時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』書評その4(徹底批判!池上彰)

2014-12-08 23:53:20 | マスコミ批判
初回で私は、日朝対談は池上が述べるほど単純なものではなく、
経済制裁と拉致問題だけが話されたものではないと説明した。


今回は、その補足説明として次の記事を紹介したい。


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「会館問題の解決なくして朝・日関係の進展ない」


北京で行われた朝・日政府間会談(3月30~31日)
に参加した朝鮮外務省の宋日昊大使は帰国に先立ち、
総聯の会館問題は、単純な実務的な問題ではなく、
 朝・日関係の進展において基本的な問題であり、この問題の解決なくして
 朝・日関係の進展はない
というのがわれわれの考えだ
」と強調した。


今回の会談でも朝鮮は、
この問題が適切に解決しなければならないと日本側に強く提起した。

違法売却される可能性がある総聯中央会館問題は、
在日朝鮮人の尊厳と生存権に関する問題であり、朝鮮の主権に関する問題でもある。


そのため、朝・日政府間会談でも看過できない懸案となっている。


総聯中央会館は総聯と在日同胞の活動と生活の拠点であり、
朝・日間に国交がない条件下で事実上の朝鮮の外交代表部的な使命を担っている。


総聯と在日朝鮮人に対する日本当局の弾圧の一環として発生した会館問題は、
妥当な司法判断が下されるべきであり、決して違法売却されてはならず、
日本政府が責任をもって解決しなければならない事案だ。


在日朝鮮人は、日本の植民地支配によって生まれた存在であり、
解放後も差別と弾圧を受けてきた被害者だ。

朝・日平壌宣言に沿って過去清算に基づく国交正常化を実現するとの立場を
一貫して堅持してきた朝鮮としては、在日朝鮮人に関する問題は当然、
会談で扱わなければならないテーマとなる。


今回の会談で双方は、今後も会談を継続していくことで合意した。

会談では、両国の利益と人々の利害関係が反映される。
会談が正常に行われて合意が履行され、両国関係が改善したならば、
初めから会館問題が会談で扱われることもなかったはずだ。

今後、会談を継続して関係改善を加速させるためにも、
会館問題は必ず解決されなければならない。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/04/20140401riyo-7/
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今年5月にストックホルムで行われた朝・日政府間会談での合意にしたがって、
すべての日本人に対する包括的、全面的調査を実施する特別調査委員会
(委員長=徐大河・朝鮮国防委員会安全担当参事兼国家安全保衛部副部長)
の主要メンバーと日本政府代表団(団長=伊原純一・外務省アジア大洋州局長)
との実務接触が28日、特別調査委員会の庁舎(平壌市中区域)で始まった。


今回の実務接触は、特別調査委員会の活動状況に関して
日本側に直接説明することを目的に朝鮮側が提案し、実現したものだ


この日の午前9時25分ごろ、徐大河委員長と副委員長らが
同委員会の庁舎に到着した日本政府代表団を迎えた。


徐委員長は冒頭、「みなさんの朝鮮訪問に関して、
日本でさまざまに食い違った主張があることは承知している。
そういった中で平壌を訪れたことは、朝・日平壌宣言にしたがって
ストックホルム合意を履行しようとする日本政府の意思を示す
よい選択だったと考える」と述べた。


この日の接触には、朝鮮側から徐委員長のほか、
副委員長である金明哲・国家安全保衛部参事
(拉致被害者分科、日本人遺骨分科を担当)と朴永植・人民保安部局長
(行方不明者分科責任者、残留日本人および日本人配偶者分科も担当)、
姜成男・国家安全保衛部局長(拉致被害者分科責任者)、
金賢哲・国土環境保護省局長(日本人遺骨分科責任者)、
李虎林・朝鮮赤十字会中央委員会書記長(残留日本人および日本人配偶者分科責任者)
が参加した。


