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地方議員コンパニオン宴会で露呈した日本のジェンダーギャップの要因【フェミニスト10大ニュース】

2020年12月30日 | 社会・経済

AERAdot 連載「おんなの話はありがたい」

北原みのり2020.12.29


 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。2020年最後の配信となる今回は、フェミニストの視点で今年の10大ニュースを選びました。


    毎年この時期になると世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数が公表され、日本の順位がまた下がったよ! ご近所にはアラブ首長国連邦とかクウェートとか石油が出る国しかないじゃん!と騒然とするのがフェミニストの年末気分なのですが、今年はコロナ禍だからでしょうか、クリスマス越えてもジェンダーギャップがまとまっていないようです。

 世界的なパンデミックに見舞われた2020年、期せずして“ジェンダー”は大きなテーマになったようにみえます。ドイツ、ニュージーランド、台湾をはじめ女性リーダーたちの冷静で適切な指導力が功を奏する一方で、パンデミックを戦争にたとえ、マスクを着けずに戦いに挑んだマッチョなリーダーの国々では、ことごとく深刻化してしまう哀しさ。また、エッセンシャルワーカーの多くが女性であることなど、このような非常事態ではジェンダー不平等がより露骨に女性の人生を押しつぶす現実も可視化されました。フェミ的にもありすぎるほどのニュースがありましたね……。ということで、2020年最後のコラムでは、私的フェミニスト10大ニュースを勝手に選んでみました。

1 性犯罪事件逆転有罪
 フラワーデモのきっかけとなった2019年3月に続いた4件の性暴力無罪判決のうち、検察が控訴しなかった1件を除き全てが逆転有罪になりました。

 テキーラを何杯も飲ませ意識失わせて行う性交を「同意と勘違いした」と認定するような判決や、実父による性虐待を娘が同意していたともとれるような判決に「なぜ?!」と声をあげ、被害者に寄り添う#MeToo#WithYouの声が、性暴力に対する世論を変えた結果でしょう。勝利の少ないフェミ界において、私たちの声が現実を変えるのだ、という実感は希望です。
2 杉田水脈議員発言「女性はいくらでも嘘をつける」
 杉田水脈衆議院議員によるセカンドレイプ発言に14万近くの署名が集まりました。「セクハラ罪という罪はない」(麻生太郎議員)など、安倍政権時代からのさんざんな政治家によるセカンドレイプ発言に、しっかりとどめを刺したい思いでいましたが自民党は署名受け取りを拒否。当初の宛先にしていた野田聖子幹事長代行は「受け取りを辞退します」と連絡してきました。この署名活動は先日、社会的キャンペーンのオンライン署名活動を行うChange.orgで今年の性差別部門で賞が与えられました(辞退しませんでした)。

3 選択的夫婦別姓まであともう少し!!
 結婚した男女の姓を強制的に同じにするのは、世界中で今や日本だけ。2000年代前半から、強制同姓は差別ですよ、改めましょうよ、と国連にずっと言われ続けているのだけれど、日本政府は聞く耳をずっと持たずにきました。が、その雰囲気が今年大きく変わりました。

 2020年、男女共同参画社会基本法に基づいて5年ごとに見直される、男女共同参画基本計画が策定されました。SNSなどでパブコメを求めるフェミな声も多く、これまでになく選択的夫婦別姓を求める声が盛り上がったのです。世論調査では7割が選択的夫婦別姓を支持とのこと。自民党の保守議員たちが「家族の絆が!」などと言っていますが、私は今回初めて、その手の声が“消えゆく者の断末魔の呻きに聞こえたのでした。だって、世論7割よ? 選択的夫婦別姓を全否定する声がカルトに聞こえるほど、現実の空気が変わったのかもしれない。自分の姓のまま結婚できる! そんな“ささいなこと”に、あとどれだけ時間がかかるのか分かりませんが、それでも大きな一歩を踏み出した2020年でした。

