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日・サウジ、経済協力を深化 企業進出へ特区新設

2017年03月13日 | 資源・エネルギー
日・サウジ、経済協力を深化 企業進出へ特区新設
2017/3/13 2:30 日経朝刊
 日本とサウジアラビアの経済関係(総合・経済面きょうのことば)が新たな段階に入る。12日に来日したサウジのサルマン国王との間で日本企業の進出を促すために同国に経済特区をつくることで合意し、トヨタ自動車やJXグループ、3メガバンク、東京証券取引所などが経済面で協力する。日本への原油輸出に偏った貿易構造から脱却し、遅れていた日本企業の進出が本格化する。(関連記事企業面に)



 13日に安倍晋三首相とサルマン国王が会談し、経済を軸にした協力方針「日・サウジ・ビジョン2030」を打ち出す。サウジが目指す石油に依存しない経済の構築を後押しするため、日本が製造業や医療、投資、金融などの分野で全面的に協力する内容だ。

 ビジョンの柱は経済特区の開設。サウジ国内で工場や研究開発拠点を誘致する地域を特区に指定し、外資規制の緩和、税制優遇、関税手続きの簡略化、インフラ整備、労働環境の改善などをパッケージで用意する。

 例えば自動車産業の特区では工場新設にかかる煩雑な手続きを減らしたり、日本から運ぶ部品への関税をなくしたりすることを想定。電力網や教育施設の整備など工場の労働環境の改善も検討する。特区に指定する地域は日本とサウジが両国の事情に詳しい民間出身者など各3人を双方に常駐させ、進出する日本企業やサウジ政府の要望を擦り合わせて決める。

 翌14日の投資フォーラムでは両国の民間企業同士の提携で合意する。東京証券取引所は年内にも上場を計画する世界最大の石油会社サウジアラムコと上場体制の整備を進める研究会を設置。JXグループや日揮はサウジアラムコと石油やガスの技術開発で協力する。

 三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクはサウジアラビア総合投資院とサウジへの投資促進に向けた情報交換を進める。外務省も両国のビザ発給要件の緩和について協議するなど、官民挙げて約30案件に上るプロジェクトを進める。

 サウジは財政収入の大半を石油関連事業に頼る偏った経済構造から脱却するため、ムハンマド副皇太子を中心に産業振興やインフラ整備を進めている。国民の約半数が25歳未満で、成長市場としての魅力も大きい。

 サウジ国王の来日は1971年のファイサル国王以来、46年ぶり。サルマン国王は15日まで日本に滞在した後、次の目的地の中国に向かう。

米で特許 再現成功で「常温核融合」、再評価が加速

2016年09月11日 | 資源・エネルギー
米で特許 再現成功で「常温核融合」、再評価が加速
2016/9/9 6:30 日経BPクリーンテック研究所

 仙台市太白区にある三神峯(みかみね)公園は、500本を超えるサクラの名所として知られる。「東北大学電子光理学研究センター」は、同公園に隣接した緑の中にある。2つの加速器を備えるなど、原子核物理の研究センターとして50年の歴史を刻んでいる。
■わずか数百度で核反応が進む

 2015年4月、同センターに「凝縮系核反応共同研究部門」が新設された。「凝縮集系核反応」とは、金属内のように原子や電子が多数、集積した状態で、元素が変換する現象を指す。


凝縮系核反応研究部門の研究室。左からクリーンプラネット・吉野社長、東北大学・伊藤客員准教授、同大・岩村特任教授、クリーンプラネット・服部真尚取締役(撮影:日経BP)



 今の物理学の常識では、元素を持続的に変換させるには、1億℃以上のプラズマ状態の反応場が必要とされる。フランスや日本などは、国際協力の下で「ITER(国際熱核融合実験炉)」の建設を進めている。巨大なコイルによって、「1億℃」を磁場で閉じ込めておく手法だが、当初の目標に比べ、実用化は大幅に遅れている。
 凝縮集系核反応であれば、常温から数百℃という低温で元素が融合し、核種が変換する。東北大学電子光理学研究センターに建った、凝縮集系核反応共同研究部門の真新しい建屋に入ると、断熱材で覆われた実験装置がある。

 核反応が進行するチャンバー(容器)は円筒形。金属製なので中は見えないが、センサーによって温度を計測している。「実験を始めてまだ1年ほどですが、順調に熱が出ています」。同研究部門の岩村康弘特任教授は、温度を記録したノートを見ながらこう話す。

■三菱重工の研究者が東北大に移籍

 かつて、凝縮集系核反応は「常温核融合(コールドフュージョン)」と呼ばれた。1989年3月に米ユタ大学で、二人の研究者がこの現象を発表し、世界的に脚光を浴びた。だが、ユタ大学での報告を受け、各国で一斉に追試が行われた結果、米欧の主要研究機関が1989年末までに否定的な見解を発表、日本でも経済産業省が立ち上げた検証プロジェクトの報告書で、1993年に「過剰熱を実証できない」との見解を示した。

 しかし、その可能性を信じる一部の研究者たちが地道に研究を続け、徐々にこの現象の再現性が高まってきた。2010年頃から、米国やイタリア、イスラエルなどに、エネルギー利用を目的としたベンチャー企業が次々と生まれている。日本では凝縮集系核反応、米国では「低エネルギー核反応」という呼び名で、再評価する動きが出てきた。