一方、日本政府代表団は外務省、拉致問題対策本部、
警察庁、厚生労働省の担当者らで構成された。


朝鮮側はストックホルム合意にしたがって
7月4日に特別調査委員会の立ち上げを発表した後、
現在まですべての日本人に対する包括的で全面的な調査を実施してきた。

9月末には中国・瀋陽で政府間会談が行われ、
双方がストックホルム合意後の互いの状況について明らかにし、
合意履行に対する立場を再確認した。会談の場で朝鮮側は、
特別調査委員会の活動状況について日本側の当局者が平壌で
朝鮮側の担当者と会って説明を受けることを提案している。

日本政府代表団は27日午後、北京を経由して平壌に到着した。

実務接触は29日まで続く。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/10/1028sy/
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つまり、北朝鮮は経済制裁だけでなく、
文字通りの戦後処理を今、日本と行おうとしているのであり、
実際に、国内の日本人の調査について誠意を見せているのである。


その中には在日コリアンの問題も含まれる。


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2014.9.2
朝鮮中央通信は1日、「総聯抹殺策動の結果について熟考すべきだ」と題した論評を配信し、
日本政府の総聯弾圧や朝鮮学校に対する差別的な取り扱いを非難した

論評は、ジュネーブで行われた
国連人種差別撤廃委員会第85回会議(8月11~29日)で日本政府代表が、
「日本国内の朝鮮学校が政府補助金を受けるためには総聯との関係を断絶すべきだと言った」
と指摘し、
「これは対朝鮮敵対意識に基づく日本の極端な民族差別政策、
総聯抹殺政策の発露であって重大視せざるを得ない」と強調した。


そのうえで、
「日本は、自分らの朝鮮侵略犯罪に対する反省の意味からも当然、
朝鮮学校の教育条件と環境を十分に保障してやらなければならない」し、
「在日朝鮮人学生には日本の学生らと同じ待遇を受けて勉強する権利がある」
と指摘した。


論評は、最近、朝鮮と日本の両国間で
関係改善のための多岐にわたる会談が行われていることに言及。

「朝・日友好関係改善のための信頼づくりが
いつよりも切実に求められる時期に、
日本当局が国際舞台で朝鮮の合法的な海外公民団体である
総聯に対して露骨な抹殺企図を標榜したことをどう見るべきか」

と疑問を呈したうえで、

「日本は、時代の流れをはっきり見るべきであり、
朝鮮民族に対してまたもや罪を犯すことになれば、
負うべき責任について熟考すべきだ」とした。


http://chosonsinbo.com/jp/2014/09/0902riyo-3/
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意外に思われるかもしれないが、在日コリアンへの差別に関しては
韓国よりも北朝鮮のほうが真剣に取り組んでいる(少なくとも政府レベルでは)。


池上が述べるように、中国との関係が悪化して金が苦しくなったから
日本から軍事費を分捕ってやろうといった下賤な理由で臨んでいるのではない。


在日コリアンの社会的地位向上も重要な懸案になっているのである。

『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』書評その3(徹底批判!池上彰)

2014-12-08 22:25:35 | マスコミ批判
池上は北朝鮮と中国との関係が悪化しているため、
中国以外との政治的・経済的結びつきがほしく北朝鮮が対談を臨んだと述べる。


実際、そのような見解を述べる「識者」も「日本国には」多い。
では、実際のところはどうなのか。


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見えてきた、中国と北朝鮮の「本当の関係」


「原油輸出の実績がゼロだからといって、中朝関係が悪いと決めるのは早計」。


そんな声が、韓国政府から出てきた。

東洋経済もこれまで、中国の税関統計では
北朝鮮向けの原油輸出実績がゼロになっており、
このため中朝関係の状態をめぐって韓国で論争が起きていることを紹介してきた。

今回、韓国政府のこのような情報が流れ、
「中朝関係は悪化していない」という見方が大勢になっているようだ。


米国「Voice of America(VOA)」の韓国語放送は
8月28日、韓国政府当局者の発言として、
商業取引とは別途に、中国は北朝鮮に原油を援助している」と伝えた。


