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ドゥテルテ氏、日本でも反米発言 背景に市長時代の事件

2016年10月26日 | 国際政治
ドゥテルテ氏、日本でも反米発言 背景に市長時代の事件
2016/10/26 21:18 日経

 来日中のフィリピンのドゥテルテ大統領は26日、日本貿易振興機構(JETRO)などが東京都内で開いたセミナーで「外国軍は我が国から出ていってほしい」と述べた。フィリピンで米軍の再駐留を認める米比防衛協力強化協定を念頭に改めて米軍撤退を求めた。反米発言は日本でも繰り返され、旧宗主国の米国に向ける嫌悪感の大きさをあらわにした。




フィリピン経済フォーラムで講演するフィリピンのドゥテルテ大統領(26日午後、東京都港区)

 「自立した外交政策を追求する。今後2年ほどで我が国から外国軍の存在がなくなるようにしたい」。ドゥテルテ大統領は経済セミナーでの講演で、フィリピンへのさらなる投資を企業関係者に呼びかけたあと、話題を米国との関係に向けた。
 フィリピンはアキノ前政権下の2014年に米国と防衛協力強化協定を締結し、米軍の事実上のフィリピン駐留に道を開いた。ドゥテルテ氏は「必要なら、協定を見直したり、廃止したりする」と発言。「米軍との合同軍事演習はもう終わりにする」と付け加えた。協定見直しの方針を米国と同盟関係にある日本に来ても展開した。

 さらに、死者が出ることもいとわない強硬な麻薬犯罪対策を非難されたことに言及。フィリピンの麻薬問題の深刻さを強調したうえで「オバマ米大統領や欧州連合(EU)が虐殺事案として国際司法裁判所に私を訴えると脅してきた」と怒りを爆発させた。

26日のドゥテルテ氏の主な発言
中国が大きくなってくれば米国との間に衝突の可能性がある※
独立した外交政策を追求すると宣言した。今後2年ほどで外国軍は出ていってほしい
中国の友人になりたい
米国は「犯罪者をかむのをやめないと、エサをやらないぞ」と言っている(自身を犬に例えて)
米国は我が国を50年間統治し、ぜいたくしてきた
自分の命は失ってもいいが、我々の尊厳や名誉が国際社会に踏みにじられるのは許さない
生活の質は落ちるかもしれないが、米国の支援なしに生き残っていける
(注)※の発言は日本・フィリピン友好議員連盟との会談時、ほかはフィリピン経済フォーラムでの講演

 日本の国会議員でつくる日比友好議員連盟のメンバーと東京都内のホテルで会談した際には「中国が大きくなってくれば、米国との間で衝突が起こる可能性はある」と述べた。出席した自民党の議員が明らかにした。米国と距離を置き、中国に接近する政策を推し進めるなか、発言の真意に関心が集まりそうだ。
 筋金入りともいえる反米姿勢はどこから来るのか。きっかけの一つは2002年に市長を務めていたダバオ市で起きた爆発事件だ。

 米国人男性のマイケル・メイリン氏が宿泊していたホテルの部屋で爆発が起きた。比当局は部屋にあったダイナマイトが原因と指摘した。ドゥテルテ氏の説明によると、米連邦捜査局(FBI)のバッジを着けた人物が数日後、けがをしたメイリン氏を病院から連れ出し、米大使館が用意した飛行機で許可なく海外に連れ出した。メイリン氏はFBIの一員との情報もあった。

 「当時の米大使は徹底的に調査をして私に説明をするといったが、いまだに何の連絡もない。米国は我々を侮辱した」。ドゥテルテ氏は訪日前にこう語った。「許せないのは国際社会で尊厳と栄誉が踏みにじられることだ。フィリピン国民には尊厳があるということを米国に証明したい」。26日の講演をこう締めくくった。

 社会主義思想に共感を持っているとの見方もある。ドゥテルテ氏はベトナム戦争を巡って反米運動が広がった1960~70年代前半に大学生活を送り、左翼系団体にも所属していたようだ。大学ではフィリピン共産党創設者のシソン氏からも学んだ。今でも反米思想を抱いているとの指摘もある。政権には共産党推薦の閣僚もいる。

 フィリピンと米国の軍は24日に開く予定だった高官レベルの協議を延期したと明らかにした。ドゥテルテ氏の止まらない反米発言が影響した可能性がある。

医療・郵便、ロシアに技術 領土にらみ包括協力

2016年10月01日 | 国際政治
医療・郵便、ロシアに技術 領土にらみ包括協力
政府原案、生活インフラの向上重点
2016/10/1 3:30 日経朝刊

 政府が北方領土問題と並行して進めるロシアへの経済協力プランの原案が明らかになった。内視鏡といった体への負担の少ない医療技術を極東に広げたり、日本郵便などが持つ郵便システムのノウハウを提供したり、生活に深く関連する日本式インフラを提供するのが柱。中小企業進出など経済交流も拡大する。広範な経済協力を打ち出し、最大の懸案である領土問題の前進を目指す。(解説を政治面に)


 ロシア経済分野協力担当の世耕弘成経済産業相が11月をメドに訪ロし両政府で協議する。12月15日に山口県で開く首脳会談での合意を目指す。

 日本側は国内企業に積極的なかかわりを求め、目に見える形でロシアの生活向上に貢献する。必要資金は国際協力銀行(JBIC)などの融資や出資と国の予算、民間資金を活用する。