4 検察庁法改正案潰せた!
 #検察庁法改正案に抗議します

 この一つのタグが1000万ツイートを超える大規模な世論になり、実際に改正を阻止できました。2020年の一番のニュースかもしれません。提案したのはフェミニストの笛美さん。笛美という名前を見たときから、勝手に心の親友でいさせてもらっています。フェミを日本語で美しい笛、と記すセンス、ただものじゃないです。そう、フェミは美しい笛を鳴らす者。その声が現実を変えるのです。

5 草津町の女性議員リコール
 コロナ禍で、地方議会でどのように女性が扱われてるのかが浮き彫りになるニュースが続きました。群馬県草津町で性被害を訴えた女性議員のリコールに続き、最近は愛知県西尾市や奈良県山添村の議員らがコンパニオンを呼んで宴会を開いていたニュースが話題に。
地方議員を経験した友人によれば、宴会や視察の時にコンパニオンを呼びお酌させたり、膝に乗せたりなどの接待はごく普通にあるとのこと。もしかしたら日本の地方議会、明治時代から変わってない? 女性を一定数入れるクオータ制、本気で導入すべき時なのかもしれません。

 世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数は政治、健康、経済、教育の四つの視点で測られます。健康の分野では、2019年の日本は40位(実質1位の国が39カ国あるので、2位のようなもの)と、かなり上位。それなのになぜ総合で121位なのかといえば、ひとえに政治と経済のせい、につきます。政治のジェンダーギャップは152カ国中144位。もうね、石油国しか周りにいないです。ちなみに韓国の政治分野ははるか上の79位。政治に女性を入れれば、ジェンダーギャップ、もう少し上にいけるんです。

 以下は駆け足で。

6 アフターピルの処方箋なし購入を求める署名に10万人以上が賛同しました。海外でも韓国の堕胎罪廃止運動、アルゼンチンの中絶合法化運動など、今年は世界各国で女性の身体をめぐる運動が活発化しました。

7 女性の自死者が急増しています。10月は前年比の2倍近くにも。自死者の背後にはその何倍もの未遂という現実があります。コロナ禍でよりいっそう過酷に女性の人生が壊されています。

8 法務省の性犯罪に関する刑事法検討会に、性被害当事者団体「一般社団法人Spring」の代表理事、山本潤さんが入りました。当事者の声が聴かれる検討会は初めてのことです。被害者を置き去りにしない刑法改正への希望の一歩です。

9 眞子内親王のお気持ち発表が大きな話題に。いわば、皇室の女性も「好きな人と結婚するのだ」と声をあげたということ。これはかなりの事件かも。来年も皇室の女性たちから目が離せません。

 最後の10番目は、石原慎太郎氏の最新作『男の業の物語』(幻冬舎)にしたいと思います。いわゆる、男は女とは違うんだ、男は無情なのだ、ダンディズムなのだ、なぜなら男だからなのだ……ということが記されているオレ様の本です。

 SNSでこの本に関する書き込みなど見ていたのですが、ほとんどが苦笑、失笑、嘲笑、憐憫でした。「男」という言葉を石原氏自身が貶めてしまっているかもしれないのではないかと心配になるほど、さんざんな笑われ方です。そのことに2020年年末、私は希望を感じます。

 もしこの本が10年前に出ていたら、「あ、バックラッシュきた」と構えたかもしれません。「ババア発言」しかり、女性をさんざん貶めてきた元都知事には、やはり身構えてしまう耐性ができてしまっています。でも2020年、石原氏がただ老衰したからという以前に、社会の空気が「もう、それはないよ」という方向にシフトしつつあるのを実感します。

 もちろん決して油断はできないジェンダーギャップ121位の国。でも、全部が全部悪いわけじゃない。私たちは私たちの声によってひどい現実を変えることができるのだと信じたい。そんなことを2020年、私は手にすることができた気がするのです。声。これがフェミ的には2020年の一字。

 というわけで!2021年はもっともっと声が届く希望の年にしていきたいですね。みなさま、よいフェミ年を。


 今年もいよいよ最終段階。今年を振り返っても「ぐうたら社会」の感を否めず、良い年ではなかったように思います。しかし、その「ぐうたら社会」に間髪入れずに声を上げ、フォローしていったフェミニンたちの活躍に注目です。