さらにこの当局者は
「中国の統計に出ていないからといって、中朝関係の悪化を断言するには早すぎる」
と付け加えている。


~(中略)~

今年7、8月、平壌など北朝鮮を訪問した複数の在日コリアンは
東洋経済の取材に対し、「平壌市内のガソリンスタンドなどで
ガソリン価格が上がったとか、足りないという声は聞かなかった」と口をそろえる。


中国の対北直接投資は、「右肩上がり」


韓国の総合週刊誌『週刊東亜』は7月23日号で、
「中国による北朝鮮放棄論の虚実」とする記事を掲載。

この中で、中国が北朝鮮に投資した金額を示すデータを公開し、
その件数と金額が増加していることを示している。



『週刊東亜』が掲載したものは、
中国商務省や為替管理局が集計した北朝鮮向け海外直接投資に関する統計資料であり、
2003年から2014年6月までの海外投資件数・金額が詳細に示されているという。


~中略~

韓国の経済制裁で減った分を、中国が穴埋め

金額から見ても、2010年に3800万米ドルから11年に5500万ドル、12年に7900万ドルと増加。


特に2010年に韓国が現在も実施中の対北経済措置(「5.24措置」)を出したことで
韓国からの投資が期待できなくなったものの、北朝鮮からすれば
減った分を中国から引き出したということになる。


~中略~


韓国のある中国ウオッチャーは、「北京から聞こえてくる“北朝鮮いじめ”は、
実のところは平壌が暴走したら中国は言うべきことを言うというジェスチャーに近い」
と指摘する。



~中略~

中国は、2006年の北朝鮮初の核実験後、
国際的な北朝鮮への圧力姿勢を気にして対北朝鮮投資を減らしてきた。


だが、2009年に故・金正日総書記の健康悪化が伝えられた後、
北朝鮮体制の弱化を憂慮した中国は、かえって投資を増やしてきた。

その流れは、現在にも続いている。

最近になって日朝関係が好転の兆しを見えているが、
これは中国などとの関係が悪化したからという単純な見方ではなく、
中国のカネも必要だが日本のカネも必要だという北朝鮮側の慎重な計算が働いているのでは
と『週刊東亜』は見ている。

経済強国」という大きな目標を掲げ、国民の生活向上を公約にしている金正恩第1書記は、
そのために必要な資金をいくら用意すればよいのかを冷静に計算しているのではないか。

そのためには、既存の中国からの資金だけでは足りず、
日本との関係を改善してでも資金を確保すべきという計算が働いたのかもしれない。

同時に、国内ではさまざまな市民向け施設や工場、企業所、協同農場などを視察し、
サービスを向上し、生産や効率性を上げよと叱咤激励する。

そうすることで、「経済強国」建設に向けた資金を、
あらゆる資源を動員してでも用意したいという金正恩政権の思惑が浮かんでくる。

http://toyokeizai.net/articles/-/46799

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このように、
中国と北朝鮮の関係は悪化していない。



ダメ出しとして、次の記事も紹介しよう。


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伝統的友好のさらなる発展を/2014年朝中友好旧正月合同公演


2014年の新年と旧正月に際して劉洪才駐朝中国大使が22日、
平壌の大同江外交団会館で親善集会を催した。


集会には、朝中親善協会副委員長である対文委の金進範副委員長、
リ・スンチョル文化次官、関係者、駐朝各国外交代表および国際機関代表が招かれたほか、
中国大使館員、中国吉林省歌舞団のメンバー、朝鮮に滞在している中国の賓客が参加した。




発言に続いて参加者は、両国の公演を鑑賞した。

参加者は、朝中外交関係設定65周年に当たる意義深い今年に、
両国をはじめ各国との絆をさらに深めることについて語り合い、友好を深めた。



一方、2014年朝中友好旧正月交歓会が23日、朝鮮対外文化連絡委員会、
朝中友好宅庵協同農場と中国文化部、駐朝中国大使館の共同名義で、
平壌市順安区域にある朝中友好宅庵協同農場で行われた。