 実は、東北大学に新設された凝縮系核反応共同研究部門は、クリーンエネルギー分野のベンチャーや研究室などに投資するクリーンプラネット(東京・港)が研究資金を出し、東北大学が施設や人材を提供するという形で2015年4月に発足した。

 「核融合の際に発生する膨大なエネルギーを安定的に、安全かつ低コストで取り出せる道が見えてきたことで、欧米を中心に開発競争が活発化している。日本の研究者は、これまでこの分野を主導してきた実績がある。実用化に向け、国内に蓄積してきた英知を結集すべき」。クリーンプラネットの吉野英樹社長はこう考え、東北大学に資金を投じた。

 東北大学・凝縮系核反応研究部門の岩村特任教授と伊藤岳彦客員准教授は、ともに三菱重工業で凝縮集系核反応の研究に携わり、今回の部門新設を機に東北大学に移籍した。三菱重工は、放射性廃棄物を無害化する技術として、「新元素変換」という名称で地道に研究に取り組み、選択的な元素変換に成功するなど、世界的な成果を挙げてきた。

■わずか1年で「過剰熱」を観測

 岩村特任教授は、東北大学への移籍を機に、研究のターゲットを放射性廃棄物の無害化から、「熱の発生」に切り替えた。凝縮集系核反応の応用分野には、発生した熱をエネルギー源に活用する方向性と、核変換によって放射性廃棄物の無害化や希少元素の生成を目指す方向性がある。現在、クリーンプラネットなど多くの企業、ベンチャーは、実用化した場合の市場規模が桁違いに大きい、エネルギー源の利用を優先して研究を進めている。

 実は「熱の発生」に関しても、日本の研究者が世界的な研究成果を挙げてきた。先駆者は北海道大学の研究者だった水野忠彦博士と大阪大学の荒田吉明名誉教授。現在、国内では、この二人の研究者が見いだした熱発生の手法を軸に実用化研究が活発化している。

 クリーンプラネットは、水野博士が設立した水素技術応用開発(札幌市)にも出資し、グループ企業にしている。東北大学の岩村特任教授らは、まず、水野博士の考案した手法の再現実験に取り組み、順調に「過剰熱」を観測している。

 その手法とは、以下のような仕組みだ。円筒形のチャンバー内にワイヤー状のパラジウム電極を2つ配置し、その周囲をニッケル製メッシュで囲む。この状態で、電極に高電圧をかけて放電処理した後、100~200℃で加熱(ベーキング)処理する。この結果、パラジウムワイヤーの表面は、パラジウムとニッケルによるナノスケールの構造を持った膜で覆われることになる。

 
こうしてパラジウム表面を活性化処理した後、チャンバー内を真空にし、ヒーターで数百度まで加熱した状態で、重水素ガスを高圧(300~170パスカル)で圧入し、パラジウムと重水素を十分に接触させる。すると、ヒーターで入力した以上の「過剰熱」が観測された。活性化処理せずに同じ装置と条件で重水素ガスを圧入した場合、過剰熱は観測されず、その差は70~100℃程度になるという。

 「実験開始から1年足らずで、ここまで安定的に熱が出るとは、予想以上の成果。これまで三菱重工で蓄積してきた、再現性の高い元素変換の知見を熱発生にも応用できる」。岩村特任教授の表情は明るい。

■ナノ構造が核反応を促進

 一方、大阪大学の荒田名誉教授の手法をベースに熱発生の研究を続けているのが、技術系シンクタンクのテクノバ(東京・千代田)だ。同社には、アイシン精機やトヨタ自動車が出資している。テクノバは、大阪大学の高橋亮人名誉教授と神戸大学の北村晃名誉教授をアドバイザーとして迎え、神戸大学と共同で研究を続けている。

 荒田名誉教授は2008年5月、報道機関を前に大阪大学で公開実験を行った。その際の手法は、酸化ジルコニウム・パラジウム合金を格子状のナノ構造にし、その構造内に重水素ガスを吹き込むと、常温で過剰熱とヘリウムが発生する、というものだった。テクノバチームは、荒田方式をベースにニッケルと銅ベースのナノ粒子に軽水素を吹き込み、300℃程度に加熱することで1カ月以上の長期間、過剰熱を発生させることに成功している。

 1989年に米ユタ大学で、常温核融合が耳目を集めた際、その手法は、パラジウムの電極を重水素の溶液中で電解するというものだった。その後の研究で、電解方式のほかに、重水素ガスを圧入する方法が見いだされ、再現性が高まっている。現在では、電解系よりもガス系の方が主流になっている。東北大とクリーンプラネットによる水野方式、テクノバと神戸大の荒田方式も、いずれもガス系の手法を発展させたものだ。

 また、「パラジウムやニッケル、銅などの試料表面のナノ構造が、核反応を促し、熱発生の大きなカギを握ることが分かってきた」(東北大学の岩村教授)。


放電処理などでパラジウムとニッケルによるナノスケールの構図を持った膜で覆われる(出所:東北大学・岩村特任教授)
 定性的には100%の再現性を確立したなか、今後の研究ターゲットは、「発生する熱をいかに増やすか、そして重水素とパラジウムという高価な材料でなく、軽水素とニッケルなどよりコストの安い材料による反応系でいかに熱を発生させるかがポイント」と、クリーンプラネットの吉野英樹社長は話す。

