里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

現金一律10万円給付が始まる前に考えておきたいことー確実にあなたのもとにお金が来るようにー

2020年04月18日 | 社会・経済

藤田孝典 4/17(金)


現金10万円一律給付の政策決定
皆さんが待ち望んでいた政策のひとつが実現しそうである。 
安倍首相は生活支援策として、1人あたり10万円を給付する意向を固めたことが明らかになっている。 
異例であるが、当初予算も組み替えて、政策を実行する予定だ。 

この報道に早速、さまざまな議論が巻き起こっている。 
「公務員は損害を受けていないのだから辞退するべき」 
「国会議員は受け取るべきではない」 
「外国人は対象外にしてほしい」 
「生活保護受給者は配布する必要ない」 
「金持ちは給付を辞退しろ」 
「年金や貯金のある高齢者には必要ない」 
かなり残念な反応である。 

ぜひ早急にこのような無用で害悪ある分断は巻き起こさないでほしい。 
公明党の斉藤鉄夫幹事長は16日、国民1人当たり一律10万円の現金を給付する新型コロナウイルス対策について「5月下旬から6月初旬には手元に届くようなスピード感を持って行うことが大切だ」と述べた。 
また、「私は申請しないつもりだ」と語った。国会内で記者団の質問に答えた。  
出典:一律10万円「5月下旬にも」 斉藤公明幹事長 4月16日 時事通信
早速、まだ政策議論段階にもかかわらず、公明党の斉藤鉄夫幹事長まで「私は申請しないつもりだ」とコメントを寄せている。 
斉藤鉄夫さんも受け取って、使い道を考えてほしい。申請しない、など一体感を削ぐようなつまらないことも言ってはいけない。 

いつでも感染症対応の医療機関、自治体、社会福祉協議会、生活困窮者支援や労働相談NPOへの寄付はそれぞれが待っているはずだ。 
ぜひ寄付先なども明らかにして、アピールなどもしてもらえたら、なおさらいいのではないか。 
模範を示していただくことに大きな期待を寄せている。 

全員が受け取って使い道を自分で考えてほしい

新型コロナウイルスの影響は言うまでもなく広範に及んでいる。 
経済的損失はもちろんのこと、精神的損失も激しく、日々のストレスがすべての人たちに襲いかかっている。 
ウイルス感染拡大は分け隔てなく、人々の心身にダメージを与えてきた。 
だから、ぜひ現金給付を受けたら生活や消費に役立てればいいと思う。 
大きな金額とは言えないが、多少の安心感はあるし、多人数世帯では家計の損失補填にもなるはずだ。 
ただ、そこでぜひ止めてほしいのは「足の引っ張り合い」である。
 
私たちは他者の生活を比較し、勝手にその存在を捉えがちである。 
あの人は困っている、あの人は困っていない、と。 
例えば、公務員は生活が安定しているから受け取るべきではない、という意見もある。 
しかし、保健所や福祉課などの保健医療や福祉の最前線で社会を支えているのは公務労働者である。
その中には非正規公務員が大勢いる。日々、感染リスクの不安と闘いながら懸命に尽力いただいている。 
公務員に支給しないことは、社会的に見ても理解できないことだ。 
またいつものように、生活保護受給者は納税していないので支給すべきでない、という意見もある。 
そんなことはない。各種税や保険料は免除されているが、消費税など応分の負担を少ない生活保護費からおこなっている。 
消費性向が高い生活保護費は、地域経済に大部分が還元され、地域の商店や施設が潤うことにもなっている。 
生活保護受給者、年金受給者らの福祉予算は、地域経済を回すうえでの大事な原資、大事な存在である。 
外国人労働者は母国に助けを求めればいいではないか、という声もある。 
まず日本社会の労働現場を冷静に見てほしい。 
外国人労働者が労働力として働いてくれているから、私たちの暮らしは成り立っているではないか。 
彼らの声も聞いてみれば、生活困窮が激しく、共に苦しむ仲間である。子どもを育てている家庭もある。 
当然、税や保険料負担をしているのは言うまでもない。排除する理由は正当化されるだろうか。 

分断や対立は自分たちの首もしめる「危険なワナ」

このように、あいつには配るな、こいつには配るな、という議論が絶対に起こってくる。 
メディアも面白おかしくワイドショーなどで取り上げ、無知なコメンテーターは支給すべき人と、支給すべきでない人を分断していく作業もおこなうかもしれない。 
よく監視しておいてほしいし、その際には批判を寄せてほしい。 
それは危険なワナであるから。 

誰かを見捨てていいという例外を認めていけば、際限なく支給しなくてよい対象範囲は広がる。 
それによって、あなた自身も支給対象から外れてしまうかもしれない。 
結局、お金を出したくない人だけが喜ぶ結果となる。 
何よりも一方的に誰かに配らなくていい、と言うこと自体、差別感情だったり、さもしい感情だと思ってほしい。 

いまは社会の構成員すべてが支給を受けて、自分も他者も連帯してウイルスと闘う時期である。 
誰も取りこぼさない、という基本原理の貫徹がここで大事になるだろう。 
少ないがみんなで要求して、実現した現金給付である。 
みんなの声、SNSでの発信などがなかったら、絶対に実現しなかった政策と言ってもいい。
だからこそ、これからお金が手元に来るまでに、不毛な対立、分断は止めて、連帯、団結する機会にしていこう。

藤田孝典 
NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授
社会福祉士。生活困窮者支援ソーシャルワーカー。専門は現代日本の貧困問題と生活支援。聖学院大学客員准教授。北海道医療大学臨床教授。四国学院大学客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。元・厚生労働省社会保障審議会特別部会委員(生活困窮者自立支援法)。著書に『棄民世代』(SB新書2020)『中高年ひきこもり』(扶桑社 2019)『貧困クライシス』(毎日新聞出版2017)『貧困世代』(講談社 2016)『下流老人』(朝日新聞出版 2015)。共著に『闘わなければ社会は壊れる』(岩波書店2019)『知りたい!ソーシャルワーカーの仕事』(岩波書店 2015)など多数。