安倍総理大臣 現金給付30万円の内容がひどくないですか?与党内からも巻き起こる「不満のオンパレード」
藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授
2020 4/7(火)
現金給付策に与党からも異例である「不満のオンパレード」
ずっと議論されてきた緊急経済対策としての現金給付案がまとまってきた。
下記で示されている通り、限定した世帯に30万円ずつ、6兆円を目安に現金給付をおこなう。
そのため、支給対象は約2000万世帯となる。
この現金給付案に関しては、構想段階から市民の関心も非常に高く、様々な議論を巻き起こしてきた。
当初は市民に一律で現金給付する案も出ていたため、多くの人が期待をして当たり前だろう。
これほどの経済危機であるから、現金給付があれば誰でも助かることだろうし、多くの方が支給対象になるだろうと予想もしたはずだ。
しかし、結果は残念なものにまとまりそうで、裏切られた形になる。
以下の毎日新聞の記事による与党国会議員たちの議論に注目したい。
自民、公明両党は6日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する政府の緊急経済対策案を了承した。
一方で、1世帯当たり30万円の現金給付に厳しい条件が設定されたことなどに「期待外れだ」と不満が続出した。
安倍晋三首相が7日に表明する緊急事態宣言を見越し、更なる経済対策を求める声が早くも漏れる。
「地元に『自分ももらえる』と思っている人がたくさんいる」「経済対策の体を成していない。撤回し、下野した方がいい」。
6日、自民党本部9階の大会議室で3時間以上に及んだ政調全体会議は感染防止のため秘書の代理出席を避けたにもかかわらず、ほぼ満員となり、世帯向け現金給付を中心に「不満のオンパレード」(出席者)だった。
対策案によると、給付対象は世帯主の2~6月のいずれかの月収が新型コロナ発生前よりも減少し、▽個人住民税が非課税水準となる世帯▽月収が半分以下となり、個人住民税非課税水準の2倍以下に落ち込む世帯――などだ。
しかし、東京都23区内で専業主婦と2人暮らしのサラリーマンの場合、非課税になるのは年収が156万円以下の人に限られる。
年収700万円の人は350万円に半減しても対象にならない。
また、共働き世帯で一方が解雇されても、世帯主でなければ対象外だ。
公明党の会議では「世帯主以外の収入を頼りにしている家庭もある。世帯主の収入だけが基準でいいのか」との異論も出た。
受給申請方法にも批判が続出した。
市区町村への自己申告制とされることに関し、対策案は「可能な限り簡便な手続きとする」とするのみで具体的な手続きは固まっていない。
自民の政調全体会議では「市町村の窓口が混乱する」との指摘が相次ぎ、与党はオンライン申請の環境整備を政府に強く求めることにした。
経済対策が遅れたことには「タイミングが悪すぎた」(自民党の閣僚経験者)との声がくすぶり、地方自治体への交付金積み増しなどにも「緊急事態宣言に伴う不安を払拭(ふっしょく)できる内容にはなっていない」(閣僚経験者)と評価は芳しくない。
自民党の岸田文雄政調会長は6日の政調全体会議で「さらに深掘りした現金給付を検討するように」との条件を付け、今回の経済対策について一任を取り付けた。
二階俊博幹事長は同日の記者会見で「これで足りないということであれば、その次の手を打つことは当然だ」と強調した。【飼手勇介、立野将弘】
出典:現金給付の厳しい条件など「不満のオンパレード」自公に続出 早くも「更なる経済対策を」 毎日新聞 4月6日
安倍政権に対する内部からの厳しい意見であり、どれも至極真っ当な意見といえる。
自民党、公明党の与党国会議員は、遠慮せず、市民の立場になって、このような議論を継続しておこなっていただきたいものである。
SNSなどを使ったみんなの意見表明は政策を変えていく
私も当初より、与野党の国会議員と情報交換しながら、現金給付案の経過を見守ってきた一人である。
多くの人が期待感を膨らませていた政策に対して、まさかこれほど支給対象を選別するとは思っていなかった。
正直なところ、支給対象、支給方法、支給に関する議論の過程、支給決定までのスピード感など、どれをとってもガッカリである。
その点も踏まえて、過去にはいくつか記事を配信してきた。
今後のためにも、お時間がある時に振り返っていただけたら幸いである。
「1世帯あたり30万円の現金給付」という巧妙なウソ 現実は対象が限定された現金給付の可能性
麻生太郎財務大臣が現金給付をこれほど嫌う理由「現金給付は失敗だった。同じ失敗したくない」の謎
現金給付をケチる日本政府は前澤友作社長の提案を聞いてみてはどうか