■米国で初めて特許が成立

 2016年10月2~7日、「第20回凝縮集系核科学国際会議(ICCF20)」が仙台市で開かれる。ホストは、新設した東北大学の凝縮系核反応研究部門が担う。同会議は、1~2年おきに開かれ、世界から凝縮集系核反応の研究者が200人以上集まり、最新の成果を発表する。ここでも日本の2つのグループによる研究成果が大きな目玉になりそうだ。

 ICCF20の準備は着々と進んでおり、「欧米のほか、中国、ロシアなど、約30か国から研究者が参加する予定で、企業からの参加者も増えそう」(東北大学の岩村特任教授)。ICCFは、2012年に開かれた第17回会議の頃から企業に所属する研究者の参加が増え始め、2013年7月の第18回会議では、4割以上が凝縮集系核反応を利用した「熱出力装置」の開発を進める企業などからの参加者だった。

 クリーンプラネットの吉野社長は、「凝縮集系核反応に取り組む企業は、表に出ているだけでも75社に達し、その中には、電機や自動車の大手が含まれる。こうした企業の動きに押される形で、米国の政策当局は、凝縮集系核反応を産業政策上の重要な技術として、明確に位置づけ始めた」と見ている。

 米国特許庁は2015年11月、凝縮集系核反応に関する米研究者からの特許申請を初めて受理し、特許として成立させた。これまでは、現在の物理学では理論的に説明できない現象に関して、特許は認めていなかった。特許が成立した技術名は、「重水素とナノサイズの金属の加圧による過剰エンタルピー」で、ここでもナノ構造の金属加工が技術上のポイントになっている。

■日本とイタリアがリード

 米国議会は2016年5月、凝縮集系核反応の現状を国家安全保障の観点から評価するよう、国防省に対して要請しており、9月には報告書が出る予定だ。この要請に際し、米議会の委員会は、「仮に凝縮集系核反応が実用に移行した場合、革命的なエネルギー生産と蓄エネルギーの技術になる」とし、「現在、日本とイタリアが主導しており、ロシア、中国、イスラエル、インドが開発資源を投入しつつある」との認識を示している。

 「常温核融合」から「凝縮集系核反応」に名前を変えても、依然としてこれらの研究分野を"似非科学"と見る研究者は多い。そうした見方の根底には、現在の物理学で説明できないという弱みがある。特に低温での核融合反応に際し、陽子間に働く反発力(クーロン斥力)をいかに克服しているのか、粒子や放射線を出さない核反応が可能なのか、という問いに応えられる新理論が構築できていないのが実態だ。

 とはいえ、説明できる理論がまったく見えないわけではない。2つの元素間の反応ではなく、複数の元素が同時に関与して起こる「多体反応」による現象であることは、多くの理論研究者の共通認識になっている。金属内で電子や陽子が密集している中で、何らかの原理でクーロン斥力が遮蔽され、触媒的な効果を生んでいることなどが想像されている。

 東北大学では、熱発生の再現実験と並行して、こうした理論解明も進める方針だ。こうして、理論検討が進み、新しい物理理論が構築されれば、「革命的なエネルギー生産」の実用化はさらに早まりそうだ。

(日経BPクリーンテック研究所 金子憲治)

米シェール大手7社、昨年の赤字4兆円 産油量なお高水準 サウジなど調整滞る一因

2016年02月26日 | 資源・エネルギー
米シェール大手7社、昨年の赤字4兆円
産油量なお高水準 サウジなど調整滞る一因
2016/2/26 3:30 日経朝刊

 【ヒューストン=稲井創一】地中のシェール層から原油や天然ガスを生産する米国のシェール
企業の経営が一段と厳しくなっている。大手7社の最終損益は2015年12月期で計約370億ドル
(約4兆円)の赤字に落ち込み、前年の約110億ドルの黒字から一転した。強気の経営は影を潜め、
投資を大幅抑制して財務重視に姿勢を転換した。一方、産油量はなお高水準で、サウジアラビア
やロシアなど米国外の産油国の生産調整が滞る一因になっている。


