時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

朝日新聞は左翼じゃない ~慰安婦編~

2014-12-05 18:01:50 | マスコミ批判
朝日新聞といえば、左翼・リベラルの新聞というイメージがある。

実際、WACや産経、文芸春秋、正論の常連は
この新聞社を反日新聞社といって敵意を向けている。

しかし、少なくとも、ここ数年間の朝日新聞は左どころか右そのものである。
それが最も顕著に表れているのが慰安婦問題に対する同社の姿勢ではないだろうか?


私は、8月に同社が行った「検証記事」について以前から厳しく非難していた。

①・最新の慰安婦研究について詳細を述べていない。

90年代から20年が経過し、慰安婦研究も進んできた。
新たな資料も発見されてきた。また、この間、女性国際戦犯法廷など、
積極的に史実を論証し、日本政府および天皇の責任を明確にする運動も展開された。

朝日は、これらの成果を紹介する過程で過去の史料の誤りを指摘するという
手段を取らず、前者を無視して後者のみを強調する記事を掲載した。


これでは、何も知らない人間には、あたかも慰安婦を実証する決定的証拠が
ねつ造であったかのように映るのも仕方がないだろう。


朝日と対極的な訂正を行った人物として本多勝一氏が挙げられる。

彼は南京攻略戦において日本兵が100人斬りを行ったという記述を
訂正するさいに、真実は捕虜の虐殺だったということを明らかにした。

結果として、南京大虐殺のより深刻な面(非戦闘員の虐殺)がより鮮明になったわけである。


このように検証というのは、単に正しい・間違いを突き止めるだけでなく、
真実はどうであったかについてまで説明して初めて検証となる。


史料の間違いだけ指摘しては、あたかも慰安婦は嘘だと言っているようなものである。

②・極右について対決姿勢を取らない。否定論に論駁しない。

これは①にも通じるが、この検証記事を通して、慰安婦否定論が噴出した。

これらは以前に論破された手垢にまみれたデマゴーグスであるものの、
定期的に流布することで、一定の効果(右傾化)に貢献することができる。


例えば、吉田証言はクマラスワミ報告で慰安婦制度を実証する
決定的証拠として利用されているというデマだが、本文を見れば
この吉田証言は信ぴょう性が薄いという評価のもとで引用されており、
むしろ別の史料をもとにして史実が叙述されていることがわかる。

http://space.geocities.jp/japanwarres/center/library/cwara.HTM


また、慰安婦=奴隷狩りというイメージを前提に否定する人間も多いが、
実際には慰安婦は強制連行の一種であり、動員の形式が主たるものだった。
被害者たちも自らを挺身隊の名目で連行されたと認識していた。

(他にも業者による斡旋や文字通りの現地の女性を狩った事例もある)


朝日新聞社は、このような俗論に対して反論することもなく、
現在も放置している。これは事実上の降参の姿勢だろう。

そのことで、どれだけ慰安婦研究者や被害者、在日コリアンが
言われなき誹謗中傷を受けることになるのか想像できないのだろうか?



さて、慰安婦問題に関しては『帝国の慰安婦』というトンデモ本がある。

これは内容があまりにも現実から乖離しているために、
慰安婦本人たちに著者が訴えられ、韓国での販売差し止めが危うくなっているもので、
実際に、その内容も慰安婦いうよりは大日本帝国を擁護するものになっている。


その具体的批判は、次のサイトで読める。
http://kscykscy.exblog.jp/22813455
http://east-asian-peace.hatenablog.com/entry/2014/07/06/005231

この本に関して、ある在日コリアンのサイトでは次のように語った。

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ある韓国輸入書店の人から聞いたが、朴裕河の新刊「帝国の慰安婦」は
間もなく韓国で販売差し止めになるのがほぼ確実だという。

が、それとぴったり入れ替わる形で日本語版が出るのは間違いない。

前々から「帝国の慰安婦」の日本語版が出るという事は言われており、
どこの出版社から出るかは知らないが、おそらく韓国で「発禁」になる
タイミングを見計らっているのではないか。

それに合わせて「慰安婦の真実を暴いた為に韓国で
発禁になった話題の本」とか何とか煽って売り出すのだろう。

典型的な「炎上商法」というやつだ。

http://roodevil.blog.shinobi.jp/社会/2014年8月に感じた事いろいろ その1

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私は平凡社か河出書房新社あたりから出るのではと考えていた。

