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発効3年 核禁条約の現在地

2024年01月22日 | 社会・経済

大阪大学名誉教授(軍縮論) 黒澤満さん

「しんぶん赤旗」2024年1月22日

締約国が「核抑止」を徹底批判 規範力増し保有国追い詰める

 核兵器禁止条約が発効して3年がたちました。昨年末には第2回締約国会議が開催され、核兵器のない世界に向けた議論が進みました。禁止条約発効の意義と締約国会議の特徴について、核不拡散条約(NPT)再検討会議日本政府代表顧問を務めた黒澤満大阪大学名誉教授(軍縮論)に聞きました。(聞き手 加來恵子)

 ―禁止条約が発効した後の世界情勢をどう見ていますか。

 核兵器禁止条約発効後、ロシアがウクライナ侵略を行い、核威嚇を繰り返し行っています。イスラエルのガザ攻撃や北朝鮮のミサイル発射など、核軍縮に逆行する動きがあります。大国間の話し合いや協力はなく、力で抑えつけようとしており、キューバ危機以来の危機にあります。

 そのなかで、核兵器禁止条約が良い方向に前進しています。禁止条約への署名は93カ国、批准が70カ国、国連加盟国の3分の1に広がっており、こうした国が核保有国に対抗して動いている状況にあります。

 2000年のNPT再検討会議で合意した第6条の「自国の核軍備の完全廃絶の明確な約束」の再確認は2010年以降行われず、第6条を補完するかたちで禁止条約ができました。

 NPT再検討会議と禁止条約締約国会議の違いは、より民主的な運営が行われているということにあります。

 NPT再検討会議は約1カ月かけて議論し、1カ国でも反対すれば決裂します。

 締約国会議は、次の会議までの期間、継続的に複数の作業部会がそれぞれ調査・報告しているため、会期が短くても会議がスムーズに行われています。また、市民社会が参加し、主役になれるのも大きな違いです。

 ―第2回締約国会議の議論はどんな特徴があるでしょうか。

 第1回締約国会議のウィーン宣言を具体化する政治宣言が出されました。宣言には、「核兵器を違法化し、悪の烙印(らくいん)を押し、完全に廃絶する不屈の決意をかつてなく固めている」とあり、核兵器のタブー化と禁止条約の普遍化の強化をうたっています。

 第2回締約国会議では、国家の安全保障ではなく、人類の安全保障の観点から、多くの国々が「核抑止」論を批判しました。核兵器による威嚇は国際法違反だという前提に立って議論されたことは大きな成果です。

 これまで、アメリカなどの大国は、国家至上主義のうえに国の安全保障を掲げてきました。国家の安全保障を考えれば、核実験被害者や被爆者は救済されません。そのため、「人間の安全保障」や「人類の安全保障」の概念をもって、これに照らして使用した国の責任を問うことを追求しています。

 核兵器の使用は国境を越え、人類と環境に重大な影響を与えることを示すために、禁止条約第6条、第7条の核被害者救済と環境修復に光を当てました。核実験被害者や被爆者が証言し、核兵器の非人道性を明らかにしました。「核抑止」に対し、核兵器による影響の科学的証拠を示し、理論的に説得力を持って対峙(たいじ)しようとしています。

 オーストリアが中心となり、安全保障に関する協議プロセスを設置することが決まり、2025年の次の締約国会議までに科学的知見をふまえ、核被害者や専門家を含めて「核抑止」の危険を明らかにする報告書を作成することになっています。核被害者支援と環境修復に向けた「国際信託基金」の設立に向けた指針作りも決まりました。

 ―禁止条約は核保有国にどのような影響を与えていますか。

 現在、非核兵器地帯に110カ国以上が含まれています。これらの国は禁止条約に参加しても新たな義務を負うことはありません。

 これらの国々に対し、アメリカなど核保有国が安全保障や経済支援の打ち切りなどをちらつかせて、禁止条約参加を妨害しています。

 核保有国は表向きには禁止条約を無視しながら、その裏で妨害しているのです。

 逆に言うと、核保有国は、これ以上禁止条約参加国が増えることを危惧していると言えます。締約国が100カ国を超えれば、同条約が世界的規範力を増し、保有国はさらに追い詰められることになります。締約国を増やすことが重要です。

 ―日本政府はオブザーバー参加さえもしませんでした。唯一の戦争被爆国として禁止条約に参加する政府にするにはどうすればいいでしょうか。

 「赤旗」の昨年12月4日付の主張「情勢切り開く核兵器禁止条約―高まる実効性と規範力・日本政府は参加決断せよ」には100%賛成しています。

 アメリカの同盟国であるドイツやノルウェーが締約国会議にオブザーバー参加しました。日本は唯一の被爆国と言いながら、アメリカの「核抑止力」に依存し、昨年広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で岸田首相は「核抑止」強化を宣言しました。