シェールオイルの掘削装置(1月、テキサス州)=ロイター




原油価格の指標の一つである北米産WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)
の価格は15年の1年間で約4割下落した。
 「足元の1バレル32ドル台ではやっていけない」(デボン・エナジーのデビッド・ハーガー
最高経営責任者=CEO)
 「生き残るには50~60ドルへの上昇が必要だ」(パイオニア・ナチュラル・リソーシズの
スコット・シェフィールドCEO)
 24日には米テキサス州ヒューストンで開催した米国最大の石油業界の会合でシェール企業
幹部の悲鳴が相次いだ。デボンとパイオニアは優良鉱区を抱え、生産の効率向上でも主導する大手だ。
 24日までに発表された両社を含む米主要シェール企業7社の15年12月期決算は売上高の急減と
多額の減損処理で、大幅に悪化した。シェール各社はコスト削減を競い、生産・開発投資を大幅
削減する構えだ。16年の投資の15年からの削減幅について、デボンが75%、ヘスは40%と計画する。
 新規投資抑制で、原油掘削に使用する設備リグの稼働数は2月19日時点で413基とピーク時の
約4分の1まで激減。ところが足元の米原油生産は日量約910万バレルで、直近の最高だった
15年6月から約50万バレル減っただけだ。15年9月時点の米エネルギー情報局(EIA)は
16年1~3月期には日量884万バレルに減ると予測したが、節目の900万バレルをなかなか
割り込まない。米原油の約半分とされるシェールの生産が高水準なためだ。
 これはサウジアラビアとロシアを軸とする米国外の主要産油国の間で表面化した生産調整を
滞らせる一因になっているようだ。サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は23日のヒューストン
での講演でシェール関係者を前に「政府と業界はリバランス(供給過剰の解消)を探るべきだ」
と述べ、価格安定への協調を訴えた。石油輸出国機構(OPEC)の盟主であるサウジと
米シェール企業は低価格にどこまで耐えられるか互いを試している。
 採算悪化でも産油量がなかなか減らない理由の一つは技術革新による生産性の向上だ。
大手でも信用力を裏付ける現金の確保に迫られているとの事情もある。安値でも高生産を
維持して一定の収入を確保するためだ。シェール企業の多くは借入金で開発資金などを手当て
してきたが、業績悪化で返済能力への不安が高まり、負債の借り換えを迫られるケースもある。
 さらにシェール開発に詳しい関係者は「掘っただけで生産に着手していない油井の在庫がある」
と指摘する。各社は14年後半に油価の急落が始まる前、猛烈な勢いで掘削を進めたので、こうした
「在庫」がなお多いとされる。目先の現金を得るため、在庫の油井で生産を始めるというわけだ。
 シェール企業は単独での生き残り指向が強く、いまの時点では再編の動きは鈍い。一方、石油
メジャーのエクソンモービルとシェブロンが米南部のパーミアン地区で、遅れていたシェール開発
に力を入れる動きがある。

水素を液体化、体積500分の1に 千代田化工建設の新技術を聞く

2016年01月26日 | 資源・エネルギー
水素を液体化、体積500分の1に 千代田化工建設の新技術を聞く

2013/8/8 7:00 日経ニュース

 クリーンだが、かさばるのが難点とされてきた水素の使い勝手を画期的に向上させる技術を千代田化工建設が開発した。液体化して体積を500分の1に小さくし、常温・常圧で貯蔵や輸送が可能になる。水素社会への扉を開くものと国際的にも注目を集める。同社技術開発ユニットの岡田佳巳技師長に開発の背景などを聞いた。

■新開発の触媒、1年使えて再利用も可能

 ――「SPERA(スペラ)水素」と商標登録された新技術の中身を説明してください。

 「有機溶剤のトルエンと水素を化学反応させメチルシクロヘキサン(MCH)という化学物質にして水素を貯蔵・輸送する技術だ。MCHは修正インクやボールペンのインクなどに日常的に使われている。例えばガソリンなどと同じようにためたり運んだりできる」

 「体積は500分の1になる。ガスの状態で500分の1にするとしたら、500気圧の高圧ボンベに閉じ込める必要があるが、MCHなら常温・常圧で貯蔵できる」

 「トルエンに結合して水素を固定化する技術は以前から確立済みだった。これまで実用化できなかったのは、MCHに固定した水素を再びガスの形に分離する効率的な技術(脱水素化技術)がなかったからだ」

 「1980年代にカナダの水力発電でつくった水素を欧州に運ぶ『ユーロケベック計画』で脱水素技術の開発に挑んだが、できなかった。私は2002年に脱水素化の技術を開発しろと命じられ、ほぼ10年をかけて実用レベルの技術を開発できた。ちなみにスペラはラテン語で『希望せよ』という意味だ」

 ――脱水素化反応の触媒が開発のポイントですか。

 「従来の脱水素化触媒は寿命が課題で、2~3日で使えなくなった。私たちが開発した触媒は1年(8000時間以上)は十分使える。白金の触媒で、自動車排ガス浄化用触媒と同じく、劣化したら回収して再利用が可能だ。初期投資はやや高いかもしれないが、運転コストは安い触媒だ」

 「白金の粒子をおよそ1ナノ(ナノは10億分の1)メートルまで小さくし、(触媒反応の土台になる)アルミナの上に均一に分散させてつけた。MCHの分子の大きさは0.6ナノメートルくらいなので、白金粒子はほぼ分子と同じサイズだ。まさにナノサイズの触媒技術で、世界でもほかに例がないと思う」

 「触媒にはこのほかにもいくつか工夫がしてある。基本的な構造は論文などで公表したが、容易にはまねはできないはずだ」

 ――どのような形で実用化を考えていますか。

 「まず想定しているのは、水素を大量に製造・輸送するサプライチェーンだ。産油・産ガス国で天然ガスや石油の随伴ガスから水素を生産し、MCHにしてタンカーで日本など消費国に大量輸送する」

 「水素製造時には二酸化炭素(CO2)が生ずるが、これは油田に押し込んで石油増進回収(EOR)か、炭素回収・貯留(CCS)に使えばよい。CO2はいまは廃棄物扱いだが、化石資源が枯渇する将来には貴重な炭素資源になるはずだ。消費国に運んだMCHは脱水素化して水素を化学工業や発電向けに供給する。普及期を迎える燃料電池車向けへの供給も可能だ」