 ロシア側のニーズが強い医療では日ロの専門家で協議し、日本の先端医療を提供する。内視鏡やカテーテル、透析など体に負担がかかりにくい医療技術が検討項目に挙がる。日本人医師が医療行為に携われるようロシア側に求め、日本食を扱う病院食も提供する。

 郵便は東芝や日本郵便がロシア郵便と連携。配達の日数短縮などを目指す。はがきを配達順に仕分ける機器などを開発しており、こうした機器の配備を進める。

 極東のハバロフスク国際空港の改修や運営への参画も盛り込む。双日などが同空港への出資を検討し、極東開発の加速に協力する。ウラジオストクなど極東の港湾や寒冷地での住宅整備や、植物工場や水産加工場といった産業拠点の建設も進める。

 中小企業のロシア進出を後押しするほか、観光客の行き来も増やす。訪日客向けのビザ緩和を検討し、日本の旅行業者にロシア向けの観光プランをつくってもらう。

 日本側が練る協力プランは安倍晋三首相が「新たなアプローチ」として打ち出した。1事業あたりの規模が6000億円に膨らむ事業も含む。2国間の経済協力としては異例の手厚さだ。

 首相は30日の衆院予算委員会で、「戦後70年以上たっても平和条約を結べない異常な状況に終止符を打たなければならない」と発言、日ロ交渉への強い意欲をにじませた。歴代の内閣で打開できなかった北方領土問題でロシアの譲歩を引き出す狙いも透けてみえる。

 ただ、経済協力の交渉が先行して肝心の領土交渉が停滞すれば、逆に政権が批判を浴びるリスクもはらむため、難しいかじ取りが要求される。ロシアと日本の民間協力を円滑に軌道に乗せるのにも時間がかかりそうだ。

【どういうことだ】核禁止国連総会で議論へ条約交渉入り採択 日本は棄権

2016年08月23日 | 国際政治

核禁止 国連総会で議論へ 条約交渉入り採択 日本は棄権
2016年8月20日 東京新聞夕刊



 【ジュネーブ=共同】ジュネーブの国連欧州本部で行われていた核軍縮に関する国連作業部会は最終日の十九日、核兵器の法的禁止についての二〇一七年の交渉入りを、「幅広い支持」を得て国連総会に勧告するとの報告書を賛成多数で採択した。今秋の国連総会で議論が本格化する見通しで、核兵器禁止条約制定に向け大きく歩を進めることになりそうだ。
 報告書は参加国の総意で採択する方針だったが、オーストラリアが条約制定に反対の立場を取る十四カ国を代表し土壇場で多数決を要求。賛成六八、反対二二、棄権一三で採択されたが、核禁止を巡る国際社会の亀裂が鮮明になった。日本は棄権した。
 報告書には、交渉入りに賛同せず、多国間の軍縮は安全保障を考慮しながら進めるべきだと勧告する国々もあったとして、核兵器を徐々に減らす漸進的なアプローチを提唱する日本や北大西洋条約機構(NATO)諸国などの意見も盛り込み、両論併記とした。
 多数決を求めたのはオーストラリアのほか韓国やポーランド、トルコなど。交渉入りの勧告はアフリカ諸国や東南アジア諸国など百七カ国が支持、反対派の意見を支持したのは日本や欧州諸国など二十四カ国が中心だった。
 タニ議長(タイ)が当初示していた報告書草案は「核禁止のための法的措置」について、参加国の過半数が一七年の総会での交渉開始を支持したと明記。しかし、日本など条約反対派は「過半数」の文言に反発し「幅広い支持」に修正された。
 作業部会は今年二月に第一回、五月に第二回会合が行われ、今月五日から断続的に行われた今回が最終会合だった。



◆深い溝浮き彫り
 日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センターの戸崎洋史主任研究員の話 報告書は、本来なら一つの結論に向かって話がまとめられるべきだが、核兵器禁止条約の交渉開始への幅広い支持を明記する一方、それに反対する国もあることを示した両論併記にならざるを得なかった点に、利害が異なる核軍縮の問題の難しさが表れている。
 全会一致での採択でなかったことで、条約の賛成国と反対国の溝の深さが浮き彫りになってしまった。核保有国が会議に参加しておらず、報告書がそのまま核軍縮につながるかは不透明だ。
 被爆国の日本はもちろん、米国も核兵器の非人道性の問題は真剣に捉えている。しかし、北朝鮮の核開発や中国の軍事的台頭などで地域の安全保障が揺らぐ中、日本は核の抑止力も重視せざるを得ない。
 一足飛びで条約による法的禁止を目指すよりも、原爆の悲惨さを共有し、核兵器の数やその役割を徐々に減らしていく方が、核のない世界の実現に向けた現実的なアプローチだ。日本は亀裂の深まる国家間の橋渡し役として根気よく協議を続けてほしい。 (共同)

