3/3 あれはいつだった? 第43話
犯人は現場に帰るとか戻るという公式を刑事ドラマで旭は見て知っていた。
それが現実の社会で本当かどうかは確かでなかった。
でも旭はあのホテルや直子のアパートなどいっさい接近しなかった。
旭は自分の部屋の直子のものはとっくに処分していた。
でもいくつかのものは処分できなかった。
大きなベッドの直子の枕。
それは二人で選んだ羽枕で、空気を入れるとペチャンコだった枕は
ふっくらするのだった。
そして直子の枕に顔をうずめるとかすかに直子が匂った。
枕に顔をうずめたまま、直子って呼んでみた。
もう起きて、いつまで寝ているの?
直子の声がしてギョとして起きあがった。
旭は日曜なんかによくそう言われたのだ。
直子は休みの日にいつまでも寝ているのが嫌いだった。
そんなに早く起きてなにするんだよ?
って旭によく聞かれた。
何もすることなんかなかった。
でも、朝日を浴びて、お湯を飲んだり、粉末でもいい、コーヒーを
飲んだりするのが直子は好きだった。
直子が朝を楽しんでいる間、旭はベッドで眠るかダラダラしているが
好きだった。 横になっていたかった。
直子は10時近くになると朝食の準備をした。
砂糖を牛乳に入れ、食パンを浸しバターで焼いて
フレンチトースト風にして、
卵とハム、ソーセージなどと組ませてりした。
野菜は果実とミックスにしていない野菜ジュースが好きだった。
時にコンソメスープでレタスを軽く煮たりすることもあった。
レタスって煮てもおいしんだね。 まだしっかり野菜だし
って旭が言った。
筆者の意見 これ、本当です。
うどんによくレタスを入れます。
これだとレタスの半分くらい一度で食べられます。
朝食のデザートはヨーグルトが多かった。
プレーナなヨーグルトにジャムやコンポートを入れと
買ったフルーツヨーグルトよりリッチになります。
食事が終わると旭が食器をシンクにもって行った。
直子は追いデザートと称して、クッキーの袋ややチョコレートをもって
リビングのベランダよりのソファに座った。
旭は呆れて、子供ね、直は。 朝からお菓子かい?
直子はチラっと旭を見るけど返事もしない。
直子の横に座ると、直子のお腹をつまんで
そんなに食べると今に太るからと言った。
太ったら嫌いになる?
直子はかなりきつい目で旭を見た。
嫌いにはならないよ、でも今のままでいてほしい
直子はその時持っているチョコやクッキーを旭の口に突っ込んで
それなら旭も太ればいいって言うのだった。
直子の気まぐれに旭はしばしば振り回された。
直子は姉3人の誰にも似ていない。
でも何かに集中する直子と、常識を度返した直子のやることは
旭を疲れさせた。
チョコレートが大好きな直子に某チョコレート会社の
アイスクリームを買ってきた夜、
チョコアイス? ごめんね、あまり好きじゃない
旭は目が点だった。
だってあんなにチョコ食べているじゃない?
チョコレートは好きよ、でもチョコアイスは同じじゃない。
直子は女の子らしく花が好きだった。
ある日、見つけたからと大きなバラのブーケを買ってきた。
直子はバラが大好きだった。
きれいって最初はすごく喜んだ。
そして彼女自身で大きなクリスタルの花瓶に生けた。
よかった と旭は内心ほっとした。
しかし、リビングのテーブルに生けたバラが翌朝、ベランダにあった。
直ちゃん、どうしてバラがベランダなの?
頭痛くなって、ベラと寝るのよくないのよね。
あとで中にいれるわ。
ベランダは日が当たり過ぎるから。
私ね、花は大好きなんだけどアレルギーであまり買わないの
とボソっと言った。
旭は花屋で花って高いと思いながら
10数本のバラに1万以上払ったのを複雑な気持ちで思い出していた。
直子のことをもっと知らないと旭は考えていた。
でも直球の質問はできなかった。
直子は姉たちとも、同級生の女子とも違っていて
把握しにくかった。
白骨死体のニュースを見ながら旭は後悔にさいなまれた。
でも自首する勇気はなかった。
スマホが鳴った。
久子だった。
久ちゃん、元気?
元気よ、たかお、今度はロンドンに行くの。
日本には戻らないわ、引越し準備で疲れた。
たわいもない話を小一時間ほどした。
久子は直子に会ったことはないけど
直子のこと知っている
久子が日本に戻らないことがなぜかよかったと
旭は思った。