書店で本を選んでいたら、源氏物語のことを店員さんに聞いている人がいた。
客 「初めての人でも読みやすいのがいいのですが・・・」
店員「そうですね、与謝野晶子、井上靖とかありますけど、田邊聖子さんのもよく 売れていますよ、私は読んだことがないんですけど」
実は私は源氏物語にはちとうるさい。
その3人の訳を全部読んでいる。(そしてさらに大和和紀さんの「あさきゆめみし」も。)
与謝野晶子訳の場合 歌人が訳した源氏物語。
源氏には和歌がたくさん出てくるので、いいかなと思った のだけど、文体全体が難しい。古典の教科書を読んでいる感じ。
そして和歌には注釈を読まないと進むことができない。
井上靖訳の場合 小説家の訳した源氏物語。
現代の小説として、普通にスムーズに読める。 私的にはこれがおすすめ。
田邊聖子訳の場合 個人的に言えば、宝塚の舞台「源氏物語」を観てから読んだので、どうしても 舞台とダブってしまう。
それを抜きにして考えれば、これもスムーズに読める源氏物語だとおもう。
続きとも言われている宇治十帖も是非読んでほしい。
番外編 田邊聖子氏の小説で「私本源氏」というのがある。
もちろんこれも源氏物語。
登場人物は光の君さまはじめお馴染みの人々。
ちょっと違うのは、語り手が従者だということ。
従者といってもあの有名な(?)惟光ではない。
そのまた下の従者で 熊五郎みたいな人が、ウチの大将(源氏の君)を語る「裏源氏物語」です。
ここでの光の君さまは気さくなおっさん。
関西弁丸出しで、朝帰ってくるなり 「後朝の別れ? へ、それってなんです?」 なんて言いいながら、すぐに湯漬けを所望し、サラサラと・・・。
ここまで全部読めば、「源氏物語」を制覇したと言えるかな?
(2008年3月9日)
☆コメントももらいました。
GUESTさん1
はじめまして。
私は、男の癖に更級日記やかげろう日記を高校生時代に読んでおりました。源氏物語はチャレンジしておりません。大作過ぎて、手に負えない気持ちでした。
先日ラジオで瀬戸内寂聴さんが、私と源氏物語という講演をしておられました。与謝野晶子、谷崎潤一郎、田邊聖子の三氏を取り上げて比較しておりました。瀬戸内さんの源氏物語はどうなんでしょうか?
紫苑
いらっしゃいませ。
古典の教科書で勉強するのと違い、訳とはいえ古典も普通の小説として楽しめますよね。
私は更級日記、かげろう日記はまだ読んでいませんが、枕草子もなかなか面白かったです。
源氏物語も瀬戸内寂聴さんのもありましたね。
読んでみようかな。
自分が読む時期、環境によって、感じ方は違うと思いますが、1000年も前にこんな大作が書かれていたなんて、すごいですよね。
優しくハンサムな源氏の君、だけど実はなにかにつけ、すぐよよっと泣く軟弱な男なんですよ
GUESTさん2
私は田辺聖子さんの 全部よみました。 丁度妊娠4ヶ月ころ、切迫早産で入院して、時間たっぷりあったので。 聖子さんのはとても楽しく分かりやすいですね! ぐいぐいひきつけられて 全部よめたのを思い出します。瀬戸内寂聴さんのは知らないな。今はとても人気の方ですよね。 ただ小説のタイプとしては あまり好みじゃないので 自然と避けていました。
比べて読むのも それぞれの個性が出て面白いね
紫苑
田辺聖子さんは、源氏の君を人間らしくえがいたのが話題になっていたような。
若かりし頃、義母、藤壺と不義密通した源氏の君。
後年になって、女三宮が柏木と・・・。
源氏は自分の罪がここで罰せられたのかと、そして父は、自分の罪を知っていたのかと愕然と・・・。
なんともどろどろした世界ですね、源氏って。
そして女三宮と柏木の間に生れた不義の子、匂宮のは宇治十条に出てきます。
これもなかなか面白い!
そういえば、橋田壽賀子さんも源氏を訳しているらしいですよ。
どんなのかな。
「渡る世間は女人ばかり」とか?
実は源氏物語が流行していた宮廷にも、やはり女の戦いはありました。
身分の高い女性は、様々な才能を持つ女房をそろえて、セレブサロンをつくっていました。そのサロンの評判が高まると天皇が遊びにくる可能性が高いからです。
お互いをライバル視していた清少納言と紫式部。
清少納言の方が年上で、日本で初の随筆「枕草子」も早くから評判をとっていました。
もちろん紫式部も負けてはいません。光源氏を中心としたもののあはれを書き上げた大作・源氏物語は、現在にもつながる傑作です。
しかしお互いをライバル視するあまり、紫式部と清少納言はそれぞれの作品の中で、それぞれの悪口を書いていたのです。
枕草子の中に書かれている男性評価、といっても清少納言は馬鹿にしているのですが、その中に「質素な格好でする御獄参りを、宣孝は派手な格好をして皆があきれていた」と笑いものにした文章があります。
この宣孝こそが紫式部の夫藤原宣孝なのです。
それに対向するように紫式部も日記の中でこうやり合っています。
「清少納言こそ、得意顔のはなはだしい人。あれだけ利口ぶって漢字を書きまくるけれどその知識まだ不十分。」
当時、漢字は男性が使い、女性はかな文字を書いていました。しかし二人は漢字の教養をももっていたため、そこでもまた火花を散らすことになるのです。
清少納言が得意げに漢字力を披露しているのを見て、紫式部は能ある鷹は爪をかくすものよ、と批難しているのです。
とはいえ、千年の時を超えてもなお、宮中の人々の生活が楽しく読めるのも、この二人の才女のおかげではないでしょうか。
(参考資料:酒井順子意地悪の系譜/ Webマガジン幻冬舎)
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