クリントン氏が経済政策演説「TPP反対」

2016年08月12日 | 国際政治
クリントン氏が経済政策演説「TPP反対」
2016/8/12 9:24 日経新聞

 【ワシントン=川合智之】米民主党の大統領候補、ヒラリー・クリントン前米国務長官(68)は11日、中西部ミシガン州での集会で経済政策について演説した。環太平洋経済連携協定(TPP)について「私は反対する。選挙後も大統領として反対する」と明言し、大統領就任後はTPP賛成に転じるとの見方を否定した。米国によるTPPの承認は極めて厳しい状況に追い込まれている。

 クリントン氏は7月の大統領候補指名の受諾演説ではTPPに直接触れなかったが、今回の演説ではTPPに言及したうえで「雇用を減らし賃金を下げる全ての貿易協定を止める」と強調した。
 共和党の大統領候補、不動産王ドナルド・トランプ氏(70)もTPP反対を訴えており、次期大統領の有力候補がそろって労働者層の支持拡大をにらみ、TPP反対で足並みをそろえている。

 現職のオバマ大統領は11月の大統領選後、自身が退任する来年1月までの「レームダック国会」で関連法案を審理し、承認を得たい考えを示している。だが野党・共和党だけでなく、与党・民主党でも賛成票がまとまっていない。日米が中心となって交渉を進めたTPPだが、肝心の米国の承認が得られるかどうかは一段と不透明になった。

 クリントン氏は「中国の不正な貿易慣行と戦ってきた」と述べ、中国の為替操作や知的財産権侵害に対抗すると強調した。不正貿易を摘発する「取締官の人数を3倍にする」と表明した。

 一方で、クリントン氏はトランプ氏の経済政策を厳しく批判した。トランプ氏が提唱する減税案を「大企業や億万長者、ウォール街の金融機関幹部に何兆ドルもの減税をもたらそうとしている」と断じ、富裕層優遇の「抜け穴だ」と非難した。育児費用の所得税の控除案についても「多くの勤労家庭にはわずかな利益しかない」と語った。

 トランプ氏に対しては、共和党内の反発も歯止めがかかっていない。米メディアによると、元議員や高官ら70人以上が11日、共和党全国委員会に対し、トランプ氏への資金援助を中止し、大統領選と同時に実施する上下院選挙に集中すべきだとする公開書簡に署名した。「民主党の地滑り的勝利の恐れがある」と指摘した。

英で女性首相誕生へ メイ氏とレッドソム氏が決選投票 保守党党首選

2016年07月08日 | 国際政治
英で女性首相誕生へ メイ氏とレッドソム氏が決選投票 保守党党首選 日経新聞 2016/7/8 1:10

 【ロンドン=木寺もも子】英国の与党・保守党の党首選は7日、下院議員による2回目の投票の結果、最終候補がメイ内相(59)とレッドソム・エネルギー担当閣外相(53)の2人に絞られた。約15万人の党員投票で9月9日に新党首が選出される。故サッチャー首相以来、英国で2人目の女性首相が誕生する見通しとなった。



 同党下院議員330人のうち、メイ氏が6割にあたる199票、レッドソム氏が84票、ゴーブ司法相が46票を獲得した。メイ氏は投票結果を受けて「離脱派、残留派の双方から幅広い支持を受けることができた」と喜びの言葉を述べたうえで「指導力を発揮して保守党を再び団結させる。離脱交渉で最良の条件を勝ち取る」と決意表明した。
 メイ氏は議員歴約20年のベテランで、党本流の有望なリーダー候補と目されてきた。国民投票では残留派だったが目立った活動はせず、投票後は離脱の結果を尊重すると表明した。党内の幅広い支持を集めた。

 一方、レッドソム氏は金融業界の出身。2010年に下院議員に初当選したばかりだが、離脱キャンペーンで知名度を上げた。政治経験の浅さを懸念する声もあるが、新鮮なイメージが党内の混乱に嫌気がさした一般党員の支持を得る可能性もある。

 EU残留派だったメイ氏は5日の1回目の投票で2位以下に大差をつけていた。今回は離脱派のレッドソム氏とゴーブ氏のどちらが残るかが注目されていた。ゴーブ氏は、突然の出馬で離脱派の盟友、ジョンソン前ロンドン市長を撤退に追い込んだことで「裏切り者」と批判された。陣営の議員が「党員投票にレッドソム氏を残すのは深刻な脅威だ」と呼びかけたことも逆風になった。

 議員の間ではメイ氏が圧倒な支持を獲得しているが、最終的には一般党員の決選投票で決まる。必ずしも議員の動向と一致しない。

英のEU離脱 是か非か

2016年06月13日 | 国際政治
創論
英のEU離脱 是か非か
ナイジェル・ローソン氏/ロマーノ・プロディ氏
日本経済新聞 2016/6/12 3:30

 欧州連合(EU)からの離脱か、残留か。その判断を問う英国の国民投票が23日に行われる。離脱となれば、世界の政治、経済への影響は計り知れない。離脱の是非と影響について、離脱を支持する英元財務相のナイジェル・ローソン保守党上院議員と、残留派で、かつて欧州委員長も務めたロマーノ・プロディ元イタリア首相に聞いた。

