3/4-5 あれはいつだった? 第45話
直子は秘密主義ではなかった。
旭はどっちかと言うと秘密主義だった。
でも直子はフランス語で言う故意の言い忘れの傾向があった。
この2人の傾向は時に両者の間に距離というと広すぎる、でも隙間を作った。
どちらかが妥協して埋めるしかなかった。
旭は巧みな誘導尋問で直子にしゃべらせるのに成功していた。
後からしゃべらせられたことに直子は気がついて、エアじだんだをふんだ。
でも直子は旭の誘導尋問に事前に気がついて防衛策をはることができなかった。
気がついたときには裸にされていたという感じだった。
旭は直子の可愛い嘘が好きだった。
おもしろかった。
でもいつもしごく真面目な顔で直子の話を聞いた。
それでと旭は話をうながした。
直子の話に感心したり、同情したり、すごく興味深いふうをした。
でも常に嘘や作り話でもなかった。
直子が気楽に嘘みたいな話を最後まですると
旭は「なんとかしきゃ」としばしば思うのだった。
なんでそう気軽にそういう話ができるの?
旭はあきれて、なお且つ慌てて、直子の尻拭いをするのだった。
旭は直子の父親の顔がみたいと思うことがあった。
父親ならどう対処するんだろう?
直子の父親は3人目が女の子ですごく喜んだ。
母親は最初から女の子を願っていったので妊娠中から
あれやこれやと準備していた。
あげくに下が二人とも男で、紅一点になった直子は
両親に溺愛された。
就職した後も少ない給料は直子の小遣いでしかなく
さらにそれでは足りなくて、ねだられて特に父親のほうは
ブランドもののバックや衣装を買え与えていた。
直子は旭も父親と同じだと思っていた。
直子の二面性、子供みたいな直子 母親みたいな直子
直子はそれほど意識することなく、しかし巧みに
二面性を使いわけた。