交歓会では農場芸術サークルと中国吉林省歌舞団による公演が行われた。
また、参加者は中国の手工芸家が創作した作品を見て回ったほか、
朝中両国の民族料理を味わった。

この日、中国大使館の名義で支援証書が農場に伝達された。
http://chosonsinbo.com/jp/2014/01/20140124riyo02/
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朝中国交64周年、朝鮮各紙が報道
絶え間ない関係の発展

朝鮮と中国の国交樹立64周年に際して労働新聞、
民主朝鮮をはじめとした国内各紙が6日、その意義を強調する記事を掲載した。


労働新聞は、1949年10月6日、建国間もない中国との外交関係設定は
「抗日の戦場」で根を下ろした両国の友好関係を新たな高い段階に発展させた
「画期的な出来事」であったとしながら、その後60年以上もの間、両国は政治、
軍事、経済、文化などすべての分野にわたり互いに緊密に支持、協力し、
友好の絆を絶え間なく強固にし、発展させてきたと指摘した。


また、中国の影響力と対外的地位が高まっているとしながら、
朝中友好の強化、発展は両国人民の志向と利益に全的に合致し、
アジアと世界の平和と安全保障に有益であると強調した。


一方、民主朝鮮は、朝鮮は中国との伝統的な友好関係をさらに強固にし、
発展させるために誠意ある努力を尽くすと指摘した。


http://chosonsinbo.com/jp/2013/10/20131017mh-04/

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2014/10/24

不断に深まる朝中貿易

朝鮮との国境に面した中国・遼寧省丹東市などで
西側メディアが朝鮮族の人々を買収し、朝鮮人民軍の軍服などを着せて
インタビュー映像をねつ造していると、現地メディアが暴露した。



正体不明な「北朝鮮情報筋」が誕生する一つの実例だ


▼一部メディアの謀略記事とは逆に、朝中国境地帯の発展は有望だ。

16~21日にかけて丹東で第3回朝中経済貿易文化観光博覧会が開催された。
主催者発表では、今年は600以上の企業が出展した。

朝鮮からは過去最多100数社が参加。
中国など海外企業と約13億ドル規模の貿易·投資意向書を締結した


▼東海岸では観光が盛んだ。朝鮮・羅先では国境地帯の立地を活かし、
バス、自家用車、バイク、自転車によるツアーが組まれた。

海に面していない中国東北地方の観光客向けに海釣り大会も企画された。
観光の活性化は新たな産業を起こし、大きな経済効果を生む。


▼鴨緑江にかかる朝中国境の橋は完工間近。流通増加で経済交流はさらに深まる。
中国・延辺大学と羅先経済貿易地帯管理委は、人材育成・派遣、科学技術交流、
法律サービスなどで協力することで合意した。
人々の往来が経済発展の突破口とみなされている


▼中国国際貿易学会の副会長はある会合で、周辺国との協力が緊密になり、
政治的に信頼感が増し、経済貿易と往来が不断に深まったことで、
経済貿易協力関係が一層アップグレードされたと評価した。

メディアが伝えるべき生の声だ。


http://chosonsinbo.com/jp/2014/10/il-395/

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確か池上彰はTVでも中国と北朝鮮の関係は悪いと強調していたが、
実際は、役人同士の親善交流が活発に行われており、
また、経済面でも結びつきを強めつつあるわけだ。



いかに池上が国内の右翼・反共左翼の言い分を鵜呑みにして
現実を無視し、日本の敵視政策を絶賛、支援しているのかがよくわかる。



一方、池上は北朝鮮の中国依存が増加し、
そのことについて同国が危機感を抱いており、日本の金を当てにし出したと評する。


確かに、北朝鮮は近年、経済成長のためにどの国とも友好関係を結ぼうと努力している。
(核などを巡っての国際社会の孤立から脱却したいとの思いもある)


だが、それは日本だけに限定されたものではなく、
ヨーロッパやロシア、アフリカなど外交の幅は広く展開されている。

よって、日朝対談は、この北朝鮮の多極外交の一環であると捉えたほうがしっくりくる。



そういえば、本の中ではピョンヤンでは現地の人間が
中国人観光客の悪口を言っていたと語り、
「中国人の中でもとびきり性質の悪い人間が来るようだ」と
佐藤と二人で盛り上がっているのだが、
池上は、わざわざピョンヤンまで出かけて
観光客への愚痴だけ聞いて帰ってきたのだろうか?