■独自の貿易戦略、可能に 英元財務相 ナイジェル・ローソン氏


 ――なぜ英国のEU離脱を支持するのですか。
 「まず言いたいのは、離脱派は決して孤立主義を掲げているわけではないということだ。英国は歴史的に米国と特別な関係を持ち、大英帝国時代から築いたアフリカ、アジアまで広がる英連邦諸国もあり、新興国との関係も強化している。英国の強さはこのグローバルな視点にこそある。それなのに今はあまりにも多くのEUの規制や権限に縛られている。地理的には欧州のなかにあるが、EUを離れて、グローバルな視点で独自の戦略を追求したほうが、英国にとって有益だ」

 ――EUに属する意味が薄れてきたということですか。

 「EUの大元となった欧州石炭鉄鋼共同体の設立は、2つの大きな大戦を経て、ドイツの脅威を封じ、新たな大戦を防ぐことが出発点だった。たしかに現在もロシアなどの脅威はあるが、安全保障上は北大西洋条約機構(NATO)の枠組みがあり、そのほかにもテロなどグローバルな地政学リスクに対応するための国際体制がある。EUに加盟する理由にはならない」

 「一方、各国の主権に対するEUの権限は強まるばかりだ。欧州司法裁判所は英国の最高裁判所よりも優位に立ち、EUの法令が英議会の法律よりも上位にある。金融危機を受けてEUが導入を決めた金融取引税に、オズボーン英財務相は英国の金融業の競争力が低下すると猛反対したが、受け入れられなかった。EUの最終目的は常に政治統合であり、経済統合を重視する英国とは相いれない」

 ――キャメロン首相は「離脱すれば英経済に悲劇が訪れる」と訴えています。

 「全く同意しない。80年代を思い出してほしい。70年代に『欧州の病人』といわれるほど経済状態が悪かった英国は、思い切った改革を行う必要があった。当時財務相だった私をはじめサッチャー政権が取り組んだのは、規制緩和であり、民営化であり、金融ビッグバンなどの徹底した構造改革だ。英国はすでにEC(欧州共同体)に加盟していたが、そのおかげで経済が立ち直ったわけではない」

 「英経済の基本は改革マインドだ。だが今はEUの規制が多すぎて、こうした改革を進めることすら難しい。企業や投資家が立地や投資を決める際に最も重視するのは税制や規制環境であり、その国がどの経済共同体に属しているかは決定打ではない。EUを離脱して、企業や金融街シティーの競争力を高める規制緩和を行えば、むしろ長期的には英経済の成長力が高まる」

 ――「離脱すれば貿易協定で不利な扱いになる」と懸念する声は多いですが。

 「残留派はEU単一市場に参加することによる関税の減免措置の恩恵を強調するが、世界的に自由貿易の流れが強まっている。EUの域外関税の平均は3.6%とごくわずかだ。関税措置がなくなってもたいした打撃ではない」

 「大事なのは貿易を拡大することであって貿易協定ではない。英国は貿易協定がなくても、日本や米国、中国、インドなどと活発に貿易している。参加国の多いEUは他国との自由貿易協定(FTA)も一向に進んでいない。むしろEUを抜けた方が、独自に貿易戦略を進め、世界貿易機関(WTO)に対しても英国の主張を貫くことができる。多くのEU加盟国よりも高い成長を遂げているスイスは2国間の貿易協定を軸にしているが、英国も離脱後の交渉で有利な条件を引き出せる」

 ――国民投票を巡り保守党内の亀裂も深まっています。

 「保守党は歴史ある党で、これぐらいで分裂したりしない。ただ、キャメロン首相への信任は今後の言動いかんでぐらつく可能性がある。キャンペーンを通してキャメロン氏は国民に離脱の恐怖を訴えすぎている。仮に投票結果が10%以内の僅差なら、2度目の国民投票を実施する圧力が党内からも高まるだろう」

 ――EUの未来像をどのように見ていますか。

 「個人的には財務相だった80年代から統一通貨ユーロには反対してきた。結果はもう明白ではないだろうか。債務危機は繰りかえされ、域内の経済は低迷し、若年層の失業率は高止まりしている。にもかかわらずEUはなお権限を増大し、統合を深化させようとしている。残留派はEU離脱後の英国の姿が見えないと批判するが、私からすればEUの未来こそ見えないのだ」

(聞き手はロンドン=小滝麻理子)

 Nigel Lawson サッチャー政権下で閣僚を歴任し、財務相として規制緩和や民営化を主導。EU離脱運動の中心人物の一人。84歳。

◇     ◇

■国際政治で影響力弱く 元欧州委員長 ロマーノ・プロディ氏


 ――英国のEU離脱に強く反対していますね。
 「EUには英国が加わっていてしかるべきだとの思いがある。国民投票をすること自体が間違いだ。(離脱の可能性が浮上したことで)英国はEUでの存在感が弱くなった。キャメロン首相は残留のために『これ以上EUとは緊密にならない』というが、容認しがたい。国際社会で重要な役割を持つには結束したEUでなくてはならない」

 「英国の離脱が世界に発するメッセージも懸念する。例えば、インドは英国の眼鏡を通して欧州をみるからだ。アフリカの大半もそうだし、オーストラリアもそうだ」

 ――昨年からの難民危機の影響をどう見ていますか。

 「難民問題は離脱運動の大きな論点だ。『英国が難民に侵略される』とまでいう人もいる。だが国民投票を行う決定は、今ほど問題が深刻になる前のことだった。英国が常に離脱を望む世論を内包していたということだ」

