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#NHKスペシャル 「コロナ危機 女性にいま何が」 女性の「自死」急増の背景にある貧困問題

2020年12月06日 | 社会・経済

藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授
YAHOOニュース(個人) 12/5/

女性の貧困の背景にある労働問題
 本日(5日)21時よりNHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」が放送される。

見逃した方は12月10日 午前0:50 ~ 午前1:40からNHK総合で再放送されるので、こちらからも視聴いただきたい。

 私が所属するNPO法人ほっとプラスや反貧困ネットワーク埼玉なども取材協力して「貧困の見える化」にNHKとともに取り組んだものだ。

多くの方にコロナ禍で困窮する女性の現状を把握いただきたい。 これが今の現実の日本社会である。

 生存のためのコロナ対策ネットワークでともにコロナ危機に対処してきた今野晴貴氏は、労働分野から女性の困窮要因、自死増加の要因を分析している。 併せて一読いただきたい。

”コロナ禍は、飲食業やサービス業などの女性労働者の比率が高い業種に深刻な影響を及ぼしているため、女性雇用の状況は男性以上に悪化している。

なかでも影響を受けやすいのが非正規雇用で働く女性だ。 総務省が12月1日に発表した10月の労働力調査によれば、正規労働者が前年同月から9万人増加しているのに対し、非正規労働者は85万人減少しており、このうち53万人を女性が占める。

 また、最近、NHKが実施したアンケート調査では、今年4月以降に、解雇や休業、退職を余儀なくされるなど、仕事に何らかの影響があったと答えた人の割合は、男性が18.7%であるのに対し、女性は26.3%であり、女性は男性の1.4倍に上っている。

 10月の月収が感染拡大前と比べて3割以上減った人の割合も女性の方が高い(男性15.6%、女性21.9%)。 また、今年4月以降に仕事を失った人のうち、先月の時点で再就職していない人の割合は女性が男性の1.6倍だという(男性24.1%、女性38.5%)。 

参考:「新型コロナ 女性の雇用に大きな影響 解雇や休業は男性の1.4倍」(2020年12月4日、NHK)

 こうしたデータから、新型コロナの感染拡大が女性の雇用により深刻な影響を与えていることがわかるとともに、雇用に関係する諸問題が女性の「自死」増加の要因になっていることが推察される。

”出典:女性の「自死」急増の背景にある労働問題 今野晴貴


社会保障の弱さも自死急増の要因
 その一方で、雇用の不安定さだけが自死の要因ではない。

もう一つの背景には社会保障の弱さもある。 日本の社会保障は貧困に対処し切れていない。

収入減少、仕事の減少に対して、生活を下支えする扶助機能が弱いともいえる。

 現在の菅政権は「自助・共助・公助」を強調しながら政策を実施しているが、日本は伝統的に社会保障が弱い。 いわゆる「公助」だ。

つまり、生活困窮に至る前に支援する方策が少ないので、女性は精神疾患や自死に追い込まれていく。

例えば、相談に来られた派遣労働者の20代女性は、派遣先の飲食店の厨房で働いていた。

半年ごとの契約更新だったが、9月末を期限に雇い止めにあった。

コロナ禍で店が休業し、将来の見通しも立たないことから雇い止めを契機に、一人暮らしの都内のアパートも解約し、北関東の実家に戻っている。

両親との関係性はあまり良くないそうで、日常的な口論も絶えないそうだが、一定期間だと思って我慢するしかないと話している。

 首都圏は家賃が高く、収入減少のため、生活の維持にさえ困難が生じてしまう。

生活困窮者の家賃を給付する住居確保給付金はあるが、期限付きであり、先行きの見通しがなければ利用しても生活再建の効果は十分でない。

そのために、女性たちは実家などの家族、男性パートナーとの同棲や家計を同一化させて急場を凌いでいる。

しかし、当然、DV(ドメスティック・バイオレンス)や性暴力の増加、家族内不和によるストレスも生じさせていく。

「家族は安心して生活を共にする存在である」という思い込みは、一面的な見方で極めて危険だ。

もちろん、家族やパートナーにさえ頼れない女性は、どこにも寄宿することができずに追い込まれていくこととなる。

 日本の社会保障は、いわゆる「家族主義」をとり、家族が支えることを大前提にして、それができない場合にのみ、残余的に救済する。

そのため、生活保護などを受ける際の「恥の意識」も強い。

 旅行代理店で国内旅行ツアーに添乗する30代女性も派遣労働者である。

宿泊、観光業は全面的に大きな打撃を受けている。 基本給は低く抑えられ、ツアーに添乗した回数ごとの歩合性という給与形態だ。

ツアーがなければ到底生活することができない働き方である。

彼女は企業から雇用調整助成金による休業補償を受けて待機していた。

しかし、旅行業に先行きの見通しがないことから、退職して失業給付を受けながらハローワークで仕事探しをしている。

今は仕事が見つからないまま、失業給付の期間が切れて、貯金が底をついてしまうことに大きな不安を抱えている。

 そもそも、前述の今野氏の指摘にもあるが、非正規雇用に女性が多いという現状に大きな問題がある。

その雇用を政府、経団連も推奨してきたならば、せめて雇用の不安定さを社会保障が補わなければならない。

経済危機が起こったら自分や家族で対処してくれ、では問題は解決しない。

貧困を体験すると自死のリスクは高まる
 最後のセーフティネットである生活保護も機能しているとは言いにくい。

 生活保護という仕組みは「保護の捕足性の原理」というルールがあり、厳密に資産調査を実施する。

資産や収入、稼働能力、頼れそうな親族などの力を把握して、それでもなお最低生活が送れない場合に保護する。

そのため、家庭の経済状況や生活上のできごと、これまでの暮らしぶりを第三者の福祉課職員にさらし続けなければならない。

つまり、生活保護制度の主旨に従い、調査後に金銭を支給するため、もっともプライベートな部分に踏み込む。

 生活保護は最後にたどり着くセーフティネットであるため、女性たちはこれまでに葛藤や喪失を体験し、心身の疲労も著しい。

そこでさらに根掘り葉掘り聞き取りしなければ、金銭が支給されないという制度的欠陥がある。

 昔から貧困状況におかれた人の特性として、様々な生活課題を抱えているから自死に至りやすいと言われてきた。

例えば、相談者は健康や障害、就労、住宅等の課題が複雑に絡み合って、一人では解決困難な状態にある者が多い。

いわゆる多問題世帯とも呼ばれる。

 それゆえに、貧困が人間の感情や行動に及ぼす影響も大きく、メンタルヘルスにダメージを与える。

要するに、生活困窮するということは、先の見通しが立たなくなって非常に大きな不安を抱えるということ。

 その際に人間は無気力、自信喪失、自己否定感、怒りの感情などが湧いてきて、それが持続すれば精神疾患も発症するし、自死に至る。

だからこそ、女性だけでなく、人間全般に対して、貧困や生活困窮を経験させてはいけないのである。

 これからも新型コロナ禍は継続していく。 長い闘い、長い道のりである。

これまでの雇用、社会保障、暮らしを振り返り、欠陥部分は柔軟に変更し、意識も変えながら生き抜いていきたい。

とにかく今は信頼できる人や第三者に辛さや苦しさを話してみる時期だ。

意外と助けてくれる仲間は多くいるものである。

安心して相談を打ち明けてほしい。 あなたは一人ではない。