ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

新しい価値が求められる時代

2008年07月06日 | 音楽
デジタル化、あるいはインターネットの時代のメリットの1つとして、過去のあらゆるコンテンツにアクセスできるということがある。楽曲配信サイトにアクセスすれば廃盤になったアルバムの楽曲だって販売されているし、動画配信サイトでは1stガンダムからZやseedやら過去の作品が揃っている。YouTubeにいたってはパッケージ化されていないTV番組やニュース映像だって見つけることができる。あらゆる過去の作品・コンテンツがアーカイブ化され、それらを容易に探しだし利用できるのだ。

光と陰。もちろんそれらはメリットだけではない。「グーグルを越える広告モデル」で書かれているように、過去のアーカイブされているコンテンツが今のコンテンツと対等な競争関係となり、また検索やレコメンドを通じてそれぞれの好みのコンテンツ「だけ」を利用するという状況が生じてしまう。一部の爆発的なヒットを別にすれば、全体的には新しいムーブメント・新しい「何か」が生まれにくいのだ。

そんな時代だからであろうか、CDショップにもオリジナルのCDだけではなくカバーもののCDのコーナーが設置されていたりする。

「Lumiere Diary~フツウの一日~」もそんな中の1つ。VILLAGE VANGUARD(ヴィレッジヴァンガード)でBGMとしてかかっていて気になっていたものだ。

このアルバムに収録されている曲を聴けば、誰もが何処かで聴いたことがあると思うだろう。「やさしい気持ち(Chara)」「Story(AI)」「A Perfect Sky(BONNIE PINK)」などヒット曲満載だ。

とは言っても、ぱっと聴いた感じはオリジナルとは全くの別物。アコースティック・デュオ「羊毛とおはな」のボーカル「はな」が歌い、その声はカフェ・ミュージックのように非常に心地よい作品として仕上がっている。

例えば「何度でも」。おそらくドリカム 吉田美和が歌えば、情感たっぷりに、リスナーである僕らにまで届くかのようなくらい、その「感情」を歌いあげるだろう。吉田美和はその気持を届けようとするのだ。

あるいは「三日月」。絢香も吉田美和ほどこなれてはいないけれど、リスナーに想いを届けようとする歌い手だ。その歌は絢香の想いの強さに共鳴するかのように僕らの心に訴えかける。しかしそれは同時に僕らにその想いをしっかりと受けとめることを強要する。想いが深ければ深いほど求められることも深いのだ。

10代や20代の頃なら、そんなアーティストたちの想いに真剣に向き合えたかもしれないけれど、30代も半を過ぎると、仕事やらプライベートやら抱えたくもない荷物がいっぱいで、どちらかというと音楽に「癒し」を求めてしまう。やれやれ。全く「30以上は信じるな」だ。

しかしそういう時代だからこそ、こうした「オリジナル」でないものも価値をもつ。ボーカリスト「はな」の声は、そこに過度の想いを届けようとはしない。あくまで自身の側にとどめた上で、その曲を届けようとする。だからこそ「安らぎ」がある。「癒し」がある。リスナーとしては、全く身構えることもなく、1つのBGMとして聴くことができるのだ。鳥のさえずりやせせらぎの音と同じように。

新しいものが生まれない時代において、アーカイブされた作品の再評価・再視聴だけでなく、現在なりの新しい価値を付与しようとした場合、こうした新しい価値を付与したカバーは十分価値があるのだろう。


Diary~フツウの一日~ / Lumiere

01.ここでキスして。 / 作詞・作曲:椎名林檎
02.やさしい気持ち / 作詞・作曲:Chara
03.A Perfect Sky / 作詞・作曲:BONNIE PINK
04.何度でも / 作詞・吉田美和 作曲:中村正人,吉田美和
05.Story / 作詞:AI 作曲:2 SOUL for 2 SOUL MUSIC, INC.
06.つつみ込むように・・・ / 作詞・作曲:島野聡
07.三日月 / 作詞:絢香 作曲:西尾芳彦,絢香
08.GIRL TALK / 作詞・作曲:T.KURA & MICHICO
09.PRIDE / 作詞・作曲:布袋寅泰
10.RIDE ON TIME / 作詞・作曲:山下達郎

届く声と届かない声

羊毛とおはな「手をつないで」




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