 ――ギリシャの債務問題などは離脱派に「結束する欧州」の負の側面と映るのでは。

 「英国は単一通貨ユーロを採用していないのでギリシャ問題が大事だとは思わない。より重要なのは過去20年にわたり英メディアが『EUは強すぎる。EUの官僚はいらない』という論陣を張ったことだ。EUは無駄遣いをする怪物のように扱われた。欧州委員会の予算は域内総生産の1%に満たないのに」

 「英国の論調は常に『我々の方が優れているのだから、できの悪い連中に統治されたくない』というものだった。現実離れした意見だ。だが今は英フィナンシャル・タイムズも『ブリュッセルの方が英国の官僚主義よりマシかも』と離脱に反対している」

 ――離脱派の背後にナショナリズムを感じますか。

 「もちろんだ。だが、その根底にあるのは中間層の崩壊と収入の(伸びの)停滞であり、さらには中国などの台頭への不安だ。それはドイツやオーストリア、イタリアにもみられる。本質的には英国のEU離脱とは無関係なのに離脱派に追い風になっている。その全体的な流れこそが、最も心配すべきポイントだ」

 「将来への不安は米国や日本にもある。グローバル化は貧しかった国の成長に貢献し、裕福な国に新たな課題を突きつけた。(途上国に富が行き渡る)世界的な社会正義が先進国の内部を分断したという意見があり、そうした反応がポピュリズムの政党と結びついたのが英国の離脱問題だ。不安や格差が離脱派をここまで強くしてしまった」

 ――スイスやノルウェーのようにEU非加盟でも強い経済を維持する国はあります。

 「スイスは国連機関を多く招致する一方、国際的な問題に関与していない。経済では限られた産業でスキルを高めた。欧州に2つ目のスイスは存在し得ない。ノルウェーは資源国で人口も少なく、英国との違いはさらに大きい」

 「英国は欧州の金融センターだから離脱の影響は大きい。もっとも経済的な損害の予想は誇張が多すぎる。壊滅的とまではいかないだろう。離脱しても英国経済は生き延びるが、国際政治の場で消滅する。それが私の見方だ」

 ――投票後の英国とEUの関係をどうみますか。

 「どちらに転んでも『2段速度の欧州』になる。より緊密になるための努力をする国と、それを拒む国に分かれる状態だ。英国など複数の国はもとから、検査なしで国境を越えられる協定にもユーロにも加わっていない。その構図がより鮮明になる」

 「だが20年もすれば誰もがEUの重要性を再認識するだろう。かつて英国は欧州経済共同体(EEC)に加わらず、欧州自由貿易連合(EFTA)を主導したが、EECが成功だとわかるとくら替えした。将来を考えれば英国はEUにとどまるしかない」

 ――離脱派にはEUが「ドイツ1強」になったことへの不満もあるのでは。

 「ドイツが強いのは自前の規律と美徳があるからだ。それに加えて、過去15年でフランスが段階的に弱くなったこともある。ドイツと距離を置こうとして離脱を求める運動はフランスやスペイン、イタリアでもあるだろう。だが欧州には誰もが入れる傘は1つしか開かれていない。それはドイツの傘だ。英国は既にかつての力を失い、(離脱で)それを取り戻すこともない。EUにとどまった方がいくらかの影響力を残せるのだ」

(ローマで、原克彦)

 Romano Prodi イタリア商工相などを経て96~98年と06~08年に同国首相。99~04年に欧州委員長を務めた。76歳。

◇     ◇

<聞き手から>独立国家の誇りと郷愁


 「良い機会だから少しご案内しましょう」。取材後、こう切り出したローソン卿と、19世紀からロンドン中心部に鎮座する薄暗い国会議事堂を歩いた。「民主主義の源がここにあるのです」。ローソン卿の言葉が重く響いた。
 移民や労働規制、経済・貿易政策などEU離脱派の主張は多岐にわたるが、根底にあるのは独立国家の誇りだ。「英経済の神髄は改革」と語るローソン卿には、1980年代に市場重視の構造改革をやり遂げた自負がにじむ。

 だが、そこには失われた大英帝国の栄光への郷愁に似た響きがあるのも否めない。冷戦終結から四半世紀。急速なグローバル化で世界は変わった。英経済を支えるのは今や欧州など世界中から受け入れる資本や人材だ。EU離脱が引き起こす混乱と停滞は英国を一時的にせよこの流れの「圏外」に押しやりかねない。

 復古的な名誉ある孤立に舞い戻るのか。23日の投票で英国民は、世界と向き合う姿勢を問われる。

(小滝麻理子)


クリントン氏VSトランプ氏 党の分裂抱え本選へ 米大統領選の構図確定

2016年06月09日 | 国際政治
クリントン氏VSトランプ氏 党の分裂抱え本選へ
米大統領選の構図確定 日本経済新聞 朝刊 1面 2016/6/9 3:30

 【ワシントン=吉野直也】11月の米大統領選は7日、民主党のヒラリー・クリントン前米国務長官(68)と共和党の不動産王ドナルド・トランプ氏(69)の対決が確定した。2人は副大統領候補を決め、7月の党全国大会で指名される。大統領になるのは初の女性か、異端か。2人は党内の分裂・反発という不安を抱えながら、本選にのぞむ。