 日本政府は「禁止条約は出口」と言いながら入り口であるオブザーバー参加さえしない。核兵器国が参加していないことを理由にしていますが、それは理由になりません。

 締約国になれないなかでも、会議に参加し、第6条、第7条の核被害者支援や環境修復で貢献することは可能ですが、それもしない。

 締約国会議で、ギニアから「被爆者を治療したノウハウを持っているのに、なぜ日本政府はこないのか」との意見が出され、日本政府が出席していないため、広島県知事が回答する場面がありました。岸田首相は「やっている感」だけで、何もやっていないのです。

 同じアメリカの同盟国である北大西洋条約機構(NATO)の加盟国よりもさらに悪い。唯一の戦争被爆国なのだから、せめてヨーロッパの同盟国と同等、あるいはその先をいかないといけない。国際社会はそれを日本に求めています。

 自民党政治のもとではアメリカの「核抑止力」から抜けることはなく、禁止条約に参加することはないでしょう。日本で、「核抑止」より禁止条約参加を求める世論を増やし、政府を変えればこの条約に参加できます。野党が連帯してこの運動をすすめれば参加の方向に変えられますし、そうなってほしいと期待しています。

 

 くろさわ・みつる 1945年生まれ。大阪大学名誉教授、大阪女学院大学名誉教授。日本軍縮学会初代会長。『核不拡散条約50年と核軍縮の進展』など著書多数

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“核の傘”の考え捨てて

ICAN事務局長講演 日本に条約参加促す

 核兵器禁止条約発効から22日で3年を迎えるにあたり来日している核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長は21日、長崎市の長崎原爆資料館ホールで講演しました。被爆者や若者など、200人以上の市民が聞き入りました。

 主催は「核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会」など。

 「核兵器のない世界へ、私たちにできること」と題して講演したパーク氏は「被爆者たちは、自らの証言を繰り返し語ることで、人類と核とは共存できないという、シンプルだが深いメッセージを勇気をもって発信してきた」と語り、来場している被爆者や市民の活動に感謝の言葉を述べました。

 「多くの国で核兵器に関する教育がほとんど存在しない。被爆者の声を中心に据えたカリキュラムが必要だ」と指摘し、教育の重要性を強調しました。

 さらに、「日本は今こそ“核の傘”という誤った考えを捨て、核兵器禁止条約に加わるべきだ。それにより日本の安全が強化されるだけではなく、戦時に原爆を経験した唯一の国として、この問題について強い道徳的権威をもって語ることが可能になる」と指摘。米国の同盟国として核兵器を安全保障政策として捉えている限り、核軍縮をリードすることはできないと批判しました。

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核禁条約参加求め674議会

発効3年 約4割の自治体で意見書

2024年1月22日

 核兵器禁止条約が2021年1月22日に発効して3年を迎えました。同条約が実効力・規範力を高めるなか、唯一の戦争被爆国である日本政府は米国の「核の傘」のもとで署名も批准もしていません。日本政府に核兵器禁止条約への参加を求める地方議会の意見書(趣旨採択を含む)が674に達し、全1788議会の約38%となったことが、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)の調べで21日までにわかりました。

 昨年10月5日に全会一致で可決した長崎県諫早市の意見書は「核兵器のない世界の実現という被爆者の切なる願いを、唯一の戦争被爆国である日本政府は真摯(しんし)に受け止め」、「核兵器禁止条約の実効性を高めるために主導的役割を果たされるよう強く要望する」とのべ、核兵器禁止条約を早期に署名・批准することを求めています。

 昨年9月14日に賛成多数で可決した栃木県高根沢町の意見書は、歴史的な核兵器禁止条約が「被爆国、被害国の国民の声に応えるものとなっています」と高く評価。「日本は、『唯一の戦争被爆国』として核兵器全面禁止のために真剣に努力する証として、核兵器禁止条約に参加、調印、批准することを求めます」としています。

 意見書は核兵器禁止条約が国連会議で採択された17年7月7日以降のものです。岩手、長野、三重、沖縄の4県議会が可決し、鳥取県議会が陳情を趣旨採択。区市町村議会は31の趣旨採択を含めて1区290市302町76村となっています。

 岩手県は県議会と全33市町村議会で可決。県・区市町村議会を合わせて7割を超えたのは秋田、新潟、長野、鳥取、岡山、広島、徳島の7県です。


今の自公政権には何の希望も持てません。
早く無くなってくれることを望むだけです。

今日はまた雪です。
気温は落ち着いたようです。