ところが、実際には、この本、
朝日新聞社から出版されたのである。




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性奴隷か売春婦か、強制連行か自発的か
異なるイメージで真っ向から対立する慰安婦問題は、解決の糸口が見えないままだ。

大日本帝国植民地の女性として帝国軍人を慰安し続けた
高齢の元朝鮮人慰安婦たちのために、日韓はいまどうすべきか

元慰安婦たちの証言を丹念に拾い、
慰安婦問題で対立する両者の主張の矛盾を突くいっぽう、
「帝国」下の女性という普遍的な論点を指摘する。


2013年夏に出版された韓国版はメディアや関連団体への厳しい提言が話題になった。
本書は著者(『和解のために』で大佛次郎論壇賞受賞)が日本語で書き下ろした渾身の日本版。
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歴史研究家も含めて、性奴隷であり強制連行であると主張しており、
慰安婦団体も日本政府に法的責任と国家賠償を求めているというのに、
彼女たちの意向を完全に無視して「和解案」を提示している。


池上彰と同じ典型的な産地偽装商法で、
毒入りと言わずに商品を売りつけている。



これを朝日新聞社が翻訳・出版する意味は1つしかないだろう。

つまり、左翼の言い分は間違った。慰安婦は正しい部分もあった。
それなのに一方的に日本を責める反日行為は解せん。韓国よ反省しろ。


実際、この本は日本では極右やネトウヨのような歴史改竄派に
好意的に受け止められ、また慰安婦否定論のネタ本になっている。


もちろん、この現象について朴氏は一言も言及していない。

自分がいかに挺対協(現地の代表的な慰安婦団体)に
苦しめられたかをグチグチと語る一方で、同氏のせいで
よりいっそうの敵意と差別を向けられる本国・在日コリアンへの懸念は一切ない。
http://www.huffingtonpost.jp/park-yuha/korea-japan-nanum_b_5673760.html


こういう右翼しか喜ばない言説を
日本語で読めるようにして売りさばく朝日新聞は、
もはや左翼とは呼べない。左翼のふりをした右翼だ。



実は、裏でつながっていて、八百長試合をしてるんじゃないかと
陰謀論を考えたくなるぐらい、この点に関する朝日新聞の態度は狂っている。


60年代の学生運動の時代から、本多勝一氏のルポを利用して
朝日新聞社は左翼から金を「ふんだくって」(by池上)きた。


昔からの常連客に対して、この仕打ちはあんまりではないだろうか?

『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』書評その1(徹底批判!池上彰)・修正済み

2014-12-05 00:34:42 | マスコミ批判
金を稼げるなら
ここまで差別的な内容を
書いても許されるのか……





先日、発売された『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』を
一読したが、感想としては「とにかく非道い」の一言に尽きる。




どうも日本のメディア業界では「売れる記事を書く人間に逆らってはいけない」
という不文律があるようで、安倍の差別思想を非難するリテラでさえ、
池上彰に対しては終始絶賛、まるで救世主のように崇め奉っている。


しかし、池上彰ほど
冷酷無比な詐欺師は見たことがない。




安倍や石原の場合、自分がタカ派であることを強調して話をする傾向がある。
ある意味、「自分は右翼です」と標ぼうしているのだから、まだ救いがある。

一方、池上は中立派を表明しながら
保守派の言説を拡散している。




言ってみれば、
安倍や石原は「これは毒と言われているが本当は薬である」と言いながら売るのに対して、
池上の場合は「これは毒でも薬でもありません」と言いながら毒を売っているのである。




この本はツッコミどころが多すぎて、記事を書くのに苦労した。
今回は、日朝会談に絞ってそのおかしな点の一部を批判しようと思う。



まず、最も目につくのが今年の日朝会談に対する池上の評価で、同氏は
「北朝鮮は日本から金をふんだくるために会談をした」
と述べている。大事なのでもう一度言おう。


北朝鮮は日本の金をふんだくる(by池上)ために
今年の日朝会談に応じたと声高に主張しているのである。



池上や佐藤は日韓基本条約を締結した際に、
日本が戦争犯罪を認め、損害賠償を行わない代わりに
11億ドルに相当する金額を韓国へ「独立祝い金」として送付したことを
根拠にして、「北朝鮮も金目当てなのだ」と主張している。