普通は、現地の人間とアポを取って取材するのがジャーナリストだろう。

実際、週刊東洋経済の副編集長である福田恵介氏は
対外経済省国家経済開発総局投資処の金正植課長に取材し、
北朝鮮の経済が成長しつつあることを明らかにしている。


~北朝鮮に消費ブームがやって来た
 副業で外貨稼ぎ、乗馬から自動車購入まで~
http://toyokeizai.net/articles/-/51829


「金詰まり」と佐藤たちは北朝鮮の経済状況を表現するのだが、
 実際はその逆で、今、北朝鮮の経済は最も調子が良いのである。


経済的利益も計算した上での外交だろうと
週刊東亜も述べているのだが、それは貧窮に喘いでとか、
中国との関係が悪化したとか、中国依存を解消したいといった的外れの主張ではない。


池上のように観光客への文句だけ聞いて、
「中国と北朝鮮の関係は悪い。中国依存から脱するために
 日本の金をふんだくろうとしている。」という凄い考えに至るわけではない。


池上は一応、ジャーナリストだったはずだが、
もしかして単に海外で遊んでいるだけじゃないのかと怪しんでしまう。

『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』書評その2(徹底批判!池上彰)

2014-12-08 20:18:17 | マスコミ批判
前回、私は日朝対談の骨子を挙げて、
拉致問題と経済制裁だけが懸案だったのではないことを指摘し、
この対談では経済支援のことなど全く触れられていないにも関わらず、
「北朝鮮は日本から金を『ふんだくる』算段だ」と謎解釈をした池上氏を批判した。


経済制裁を解くと、日本からふんだくった金でミサイルを作るから
絶対に駄目だという相手国への敵視と軽視を前提に持論を展開する池上彰。
(それ以前に経済制裁を解くと日本の資産が収奪されるという理屈自体が意味不明)


彼の語り口は
北朝鮮に物資を送っても軍隊の維持のために使われるから、
支援などもってのほかと主張する右翼の言説とそっくり同じである。



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対北人道的支援団体達の支援事業が漂流している中、
今度は対北支援物資が軍隊に転用されているというような報道が出た。


これは政府の対北人道的支援物資の搬出承認に影響を与え得るという点で注目される。
だが、政府と支援団体関係者達は一様に「荒唐無稽だ」という立場だ。



北の内部消息通を主に引用報道する日本の「アジアプレス」は
去る27日に「平壌の貿易商」という人物とのインタビューを報道した。


「平壌の貿易商」は石丸次郎「アジアプレス」代表と去る25日の通話で、
平壌市江東郡の軍商管理所所長が去る5月に銃殺されたと伝えた。

「アジアプレス」は「軍商管理所」について「人民武力部傘下所属機関」で、
朝鮮の各地域に駐屯する部隊軍人の為の商店に生活必需品を調達するのが主な目的だが、
原料基地(農場・生活品工場)はもちろん、地域特性に合うよう
軍人の後方物資調達の為の外貨稼ぎにも手を付けると紹介した。

そして東西海岸地域と北部国境地域に位置する軍商管理所は
海産物と山菜・鉱石など中国との合法的な貿易にも参加していると伝えた。

「平壌の貿易商」は「韓国から送った支援物資が南浦港に入ったものの、
それを軍商管理所でこっそり譲ってもらう為に所長が南浦に行った」とし
「この内容を口外して秘密を漏らした嫌疑で処刑された」と語った。


銃殺嫌疑は「支援物資が軍隊に渡った事を韓国側に漏らした」かどで、
彼は「南浦港に入って来た韓国貨物船に乗船出来るのはこの所長だけで、
漏洩者を追跡した模様」だと伝えた。


これは対北人道的支援民間団体の支援物資が
衰弱者層ではなく軍隊に転用されたという事であり、
「支援物資軍隊転用」論争を触発させようとしているのではないかという疑惑が出て来る。


