「東京新聞」社説 2022年4月22日
遅きに失した感が否めない。北海道旭川市で二〇一九年、中学一年の女子生徒が上級生にわいせつ行為を強要された問題で、市の第三者委は「いじめ」と断じ、市教委が初めて謝罪した。女子生徒はすでにこの世にいない。
女子生徒は市立中に入学直後、性的な行為を撮影した動画をLINE(ライン)で送るよう求められたり、複数の前で行為を強要されたりした。二カ月後に自殺未遂を図り、学校に電話し「死にたい」と訴えた。学校側は調査に着手したが、いじめと認めなかった。
遺族の手記によると、学校側は「いたずらがいきすぎた」「加害者にも未来はある」「悪意はなかった」などと説明したという。
女子生徒は心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しみ、不登校を続け、中学二年時の昨春、公園で凍死しているのが見つかった。いじめで「誇りを失った」「(自分の)存在価値を見いだせなくなった」とツイッターに投稿していたことが死後に分かった。
「文春オンライン」が報じ、社会問題化したことを受け、市教委は昨年四月、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」に認定。第三者委を設け、調査していた。
なぜ当初からいじめと判断できなかったのか。大いに疑問だ。第三者委は学校や市教委の対応を検証し、今夏をめどに公表するという。女子生徒に寄り添った対応ができていれば、最悪の事態は避けられたかもしれない。
市民団体「いじめ当事者・関係者の声に基づく法改正プロジェクト」の調査によると、重大ないじめの被害者は学校や教委への失望が強い。「やっているふり」「一年半放置された」「担任が一人で抱え込み、組織として機能せず」などの回答が並ぶ。いじめ防止法の理念が現場に浸透していない。
「こども家庭庁」の設置などを定める関連法案の審議が今国会で始まった。欧州に倣い、子どもの権利や利益が守られているか、行政から独立した立場で調査、勧告する「子どもコミッショナー」創設も焦点になっている。被害者を学校や社会から決して孤立させない態勢づくりは喫緊の課題だ。
園のようす。
今季初めて外でお茶を。