真鍋氏物理学賞 未来探る研究支えたい
「東京新聞」<社説>2021年10月6日
日本生まれの気象学者、真鍋淑郎さんがノーベル物理学賞に輝いた。地球環境問題の深刻化に伴い、一九六〇年代の業績が見直された。後進の研究者を育て、地球の未来を探る研究を後押ししたい。
天気予報の精度向上をめざして始まった真鍋さんの研究は、二酸化炭素の重要性に気付いたことから、地球全体の気候システムの変動予測に発展していった。
気候変動とコンピューターモデルという仕事は、これまでノーベル物理学賞の対象となってきた素粒子や宇宙の研究とは毛色が異なっている。伝統的な学問の垣根を越えて選ばれたのは、それだけ研究業績の現代的な意義が高く評価されたからだ。
地球温暖化対策を何よりも重視する欧州の風潮も追い風となった。気候モデルの精緻化は今も進行中である。今後も重要な研究分野であり続けるだろう。
ひるがえって、現在の日本の研究環境をみると、気になることもある。
真鍋さんは、五八年に博士号を日本で取得してから米国に渡った。「就職先が国内になかったから」と述べている。当時の経済、社会の状態を考えれば、やむを得ない選択だった。
その後、日本は経済成長で豊かになり、研究費が潤沢な時代もあった。そして下り坂の今、六十数年前と似た状況にもどってきたようだ。
奨学金などは拡充されているが、大学の運営経費は削減されてしまった。若手に与えられるポストは任期制で安定しないことが多く、生活費を工面しながら、将来の不安にさいなまれる。博士を雇用する国内の民間企業は限られている。一方、ごく一部の研究者は、大きな賞をもらったり、ベンチャー企業を上場させて大成功を収めている。
そんな姿をみて、学部生や大学院生はどう考えるだろうか。リスクの高さに恐れをなし、大学院修士課程から博士課程への進学者は低下傾向だ。博士課程は留学生が目立ち、どうすれば日本人学生を確保できるか、各大学は頭を痛めている。
若手研究者に、雇用や所得が安定した環境を用意しなくてはならない。そうした施策は、すぐに成果が出なくても、将来の日本の力を保ち、全人類的な貢献にもつながるだろう。
やはり日本では優秀な研究者が育たないということであろう。
研究環境、国家予算、封建的権威主義等、色々と克服しなければならない課題が山積みだ。
優秀な人材が外国に行ってしまうのは、残念ですね!
真鍋さんは、もうアメリカ国籍を取られているとか。
mooruさんが書かれているような問題を解決しないと、
日本の国自体が先細りですね。