 「もう少し将来を見通せば、風力や太陽光など再生可能エネルギーを使って水素を生産して利用、CO2を排出しない低炭素社会づくりにつなげたい。水素は天然には存在しない2次エネルギーで、その点は電気と同じだ。太陽、風力などどんな1次エネルギーからでもつくれる究極のエネルギーだが、大量に効率よくためる技術がないことには基幹エネルギーにはなれない。SPERA水素はそこを可能にしたという意味でゲームチェンジングな技術だ」

■3年以内に実用化、自社の事業拡大

 ――水素は既存の火力発電所で燃やせますか。

 「およそ70%くらいまでなら天然ガスなどに混ぜて燃やせる。混ぜた分だけCO2の排出を減らせる。80%以上になると水素は燃焼温度が高いので特別な燃焼器やタービンが要るだろう」

 ――横浜の研究所(新子安オフィス・リサーチパーク)に建てた実証プラントに見学者が押し寄せていると聞きますが。

 「デモプラントは毎時50立方メートルの水素をMCHに固定化、脱水素化を繰り返す。プラントには特殊な素材を使わなくてもいいし、ガスの形で貯蔵しないので爆発の恐れも少ない。実際に見てもらうのがいちばんで、国内外から様々な見学者に来ていただいている」

 「先日はパリの国際エネルギー機関(IEA)で水素技術のロードマップをつくる会議に呼ばれて、説明をした。大量貯蔵・輸送技術は世界でも千代田化工の技術だけだと評価された」

 ――千代田化工として、この技術をどう生かすのですか。

 「エンジニアリング会社として液化天然ガス(LNG)基地の建設などを生業としているが、非常に好不況の波が大きな業界だ。新技術を武器に新しいエネルギー会社として事業の拡大ができると考えている。自らがプレーヤーになる。無論、千代田化工だけでは水素サプライチェーンはつくれないので、商社や海運会社、化学会社、それに産油国などと組んで展開していく。3年以内に実用にもっていきたい」

 ――コスト面での課題は。

 「新エネルギー産業技術開発機構(NEDO)が5年ほど前に行った試算では、圧縮水素ガスをタンクローリーで水素ステーションまで供給するとコストは1立方メートル当たり約85円(水素の原価は約15円)ほどになる。このうち50円以上が圧縮にかかる経費だ。圧縮にかかるコストがなければ価格は3分の1程度になる計算だ。私たちはいま1立方メートル当たり30円で提供できると考えている。また発電に使った場合、大量輸送による輸送費節減や、脱水素化に必要な熱をゴミ焼却場から安価に入手できるなどの条件を前提とすれば、LNGや石炭火力と遜色ないコストで発電できる。将来、CO2の排出に規制がかかれば、水素が有利になるかもしれない」

■取材を終えて
 「ゲームチェンジング」という岡田さんの言葉が印象に残った。水素は資源量にほとんど限りがないといっていいしクリーンなエネルギーだ。期待も大きいが、体積が大きく爆発の危険性があり扱いが難しい。原子力発電所事故の「水素爆発」という悪いイメージもある。それが脱水素化触媒というひとつの発明で、まったく事情が変わってくる。
 さらに目を開かされたのは、天然ガスなどから水素をつくる際に生ずるCO2を資源ととらえる視点だ。CO2を地中に埋めるCCSはとてもコストのかかる手法だが、埋めたCO2はいつの日か取り出して、再び水素と合わせれば、化学産業の資源になる。石油がなくなっても合成繊維や樹脂などの石化製品がつくれる。
 潜在力のある技術だが、課題はこれをネタに国際的なエネルギービジネスを立ち上げる構想力や求心力が千代田化工や日本の企業にはたしてあるかだろう。せっかくの機会を逃してはならないと思う。

川重・岩谷産業、水素エネ普及へ拠点 神戸港に新設、液化し輸入

2016年01月26日 | 資源・エネルギー
川重・岩谷産業、水素エネ普及へ拠点
神戸港に新設、液化し輸入
2016/1/26 3:30 日経朝刊

 温暖化ガス排出量が少ない水素を輸入し、国内へ供給して水素社会を実現するプロジェクトが始動する。川崎重工業や岩谷産業は神戸市と協力して輸入拠点を神戸港に新設し、2020年度をメドに稼働させる計画だ。現在は製鉄所などの副産物で生まれる水素を使っているが、燃料電池車や発電所の燃料として普及が加速しそうな20年代には不足する懸念がある。
 輸入基地は神戸空港がある空港島内の市有地に整備し、総事業費は100億円を超える見込み。広さは約1ヘクタール。高圧・低温で液化した水素を特殊なタンカーで輸入して貯蔵し、タンクローリーで各地に出荷する。規模は商用のひな型となる数千万立方メートル程度だ。
 輸入用タンカーや荷揚げ用設備、貯蔵タンクを川重、タンクから輸送車に積み込む設備は岩谷が設置する見通し。両社は同分野の技術開発で先行しており、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金を建設費の一部に充てる。
 輸入する水素は低品質で安価な「褐炭」が豊富なオーストラリアで生産する案が有力。Jパワーが石炭火力発電の技術で生産に協力する。環境負荷が相対的に小さい液化天然ガス(LNG)の輸入価格交渉では、東京電力福島第1原子力発電所事故の後に、日本勢が不利になる場面があった。エネルギー調達源を多様化する目的もあり、経済産業省は30年をメドに水素の本格導入を目指す。


→ 水素まで輸入とは情けない。白金を使わないで水から水素を作り出す方法があるのに...

