ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

BTA広告がもたらすYahoo!のmixi化

2006年11月19日 | 検索・ポータル
Yahoo!井上さんがCGMへの大転換を進めるとの大号令をかけるとのこと。これまで井上さんといえば、どちらかというとCGM的なコンテンツに対しては消極的なイメージがあったのだが、これは何故だろう。ITmediaの記事の中でも書かれているが、「CGMは『行動ターゲティング広告』でマネタイズできる。サイトを閲覧する“人”をターゲットにしているため、広告がどのコンテンツに載っているかは2の次だ」との判断があったようだ。

 ITmedia News:ヤフーが「CGM化の大号令」 MySpaceは「連携も」

この行動ターゲティング広告(BTA広告)とはいったいどのようなものかというと、ユーザーのアクセスログなどの行動履歴を通じて、趣味や嗜好をセグメント化し、そのユーザーにとって最適な広告を配信するというものだ。これまでのバナーを中心としたWeb広告というのは、そのサイトに対して広告が紐付けられていた。つまり例えば「映画」サイトであれば、そこに訪れるのは「映画」に興味がある人だろうという仮説のもと、「映画」に関連した商品の広告主が出稿するといった具合だ。

もちろんこのやり方は位置外に間違いなわけではない。とはいえ、本当は自動車が好きな人がたまたま彼女とのデートのために映画サイトを見た場合、彼にとって興味のある広告というのは「自動車」に関するもののほうだろう。

BTA広告というのは、こうした訪問者と訪問先サイトに表示された広告のミスマッチを解消するものだ。つまりそのユーザーの行動履歴などを通じ、ユーザーの嗜好性や関心ごとに紐付いた広告を配信するための仕組みなのだ。

これはこれまでのサイト関係者からすると、大きなパラダイムシフトが訪れたことを意味する。ポータルサイトなどのメディアガイドを見てもらえば分かるのだけれど、これまでの広告出稿のあり方というのは、各ジャンルごとに分けられた「サイト」に対して広告を出稿するというものだった。そのためこれまではジャンルごとの各サイトが自らのユニークユーザー数やPV数などを上げることが至上命題だった。ジャンルごとに分かれた各サイトのメディアパワーが上がれば、それだけそれに関連した広告が付くというのが前提だったのだ。

しかしこのBTA広告の登場は、そのサイトのコンテンツに関わらず「ユーザー」の嗜好性に応じて広告を配信する。求められるのはジャンル毎に用意された「サイト」でのPV数やUU数だけではなく、ポータル全体としてのメディアパワーであり、ユーザーをいかに「囲い込み」、「接触機会」を確保するかということが大事となる。

それはポータルサイトの戦略的なあり方にも関わってくる。例えばいくつかのジャンル別「サイト」だけにアクセスが集中しているようなポータルサイトはBTA広告のメリットは活かせないだろう。ユーザーの「囲い込み」と「接触機会」を提供するためには、ジャンルの網羅性や継続的に使われるためのツール系のサービス、「mixi」などに見られるように、「集い」やすく「参加」型のコミュニティ系・CGM的なサービスが求められるようになる。より多様な嗜好のユーザーを集め、ポータルサイトとの接触機会を多くすることで、より多くの広告を最適なユーザーに提供していくことが可能となるからだ。

Yahoo!の場合、多様なコンテンツを既に用意しており、ユーザーを集める事に関しては国内でも最大であるが、以前のネットレイティングスの調査では、mixiに比べてユーザー一人当たりの利用時間が1分短かかったと思う。

BTA広告という「パラダイムシフト」を目前にし、いち早く、Yahoo!の体質を切り替えようということなのだろう。



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