率(リスク)も検討することが一般的となっている。ビットコインは、短期間に大きな値動きを示す可能性があるが、これはリスクが非常に高いことも意味しており、リスクで調整したリターンは、他金融資産と比べて大きくないだろう。

競馬やパチンコといったギャンブルとして考えるのならともかく、ビットコインを投資の1つとして考えるのはあまり合理的ではないように思える。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。近著に「人民元切り下げ:次のバブルが迫る」(東洋経済新報社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

外為8時30分 円、大幅続落し114円台前半 原油高と米金利上昇で

2016年12月01日 | 金融
外為8時30分 円、大幅続落し114円台前半 原油高と米金利上昇で
2016/12/1 8:43 日経

 1日早朝の東京外国為替市場で円相場は大幅続落して始まった。8時30分時点では1ドル=114円36~40銭と、前日17時時点に比べ1円64銭の円安・ドル高で推移している。11月30日開催の石油輸出国機構(OPEC)総会で加盟国が減産で最終合意し、原油先物相場が急伸したことを受け、投資家のリスク資産の選好姿勢が強まるとの見方から円売り・ドル買いが出ている。原油高は米国の物価上昇と利上げ圧力を強めるとの思惑から米金利も上昇し、それに連動した円売り・ドル買いも出やすくなっている。


ディーリングルームの日米の国旗
 円はユーロに対しても大幅に続落して始まった。8時30分時点では1ユーロ=121円18~23銭と、同1円45銭の円安・ユーロ高だった。対ドルの円売りが対ユーロにも波及している。

 ユーロの対ドル相場は反落して始まった。8時30分時点では1ユーロ=1.0594~97ドルと、同0.0028ドルのユーロ安・ドル高で推移している。米金利上昇がユーロ売り・ドル買いを誘った。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

トランプ相場いつまで 「過剰な円安」に警告も

2016年11月28日 | 金融
トランプ相場いつまで 「過剰な円安」に警告も
編集委員 田村正之
2016/11/28 5:30 日経

 日経平均株価が高値圏で推移している。ドナルド・トランプ米次期大統領による減税やインフラ投資を見越した米金利の上昇が起点だ。ただし米金利上昇→ドル高・円安→日本株の上昇というプラスの循環がこのまま続くかどうか、懸念の声も増えている。

■米ドルは歴史的な高値



 不安要因の一つ目は金利差とドル高の関係だ。長期的に日米長期金利差(10年物国債金利の米国マイナス日本)とドル円相場は連動性が高い(グラフ)。確かに大統領戦後に長期金利差が拡大しているが、ドル高・円安ピッチがあまりに急だ。
 2001年以降の長期金利差とドル円相場の水準から回帰分析の手法で妥当レートを計算してみると、25日時点の長期金利差(2.33%)が示すドル円相場は105.5円だ。つまり長期金利差が示す水準以上に、足元ではやや過剰な円安になっている可能性がある。先週末には一時113円台だった。

 JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長も「14年にドル円相場が長期金利から大きく乖離(かいり)する前、01年から13年のより長期金利差との連動性が高かった時期のデータで計算すれば、足元の適正レートは102円程度」とみる。また前年の経常収支と長期金利差で総合的に計算したモデルでは、17年の適正レートも103円だという。

 急ピッチな円安の要因として佐々木氏は「トランプ次期大統領の政策だけでなく、2つの損切りがあった」と指摘する。一つは大統領選の前に投機的な円買いポジションが積み上がっていた点。それが大統領選後の円安で損切りを余儀なくされ、円安をさらに加速させた。

 もう一つは世界の投資家の債券の買い持ちポジションが大きかったこと。トランプ氏の勝利による長期金利上昇(債券価格低下)で慌てて損切りの売りを余儀なくされ、それが長期金利上昇をさらに加速させた。

 その結果、米ドルの水準は極めて高くなり、企業業績や経済に悪影響を与えかねない水準になっている。これを端的に示すのが実質実効レート。インフレ率の差を考慮したうえで複数国との為替レートを反映させた最も総合的な為替レートで、資本移動が自由な国では、長期的には平均水準に回帰することで知られる。