政府支援団体「話にもならない。呆れた」


該当報道に対し、支援団体関係者達は
言葉が出ない。呆れた」という反応と共に、
「平壌の貿易商」という人の発言には「穴」が多いという指摘だ。



ある関係者は「南浦港に物資が入る事が時折ある。」としながら
「だからと言って南浦港に入った物資を軍関係者一人が
 秘密裏に譲ってもらう事は出来ない。そんな構造ではない」と指摘した。


彼は「対北支援物資は南北間で協議を経なければならない。
そして物資を数の変動なくそのままもらったという確認証を発行しなければならない」
として「政府方針によってモニタリングが強化され、
一つ一つ北側が受け取る物資を南側関係者達が確認せねばならない」と語った。


他の関係者も「粉ミルクが入っていて、
イチゴの苗が入っているのに、それをどうやって軍隊で転用出来るのか」として
「軍商管理所がどんな所か聞いた事もない。軍隊が持っていく事は絶対に不可能だ」と語った。

統一部関係者は「銃殺を北側が公開しない以上、確認する事も出来ない」とし
「人道支援物資は一つ一つ全て写真に撮って確認するなど、モニタリングが相当に強化された。
軍隊に入るというのは話にもならない。荒唐無稽だ」と明らかにした。

統一部によれば、昨年仁川と平沢港と出発、
中国大連港を経て北側の南浦港に入った支援物資は昨年18件、
銃殺されたという時点である5月まで総3件だ。だが、韓国の貨物船は
「5.24措置」のせいで「平壌の貿易商」が言ったようには南浦港には入れず、
中国船籍貨物船を利用する。

ここに軍商管理所所長銃殺嫌疑である
「支援物資が軍隊に渡った事を韓国側に漏らした」という点にも「穴」があるという指摘だ。


ある支援団体関係者は「そんな内容を南側に漏らしたとするならば、
南側関係者達に会っていたという事」だとし「銃殺された所長が
誰かは知らないが、北側の人間が南側の人間に会うのは不可能だ」と語った。


他の関係者も「所長という人が南の人に会って そんな話をしたというなら、
人道支援関係者達に会ったという事だが、そんな話は聞いた事がない」とし
「それとその人が誰なのか知らなくても、軍人身分であれ何であれ、
対南事業をする人でもないのに韓国人に会うのは難しい」と指摘した。



すなわち、対北支援物資モニタリング強化で軍隊転用可能性は非常に低く、
銃殺された軍商管理所所長が対南事業関係者でもない以上は
「支援物資軍隊転用」を南側人士に漏らす事も出来ないという事だ。



該当報道は「支援物資軍隊転用」の噂を量産しようという意図に見られ、
対北人道的支援事業が蹉跌を来たすのではないかという憂慮が出て来る。


支援団体関係者達は「十分に確認されない報道のせいで、
それでなくとも十分に進行する事が出来ない支援事業が
軍隊転用論争に包まれるのではないか心配」だと声をそろえて憂慮した。


これに統一部関係者は「全く影響は受けない。問題ない。
物資搬出承認は徹底して検証が成され、モニタリングも強化されたので
そのような報道は気にしない」と一蹴した。

http://roodevil.blog.shinobi.jp/Date/20141205/1/

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上で批判されているように、実際には支援物資が軍事転用されることなどないのに、
「関係者の言葉では」とさも真実めかして報道しているのが現在の日本の言論状況だ。


ここには、外交の基本である相手国への信頼など一かけらもない。


会談にせよ何にせよ、話し合いというのは、
向こうが約束を守るという信頼を前提にして成り立っている。



平和主義というのは自己の偏見を克服する所から始まると思うのだが、
池上の場合、逆に典型的な偏見を前提にして外交を語っているところがある。



そして、この態度は北朝鮮と友好関係を結ぶ、
少なくとも拉致問題を解決するために対話の機会を増やそうとするのではなく、
北朝鮮の悪印象を散布し、自国の差別や軍拡を助長させる団体と同じものである。