 2人は知名度こそ高いが、米国民の好感度は歴代の候補の中で最低。党内に分裂の火ダネを残した候補同士による異例の大統領選になる。



 民主党候補指名争いは7日、6州で予備選、党員集会を開いた。クリントン氏は西部の大票田カリフォルニアなどで勝利し、バーニー・サンダース上院議員(74)に4勝2敗だった。クリントン氏は7日夜に「米国の歴史で初めて女性が主要政党の大統領指名候補になる」と勝利宣言した。

 党幹部らで構成する特別代議員を含めた代議員4765人のうち指名に必要な過半数を確保した。7月の党全国大会で、代議員の投票を得て指名される。大統領候補の討論会は9月に始める。

 大統領選の大きな争点は、米国社会を覆い、分断の原因になっている経済格差への不満にどう対応するかだ。クリントン氏とトランプ氏の姿そのものが対立軸になる。一つは経験豊富な正統派の職業政治家か、手腕が未知数の非政治家か。もう一つはオバマ米大統領の路線の継承か、刷新か。前者はクリントン氏で、後者はトランプ氏だ。

 「核のボタン」を預かる米軍最高司令官を兼ねる米大統領の資質も争点。クリントン氏は「トランプ氏の気性は米軍最高司令官、大統領としてふさわしくない」と資質に照準を絞る。トランプ氏もその点は意識しており「自分の気性は穏やかだ」と反論している。

 世界秩序に影響する外交・安全保障政策も焦点だ。オバマ政権の1期目で国務長官を務めたクリントン氏は、オバマ氏の多国間対話による国際協調主義を引き継ぐ。トランプ氏はイスラム教徒の米国入国禁止案に象徴される孤立主義が特徴だ。 2人の政策は、ブッシュ前政権が踏み切ったアフガニスタンとイラクの2つの戦争への米国民の厭戦(えんせん)気分が底流にある。トランプ氏はこれに加えテロを巡る米国民の不安心理に乗じ、第2次世界大戦への参戦で否定された孤立主義に傾く。「偉大な米国の復活」(トランプ氏)、「強い米国」(クリントン氏)を実現する手法は2人で大きく異なる。


オバマ大統領の広島スピーチ全文

2016年05月28日 | 国際政治
アメリカのオバマ大統領は5月27日、広島市の平和記念公園で喧嘩をし、下記の演説を行った。


==以下全文==

71年前の明るく晴れ渡った朝、空から死神が舞い降り、世界は一変しました。閃光と火の玉がこの街を破壊し、人類が自らを破滅に導く手段を手にしたことがはっきりと示されたのです。

なぜ私たちはここ、広島に来たのでしょうか?

私たちは、それほど遠くないある過去に恐ろしい力が解き放たれたことに思いをはせるため、ここにやって来ました。

私たちは、10万人を超える日本の男性、女性、そして子供、数多くの朝鮮の人々、10人ほどのアメリカ人捕虜を含む死者を悼むため、ここにやって来ました。

彼らの魂が、私たちに語りかけています。彼らは、自分たちが一体何者なのか、そして自分たちがどうなったのかを振り返るため、本質を見るように求めています。

広島だけが際立って戦争を象徴するものではありません。遺物を見れば、暴力的な衝突は人類の歴史が始まった頃からあったことがわかります。フリント(編注・岩石の一種)から刃を、木から槍を作るようになった私たちの初期の祖先は、それらの道具を狩りのためだけでなく、自分たちの同類に対して使ったのです。

どの大陸でも、文明の歴史は戦争で満ちています。戦争は食糧不足、あるいは富への渇望から引き起こされ、民族主義者の熱狂や宗教的な熱意でやむなく起きてしまいます。

多くの帝国が勃興と衰退を繰り返しました。多くの人間が隷属と解放を繰り返しました。そして、それぞれの歴史の節目で、罪のない多くの人たちが、数えきれないほどの犠牲者を生んだこと、そして時が経つに連れて自分たちの名前が忘れ去られたことに苦しめられました。

広島と長崎で残酷な終焉へと行き着いた第二次世界大戦は、最も裕福で、もっとも強大な国家たちの間で戦われました。そうした国の文明は、世界に大都市と優れた芸術をもたらしました。そうした国の頭脳たちは、正義、調和、真実に関する先進的な思想を持っていました。にもかかわらず、支配欲あるいは征服欲といった衝動と同じ衝動から、戦争が生まれたのです。そのような衝動が、極めて単純な部族間同士の衝突を引き起こし、新たな能力によって増幅され、新たな制限のないお決まりのパターンを生んでしまったのです。

数年の間に、およそ6000万人もの人たちが亡くなりました。男性、女性、子供、私たちと何ら違いのない人たちがです。射殺され、撲殺され、行進させられて殺され、爆撃で殺され、獄中で殺され、餓死させられ、毒ガスで殺されました。世界中に、この戦争を記録する場所が数多くあります。それは勇気や勇敢な行動を綴った記念碑、言葉では言い表せないような卑劣な行為の名残でもある墓地や空っぽの収容所といったものです。