 グラフでわかるように米ドルの実質実効レートは利上げを先取りする形で14年半ばから急な上昇に転じていた。米製造業の業績への圧迫などが指摘されて米国内でドル高への批判が高まり、今年になっていったんドル高修正が進んでいた。
 それがトランプ・ショックで再び急速なドル高に転換した。現在のドルの実質実効レートは十数年来の歴史的な高値圏にある。実質実効レートが平均値に回帰する時期はもともと予測できないが、いずれは必ず起きるというのが過去の経験則だ。

 今年のドル高修正で一息ついていた米製造業の業績は、足元のドル高で再び圧迫されている。米連邦準備理事会(FRB)のラエル・ブレイナード理事は講演で「14年から16年のドル高(のもたらす引き締め効果)は、米政策金利にして2%もの利上げに相当する」と述べている。

 トランプ氏は、当選後も米製造業の国外移転阻止などにたびたび言及している。さらなる長期金利の上昇やドル高を容認するかについては疑念も多い。

 大統領戦前に積み上がっていた投機筋などの円買いポジションはすでにかなり解消されていて、ドル買い方向への巻き戻しのエネルギーは一服している。今後、トランプ氏のドル高抑制発言などがあれば、円高への修正リスクも現実味を帯びる。

■米国外からの修正リスクも

 もちろん、もともとがトランプ氏の政策の「いいとこ取り」相場ともいえるだけに、来年1月の就任まで具体的な政策評価は難しく、トランプ相場は少なくともそこまで続くとの見方もある。

 為替アナリストの間でドル高・円安は行きすぎとの懸念表明が多い一方、「経済成長率にダイレクトに影響する減税政策などを考えればドル高が進むのは自然。円高シナリオにこだわるといつまでも間違う」(アライアンス・バーンスタインの村上尚己マーケット・ストラテジスト)との指摘も根強い。

 ただし国外から不透明材料が出れば別。例えば欧州の政治情勢だ。まず12月初旬にはイタリアで憲法改正への是非を問う国民投票が実施される。否決されて現政権の求心力が下がる可能性も指摘されている。その場合、反欧州連合(EU)政党である五つ星運動に追い風だ。

 来年に入っても3月にはオランダ総選挙、4~5月のフランスの大統領・議会選挙、9月のドイツ総選挙でそれぞれ反EU勢力が躍進するリスクを抱える。危機感が高まれば事前に円買いが起きる可能性もある。

 ドル高が新興国経済に与える影響にも今後より関心は高まるだろう。トルコが通貨防衛のために24日利上げに踏み切るなど、各国経済への打撃も鮮明になりつつある。

 みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「目先円安がさらに進む可能性は否定できない。しかしドル相場がすでに歴史的な高値圏にあることを考えると、トレンド転換リスクを警告せざるを得ない」と話している。

NYダウ 大幅値下がり ドイツ銀行の経営不安影響(NHKニュース)

2016年09月30日 | 金融

NYダウ 大幅値下がり ドイツ銀行の経営不安影響
9月30日 5時44分 NHKニュース 

29日のニューヨーク株式市場は、ドイツ最大手の銀行の経営不安が金融システムに与える影響への警戒感から、売り注文が広がり、ダウ平均株価は195ドル値下がりしました。

29日のニューヨーク株式市場は、資本不足が懸念されているドイツ最大手の銀行「ドイツ銀行」の経営不安が金融システムに影響を与えることへの警戒感から、売り注文が広がりました。

このためダウ平均株価は、一時、前日より250ドル近く値下がりしました。
その後はいくぶん買い戻す動きも出て、結局ダウ平均株価は、前日より195ドル79セント安い、1万8143ドル45セントで取り引きを終えました。

市場関係者は「ドイツ銀行に加えて、ドイツの別の大手銀行が9000人を超える規模の人員削減策を発表したことも、金融関連の銘柄を売るきっかけとなった。ヨーロッパの金融機関の経営不安に投資家の関心が集まっている」と話しています。