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久しぶりにアジアプレス関係ででかいのが一発来た。

アジアプレスが北朝鮮報道で嘘を言いふらすのは今に始まった事ではない
(と言うか、ほぼ100%デマと言っていいくらいな)のだが、
統一ニュースの紙面でここまでこっ酷くそのデマっぷりが指摘されている分、
今回のがどれだけとんでもない大嘘かが良く分かるだろう。


これは例によって
「北朝鮮への支援物資が軍隊に転用されている!」という、
日本や韓国の反北朝鮮勢力定番の風説だ。


筆者も今まで多くの日本人と話して経験した事だが、
朝鮮民主主義人民共和国への人道支援の話をすると
「えー、だって募金や物資送ったって軍隊やお偉方に横取りされるでしょ」
と言われるのが非常に多い。「そうじゃない、以前に日本から
行った米だって全部数えて点検して送られたんだ」と指摘しても
なかなか信じてもらえない事がほとんどだった


「北に支援しても軍に横取りされて、困ってる人達に届かない」

この大嘘の為にどれだけの在日が苦闘し、実際に現地の困窮層が苦しんできたか。


「ジャーナリスト」を称しながらロクに調査もせず
怪しげな伝聞情報ばかり垂れ流しては、
苦境にある人々を追い討ちかけるように
苦しめ続けたアジアプレスや石丸次郎こそ
人道・人権に反する大逆の輩ではないのか。



それでいて石丸は別の場所では
「隣人が苦しいときにこそ手をさしのべて」
などとうそぶくのだから、この男はどれだけ偽善と二枚舌の権化なのか。


その人道支援を「軍隊に横取りされる」という嘘で
必死に妨害してきた最大級のA級戦犯が石丸次郎当人なのである。

http://roodevil.blog.shinobi.jp/Date/20141205/1/

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批判の矛先こそ石丸次郎氏に向けられているが、
まったく同じことが池上彰にも言える。


「国民が腹を空かせているのに幹部はたらふく飯を食っている」と言っておきながら、
 国民の腹を膨らませるために必要な経済成長を邪魔しようとする池上彰。


俺は北朝鮮が嫌いだから、経済制裁はそのままにしろー!と言えばいいのに、
自分は平和を愛する穏健派なんだよとハッタリをかましながら語るその様は、
何というか……それがインテリジェンス(知識人)だと言うならば、
そんなもの増えないに越したことはないなと思えてしまう。


ー追記ー

池上や佐藤の「祝い金が目当てなのだ」という言説について補足。



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2014.4.7

現在、行われている対話の起点は、2002年9月に発表された朝・日平壌宣言だ。

第1項に「双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、
国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、
そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした」とある。

第2項では「過去の植民地支配」に対する日本側の「
痛切な反省と心からのお詫びの気持ち」が表明されている。


その後、朝日間の政府間協議が断続的に行われてきた。

平壌宣言という一里塚が築かれたにもかかわらず、
国交が結ばれない非正常な状態が、さらに10年以上、続いている。


これまで両国は、中断されていた協議を再開する際、
「平壌宣言に従い不幸な過去を清算し、懸案問題を解決するために
双方の関心事項』を議論する」というコンセンサスを図るのが常であった。

今回の協議再開も同様のプロセスを踏んだはずだ。

拉致問題も「双方の関心事項」のひとつとして議論される。

しかし、協議の最終目的が国交正常化にあるという指針は変わらない。
協議に参加した日本外務省の関係者も、これについて朝鮮側に異論を述べたことはない。


ところが、日本のマスコミが伝える情報だけに接していると、
拉致問題が朝・日間で交わされた議論の全てであるかのような錯覚に陥る。

会談で、朝鮮側の「関心事項」も取り上げられるいう当たり前のことに関心が向かない。
特定の問題にとらわれると「日本の過去清算に基づく国交正常化」という
平壌宣言が示したゴールが見えなくなる。