しかし、この空に立ち上ったキノコ雲の映像を見た時、私たちは人間の中核に矛盾があることを非常にくっきりとした形で思い起こすのです。

私たちの思考、想像力、言語、道具を作る能力、そして人間の本質と切り離して自分たちを定めたり、自分たちの意志に応じてそうした本質を曲げたりする能力といったものを私たちが人類として際立たせること――まさにそうしたことも類を見ない破滅をもたらすような能力を私たちに与えられることによって、どれだけ悲劇をもたらす誘発剤となってしまうか。

物質的な進歩、あるいは社会的な革新によって、どれだけ私たちはこうした真実が見えなくなってしまうのか。

より高い信念という名の下、どれだけ安易に私たちは暴力を正当化してしまうようになるのか。

どの偉大な宗教も、愛や平和、正義への道を約束します。にもかかわらず、信仰こそ殺人許可証であると主張する信者たちから免れられないのです。

科学によって私たちはいろいろなコミュニケーションをとります。空を飛び、病気を治し、科学によって宇宙を理解しようとします。そのような科学が、効率的な殺人の道具となってしまうこともあります。

現代の社会は、私たちに真理を教えています。広島は私たちにこの真理を伝えています。技術の進歩が、人類の制度と一緒に発展しなければならないということを。科学的な革命によって色々な文明が生まれ、そして消えてゆきました。だからこそいま、私たちはここに立っているのです。

私たちは今、この広島の真ん中に立ち、原爆が落とされた時に思いを馳せています。子供たちの苦しみを思い起こします。子供たちが目にしたこと、そして声なき叫び声に耳を傾けます。私たちは罪のない人々が、むごい戦争によって殺されたことを記憶します。これまでの戦争、そしてこれからの戦争の犠牲者に思いを馳せます。

言葉だけで、そのような苦しみに声を与えるものではありません。しかし私たちには共有の責任があります。私たちは、歴史を真っ向から見据えなけれなりません。そして、尋ねるのです。我々は、一体これから何を変えなければならないのか。そのような苦しみを繰り返さないためにはどうしたらいいのかを自問しなくてはなりません。

いつの日か、被爆者の声も消えていくことになるでしょう。しかし「1945年8月6日の苦しみ」というものは、決して消えるものではありません。その記憶に拠って、私たちは慢心と戦わなければなりません。私たちの道徳的な想像力をかきたてるものとなるでしょう。そして、私たちに変化を促すものとなります。

あの運命の日以来、私たちは希望を与える選択をしてきました。

アメリカ合衆国そして日本は、同盟を作っただけではなく友情も育んできました。欧州では連合(EU)ができました。国々は、商業や民主主義で結ばれています。

国、または国民が解放を求めています。そして戦争を避けるための様々な制度や条約もできました。

制約をかけ、交代させ、ひいては核兵器を廃絶へと導くためのものであります。それにもかかわらず、世界中で目にする国家間の攻撃的な行動、テロ、腐敗、残虐行為、抑圧は、「私たちのやることに終わりはないのだ」ということを示しています。

私たちは、人類が悪事をおこなう能力を廃絶することはできないかもしれません。私たちは、自分自身を守るための道具を持たなければならないからです。しかし我が国を含む核保有国は、(他国から攻撃を受けるから核を持たなければいけないという)「恐怖の論理」から逃れる勇気を持つべきです。

私が生きている間にこの目的は達成できないかもしれません。しかし、その可能性を追い求めていきたいと思います。このような破壊をもたらすような核兵器の保有を減らし、この「死の道具」が狂信的な者たちに渡らないようにしなくてはなりません。

それだけでは十分ではありません。世界では、原始的な道具であっても、非常に大きな破壊をもたらすことがあります。私たちの心を変えなくてはなりません。戦争に対する考え方を変える必要があります。紛争を外交的手段で解決することが必要です。紛争を終わらせる努力をしなければなりません。

平和的な協力をしていくことが重要です。暴力的な競争をするべきではありません。私たちは、築きあげていかなければなりません。破壊をしてはならないのです。なによりも、私たちは互いのつながりを再び認識する必要があります。同じ人類の一員としての繋がりを再び確認する必要があります。つながりこそが人類を独自のものにしています。

私たち人類は、過去で過ちを犯しましたが、その過去から学ぶことができます。選択をすることができます。子供達に対して、別の道もあるのだと語ることができます。

人類の共通性、戦争が起こらない世界、残虐性を容易く受け入れない世界を作っていくことができます。物語は、被爆者の方たちが語ってくださっています。原爆を落としたパイロットに会った女性がいました。殺されたそのアメリカ人の家族に会った人たちもいました。アメリカの犠牲も、日本の犠牲も、同じ意味を持っています

アメリカという国の物語は、簡単な言葉で始まります。すべての人類は平等である。そして、生まれもった権利がある。生命の自由、幸福を希求する権利です。しかし、それを現実のものとするのはアメリカ国内であっても、アメリカ人であっても決して簡単ではありません。

しかしその物語は、真実であるということが非常に重要です。努力を怠ってはならない理想であり、すべての国に必要なものです。すべての人がやっていくべきことです。すべての人命は、かけがえのないものです。私たちは「一つの家族の一部である」という考え方です。これこそが、私たちが伝えていかなくてはならない物語です。