++++

ドイツ銀行の破綻懸念。世界恐慌の発端となるほどの大きなインパクト
があり、最終的にはドイツ政府とEUが救済、または米銀(JPM社?)
がすることに
なると思われますが、理由は下記の4つです。

1.同行はディリバティブで多額の損失を抱えていると言われています。
 9月16日、米国の住宅担保ローンに絡む不正販売を巡って、米司法省が
 同行に対し140億ドル(約1兆4000億円)の支払いを求めている。
2.フォルクスワーゲンの米国での排ガス規制逃れで救済資金の大部分を拠出
3.LIBOR(ロンドン市場においての銀行間取引金利)とTIBOR(日本の東京市場の銀行間取引金利)
 での不正取引問題で多くの訴訟を抱えている。 既にLIBORについては不正を認め、英米の金融当局に
 25億ドルの制裁金を支払うことで合意している。

4.銀行そのものが利益が出せない体質になっており、株価の下落が止まらない状況。


 



 

 
 





 


グローバル化から脱する時!&

2016年09月25日 | 金融
月刊日本10月号に三橋貴明氏が「グローバル化は亡国への道」と題して寄稿している。
同氏は安倍政権が発足した当時は、アベノミクスを支持していたので僕もこいつは自民党のまわし者だと思っていたが、最近は、アベノミクスを徹底的に批判しており、また、同氏の説明は非常に筋が通っていて、傾聴に値すると考えている。

三橋氏は、政権交代後、安倍政権は、緊縮財政を取り消費増税をしたことから需要が減り、消費も減ってしまい、今や完全にアベノミクスは失敗したと斬りすてている。何故、アベノミクスは、変わってしまったのかについて、同氏は下記を指摘する。

1)安倍総理は、「デフレは貨幣現象だ」と言っていたのは、故・ミルトン・フリードマン(米国の経済学者、マネタリズムを主唱、裁量的なケインズ的総需要管理政策を批判。1976年、ノーベル経済学賞受賞)の理論そのものであり、金利を下げて金を潤沢に放出した。財務相は、リフレ理論でデフレが脱出できるのであれば財形投資は不要で、緊縮財政でもいいでしょということで緊縮財政に転じた。

2)2013年10月1日に消費増税を決定し緊縮財政に移行した。デフレ下で増税すれば消費が冷え込むのは当たり前である。

3)企業は低金利でも国内で投資を行わなかったのは、緊縮財政で需要が伸びないと判断したからである。

4)デフレを克服するために、規制緩和と構造改革が叫ばれ、竹中平蔵がまたぞろ重用され、労働者派遣法の改正、外国人労働者への門戸開放、TPP推進とグローバル化が推進されている。

5)デフレ下で構造改革を行うとデフレは深刻化するという事を安倍政権は理解していない。現在の日本は、デフレ脱却のために構造改革を行うとデフレが更に深刻化し、デフレ脱却のために更に構造改革が叫ばれるという悪循環に陥っている。

上記が三橋氏のアベノミクス批判である。今必要な政策はグローバル化と縁を切り、政府が率先してインフラ投資をせよというものである。

僕も基本的には同氏の意見に賛成である。100兆円を超える予算を安倍政権は組んでも借金の返済に回しているので金額が膨らんでいるのであり、真水部分は殆どなく需要を創造する様な投資は殆ど行われていない。国内の大型プロジェクトは今や殆どないのが実情である。あっても東京だけである。

巨大地震に耐えうるインフラ整備、新幹線、高速道路網の整備、
人工知能開発、医療ロボットとソフト開発など、昔の穴を掘って埋める型の公共工事ではない本当に必要な投資が必要なのである。
今であれば、日銀が国債を買い取ってくれるからほぼ国が払う国債の金利はゼロ金利で発行できるのである。