では、ここで日朝合意文書の骨子を見てみよう。


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日本側

平壌宣言に則って国交正常化を実現する意思を改めて表明、信頼醸成と関係改善を目指す

 朝鮮側が調査を開始する時点で一部制裁の解除

 日本人の遺骨、墓地、墓参問題で必要な措置

 朝鮮側が提起した行方不明者の問題を引き続き調査

 在日朝鮮人の地位問題、平壌宣言に則って誠実に協議

 日本人調査と関連、朝鮮側の提起する面談などについて対応

 適切な時期に朝鮮に対する人道支援実施

朝鮮側

すべての日本人に対する包括的、全面的調査

調査はすべての分野について同時並行的に行う

調査のために特別の権限を付与された委員会を設置

調査状況を随時通報、遺骨の処理や生存者の帰国など日本側と協議

拉致問題は、生存者が発見される場合、帰国させる方向で協議

調査の進捗に合わせ、日本側が提起する関係者の訪朝などついて対応

調査は迅速に進め、提起される問題は引き続き協議


http://chosonsinbo.com/jp/2014/06/04kj01/
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このように、日本は北朝鮮の開発に協力し、
資金を提供するとはどこにも書かれていない。



金銭のやり取りなど全くないのである。


池上や佐藤は北朝鮮は「金詰まり」だから、
軍事費の資金源として日本の「祝い金」を当てにしていると主張する。


しかし、今回の対談が金目当てであるのなら、
賠償金や補償金、祝い金の授受を明記させるはずだ。



北朝鮮はおろか、日本政府ですら賠償金(或いは祝い金)を上げますよなんて
誰も発言していないのに、池上や佐藤は、なぜかその存在を確信している。



そういう情報があると言うのなら、それなりの証拠・証言がほしいのだが、
池上も佐藤も情報源を全く明かさないまま、大金のやり取りがあることを
前提にして、「食い逃げが通用すると思っているんですかねぇ」と
拉致問題の解決に取り組まずに金だけ「ふんだくる」算段なのだと語っている。


つまり、池上も佐藤も「どうせ金目当てなんだろう」という
自分たちの思い込みを前提にバッシングしている。

人はそれを妄想と呼ぶ。


骨子を素直に読めば、北朝鮮は在日コリアンの問題解決や
人道支援の実施は要求しているが、金銭の要求はしていないとわかるはずなのだが……


(もしかすると、池上は北朝鮮は人道支援を「支援金」と称して
 金を「ふんだくり」、軍事費に転用するつもりなのだと答えるかもしれないが、
 次回で詳説するように、この言説は右翼の語り口そのものであり、言いがかりも甚だしい)



また、池上は北朝鮮は日本に経済制裁を解かせ、
金を「ふんだくろう」としていると言う。



当たり前の話だが、
経済制裁を解いただけで日本の資産が同国に流出することはない。


貿易とは輸出額が輸入額を上回って初めて黒字になる。
仮に再開したとして、日本への輸出額が日本からの輸入額より高ければ、
なるほど、結果的には「ふんだくる」行為かもしれない。


しかし、それは貿易というビジネスの結果であり、強制されたものではないし、
そもそも北朝鮮への経済制裁とは人的・物的交流の断絶であり、
貿易をする・しない以前のものである。


骨子でも部分的な制裁解除と書かれてあるが、
これは日本人や北朝鮮の人間が両国を行き来できることを意味する。


そこで1つ疑問が浮かぶのだが、

自由に両国を行き来できるようになることと、
日本の金が盗まれることと何か関係があるのだろうか?


直接の因果関係はないはずである。



大体、その理屈だと国交や貿易を結んでいる外国、
特にアメリカや中国には毎年、多くの金がふんだくられていることになる。


ー追記ー

経済制裁の一環として北朝鮮への10万以上の現金を持込む場合と
300万以上の送金をする場合に報告をする義務があるのだが、
これが制裁の部分解除によって、それぞれ、
10倍の100万(3000万)へと制限が緩和されるようになっている。


池上と佐藤はこのことをもって、
「金に色はないのだからミサイル開発に使われる」と非難しているのだが、
先述したように、制裁解除をしたからといって大金が北朝鮮へ送られるわけではない。


加えて、北朝鮮は現在、農業や工業施設の開発にも力を入れている。

特に、畜産や米などの品種改良や工場、農場の拡大は
食糧問題の解決のために最も力を入れられている分野だ。

~北朝鮮は「食料不足」から脱却したのか~
http://toyokeizai.net/articles/-/52513


つまり、「金に色はない」というのであれば、
北朝鮮は送金や持ち込まれた金額を
食糧問題の解決のために使っているとも解釈できる
わけで、
池上や佐藤は北朝鮮の食糧問題をネタに同国を非難しておきながら、
その解決のための資金を出すなと言っている
ことになる。



