処分方法は未定、米軍「やりたい放題」になる恐れも
「東京新聞」2023年11月26日
東京都福生市など5市1町にまたがる米軍横田基地内に、発がん性の疑われる有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)を含む泡消火剤で汚染された水が、約140万リットル保管されていることが、政府関係者などへの取材で分かった。処分には高額な費用がかかるとみられるため、保管が長期化する可能性が高い。漏出すれば、周辺住民が水道水源として使う地下水の汚染につながるリスクをはらむ。(松島京太)
米軍横田基地とPFAS問題 2010〜23年の間、横田基地内では泡消火剤の漏出事故が計8回発生。12年に発見された事故では、高濃度のPFASが含まれた泡消火剤の原液約3000リットルが全て土壌に漏出した。米軍は「基地外への流出はない」としているが、都の18年度の調査では基地付近の監視井戸から指針値の27倍のPFASが検出されている。
◆25メートルプール「4杯分」
本紙が入手した米軍の内部資料などによると、今年1月時点で、基地内の7施設の貯水槽で泡消火剤が混入した汚染水を140万リットル保管。その量は学校の25メートルプール約4杯分に相当する。他に1施設では、消防車に補充する泡消火剤も6000リットル残っているとされる。
汚染水のPFAS濃度は1リットル当たり最大18万ナノグラム超で、検査装置の検出上限値を上回っており、本来の濃度はさらに高いとみられる。18万ナノグラムは、地下水や河川水管理の目安となる国の暫定指針値の3600倍。
貯水槽には本来、火災発生時に別のタンクにある泡消火剤の原液と混ぜる水を保管。米軍関係者によると、設備の不具合で配管をつたって泡消火剤が貯水槽に逆流して、汚染された。
処分方法について、入手した資料では「焼却が唯一の手段だが、米本国では許可されていない」と記されている一方で、実際の方法は示されていない。環境省によると、米国内では焼却場で有害物質が発生することなどが問題となり、焼却処分が2020年から禁じられている。日本国内でも焼却施設はあるが、多額の費用がかかることなどから、米軍側では具体的検討は進んでいないとみられる。
◆防衛省は「米側に確認中で答えられない」
米軍横田基地は本紙の取材に、事実関係や汚染水の処分方針などには言及せず、「基地施設と環境の管理者として引き続き関連する全ての合意、義務、手続きを順守する」と答えるにとどまった。防衛省の担当者は「米側に確認中で答えられない」としている。
東京・多摩地域では、水道水源の井戸のPFAS汚染が確認されており、泡消火剤の漏出事故が相次いでいる横田基地が汚染源として疑われている。今年1月には、保管する汚染水の一部の約760リットルが漏れ出たことが判明。PFASに詳しい京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)は「漏出事故が起きると、土壌にしみ込み地下水となって、多摩地域でさらなる汚染拡大につながる」と懸念する。
◆処分どうする? 問題は「配管汚染」
また、汚染水の処分を巡っては、新たな環境汚染につながりかねない方法が米軍内で検討されており、こうした対応に専門家や政府関係者からは批判や疑問の声が上がる。
PFAS汚染の元凶は、基地内で使われている泡消火剤。防衛省によると、在日米軍施設では来年9月までに、PFASをほぼ含まない泡消火剤か水消火設備への切り替えを終える方針という。
政府関係者によると、在日米軍には少なくとも3種類の泡消火剤がある。最新の規格は、PFAS濃度が1リットル当たり1000ナノグラム未満とされているが、2020年の規格は、PFASの一種のPFOSとPFOAがそれぞれ最大1リットル当たり80万ナノグラムまで許容されている。横田基地で今年1月に発生した汚染水の漏出事故は、20年の規格が漏れ出た。
厄介なのが、泡消火剤のタンクと貯水槽をつなぐ配管が、20年の規格よりも古い高濃度のPFASを含む泡消火剤で汚染されている可能性が高いことだ。1月に漏れた汚染水は貯水槽内での濃度は1リットル当たり846ナノグラムだったが、配管を通って漏出した水の濃度は264万ナノグラムだった。
◆手軽に安く?「ため池で蒸発」案の危うさ
汚染水を処分する方法は具体化していない。関係者は「基地内のため池に集めて蒸発させればいい、という案が一部から出ている」と明かす。多額の費用がかかる焼却よりも、手軽で安く済むからだとみられる。
PFASに詳しい京都大の原田浩二准教授は「ため池に汚染水を流し込めば、土壌に染み込んで周辺地域の地下水を汚染する可能性が高い」と警鐘を鳴らす。
米軍資料もPFASは「土壌・水・大気で高い移動性がある」と言及し、処分は一筋縄ではいかない。ある関係者は不適切な処理方法が検討されている状況に、「(米側に基地の排他的使用権が与えられ、原状回復義務がない)日米地位協定を盾に、やりたい放題になっている」と批判する。
沖縄県宜野湾市の普天間飛行場では21年、米軍がPFAS汚染水を低濃度に処理して下水に排出した。米軍の一方的な判断で、日本との合意はなかった。
政府関係者は懸念する。「環境での残留性が高いPFASはいくら濃度を薄めても排出することには問題がある。横田基地を含めた他基地の汚染水でも同じやり方をされかねない」
何も言えない日本政府である。
水道水も危ないということです。
健康被害を受けないための自衛手段が重要です。
健康被害を受けないための自衛手段が重要です。
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