西村再生相「現金給付何回もする必要あるかも」 もう一律の現金給付でないなら止めてください
これらの記事に信じられないほど、多くの反響を寄せていただいた。
首相官邸や与野党国会議員、省庁などにメールや電話、SNSでの書き込みなどをしてくれた方が大勢いた。
改めて市民の関心の高さ、生活の困っている様子を痛感するものであったし、上記のように与党国会議員を「不満のオンパレード」へと動かす原動力にもなった。
そして、数日前の各紙報道では、約5800万世帯のうち、1000万世帯程度を支給対象とする予定だとも報じられていた。
そうなると、支給世帯は全体の約17%ということなので、極めて限定された世帯への現金給付となるところだった。
しかし、これらの声で動いた結果、今回は2000万世帯まで支給対象世帯が増えたことになる。
つまり、数日前の各紙報道と比較すると、約34%の世帯に支給することを想定していることが理解できる。
相変わらず支給される世帯は少数派ではあるが、少しでも多いほうがいいだろう。
政治や制度、政策に関心を持ち、主体的に動いてくれれば、状況は変わるのである。
今はSNSやネット世論が大きな影響を与える社会である。
テレビや新聞などの既存メディアもSNSやネット世論の動向を取り扱うことが増えている。
そのため、政治家にもその声は届きやすくなっている。
一人の力では変わらないだろう、と思わずに引き続き、積極的な意見を使いやすいツールを用いて表出してほしい。
民主主義はいろいろな人がいろいろな声を上げて、政治家や官僚が調整に奔走する仕組みともいえる。
何をしてほしいのか、どうしたいのか、民主主義の主権者が提示しなければ、今後の経済危機からの復活は困難になるだろう。
今後も様々な政策が立案される。
その度にヤフコメでもいい。Twitterでもいい。自分の意見を寄せて他者の意見も聞いてみてほしい。
経済危機は全ての世帯に襲いかかっている。
もちろん、日本に住んでいれば、税や保険料は誰でも程度の差はあれ、全ての人が負担している。
今回のように、支給する人、支給しない人で分断されることは好ましくないことだ。
総額108兆円に及ぶ前代未聞の規模の経済対策だと、どれほど喧伝されても、支給対象にならない世帯にとっては意味がないことである。
むしろ、今後の税や保険料の支払いに対する抵抗感が増すことになるだろうし、不公平感を抱えることになるだろう。
繰り返すが、全ての人が困っている緊急事態なのである。
この点を踏まえて、第2弾、第3弾の経済対策が出された際に、また意見を寄せていただきたい。
朝は、うっすらと雪が積もっていた。雨模様の寒い一日だった。
ところで、「自粛、自粛」で何もできなくなった都会を出て、実家や知人のいる田舎に行こうという動きがあるらしい。感染者が日に日に増える東京や大阪を出ていく、「東京脱出」。なんか、気持ちはわかるが、ウイルスを運び、拡散する危険性が濃厚であり、地方を崩壊させる恐れがあることをわきまえて行動して欲しい。
朝日新聞デジタル 2020年04月07日
「東京脱出」SNS拡散中 新たなクラスター生むおそれ
新型コロナウイルスの感染の広がりを受け、7日にも緊急事態宣言が出されるとの情報が流れ、ツイッターでは「東京脱出」というハッシュタグ(検索ワード)が拡散されている。だが、ウイルスを地方に運び、そこで広げてしまえば、新たなクラスター(感染者集団)を生んでしまうおそれも否定できない。専門家は注意を呼びかけている。
感染者が多く報告されている首都圏から地元へ帰省し、家族らに感染が広がる――。そう考えられる事例が、複数報告されている。
静岡市では3月末、家族4人の感染が確認された。東京都に住む10代の女子学生が同18日から帰省。女子学生は24日に東京へ戻った後、4月1日に感染が確認された。母親の40代看護師が勤務する市立静岡病院では、濃厚接触者とされた患者や同僚らがPCR検査の対象となった。
佐賀県では3月末に東京都から帰省した30代の女性が、祖母宅に滞在中に発症。今月4日に感染が確認され、70代の母と80代の祖母も同5日にそれぞれ感染がわかった。秋田県でも東京都から帰省した専門学校生の10代女性と母親で看護助手の50代女性、50代の父親の感染が判明している。
医師が十分にいなかったり、ベッド数が少なかったり。地方は医療体制が脆弱(ぜいじゃく)なところが少なくない。
政府の専門家会議のメンバーの押谷仁・東北大学教授(ウイルス学)は4日、厚生労働省クラスター対策班の専門家らによるツイッター投稿で「少数の感染者が出ただけで医療体制は維持できなくなります」と警鐘を鳴らした。
感染者が日に日に増える東京や大阪を出ていく。そんな人の動きがすでにあるとし、「ウイルスを拡散するような行動はできるだけ避けていただく必要がある」と指摘した。