日銀の枠組み転換どう読み解く

2016年09月25日 | 金融
日銀の枠組み転換 どう読み解く(創論)
2016/9/25 3:30 日経新聞

 日銀が2013年から進めてきた金融緩和を検証し、資金供給という量重視から金利重視へと政策の枠組みを変えた。物価目標の達成が遠のく中での政策転換をどう読み解くか。日銀審議委員を務めた植田和男・東京大学教授と、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策局副局長だったジョセフ・ギャノン・米ピーターソン国際経済研究所上級研究員に聞いた。

■経済政策の主役降りる

東京大学教授 植田和男氏


うえだ・かずお 74年東大理卒。93年に東大教授就任。98~05年には日銀審議委員を務め、その後、再び東大教授に。65歳。
 ――日銀が長短金利を主な操作目標とする新しい政策の枠組みを導入しました。
 「2%の物価上昇率目標は、当初掲げた2年を過ぎ、約3年半たっても未達成だ。一方、巨額の国債購入はあと2年程度で限界に直面すると指摘されている。そこで政策の持続性を上げ、長期戦覚悟で2%達成を目指すことにした。それが主な操作目標を量から金利に切り替えたことの意味だ。今回0%程度とされた長期金利の誘導水準は、従来のように年間80兆円もの国債を買わなくても実現できる可能性があり、国債購入の限界は遠のく」

 ――物価2%超の安定的な実現まで資金供給量(マネタリーベース)を拡大する時間軸政策も決めました。

 「『2%』を『2%超』に上げ、物価上昇期待を刺激しようとした。ただ従来と異なり資金供給量の増加額について明確にコミットしたわけではない。増加額が縮小するケースも十分考えられ、これも政策の持続性を上げる面がある。ただ物価2%が近づいたときに長期金利をどう操作するかは極めて難しい問題だ」

 ――政策の持続性を向上させたことで、経済政策で日銀が引き続き重要な役割を担うことになりますか。

 「物価押し上げの成果が短期の間で出なかったので、長期戦への切り替えを余儀なくされたというのが今回の対応の実態だろう。政策を長く続けられるようにしたが、追加緩和の弾がそれほど増えたわけではない。むしろ金融政策の限界が一段と明らかになり、経済政策の主役の座を降りざるを得なくなってきた」

 ――量の拡大に限界はありますが新たに操作目標にした長短金利の引き下げという追加緩和手段がまだ使えます。

 「過大評価はできない。日本ではマイナス金利幅の拡大余地が当初想定されていたほどにはなさそうだ。欧州の事例からマイナス1%くらいまでの金利引き下げが可能かと思われたが、日本の金融機関の利ザヤは以前から小さく、マイナス金利政策が収益に及ぼす悪影響がより大きい。欧州と同列には扱えない」

 ――経済の現場には、金利を下げれば下げるほど経済刺激効果が強まるわけではないという声もあります。

 「確かに、マイナス金利という常識外の世界では、金利低下と緩和効果拡大を同一視する教科書的な理解は必ずしも正しくないかもしれない。2つの点に注意を払う必要がある。第1に金利低下による金融機関の収益悪化が、世の中に円滑にマネーを供給する金融仲介機能をどの程度傷めるか。第2は保険や年金など資産運用への負のインパクトだ。この点については、日銀の異次元緩和の『総括的な検証』も人々の心理に悪影響を及ぼす可能性に触れた」

 ――追加緩和として上場投資信託(ETF)の購入拡大の余地はないですか。

 「既に年間6兆円ペースで買っており『官製相場化』が一段と進んでいる。優れた企業とそうでない企業を選別する株式市場の機能低下は成長戦略にマイナスではないか」

 ――時間軸政策を強化する手はないでしょうか。

 「緩和解除条件の『2%超』を上げても、現実味のない数字だとインフレ期待は強まらない」

 ――緩和余地が乏しいなかで日銀はどう対応すべきですか。

 「基本的に経済政策の主役は政府の財政政策や成長戦略になっていく。金融政策の役割はその補完に向けた政府との連携だ」

 ――どのような形で連携できますか。

 「日銀がかねて指摘してきた通り、日銀が緩和的な金融環境の維持に努めることは、国債発行の増加による長期金利上昇圧力を抑える効果を持つ。ただし、ヘリコプターマネー(財政支出を支える中央銀行の恒久的な資金供給)とは一線を画すべきだ。将来の高インフレのリスクを抱える。日銀が長短金利の低位安定に努める一方、規制緩和など政府の成長戦略が自然利子率(景気を冷やさず過熱もさせない金利水準)を上げれば、経済刺激効果が高まる」

