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北原みのり おんなの話はありがたい 吉野家元常務が早稲田大学講座で「生娘」発言 職場や学校で“不意打ち”の性差別は起こる

2022年04月20日 | 生活

AERAdot 2022/04/20 

 新年度、新しい生活をスタートさせている人も少なくないでしょう。今日は、そんな新しい職場、新しい学校、新しい日常をスタートさせている女性たちに向けて、「性差別」の現実をご紹介します。

「私は性差別にあったことがない」と言い切る若い女性は昔からずっと一定数いるのですが、たいていの場合、それは勘違いだったりします。性差別は昔の話でもなければ、あからさまな性差別主義者による特別な事件というわけでもありません。たいていの性差別は、不意打ちです。まさか、この状況で、この人から? みたいなことが日常的に起きます。あまりにも不意打ちなので、こちらも準備がなく、「私の考えすぎかな?」「何か気に障ることしちゃったかな?」とついつい自分に問題があるかのように考えてしまいますが、こうやって時間を奪われるのも性差別の害の一つです。

 しかも、たいていの性差別は相手が自覚すらしていません。むしろ「コミュニケーション」「ディスカッション」「教育」くらいに思っていたりします。そのため「それはセクハラです」などと抗議しようものなら、100%に近い確率で「はぁ?」と驚かれ、「これくらいのこと笑ってやりすごせないと社会人としてやってけないよ」と説教されたり、「僕の気持ちが分かってもらえない」などと被害者ポジションを取ってきたりします。あまりにも堂々と開き直るので、「やっぱり私の勘違いかな」と萎縮してしまうこともあるでしょう。

 残念ながら、性差別は日本の日常です。ジェンダーギャップ指数120位(2021年)の国のリアリティーです。国連から注意されている性差別的な法律は山ほどありますが(メジャーなところでいえば、夫婦強制同姓です)、本気で正そうとしてくれる政治家はあまりいません。というより、日本の法律では、「性差別」が何なのか定義すらされていないのです。もちろん、定義されていないから「性差別はない」ということでもなく、具体的な被害件数がないから「被害はない」ということではありません。性差別が日常的にありすぎるから、「性差別」を「性差別」と認識することすら難しくなっているのが現実です。でも、そういう日常の性差別って、女性の希望をゆっくり奪い続けていきますよね。だから、女性たちは手をつないで、「性差別やめろ」って怒らなくちゃだめなんです。自由に楽しく気持ちよく笑って生きるために。

 それでは実際にあった不意打ちの性差別を紹介します(100年前の話ではなく、ここ数年の話)。

 性差別例1:大学で。新入生のオリエンテーションの休憩時間に、数人の女子学生たちと男性教授(40代)が話す機会があった。話といっても男性教授が一方的に自分の話をするようななかで、唐突に楽しげな感じでこう言ったという。「最近、友だちに『女の子のいるお店で飲みたい』って誘われるんだけど、僕は毎日、若い女の子と話してるから必要ないんだよね~」

 さぁ、みなさんならどうしましょう。希望を持って入った憧れの大学で、これから授業を受ける先生にそんなことを言われたら。一瞬、何を言われたのか分からず、はは、と力なく笑うことしかできないですよね。実際にその発言を向けられた女性も、気持ち悪さに衝撃を受けながら適当に笑うしかなかったそうです。つらいですね……。

 覚えておいたほうがいいことは、性差別者は職業・学歴を問わないことです。まさかこの人が? という人がやらかします。残念ながらこの国で暮らしている以上、女性に対する認知がゆがんでしまう可能性は低くないからです。学校の先生に性差別言動をされたとき、その場で直接「気持ち悪いです」「それはセクハラにあたります」「やめてください」と言えるのが一番いいですが、聞かない人も少なくありません。まずは発言を文書で記録し、信頼できる先生や、セクハラを扱う大学の部署に報告することなどもできます。こういう気持ち悪さは尾を引きます。一緒に抗議してくれる仲間を見つけ、できるだけ公にしていく道を選んでいいと思います。

 性差別例2:職場で。自分のミスで顧客(男性)を怒らせた。「上の人間を出せ!」と言われたので、上司(女性)に電話を代わったら、「女が上司なんてふざけるな!!!!」と電話口で上司が怒鳴られた。「女のくせに」「これだから女は」とさんざん性差別を吐く顧客に対し、最終的に、その女性上司と同等の男性社員数人が顧客の家に謝罪に行った。帰社した男性社員がなぜか恩着せがましい感じで「まとめてきたから」「男どうしのほうがまとまるものだな」と女性上司に言っているのが聞こえてきた。

