JT、火のないたばこで株価に点火
2017/5/24 12:46 日経新聞
日本たばこ産業(JT)の株価が急ピッチで上昇している。24日は3日続伸し、連日で年初来高値を更新した。前日に火を使わない加熱式たばこ「プルーム・テック」の販売で6月末に東京都内へ進出すると発表。業績拡大に弾みがつくとの期待が広がった。たばこ世界首位の米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)などとの「次世代たばこ競争」の火ぶたが本格的に切られることになる。
プルーム・テックはたばこ葉を燃やさず、蒸気を使ってたばこの味や香りを味わう製品。火を使用しないため燃焼で発生する煙やにおいを気にせずに吸うことができる。これまでの販売は福岡市とインターネットのみに限っており、入手が困難な状況のためオークションサイトでは高値で取引されている。6月末には銀座や新宿で専門店を出店するほか、都心6区の販売店でも売り出していく方針だ。
■出遅れたJT、巻き返しに動く
現在、この加熱式たばこではPMIの「iQOS(アイコス)」が一人勝ちの状態となっている。2014年に名古屋市でアイコスを試験販売し、昨年に全国展開した。メディアなどで大きく取り上げられたこともあって知名度が高まり、供給が追いつかず品薄の状態にもなった。たばこ世界3位の英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も昨年末に「グロー」を投入して加熱式市場に参入。まずは仙台市内で試験販売し、17年中の全国展開を目指している。
健康志向の高まりなどで紙巻きたばこの市場規模は縮小傾向にあるが、その中でも加熱式など次世代たばこは有望な成長市場だ。実は、日本は世界の中でも加熱式たばこの普及が早い"先進国"だ。路上喫煙の禁止などたばこに対する規制が強化されてきたほか、人口密度が高く、文化的に周囲への配慮が細やかなことから受け入れられる土壌があるとされる。PMIの17年1~3月期のアイコス用のヒートスティックの出荷は前年同期比10倍の44億本で、そのうちアジアが9割を占める。大半が日本とみられ、同社の業績拡大のけん引役となっている。
■1兆8000億円市場との予測も
英ユーロモニターによると、次世代たばこの世界の市場規模は15年に約80億ドル(約9000億円)と、06年から約80倍に成長した。2020年に160億ドル(約1兆8000億円)に拡大するとの予測もある。たばこ大手各社はまず先進国の日本で販売を伸ばし、世界での成長の足がかりにしようとしている。
JTはこの分野の取り組みが遅れており、この約2年間の株価は下落基調が続いた。PMIやBATの株価がほぼ右肩上がりで上昇しているのとは対照的だった。それが5月に入ってプルーム・テックへの期待が盛り上がり、JT株もやっと上昇に転じた。24日の株価は前月末比で1割強高い。松井証券の窪田朋一郎氏は「食品・日用品株の中で出遅れが目立っていたため、見直し買いが入りやすかった面もある」と指摘する。
ただ、JTの巻き返し戦略は始まったばかりだ。野村証券の藤原悟史氏は「プルーム・テックは東京都心でも売り切れ続出が予想され、品薄状態は当面、解消されないだろう」と指摘する。生産能力の制約もあり、PMIなどのシェア拡大に歯止めを掛けられるかは不透明だ。
2017/5/24 12:46 日経新聞
日本たばこ産業(JT)の株価が急ピッチで上昇している。24日は3日続伸し、連日で年初来高値を更新した。前日に火を使わない加熱式たばこ「プルーム・テック」の販売で6月末に東京都内へ進出すると発表。業績拡大に弾みがつくとの期待が広がった。たばこ世界首位の米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)などとの「次世代たばこ競争」の火ぶたが本格的に切られることになる。
プルーム・テックはたばこ葉を燃やさず、蒸気を使ってたばこの味や香りを味わう製品。火を使用しないため燃焼で発生する煙やにおいを気にせずに吸うことができる。これまでの販売は福岡市とインターネットのみに限っており、入手が困難な状況のためオークションサイトでは高値で取引されている。6月末には銀座や新宿で専門店を出店するほか、都心6区の販売店でも売り出していく方針だ。
■出遅れたJT、巻き返しに動く
現在、この加熱式たばこではPMIの「iQOS(アイコス)」が一人勝ちの状態となっている。2014年に名古屋市でアイコスを試験販売し、昨年に全国展開した。メディアなどで大きく取り上げられたこともあって知名度が高まり、供給が追いつかず品薄の状態にもなった。たばこ世界3位の英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も昨年末に「グロー」を投入して加熱式市場に参入。まずは仙台市内で試験販売し、17年中の全国展開を目指している。
健康志向の高まりなどで紙巻きたばこの市場規模は縮小傾向にあるが、その中でも加熱式など次世代たばこは有望な成長市場だ。実は、日本は世界の中でも加熱式たばこの普及が早い"先進国"だ。路上喫煙の禁止などたばこに対する規制が強化されてきたほか、人口密度が高く、文化的に周囲への配慮が細やかなことから受け入れられる土壌があるとされる。PMIの17年1~3月期のアイコス用のヒートスティックの出荷は前年同期比10倍の44億本で、そのうちアジアが9割を占める。大半が日本とみられ、同社の業績拡大のけん引役となっている。
■1兆8000億円市場との予測も
英ユーロモニターによると、次世代たばこの世界の市場規模は15年に約80億ドル(約9000億円)と、06年から約80倍に成長した。2020年に160億ドル(約1兆8000億円)に拡大するとの予測もある。たばこ大手各社はまず先進国の日本で販売を伸ばし、世界での成長の足がかりにしようとしている。
JTはこの分野の取り組みが遅れており、この約2年間の株価は下落基調が続いた。PMIやBATの株価がほぼ右肩上がりで上昇しているのとは対照的だった。それが5月に入ってプルーム・テックへの期待が盛り上がり、JT株もやっと上昇に転じた。24日の株価は前月末比で1割強高い。松井証券の窪田朋一郎氏は「食品・日用品株の中で出遅れが目立っていたため、見直し買いが入りやすかった面もある」と指摘する。
ただ、JTの巻き返し戦略は始まったばかりだ。野村証券の藤原悟史氏は「プルーム・テックは東京都心でも売り切れ続出が予想され、品薄状態は当面、解消されないだろう」と指摘する。生産能力の制約もあり、PMIなどのシェア拡大に歯止めを掛けられるかは不透明だ。