原油市場 見えぬ新秩序 NY一時30ドル台 新興国の需要低迷・供給過剰 投資滞ればリスクも

2016年01月13日 | 資源・エネルギー

原油市場 見えぬ新秩序 NY一時30ドル台
新興国の需要低迷・供給過剰 投資滞ればリスクも
2016/1/13 3:30 日経朝刊

 米原油市場で指標原油WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の
1バレル30ドル割れが目前に迫った。12年ぶりの安値は新興国がけん引する需要の
低迷と、産油国が制御不能に陥った供給過剰の帰結だ。原油市場失速のスパイラル
は世界経済にとどまらず、地政学の新たなリスクを増幅する。




「石器時代は石がなくなったから終わったのではない」。1970年代に石油輸出国機構
(OPEC)の時代を築いたサウジアラビアのヤマニ石油相が残した警句だ。
 サウジの当局者はこの言葉をかみしめているに違いない。サウジは世界最大級の
原油埋蔵量を持つ。生産余力は今も他の追随を許さない。だが、1バレル30ドル割れ
目前の原油価格は国家運営に深刻な影響をもたらしている。
 国際通貨基金(IMF)によると、サウジがこのままのペースで金融資産を取り
崩すと、5年で底をつく。政府は電気やガソリンの値上げを決めた。福祉や教育を国
が丸抱えする石油大国の面影はない。
 2000年代の原油高は、中国やインドなど新興国の旺盛な需要がけん引した。中国が
「新常態」と呼ぶ経済成長の減速の結果、需要が伸び悩むのは鉄鉱石や石炭など他の
資源と同じ構図だ。
 ただし、石油の場合、1年半で4分の1の水準へと、ジェットコースターのような
価格の急落をもたらした要因としてシェール革命がある。エネルギー分析の第一人者
である米国のダニエル・ヤーギン氏はシェールオイルの台頭を「4、5年前には誰も
想像できなかった」という。
 米国を起点とする供給革命は、原油の需給バランスだけでなく、地政学上のきしみ
も広げた。大産油国として台頭する米国にサウジは危機感を強める。サウジやイラン
などOPECの足並みはそろわず、非OPEC産油国の雄であるロシアとも距離が埋
まらない。
 シリア内戦やイスラム過激派の勢力拡大など中東は今、混迷を深める。サウジは
米オバマ政権の中東政策に不満を強め、ウクライナをめぐる米欧とロシアの対立も続く。
米国、ロシア、サウジ。国際政治の対立に石油の主導権争いが油を注ぐ。
 原油安は14年夏に下落を始めた時の見通しと比べて、長期化するとの見方が強まっ
ている。原油市場を安定に導く新たな秩序はまだ、見えない。原油安の先には何が待っ
ているのか。
 重要なのは「シェールの時代」が続く保証がないことだ。国際エネルギー機関(IEA)
は20年代に入るとシェールオイルの生産量は頭打ちになると予測する。
 IEAのファティ・ビロル事務局長は「原油安が10年単位で続くと原油の中東依存度
は70年代の水準に戻る。今、油田開発投資が滞れば、将来、急激に価格が高騰するリスク
がある」と指摘する。原油安は消費国にとって恩恵は大きい。だが、その長期化はいずれ
破裂するリスクをため込むことに注意しなければならない。
(編集委員 松尾博文)

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上記が日経の記事である。注目すべき動きがある。米国がキューバと和解したのと同様、
以前チャベス大統領と敵対関係にあったベネズラと米国が急速に関係をよくしている
ことである。実は、世界最大の原油埋蔵量が確認されているのはベネズエラである。

原油確認埋蔵量(単位:億バレル)


この10年間で4倍近くに増え、サウジアラビアを追い抜いている。
これは同国の開発技術が進み、採掘が可能とされる原油の量が飛躍的に増加したこと
が原因である。同国の原油確認埋蔵量には多くの「重質油」「超重質油」が加算されており、
これらを抽出するには技術の更なる向上と、費用もかかることが指摘されているが、
米国はシェールガスに加え、南米での原油の調達が可能となり、中東に頼らずとも
石油を確保できる体制構築に動いている。

問題なのは世界6位の原油埋蔵量のロシアである。同国の1バレル当りの生産コストは
Rosneftは生産コストが4ドル/バレル(サウジとほぼ同等)、Lukoilは損益分岐が25ドル/バレル
と言われるほどばらつきがあるが、下図のように30ドル前後が実力と言われており30ドルを
切る価格は国家財政を圧迫するのは確実であり、原油価格値上げにあらゆる手段を行使
してくる可能性があることである。
プーチン大統領の動向には、目が離せない1年になりそうである。








サウジ来年予算、財政赤字10.5兆円 原油安が打撃 付加価値税を検討

2015年12月29日 | 資源・エネルギー

サウジ来年予算、財政赤字10.5兆円
原油安が打撃 付加価値税を検討
2015/12/29 3:30 日経朝刊

 【ドバイ=久門武史】世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアは28日、
2016年予算を発表した。歳出から歳入を引いた財政赤字は3262億リヤル
(約10兆5千億円)となり、15年実績見込みより約400億リヤル減らす目標を
掲げた。底が見えない原油価格の下落が財政を直撃した格好。サウジ財務省は
同日、財政改革を進める方針を示した。補助金の見直しや付加価値税をはじめ
とする新税の導入を検討している。