 つらい状況ですが、2022年現在もときどき聞く日本のリアルです。責任のある場所に女性がいることに慣れず、キレる客が一定数います。そして、そういう性差別をたしなめることなく、「お客様は神様です」の姿勢を崩さずに、女性社員を二重におとしめてしまう職場もあります。こういうとき、「女のくせに」とキレる客に対して、「お客様の気持ち」を最優先させず、女性社員の尊厳を守ることを優先させてほしいと、私は企業の上の人に求めたいです。女性が働きにくさを感じたり、日常的に心を傷つけられたりする会社に未来はありません。ちなみに私が聞いたこの話は、誰もが知る大企業で起きたことです。

 性差別例3:街のスーパーで。レジ打ちをしている女性に激高している男性がいた。あまりにも強い調子で怒っているので、「いい加減にしませんか?」とレジに並んでいる他の客(男性)が言ったが、「こいつらアホやから、言わなきゃだめなんや」(場所は大阪でした)と大声を出したという。

 女性店員を怒鳴ったり、女性店員にセクハラ発言をしたりする中年の男性客を見かけると、こちらまでつらい気持ちになりますよね。この場にいた私の知人はこのとき、「こんにちは~!!! 元気~?」と、そのレジの女性に知り合いのふりをして話しかけ近づいていったそうです。そうしたら男性客は不意打ちを浴びた感じで、モゴモゴと引き揚げたとか。

 自分がされていることではないけれど、見ていると胸が痛くなるような状況に対しては、女性の知り合いのふりをして介入すると、うまくいくことがあります。私もこれ、やったことあります。電車の中で男性に絡まれている若い女性がいました。距離を縮めてきた男性に対して女性が身を引いたのが気に入らないらしく、「自意識過剰なんだよ、ブス!」とののしりはじめたんですよね。で、「あれ? 久しぶり!」と女性の手を引っ張っていったら男も諦めました。こういうとき、「ちょっと、あんた、いい加減にしなさいよ!」と正面から怒る方法もありますが、そういう正攻法なことは、加害男性と同程度の筋肉のある男にやってほしいと思います。

 性差別例4:百貨店の売り場で。女性向けの生理用品やバイブレーターを売っているお店の前で30代くらいの若い男性がずっとにらみつけてきていた。怖いなと思ったら、急に近づいてきて「お前たちは男性差別をしているんだ」と声を荒らげたという。

 はい。これは私のお店で実際に起きたことです。初め話を聞いたとき50代くらいの男性なのかな、と勝手に思っていたのですが、若い雰囲気で服装も今っぽい感じの人だったと聞いて驚きました。私の頭の中でも差別者のイメージがステレオタイプ化されてしまっていたのかもしれません。女性だけで何かをしているとか、女性が自分で楽しむということに対して、なぜか被害妄想を膨らませてしまう男性がある一定層、います。そういう人たちについては、私はただ「逃げて」と言います。自分の本能を信じて逃げる、というのも性差別と闘う一つの道です。

……まだまだ事例は続くのですが、今日はこの辺りまでにしておきましょう。性差別は不意打ちでやってきます。残念ながら、まったく無傷で生きていくのは難しい社会でもあります。女性に対する認知がゆがんでいる社会で、性暴力やセクハラは職場でも学校でも起きることがあります。自分が被害当事者になることもあるでしょう。それは本当につらい体験になると思いますが、でも、一人じゃありません。信頼できる友人や同僚、上司や教師を確保することも、生き抜くうえで大切なことです。そして、性差別がどんな顔をしているのか見抜くことも、大切な生きる技術なのです。

*   *  *

 この原稿を書き終わってすぐ、早稲田大学の社会人向けビジネス講座で、吉野家の常務取締役(4月18日付で解任)の男性が「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢、生娘なうちに牛丼中毒にする」という発言をしたことがニュースに流れた。

 ニュースになったのは、講座を受講していた女性がSNSで告発したからだが、これこそ不意打ちの性差別の最たるものだろう。なにしろこの講座は38万5000円(税込み)もする連続講座の一つだ。まさか、日本を代表する企業の男性がそんなレベルであるはずがない……まさか40万近くも支払う講座の内容がこんなはずがない……しかも連続講座のタイトルは「デジタル時代のマーケティング総合講座」だ……これはきっと夢……と、耳を疑いたくなってしまいそうなレベルの性差別である。

 しかも吉野家の男性取締役は、この発言を「ジョーク」として語り、そしてその「ジョーク」に反応し笑う受講生もいたという。そういうなかで、この女性がSNSできっちり「おかしい」と声をあげられたことを、素晴らしいと思う。


 天気予報では一日☀マークだったので期待したのだが、薄曇りと言う感じだった。しかもやたら風が強い。今朝は氷点下2度だったようだ。

園のようす。
チューリップが雪を突き破って出てきた。