人の世は、滞在期間の定め無き、今日一日の旅の宿

 時 人を待たず、光陰 惜しむべし
 古より有道の人、国城 男女 七宝 百物を 惜しまず
 唯 光陰のみ、之を惜しむ

方剤:帰脾湯

2022-03-11 | 日記


次が帰脾湯です。これはもう今まで何度も話してきました。
人参剤の四君子湯を中心として、それに黄耆を加えて参耆剤にしてやって、
さらに脾に働く薬を使っています。むしろ現実に使う処方としては、
後から出てくる加味帰脾湯の方が多くなります。

精神科でない限り、普通に開業していると、通ってくる患者さんは、
帰脾湯レベルの人は、あまり来ることはないです。
それはどうしてかというと、非常に症状が軽いか、
非常に重過ぎて動けないか、どちらかだからです。
加味帰脾湯というのは、これに柴胡などが加わっており、
要するに社会に対応できているから、もうちょっと強い人なのです。
反応もしているし、いろいろな症状を出すので、やはり医療機関に来ようとします。

帰脾湯の状態というのは本当のうつか加味帰脾湯まで行かない軽いうつか
どちらかなのです。要するに緊張を伴わないうつか、
もううつそのものでつぶされてしまって、全然身動きもできないかです。
だから、項目その他のところに書いていたと思うのですが、
この帰脾湯は、飲ませてから現実に自殺した例が報告されているのです。
ちょうどうつの患者が治りかけに自殺するのと同じです。

加味帰脾湯の患者で、それでよくなるレベルであるならば、そういう心配はないです。
そしてうんと軽いうつ、加味帰脾湯まで行かないうつぐらいの人は、
初めから医療機関にはあまり来ないで、家に閉じこもっているのです。

本当に帰脾湯段階のうつというのを、果たして一般内科で治療して良いのかどうか、
ちょっと疑問はあります。私自身は心療内科もやっているのですが、
大うつ病と統合失調症と本物のてんかん、この3つはやはり脳から出発する疾患だと
考えていて、これは残念ながら東洋医学が基本的には及ばない世界だと思っています。

何度も言っているように、東洋医学というのは食べ物や体を流れている気の
流れを調節することで、人間の自然治癒力に頼る治療ですから、
脳から出発していろいろ症状を出しているものは、やはり基本的には
適応外であると思っています。だから大うつ病と診断したときは、
僕は速やかに精神科に紹介状を書いています。

そういうことで、帰脾湯そのものは意外と使っていません。
加味帰脾湯はたくさん使います
たまに使っている場合は、結局、加味帰脾湯と同じ考え方で、
別の柴胡剤と一緒に使うという場合がまずあります。

それから、先程言ったように
本当は加味帰脾湯まで行かないぐらいの軽いうつ状態の、
緊張を伴わないぐらいのうつ状態を、
本人は気付かないで、全く別の病気で来ている人がいます。
"ああ、この人は、本来はちょっとが衰えていて、
軽いうつがひっそりあるのだな"という人に、病名はそういうふうに言わないで、
「これは胃腸にいい薬で元気が出るよ」という格好で出しているぐらいです。
はっきり帰脾湯の適応のうつで、これで本格的に治療するのだ
という意識で投与したことはありません。

それから文献を読むと、一応これは血に働く薬として再生不良性貧血とか
いろいろ載っているのですが、実は、血液疾患もかなり診ていた時期があって、
本当にどうなのかというのをかなりやってみたことがありましたが、
残念ながら再生示良性貧血などには効きませんでした。
だから、どうなのでしょう、こういううつ的な人に
少し貧血傾向が出てくることもありますので、そういう場合は、
この帰脾湯だけではなくて四物湯と併用していることが多いようです。

山の中で医療をやるようになってから、
血液疾患の人が命がけでわざわざやってくる事はほとんどありません。
もし皆さんのところでそういう機会があったら、もう1回確かめてみて、
教えてくれるとうれしいなと思っています。

この帰脾湯に、四物湯を加えていった薬味を調べてみれば解ると思いますが、
十全大補湯をもうちょっと強化したような処方になります

この中に出てくる遠志、木香というのは、プロドラッグとして
結構催眠作用がある漢方薬という面で面白いのです。
酸棗仁湯が漢方の眠剤としては有名なのですが、前に話したように
寝床を整えてやるような薬です。本来の催眠作用はあまりないのです。

ところが帰脾湯に入っている遠志、木香というのは、本当に
(これはちやんとどこかの大学で研究していて、)服用してから体内で、
本来の催眠性物質に変わることが発表されています。
院外処方などで簡単に処方できる方はやってみてください、
エキス剤の半分でいいです。遠志1.0、木香0.5で、振り出しで
夜寝る前に飲ませるのです。

どうしても西洋の眠剤は飲みたくないという人に関しては
さっき言った酸棗仁湯を出して、酸棗仁湯を飲むときに、
一緒にこれを振り出して、この振り出した液で酸棗仁湯を飲んでください
というような格好で出しているのです。


(振り出しの仕方:
生薬を一回分ずつ煎じ袋に入れて、 急須に入れお湯を注ぎ、3、4分後に服む )

要するに酸棗仁エキスを2.5グラム、それに遠志を1.0グラム、木香を0.5グラム
で渡して振り出し、それで3人に1人ぐらいはうまくいっていますので、
捨てたものではないと思います。

漢方の中で、はっきりターゲットを絞ってやれるような薬というのは、
ちょっと少ないですからね。


第21回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda21.htm


https://www.kigusuri.com/kampo/kampo-care/042-2.html



 ※鬱病と漢方, 妙香散, 血虚と鬱, 電磁波に注意

因果一如

2022-03-11 | 日記

     ※羅籠(事実は束縛しない), 不・識別



      https://www.youtube.com/watch?v=nVu3r6wAV0o

      ※師弟問答

子供の感染症が拡大

2022-03-11 | 日記

     https://edition.cnn.com/2021/09/13/health/children-covid-cases-increase/index.html

    ※子供の感染症と漢方(探求は結論に非ず), 微熱と漢方, 救急漢方(病態に応じた匙加減)