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ウクライナ危機に便乗 またぞろ入管法改定案

2022年04月26日 | 社会・経済

名古屋入管死亡事件の遺族代理人 弁護士 高橋済さんに聞く

「しんぶん赤旗」2022年4月26日

 

火事場泥棒に他ならない

 ロシアのウクライナ侵略から逃れた人々の保護を理由に、政府は、昨年廃案に追い込まれた入管法改定案を再提出する動きを見せています。名古屋市内の入管施設で昨年死亡したスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんの遺族代理人を務めた高橋済(わたる)弁護士に聞きました。

 (斎藤和紀)

 難民条約は、「人種、宗教、国籍、特定の社会集団の構成員、政治的意見」の五つの理由で「迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖」がある人を難民と定義しています。政府は、紛争地から逃れたウクライナ人は条約上の難民に該当せず「避難民」だとして、入管法改定案に盛り込まれていた「補完的保護対象者」で受け入れると主張しています。

 しかし、それではウクライナの方々は救われません。なぜなら「迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖」という難民条約と同様の要件を課しているからです。

難民鎖国の元凶は

 日本の難民制度ではこの要件が厳格に解釈されており、難民申請者が政府などの迫害主体から把握され、標的にされなければなりません。例えば香港なら周庭さん、ミャンマーならアウンサンスーチーさんは難民認定されるでしょうが、一般のメンバーは「迫害を受ける恐れはない」とみなされ認定されません。こうした他の先進国にない認定基準は「個別把握説」と呼ばれ、日本が難民鎖国となっている元凶の一つです。ウクライナ侵略で無差別攻撃から逃れた人は、個別把握説を課した補完的保護では保護されません。

 そもそもウクライナの戦争避難民を一律に「難民ではない」とする政府の主張は間違いです。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のガイドライン(2016年)は、難民認定について「二つ以上の国家間における暴力」が含まれると明記しています。ウクライナから逃れる人々も個別把握説を放棄すれば十分に条約難民にあたりうるので個別に難民認定し、条約難民でない場合は現行法の「人道配慮措置」で難民並みの受け入れは十分できます。

保護強化どころか

 現行法で対応可能なのに、なぜ政府は入管法改定案を再提出しようとするのか。ウクライナ危機を口実に、廃案に追い込まれた入管法改定案を復活させるためでしょう。古川禎久法相はNHK番組で、「仮に去年(入管法改定案が)できていればウクライナ避難民を対処できた」とし、送還問題などを挙げ「この前のように一体的な見直しを目指す」と述べました。

 改定案は、難民保護を強化させるどころか後退させるもので、国際社会からも厳しく批判されました。3回以上の難民申請者を強制送還できる制度や退去強制に従わない者への刑事罰を創設し、国際法違反の無期限収容を維持しています。そもそもウクライナ人の保護と、強制送還や長期収容の問題は関係ありません。「ウクライナ避難民を救うため」と言って、難民保護を後退させる法案を通そうとするのは、火事場泥棒に他なりません。

国際基準と同等に

 昨年、立憲民主党や共産党などの野党が参議院に共同提出した難民等保護法案は、「戦争、内乱、大規模な人権侵害」により日本に逃れた人を保護すると明確に盛り込んでいます。政府・与党は野党に責任転嫁しますが、むしろ野党案を審議して通しておけば、適切に保護できていました。

 政府はウィシュマさんの死亡事件の原因究明もせず、在留資格のない人を人間扱いせず長期収容できる、人権無視の実態は変わっていません。難民認定基準を国際基準と同等にすることや、生命や人権保護を目的とした独立の難民保護機関の設置などが必要です。


 今朝も氷点下まで下がり霜が降りています。タイヤ交換は23日に済ませました。こんなに早いのは初めてかな?

園のようす。