 サウジの16年予算は歳入が5138億リヤルと、15年実績見込み比で15%減少する。
歳出は8400億リヤルで同14%減とした。
 サウジが同日明らかにした財政収支の15年実績見込みは、歳入が6080億
リヤルで同年の予算より15%少なかった。逆に歳出は9750億リヤルと予算を
13%上回り、3670億リヤルの赤字となった。15年予算は1450億リヤルの赤字
を見込んでいた。サルマン国王が国民向けに打ち出した給付金支給のほか、
隣国イエメンへの軍事介入の戦費がかさんだとみられている。
 財務省は28日の声明で、向こう5年間で水道や電気の料金などを段階的に
見直すとし、こうした民生分野での手厚い補助金を削減する考えを示した。
歳入面では「手数料と罰金の水準を見直す」とし、たばこや清涼飲料水を値上げ
の対象に挙げた。「幅広い経済活動の民営化」も盛り込んだ。
 サウジはムハンマド副皇太子の主導で経済改革プランを策定中だ。
 サウジは国債の発行や外貨準備の取り崩しで急場をしのいでいる。準備資産
残高は11月時点で2兆3832億リヤルと前年同月に比べ14%落ち込んだ。
このうち「外国証券への投資」は同22%減り、保有株の売却を急いでいるもようだ。
国際通貨基金(IMF)は10月、このままでは5年以内にサウジの準備資産が
枯渇すると警告していた。
 石油輸出国機構(OPEC)が4日の総会で生産枠の協議を棚上げしたこと
もあり、原油市場では供給過剰感が解ける兆しが見えない。国際指標の北海ブレント
原油価格は1バレル37ドル前後で、14年の高値の3分の1という低水準だ。
年明けにも米欧がイランへの経済制裁を解いてイラン産原油の輸出が増えれば、
需給が一段と緩むのは必至だ。


レアアース再び下落 モーター磁石向け、中国で安値売り

2015年12月11日 | 資源・エネルギー
レアアース再び下落
モーター磁石向け、中国で安値売り
2015/12/11 3:30 日経朝刊




 主にハイブリッド(HV)車のモーター磁石に使うレアアース(希土類)の国際スポット(随時契約)価格の上昇が一服し、再び下落傾向が強まった。12月上旬時点で、ネオジムが1キロ50~51ドルと前月上旬比9%安い。ほぼ同じ用途のジスプロシウムは同280~283ドル前後と前月上旬と比べて1~2%下がった。
 ネオジムは高性能磁石に欠かせない金属素材で、同じ希土類金属のジスプロシウムを加えると、耐熱性が増す。
 世界供給の8割以上を占める中国で、販売量を確保しようとする生産者の安値売りが加速した。最大の需要国でもある中国では、同国の景気減速で設備投資などが減少し「産業機械向けのモーター磁石の需要が振るわない」(国内の磁石メーカー)との声も聞かれる。
 11月には中国政府が備蓄するとの観測が国際市場に広がり、国際価格は10月と比べて15%前後上昇した。だが実需が弱く、上昇の勢いは続かなかった。備蓄予定に関する中国の公式見解表明は現時点ではない。「備蓄購入の価格交渉が難航しているようだ」(大手商社)との見方もある。

原油安止まらず NY市場、一時36ドル台 新興国減速に追い打ち

2015年12月09日 | 資源・エネルギー
原油安止まらず
NY市場、一時36ドル台 新興国減速に追い打ち
2015/12/9 3:30 日経朝刊

 原油相場が再び下げ足を速め、世界経済の波乱要因になってきた。ニューヨーク市場の指標原油は8日の取引で一時1バレル36ドル台に下げ、6年10カ月ぶりの安値をつけた。産油国の市場シェア争いは激しさを増す一方で、原油価格(総合2面きょうのことば)の低迷は長引くとの見方が多い。原油安は新興国通貨や資源株にも下落圧力をかけ、減速が鮮明な新興国景気を一段と冷やしかねない。



