日刊ゲンダイDIGITAL 2022/06/12
怒涛の値上げラッシュが続く。岸田首相は「消費税を触ることは考えていない」と消費減税をかたくなに拒んでいる。税率はそのままで物価が上昇していけば、消費税額はどれだけ増えるのか。試算してみると、「隠れ増税」とも言える大きな国民負担が浮かび上がった。
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石油情報センターによると、6日の全国のレギュラーガソリン価格は1リットル=170円。1年前(昨年6月7日)の153円より17円値上がりしている。このうち消費税額は14円から16円へと2円増えている。年間のガソリン消費量は約4500万キロリットル。仮に1年間、2円アップが続けば、消費税の税収額は約900億円も増える。本体の値上げに加え増税とは、消費者には踏んだり蹴ったりだが、政府の財布は潤うことになる。
税理士で立正大客員教授の浦野広明氏(税法)の試算によると、物価が1%上昇すれば、年間の消費税額は約2000億円増えるという。
「税率アップとは違う形での増税です。岸田首相は税率を下げないことによって事実上、消費増税を実行しているということです。改めて、低所得者ほど負担が重くなる消費税の残酷さを痛感します」(浦野広明氏)
10日、日銀が発表した5月の企業物価指数は112.8となり、4月に続き過去最高となった。上昇率は前年同月比プラス9.1%と高水準だ。
4月の消費者物価指数(生鮮食品も含む総合)は前年同月比2.5%アップだったが、この先、企業物価の上昇分が転嫁され、さらなる値上げに波及する恐れがある。
国民は踏んだり蹴ったり
日銀が2月4日から3月2日に実施した「生活意識に関するアンケート調査」によると、1年前に比べて、物価が「上がった」は8割を超えた。実感する上昇率の平均値は6.6%、中央値は5.0%だった。
まだウクライナ戦争の影響が少ない段階で、5~6%とは驚きだ。その後、戦争は長期化し、毎月、値上げが相次ぐ。帝国データバンクによると、今年値上げされる食品は既に1万品目を突破し、値上げ幅は平均13%にも及ぶ。
この先、消費者物価指数が企業物価指数の9%台に近づいてもおかしくないのだ。浦野氏の試算によると、物価上昇率が9%になれば、消費税は1.8兆円増額されることになる。税率1%分の増収に迫る金額だ。
財務省に物価上昇に伴う消費税の増収見通しを問い合わせたが、「対外的には公表していません」(主税局総務課歳入係)と答えた。
「本体の値上げに加えて、消費税の負担が重くなっていることに気づかない国民も少なくありません。財務省は最低限、物価高による消費税増収額を国民に明らかにする責任があります。恩恵を受けているわけですからね。物価高騰の中、岸田政権は消費減税を一切せずに事実上の増税を続けようとしている。インフレ下の消費税問題は参院選の大きな争点にすべきです」(浦野広明氏)
原油高と円安で上げ材料には事欠かない。青天井の物価上昇に岸田政権は「左うちわ」ということか。
「何もしない」のがとりえの岸田首相。何もしなくても「結果」がついてくる。
いちごが色づいてきた。