シス・カンパニー公演「友達」 新国立劇場・小劇場 2021.09.09 14:00~
こちらも安部公房さんの作品。こちらは戯曲だそうで。
「砂の女」を見たあとで、まさか続けて安部公房作品に触れることになるとは。。。
シスカンパニーの公演で、キャストも豪華で多彩。
有村架純さんは2回目の舞台だそうで(初舞台も見に行ったな~)
鈴木浩介さん主演で、山崎一さん、キムラ緑子さん、林遣都さんなど、ホントにすごいメンバー揃えましたね。
だから、チケット争奪戦すごかったです。
何とか取れたチケットは、S席の一番後ろではしっこでした・・・
あらすじは
「ある夜、ひとりの男(鈴木浩介)の日常に忍び寄る、見知らぬ「9人家族」の足音。
祖父(浅野和之)、父母(山崎一・キムラ緑子)、3人兄弟(林遣都・岩男海史・大窪人衛)、3人姉妹(富山えり子・有村架純・伊原六花)から成る9人家族は、それぞれに親しげな笑みを浮かべ、口々に隣人愛を唱えながら、あっという間に男の部屋を占拠してしまう。
何が何だかわからないまま、管理人(鷲尾真知子)、警察官(長友郁真・手塚祐介)、婚約者(西尾まり)、弁護士(内藤裕志)と、次々に助けを求め、この不条理な状況説明を試みるが埒があかない。
しかも、彼らは、どんどん「家族の論理」に加勢していく流れに…。
「9人家族」の目的は何なのか?
どこからが日常で、どこからが非日常なのか?
男を待ち受けるのは、悲劇なのか、
はたまた救済なのか?」
正直ですね~見てていい気持ちはしない芝居でした。(悪い意味では、決してないです)
ひとりの男:鈴木浩介さんに感情移入してみてたこともありますが、理不尽すぎる。
こんなことあってはよくないですよね。何が多数決?って思っちゃいました。
いきなり自分の家に大家族が上がり込んできて、好き勝手する。
さらには、生活のあれこれも「多数決」で決められ(大家族相手で勝てるわけがない)
そのため、家のこともあれこれやらされ、その結果仕事も失い、彼女も失い。。。
こういうこと、絶対ないとは言い切れないのが今の世の中怖いです。
マンションの管理人さんだって、住人のことはそんな知ってるわけではないから、
大家族の方の言い分を否定できないし、
警察の言う「でもあなたがドアを開けて、招き入れたんですよね」ってことも
確かにそうなんですよね。客観的に見れば。
男が「見知らぬ大家族に、不法侵入され、不法占拠されている」ってことを証明できないんですよね。
これって、今の時代、十分にありうるよね。自分が被害を受けていることを
客観的に証明することって難しい。こういうときって、男もそうだけど、感情的になっちゃうから余計ね。
ホントに怖いわ~
乗り込んできた家族の、勝手な言い分に、めちゃくちゃ腹がたちました。
それも、みんな笑顔で悪いことなんか、してないよ!ってのが、輪をかけますよね。
もちろん、芝居だし、小説だし、フィクションだしとは思うけどね~
最後、「しかたないね」という言葉とともに檻にいれられてしまって。。。殺されてしまう男。
それを見届けて、男の家を去り、またどこか他の家に行こうとする家族。
そして男のことを大家族の面々は「友達」だという。
一緒に住んでるわけだから「他人」ではなく「友達」
一方的な言い方。
男からすれば「見ず知らずの他人」他人に家をのっとられてる。
「友達」って言葉の定義は?なんて思っちゃいました。
場面転換のときの不協和音の音がめっちゃ怖かった。不安をあおられますよね。
それから、あの玄関のドア・・・
セットの真ん中の床にあって。。。下から開くんだけど。これがまたすごい違和感で怖い。
侵入される感がすごいでますよね。
たまたま、その前に同じ安部公房作の「砂の女」も見たのですが、
2作だけしか見ていないけれども、両方とも「不条理劇」と言われるのがよく分かった気がしました。
特にこちらの「友達」の方が、不条理度(そんな言葉あるのか?)が高い気がして
なんか、もやもやした感が残りました。
今のコロナ禍で逼塞した世の中、さらにネット世界・・・この状況で刺さる芝居でした。
キャストの皆さんは言うことがないんですが。。。
正直、出番が少なくてもったいないな~と思う方も。。。
鷲尾真知子さんとか、西尾まりさんとかもっと見たかったな~
鈴木浩介さんは・・・もう、自分が彼になったように、感情移入してみてたので、
不条理な世界に巻き込まれて、もがいている気持ちがわかりました。
で、気が付くとその状況をあきらめの境地で受け入れてる姿も。。。
大家族の中で一番、印象に残ったのは、やっぱり
山崎一さんかな。。。お父さん。
なんなんでしょうね。侵入者のくせに偉そうに自分が正義だって感じに話すのが
本当にむかつきました・・・(それだけ、すごい演技だったってことですよね)
あとは、長男の林遣都くん
ときどき、暴力的になったり。。。表現が巧みでしたよね。
男の代わりに彼女のところに行って、のらりくらりとかわすところとか。。。なかなかでした。
次女の有村架純ちゃん
彼女の行動は、不可解だったなあ。。どういう設定で接しているんだろうって。
で、最後に男に引導を渡して。。。
お母さんのキムラ緑子さん
ちょっと天然入った感じが、妙に可愛いんだけど、これも大家族の中の演技なのかな?なんて
思っちゃいました。
浅野和之さんは、おばあちゃんなのね。おじいちゃんでなくて。
違和感ない!!!
こういう話って、お芝居でなければ納得できないので、やっぱり演劇の世界って素敵と思いました。
もし、、、現実であったら、ホントに怖いです。
1時間半の舞台でしたけど、見ているときは長く感じて。。。終わったらあっという間のような、不思議な感覚でした。