2017/3/13 2:30 日経朝刊
日本とサウジアラビアの経済関係(総合・経済面きょうのことば)が新たな段階に入る。12日に来日したサウジのサルマン国王との間で日本企業の進出を促すために同国に経済特区をつくることで合意し、トヨタ自動車やJXグループ、3メガバンク、東京証券取引所などが経済面で協力する。日本への原油輸出に偏った貿易構造から脱却し、遅れていた日本企業の進出が本格化する。(関連記事企業面に)
13日に安倍晋三首相とサルマン国王が会談し、経済を軸にした協力方針「日・サウジ・ビジョン2030」を打ち出す。サウジが目指す石油に依存しない経済の構築を後押しするため、日本が製造業や医療、投資、金融などの分野で全面的に協力する内容だ。
ビジョンの柱は経済特区の開設。サウジ国内で工場や研究開発拠点を誘致する地域を特区に指定し、外資規制の緩和、税制優遇、関税手続きの簡略化、インフラ整備、労働環境の改善などをパッケージで用意する。
例えば自動車産業の特区では工場新設にかかる煩雑な手続きを減らしたり、日本から運ぶ部品への関税をなくしたりすることを想定。電力網や教育施設の整備など工場の労働環境の改善も検討する。特区に指定する地域は日本とサウジが両国の事情に詳しい民間出身者など各3人を双方に常駐させ、進出する日本企業やサウジ政府の要望を擦り合わせて決める。
翌14日の投資フォーラムでは両国の民間企業同士の提携で合意する。東京証券取引所は年内にも上場を計画する世界最大の石油会社サウジアラムコと上場体制の整備を進める研究会を設置。JXグループや日揮はサウジアラムコと石油やガスの技術開発で協力する。
三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクはサウジアラビア総合投資院とサウジへの投資促進に向けた情報交換を進める。外務省も両国のビザ発給要件の緩和について協議するなど、官民挙げて約30案件に上るプロジェクトを進める。
サウジは財政収入の大半を石油関連事業に頼る偏った経済構造から脱却するため、ムハンマド副皇太子を中心に産業振興やインフラ整備を進めている。国民の約半数が25歳未満で、成長市場としての魅力も大きい。
サウジ国王の来日は1971年のファイサル国王以来、46年ぶり。サルマン国王は15日まで日本に滞在した後、次の目的地の中国に向かう。