通貨が急落
 米市場の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は史上最高値(2008年の1バレル147ドル)の4分の1になった。アジア市場の指標のドバイ原油は8日に1バレル36ドルまで下げ、7年ぶりの安値を記録した。
 下げ加速の契機は4日の石油輸出国機構(OPEC)総会。協調減産を探る国とシェア維持を優先する国との溝が埋まらず減産が見送られた。イラクのアブドルマハディ石油相は総会後「なぜOPECだけがシェアを犠牲にしなければならないのか。非加盟国もそうすべきだ」と述べた。
 シェア争いはさらに激化しそうだ。イランは欧米の経済制裁緩和後に輸出を増やす腹づもりで、中国企業と大型の長期契約を結ぶ。その中国ではロシアとサウジアラビアがつばぜり合いをし、価格競争に拍車をかける。
 先安観を強めた投資ファンドは原油先物への売りを増やし、1日時点の売り持ち高は17万枚(1枚千バレル)超と過去最高水準に達した。「荒い値動きは続き、WTIは30ドルまでの下げ余地がある」(みずほ銀行デリバティブ営業部の佐藤隆一氏)
 原油安を受け、8日の外国為替市場では産油国通貨が軒並み急落した。対米ドルでカナダドルが11年半ぶりの安値、コロンビアの通貨ペソは過去最安値を更新した。第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストは「通貨安で外貨建て債務が膨らみ、経済規模の小さいコロンビアなどで悪影響が出る」と懸念する。
 欧米の株式市場では英BPや米シェブロンなど石油株の下落が目立ち、8日の米ダウ工業株30種平均は続落して始まった。日本市場も資源関連株に売りが先行した。
 石油元売り首位のJXホールディングス株は4%安。原油安で16年3月期の石油天然ガス開発事業は8割の営業減益が避けられない。三菱商事のエネルギー事業の純利益は33%、三井物産は59%減少する。4~9月期の決算発表にあわせJXは通期のドバイ原油価格の予想を1バレル60ドルから53ドルに、三菱商事は65ドルから53ドルに見直したばかり。それでも実勢価格の急落に追い付かない。
 社債市場では元利払いが滞るなどして債務不履行(デフォルト)を迫られる資源関連企業が続出。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズによると11月27日時点の世界のデフォルト件数は101と09年(268)以来の多さになった。その4割を石油・ガス、鉱業の資源関連が占める。
消費を刺激
 深刻なのは産油国の財政だ。国際通貨基金は、世界最大の原油輸出国サウジアラビアが15年に国内総生産(GDP)比22%の財政赤字に陥ると予測。準備資産が5年内に枯渇すると警告した。
 同様に財政赤字を見込むアラブ首長国連邦は国内向けガソリン・軽油への補助金を撤廃した。サウジなど近隣の産油国も補助金カットを検討。大盤振る舞いで国民の不満の芽を摘んできた中東の君主国は、緊縮に動かざるを得なくなった。
 一方、原油安は先進国の消費を刺激する面がある。11月の米新車販売台数は同月として01年以来の高水準だった。ガソリン安が消費者の購買意欲を高めた。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「昨年9月から今夏までの資源安は世界のGDPを0.13%押し上げる」と、差し引きでプラスの効果があると試算する。
 資源の多くを輸入する日本にも恩恵がある。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは「中堅・中小企業は、円安より資源安の方が業績改善につながる」とみる。

JX・東燃ゼネ統合合意 17年メド発足、石油2強に 合理化効果1000億円

2015年12月02日 | 資源・エネルギー
JX・東燃ゼネ統合合意
17年メド発足、石油2強に 合理化効果1000億円
2015/12/2 3:30 日経朝刊

 石油元売りで売上高首位のJXホールディングス(HD)と3位の東燃ゼネラル石油が経営統合で大筋合意したことが1日、明らかになった。2017年をめどに統合する見通し。両社が持つ製油所の統廃合など合理化を進め、5年後に年1000億円規模の統合効果をめざす。国内需要の縮小が続く中、石油元売りはJX・東燃ゼネ、出光興産・昭和シェル石油の2強体制に収れんする。

 両社は対等の精神で統合することで大筋合意しており、週内にも発表し条件を詰める。14年度の両社の売上高を単純合算すると約14兆3000億円と合併を決めた出光と昭シェル(合計約7兆6000億円)の2倍近い巨大元売りが誕生する。



 JXHDは傘下に石油元売りのJX日鉱日石エネルギー、石油・天然ガス開発のJX日鉱日石開発、金属事業のJX日鉱日石金属の3社を持つ。統合比率などは今後詰めるが、東燃ゼネ株主にJXHD株を割り当て、その上で東燃ゼネとJXエネを統合する案を軸に検討する。ブランドは当面継続使用し、将来的には一本化も検討する。
 12年に米エクソンモービルから株を買い取って独立した東燃ゼネも原油安で経営環境は厳しい。JXとの統合をテコに経営基盤を強化し、勝ち残りをめざす。
 国内ガソリン販売数量シェアはJXエネが約33%、東燃ゼネが約20%で統合後は50%を超える。出光・昭シェルの約32%を引き離す。ガソリンスタンドの数もJXの「エネオス」、東燃ゼネの「エッソ」「モービル」「ゼネラル」の合計約1万4000カ所に達する。


 国内シェアが5割を超すだけに公正取引委員会との協議を経た上で、17年中の統合をめざす。
 統合後は地域で重複する製油所を統廃合して固定費を削減。生まれた収益を元手に海外展開を加速して、収益基盤を強化する狙い。
 製油所はJXエネと東燃ゼネを合わせて全国に11カ所。原油をガソリンや軽油に精製する能力は日量で計約200万バレルと国内の過半を占めるが、少子化などを背景に過剰感は強い。両社がそれぞれ製油所を持つ神奈川県や大阪府で設備の統廃合を進め、合理化効果を引き出す。スタンドにガソリンを供給する油槽所の重複解消や、給油所の収益改善にも取り組む。
 海外ではJXが原油や天然ガス、銅など資源開発を手掛け、東南アジアでは製油所や給油所運営も検討中。東燃ゼネもオーストラリアで石油製品の合弁事業を計画する。国内の収益基盤を固めて海外展開を急ぐ。
 かつて10社以上あった石油元売りは10年のJXHD誕生で大手5社に集約されたが、経営環境はなお厳しい。経済産業省も「エネルギー供給構造高度化法」をテコに業界の原油処理能力削減を求め、各社はさらなる再編を迫られていた。
 7月に出光と昭シェルが経営統合の協議入りで合意した後、JXHDが東燃ゼネに統合を持ちかけ、交渉を進めてきた。