実際のところ、協議の場で朝鮮側は多くの事案を主張し、要求している。
むしろ拉致問題に固執する日本よりも、提起するテーマの幅は広いといえるだろう。

ところが、首相官邸や外務省の会見、ブリーフに依拠する
日本のマスコミ報道には、これらの事実が欠落している。


平壌宣言発表後も、日本は植民地支配によって生じた一連の問題を
解決するために何ら行動をとらなかった。むしろ朝鮮に対する敵視政策を
「独自制裁」として実行し、総聯と在日朝鮮人に対する弾圧を強めた。


対話と制裁は両立しない。これまで政府間協議の場で朝鮮側は、
国交正常化というゴールを見据え、それが実現する前でも
日本が過去清算に関する措置を講じるべきだと主張してきた。


文字通り、「平壌宣言の精神及び基本原則に従い」、
日本の責務を追及する朝鮮の交渉スタンスは一貫している。


朝鮮側は、過去清算と関連して

◇日本の植民地支配によって朝鮮人民が被った
人的、物的、精神的被害に対する補償

◇在日朝鮮人の地位問題

◇文化財の返還問題

などを取り上げてきた。

在日朝鮮人の存在は、日本の植民地支配に連なる。

朝鮮政府は、在日朝鮮人の問題を「必ず実現すべき過去清算の重要項目」
(外務省関係者)として捉えている。3月30、31日に北京で開かれた会談で、
朝鮮会館の強制競売問題を提起したのは、その延長線上にある。

日本では、対朝鮮外交に関する情報が、
拉致問題をとりまく状況に迎合する形で操作されてきた。

世論操作の典型的手法は、日本の責任回避の合理化だ。

「拉致」と「過去清算」を対置させ、後者を「朝鮮側の懸案」とし、
「拉致問題が解決しなければ、北朝鮮の要求は受けない」と取り引きの論理を持ち出す。

自ら取り組むべき歴史の課題から目を逸らすための、問題のすり替えが行われてきた。


しかし、平壌宣言の精神から外れたレトリックでは、現状は打開できない。

朝鮮側が日本との交渉で過去清算問題を後回しにすることはないからだ。

再開された政府間協議の進展を見る上で重要なポイントである。


http://chosonsinbo.com/jp/2014/04/47sk-5/

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すなわち、日本の植民地支配の責任もまた議題に上がったわけだが、
佐藤や池上は、この中の「人的、物的、精神的被害に対する補償」を
曲解して、補償金が目当てなのだと論じたのだろう。


だが、日韓基本条約は、そもそも、賠償金を支払いたくない日本政府が
代わりに多額の経済支援を行うことで、チャラにしてくれというものだった。

祝い金は戦後補償をしないという前提のもと送られたものであることを
忘れてはいけない(当時の朴政権も、経済支援のほうを望んでいた)。

他方、記事にも述べてあるように、北朝鮮は
経済支援ではなく補償を望んでいるのであり、
またこれと関連して在日コリアン(特に総連)への弾圧を重要視している。


実際、その後の対談では、金銭の授受は話題に上がらない一方で、
在日コリアンの地位問題は変わらず議論されている。


今年の8月15日の談話においても、朝鮮中央通信は、
「日本当局が去る69年間、日帝の最大被害国である朝鮮に対して
 敵視政策を追求しながら国際的孤立と圧殺を謀り、総聯と在日朝鮮人を弾圧、
 迫害し、過去清算に対する自国の責任を回避した」と指摘した。


「現在、世界の至る所で日本の過去犯罪を再確認し、
 誤った歴史観などを問題視する声が噴出しているが、これも結局、
 日本当局が性奴隷犯罪をはじめ過去の反人倫犯罪を反省せず、
 歴史の真実を否定し、犯罪行為を正当化しようとしたためである」とも非難した。


つまり、北朝鮮が要求する過去の清算とは、単なる金銭の問題ではなく、
現在の日本の右傾化や在日コリアンへの迫害に対して責任を持つことも
含めた、より政治的な懸案である。池上にせよ、佐藤にせよ、
過去の清算→大金が目的と早合点してはいないだろうか?