だからこそ私たちは、広島に来たのです。そして、私たちが愛している人たちのことを考えます。たとえば、朝起きてすぐの子供達の笑顔、愛する人とのキッチンテーブルを挟んだ優しい触れ合い、両親からの優しい抱擁、そういった素晴らしい瞬間が71年前のこの場所にもあったのだということを考えることができます。

亡くなった方々は、私たちとの全く変わらない人たちです。多くの人々がそういったことが理解できると思います。もはやこれ以上、私たちは戦争は望んでいません。科学をもっと、人生を充実させることに使ってほしいと考えています。

国家や国家のリーダーが選択をするとき、また反省するとき、そのための知恵が広島から得られるでしょう。

世界はこの広島によって一変しました。しかし今日、広島の子供達は平和な日々を生きています。なんと貴重なことでしょうか。この生活は、守る価値があります。それを全ての子供達に広げていく必要があります。この未来こそ、私たちが選択する未来です。未来において広島と長崎は、核戦争の夜明けではなく、私たちの道義的な目覚めの地として知られることでしょう。

オバマ氏、長崎に言及へ 核廃絶、広島で声明 原爆資料館 訪問を計画

2016年05月11日 | 国際政治
オバマ氏、長崎に言及へ 核廃絶、広島で声明
原爆資料館 訪問を計画
日本経済新聞 夕刊 1面 (1ページ) 2016/5/11 15:30

 【ワシントン=吉野直也】オバマ米大統領が主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)閉幕後の27日に訪れる広島で声明を発表し、同じ被爆地の長崎にも言及することが明らかになった。今回は長崎を訪問しないため、オバマ氏が掲げる「核兵器なき世界」を象徴する都市として取り上げる。米大統領として初めての広島訪問で長崎にも触れ、核廃絶を訴える。




 第2次世界大戦末期の1945年8月9日、米軍は長崎に原爆を投下した。広島に続き、実戦で使われた人類史上2発目の核兵器で、多数の死傷者を出した。広島、長崎両市はオバマ氏の訪問をキャロライン・ケネディ駐日米大使に求めてきた。

 米政府内でもオバマ氏の広島訪問の決定を受け、長崎への対応が課題として浮上し、声明で取り上げる判断に傾いた。このほかに声明ではオバマ氏が広島を訪れることに批判的な中国や韓国を念頭にアジアの安定も呼びかける。広島で平和記念資料館(原爆資料館)を訪問し、記帳する。慰霊碑に献花する予定だ。

 アーネスト米大統領報道官は10日の記者会見で、被爆者との面会について「日程が固まっておらず、機会があるかは分からない」と述べるにとどめた。菅義偉官房長官は11日の記者会見で「具体的な行事は米側と調整していきたい」とだけ話した。

 アーネスト氏は原爆投下の決断をしたトルーマン元大統領について「厳しい決断をした」と理解を示しつつ、原爆投下の是非は「歴史家が評価するのが適切だ」と語った。オバマ氏の訪問が謝罪と解釈されるという見方は「間違いだ」とも反論した。

 オバマ氏の広島訪問を調整してきたケネディ駐日米大使は「日米の友好と揺るがぬ同盟の証しだ」とする声明を10日に発表した。声明は「『核兵器なき世界』に向けた両国の決意を再確認することになる。この時期に大使であることを光栄に思う。(訪問の)歴史的瞬間を楽しみにしている」とした。


オバマ氏、広島でアジアの安定訴えへ 演説を計画 日本経済新聞 朝刊 1面 (1ページ)

2016年04月23日 | 国際政治
オバマ氏、広島でアジアの安定訴えへ
演説を計画 日本経済新聞 朝刊 1面 2016/4/23 3:30


 オバマ米大統領は5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の直後に被爆地、広島を訪れ、演説する方針だ。日本側とはサミットが閉幕する27日の日程で調整する。1945年8月6日に原爆を投下した米国の現職大統領が広島を訪れるのは初めて。「核兵器なき世界」を掲げるオバマ氏は演説で、核廃絶とともにアジアの安定を訴える見通しだ。(関連記事総合2面に)

 米政府高官はオバマ氏の広島での演説に関して「日本人や核不拡散を望む人々に重要なメッセージを発信したい」と説明した。核開発を続ける北朝鮮を批判。日本は先の大戦の加害者だとして、広島訪問への反発が予想される中国や韓国などアジア諸国・地域を念頭に、アジアの安定を求める見込みだ。

 中韓の拒否反応は米国のアジア戦略にも影響しかねないと、政権内にはオバマ氏の広島訪問への慎重論がある。核廃絶の取り組みだけでなく、アジアの安定を呼びかけるのは、こうした懸念を沈静化する狙いもある。

 演説を巡って今年が旧日本軍による真珠湾攻撃75年目に当たる点に触れるかどうかも議論になっている。2015年に安倍晋三首相が訪米する際、真珠湾の訪問構想が浮上した。オバマ氏が広島を訪れることにより、首相の真珠湾訪問構想が再燃する可能性もある。

 米国による広島や長崎への原爆投下は「日米間の奥深くに刺さったトゲ」とも評される。オバマ氏の訪問はそのトゲを抜く効果も期待される。日米同盟関係は新たな段階を迎える。

 オバマ氏は09年4月、チェコの首都プラハでの演説で「米国は原爆投下の道義的な責任がある。核廃絶の先頭に立つ」として「核兵器なき世界」を提唱した。