 ――ただ市場混乱時には再び緩和要求が出そうです。

 「緩和策の弾切れが近いのは事実だが、金融危機時などにはリスクプレミアム(リスクに応じた資産価格の割引幅)が大きく拡大するので、資産買い入れの緩和余地はむしろ出てくる面もある」

(聞き手は編集委員 清水功哉)

■物価上昇 再挑戦の意志

米ピーターソン国際経済研究所上席研究員 ジョセフ・ギャノン氏


 ――2013年からの日銀の量的・質的金融緩和をどう評価しますか。
 「私は大きな効果があったとみている。消費者物価指数の上昇率をエネルギー・食品を除くベースでみると、導入前はマイナス圏だったが、開始後にプラス圏に浮上した。その後、14年4月の消費税増税で伸びが鈍化したが、同年10月の追加緩和で再び上向いた。失業率も20年ぶりの水準まで下がるなど、経済環境にもプラスに働いた」

 「ただ、量的緩和の拡大を見送ってマイナス金利政策に切り替えた今年1月以降、日銀は量的・質的緩和による物価の押し上げを諦めたようにみえた。1月は春季労使交渉を控えた重要な時期だ。マイナス金利を導入するにしても、さらに深掘りして緩和姿勢を示すべきだった。『日銀は物価上昇率2%の達成に本気ではないのではないか』と人々を不安視させた面がある」

 ――今回は「総括的な検証」を踏まえて、政策の枠組みを大きく入れ替えました。

 「日銀はもう一度、物価上昇率2%に向けて動き出したとみている。長期金利に誘導目標を設けて、イールドカーブ(長短金利の利回り曲線)をコントロールするというのは、戦後の中央銀行では実施例がなく、実に興味深い。物価目標を超えるまで資金供給量を拡大する『オーバーシュート型コミットメント』も物価が2%を超えても緩和し続けるという辛抱強い意思の表れとみている」

 「今回の枠組み変更は、小さな一歩にすぎない。緩和余地は大いにあり、例えばマイナス金利政策はさらに深掘りできる。スイス国立銀行(中央銀行)はマイナス0.75%まで政策金利を下げており、日銀も可能だ。円高対策にもなるだろう。ただ限界はマイナス1%だ。そこまで下がると投資家は債券投資や大口預金を取りやめて、そのまま現金で保有するようになる」

 ――マイナス金利政策は銀行収益など金融システムへの悪影響も懸念されます。

 「日銀がマイナス金利で民間銀行に資金を貸し出すようなスキームが考えられるだろう。マイナス金利で得た資金で銀行が民間部門に融資すれば、銀行の収益も傷まず、資金需要の掘り起こしも期待できる。民間銀行は家計のような小口預金にマイナス金利を適用するのは難しいだろうが、(手数料などで)法人預金にマイナス金利の負担を転嫁することはできる」

 ――緩和手段として、ETFの購入拡大も提唱していますね。

 「日本の株式市場は国内総生産(GDP、約500兆円)を超える規模があるが、日銀のETFの購入規模は年6兆円とGDPの1%強にすぎない。スイス中銀の買い入れ規模はGDPの20%だ。日銀のETF購入がなぜこれほど小規模なのか理解できない」

 ――先進国では自然利子率低下が金融政策の制約になっています。

 「理由の一つは労働力人口の伸びが鈍っているためだ。個人の住宅投資や企業の設備投資を下押しし、資金需要も弱める。金融危機後の規制強化で資金が国債などの安全資産に向かいやすくなり、全体の金利水準を押し下げている面もある。ただ自然利子率の低下は構造的な問題で、中銀の政策範囲を超えている」