ー追記終わりー


このように、北朝鮮を泥棒か強盗のように表現する行為が
いかに悪意を込めたものであるかは一目瞭然だが、それ以前に
池上は拉致問題と経済制裁の話だけが論点であったかのようにウソをついている。



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日本では、政府とマスコミが一体となって
「日朝問題=拉致問題」の図式を広めるキャンペーンが繰り広げられてきた。


朝・日間に横たわる歴史的課題には目が向けられない状況が続いてきた。

ストックホルム会談で日本側は、
「1945年前後に朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地、
 残留日本人、いわゆる日本人配偶者、拉致被害者及び行方不明者
 を含むすべての日本人に関する調査」を要請した。

それを受けて、朝鮮側は「すべての日本人に対する包括的、全面的調査」を約束した。

これらは、すでに取り組みがなされ、解決されてしかるべき問題だったといえる。
例えば、日本人の遺骨、墓地問題は、在日朝鮮人の帰国問題を議論した
1950年代の朝・日赤十字会談でも取り上げられたテーマだった。

小泉元首相も、初訪朝の際、この問題を朝鮮側に提起したという。
しかし、首脳会談の後、日本では拉致被害者だけに焦点があてられて
世論が紛糾し、それ以外の日本人は見えない存在になってしまった。


今回の合意は、拉致騒動の影で忘れられていた人々にもスポットをあてて、
「朝鮮域内の日本人」に対する視野を広げた。

朝鮮側は「最終的に、日本人に関するすべての問題を解決する意思」を表明した。
調査は、すべての分野について同時並行的に行われる。

約70年という長い間の空白を埋める作業が始まる。
朝鮮側からの戦後処理のアプローチだ。

生存者がいれば、日本に帰国するだろうし、両国間の人的往来も増える。
その光景は人々に、朝・日間で、いかに多くの問題が解決されず、
先送りされていたのかについて実感させるだろう。

解決すべき懸案問題は、朝鮮側にもある。
日本の過去清算は、一貫した要求だ。

戦後処理とは、本来ならば、
侵略と植民地支配を行った国が、率先して果たすべき責務だ

http://chosonsinbo.com/jp/2014/06/04kj02/
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実際、北朝鮮は戦前や戦後に北朝鮮へ渡った日本人妻の消息や
日本兵の遺骨に関する問題について真剣に取り組んできた。


詳細は次回に譲るが、北朝鮮は現在、多国間との間で
友好関係を築こうとする多極外交に着手している。


中国やロシアなど以前から貿易関係にあった国との間では
共同プロジェクトを立ち上げたりしているが、日本に関しては
経済的利益よりも政治的関係の回復および戦後処理が第一の目的だ。


そんなのは、骨子の内容を見れば容易にわかることなのだが、
池上は金欲しさに口ばかりの約束をしているのだと本気で主張している。


ここで重要なのは彼が自分を「インテリジェンス」と主張し、
自分が特別の情報をもとにして意見を構築しているかのように演出していることだ。


上に引用した記事にも
「日本では、政府とマスコミが一体となって
「日朝問題=拉致問題」の図式を広めるキャンペーンが繰り広げられてきた」とあるが、

池上の言説は主要マスコミのそれと同じものであり、独自性は特にない。というより、
他人の発言を鵜呑みにして「そうだ!そうだ!」とはやし立てるが彼のスタイルだ。
(この場合、大抵は右翼の発言を参考にする)


ご丁寧に「カンボジアで原稿を書いている」と、
さも世界中を飛び回って最新の情報を得ているかのように記しているが、
実際には、読売や産経が書いていることをそのまましゃべっているだけなのである。

それも、私のような素人でもアクセスできる情報を無視して書いている。

このように、さも自分だけのオリジナル意見を言っているかのように
読者を欺きながら、保守派の言説を流すのが池上流のインテリジェンスの姿らしい。


ここには、世間の誤解に対して意見するという姿勢は全くないし、
逆に火に油を注ぐことをよしとする考えが根底に横たわっている。


こういう御仁を「メディアの良心」として売り込むことがどれだけ無責任なことか、
毒だと知らずに読者が情報を食することがどれだけ危険なのかは言うまでもない。

以上、日朝対談に対する認識のレベルで、既に問題があることを指摘した。
次回では、朝中関係が悪化しているだとか、北朝鮮経済がひっ迫している
といった嘘を暴いていこうと思う。