 ――それだけに、政府や民間部門の役割がさらに問われることになります。

 「今回の日銀の枠組みの見直しによって、財政支出の余地ができたのではないか。日銀は年80兆円のペースで長期国債を買い入れるとしており、政府は低金利環境下で追加の国債発行が可能になる。高齢化や生産性の低下が成長力を下げているのは確かだ。移民政策も含めた構造改革論もあるが、需要を積み増すことが先決だ。需要がなければ労働力は過大になるだけだ」

 「需要を積み増してインフレ率が安定的に2~3%になれば、実質債務は徐々に軽くなる。日本の財政健全化にとって、財政も使って需要を積み上げ、インフレ率を上げていくのが最善の道だと思う」

 「もっとも賃金水準の改善は官民の重要なテーマだ。安倍政権には、公務員賃金の大幅な引き上げを来年の春闘前に宣言するよう提言したい。さらに民間企業の経営者にも同じように3~4%の大幅賃上げを求めていくべきだ。安定的な賃金上昇は需要の積み上げと物価の押し上げに大きな効果があるとみている」

(聞き手はワシントン=河浪武史)

長期金利0% 手探り マイナス0.055%に低下、上昇観測乏しく 

2016年09月24日 | 金融
長期金利0% 手探り
マイナス0.055%に低下、上昇観測乏しく 日銀、当面は静観
2016/9/24 3:30 日経朝刊

 日銀が新しい金融緩和の枠組みを導入したことを受け、金融市場では日銀の姿勢を試す取引が広がった。長期金利をゼロ%程度に誘導することを決めたが、市場は「多少のマイナスは容認する」とみて長期金利が低下。先進国では異例の長期金利の誘導策を巡り、日銀と市場の手探りの対応が当面続きそうだ。(関連記事を経済面に)



 日銀は黒田東彦総裁の下で異次元緩和(総合2面きょうのことば)と呼ばれる大胆な金融緩和を進めてきた。これまで市場に流す資金の量を増やす政策が柱だったが、新しい枠組みでは長短の金利を調節する政策(イールドカーブ・コントロール)に転換。新たに長期金利をゼロ%に誘導する方針を打ち出した。

 23日の債券市場では長期金利の指標になる新発10年物国債利回りがマイナス0.055%まで低下(価格は上昇)。21日に日銀がゼロ%誘導を決めた直後には一時、約半年ぶりにプラスに浮上したが、その後は金利が低下する展開になった。背景には「ゼロ%に近いマイナスなら日銀が容認する」(メリルリンチ日本証券の大崎秀一氏)との見立てがある。

 日銀は目標を量から金利に変えたが、国債を年80兆円ずつ買い増す方針は当面続ける。野村証券の美和卓氏は「緩和縮小を連想させる国債減額には動けず、金利は低下しやすい」とみる。

 日銀は長期金利の低下について、当面は市場の動向を注視する。これまでの国債の大量購入で発行残高の4割超を保有しており、長期金利への影響力が強い。ただ今後も下げ止まらなければ、市場からの1回あたりの国債購入額を減らしたり、購入する国債の利回りに下限を設けたりして金利低下を抑える考えだ。

 長期金利をゼロ%に近づける切り札も用意している。特定の利回りを指定して国債を買う「指し値オペ」だ。だが市場機能を軽視した制度に取られかねず、市場では「あくまで金利が急変動した場合の緊急策」(国内証券)とみている。

 一方、海外投資家の影響が大きい為替市場では長期金利の誘導策が国債購入の減額をにらんだ動きとの見方も浮上した。「ステルス・テーパリング(隠れた国債購入の削減)への第一歩」。ゴールドマン・サックス証券はリポートでこう指摘。23日の東京市場では緩和縮小の思惑から金融政策決定会合前よりも円高の1ドル=100円台を中心に取引されるなど円高圧力が収まっていない。

 21日に米連邦準備理事会(FRB)が利上げを緩やかなペースで進める姿勢を示したことも円高要因になっている。米大統領選を巡る不透明感もあり、市場では「今後は円が買われやすい」(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)との見方が多い。

 26日には黒田総裁が大阪市内で講演する。具体的な長期金利の誘導策の進め方が見えてくるのはこれからで、日銀は物価2%目標の達成に向けて長期戦の構えを示す。市場が「日銀の姿勢を見極めるまでは積極的に取引しづらい」と受け止めていることも債券・為替相場の不透明感を高める一因になっている。

マイナス金利拡大あるか 3メガ銀悩み深く 「ゼロ%融資」苦慮

2016年09月18日 | 金融
マイナス金利拡大あるか 3メガ銀悩み深く
「ゼロ%融資」苦慮 2016/9/18 0:41 日経

 三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクが日銀のマイナス金利政策への対応に苦慮している。マイナス金利拡大には消極的だが、一段の緩和に前向きな日銀の姿勢も無視できない。日銀が20~21日の金融政策決定会合でマイナス金利を拡大する場合に備え、3メガは貸し出しや預金の扱いを見直すか慎重に探る。企業や個人、預金者への影響を点検する。


■大企業融資は?
 基準金利に置く東京銀行間取引金利(TIBOR)の動きが焦点だ。日銀がマイナス金利を拡大すれば、現在のプラス圏からマイナス圏に陥る可能性がある。貸出金利はTIBORに信用力などに応じた金利を上乗せして決まる。優良企業の場合、上乗せ金利幅は薄く、マイナス金利になりやすい。

 だが、貸出金利がマイナスになる可能性はあるか。現時点では考えにくいだろう。弁護士らによる金融法委員会(事務局・日銀)は2月、マイナス金利融資を事実上認めない見解をまとめた。日銀がマイナス貸し出しを封じた形。3メガもこの見解に沿い、企業と個別交渉しているもようだ。

 みずほ幹部は「民法上もマイナス金利の貸し出しは前提にしていない。顧客の理解は得られるはず」とみる。ただ、お金を借りる企業は金利コストの低下を求め、銀行に上乗せ金利をなくした「ゼロ%融資」を求める可能性もある。「ゼロは最悪の想定」と三菱東京UFJ銀も身構える。

 貸出金利が預金金利を上回れば銀行のもうけだが、下回れば採算割れを示す"逆ざや"。銀行が「ゼロ%融資」を拒絶すれば、銀行融資から社債調達にシフトする企業が増えないとも限らない。


■中小・個人向け融資は?
 TIBORが基準の大企業向けと違い、中小や個人は銀行が裁量で水準を決める融資が多い。銀行が独自に決める「短期プライムレート」が貸し出しの基準金利だが、各行は引き下げに慎重だ。

 メガ銀幹部は「日銀がマイナス金利を深掘りしても、すぐ動かすとはならない」と話す。ただ、視野には入っている。金融庁が今夏、3メガにマイナス金利の影響を聞くと、3メガともマイナス金利拡大の場合に、短プラ下げを想定している姿勢をにじませた。

■預金者は?

 マイナス金利拡大の場合、銀行は「手数料」を課すのかどうか。

 全国銀行協会の国部毅会長(三井住友銀行頭取)は15日の記者会見で「方針は全く決めていないが、検討しないといけない可能性もある」と含みをもたせた。三井住友銀行内では「預金に手数料を課したら、融資にマイナス金利を適用すべきとの声が強まる」との見方もあり、悩みは深い。

 万一、手数料を課す場合、個人向けは回避しよう――。3メガはこうした認識を共有する。

 三井住友銀は金融機関など大口預金者を想定、三菱東京UFJ銀もまずは大口先の優遇撤廃が検討課題になるとみる。みずほは同業の金融機関からの預金に「口座維持手数料」を検討する。金融法委は手数料徴収を「サービスの対価を預金約款に従って徴収する余地はある」とする。採算確保のための預金者負担増となると、銀行への風圧が強まりかねない。