人の世は、滞在期間の定め無き、今日一日の旅の宿

 時 人を待たず、光陰 惜しむべし
 古より有道の人、国城 男女 七宝 百物を 惜しまず
 唯 光陰のみ、之を惜しむ

方剤:五苓散

2022-03-23 | 日記



次は五苓散です。
五苓散の薬味は先程全部話してしまったので、
薬味に関してはもう話すことはないのですが、
ただとにかく、この五苓散は非常に大事な薬です。
水の病証だと判断したら、目をつぶってこれを出せば
どんな病気にも一定の効き目は必ずあるはずなのです

要するに先程言った、水のトライアングル全てに効く薬で構成されていて、
それ以外の余計な薬は入っていないのです。
だから細かな調節は出来なくても、これは水の病証だと判断してしまったら、
黙って五苓散を投与してみて下さい。それだけで効きます。

水だけの病証というのは無いのですが、
水が非常に大きな役割を果たしているという病証というのが多いのです。
そういう病証だと判断するための所見にいくつかのポイントがあります。
一番はっきりするのは舌です。本当に舌が白くてポッテリと膨らんでいて、
水々しいならば間違いなく水の病証であると考えて差し支えないのです

他に意外とあるのは心下の水気です。
これは脾がちゃんと水を処理できていない徴候です。
これらの徴候があれば異常なのです。
体の浮腫は必ずしもそれだけで水の病証とは言えません。
例えば下半身の浮腫はそれだけで水の病証と言って良いかというと、
それは非常に難しいのです。

稀に張れてテカテカになっていて、針を刺したら血が出ないで水が出てくる
というそれぐらいになれば、間違いなく水の病証があると言えます。
気や血の滞りで水が滞ります
水を意識しないでも、気に働くだけの薬でも、
また血に働くだけの薬でも引いてくる水の病証というのがあります。
最初の時にスライドで見せた、全身浮腫の女の方の水が引いたのは、
桃紅四物湯によってですね。
全く水の薬を使わないで血の薬だけで軽快しているのです。

あとこういうところ(右図)に振水音というのがあるのも、
水と考えて良いのでしょうか。
逆に非常に口が渇くのが水の病証のこともあります。

でもやはり一番分かりやすいのは舌と心下の水気です。
他に局所の水で、変な所にポコツと水腫をつくるのがあります。
下半身は重力の法則で溜まってしまうので、
下半身の水は必ずしも水の病証とは言えないのです。

局所に明らかに水があるなと言われるものでは、
代表的なものは膝関節だけか単独で腫れて、しかも熱を持たない病証です。
これは局所の水なのです。これは間違いなく水の病証です。
意外と気が付かれていないけれども四十肩、五十肩もこれは局所の水なのです。

最近分かってきて西洋医学でもメニエールは内耳の水腫であると言っています。
まさに局所の水です、二日酔いがそうです。
乗り物酔いも、あれは振動で内耳に水腫をおこした状態です。
まあ二日酔いと乗り物酔いは似たようなものです。

それから苓桂朮甘湯の時に話しましたが本態性高血圧もそうです。
水が溢れてきてしまうのです。
それからご婦人に多い全身の浮腫です。
下半身は重力の法則で来ます。全身に来るというのは変なのですね 
要するに特発性浮腫の事です。それからまぶただけポッコリ腫れる
これも水の病証です。
黙って五苓散を出せば効かないということは無いのです。
あとは一つ一つの病証に応じて微調節すれば良いのです。

もちろん水だけで異常を来たしているとは限りません。
本来は気か血の方に異常があるはずなのです。
ところが臨床的に現実に水の病証に出会うと分かるのですが、
血の病証はあまり水の強い病証を出さないのです。

血の病証の時は意外と血を中心に病態を作り、
水も少し調節するぐらいの時が多いです。
気がやられていて、あまり血が表に出ない時のほうが
水の病証と言うのが強く現れることが多いのです。

そうすると血があまり絡まないとなると水のトライアングル(右図参照)で
これのどこに問題があるか考えて弱いところを補ってあげれば良いのです。
脾に問題があればを加えて脾一肺に問題があれば茯苓を加えるのです
肺一腎に問題があれば桂枝ということになるのですが、
桂枝を増やしてもあまり変化はおきないようです

桂枝は気の上衝には効果がありますが、水の病証の場合あまり変わりないのです。
ここ(肺一腎)に作用するのが、一番は麻黄です

肺から腎に最も粛降を促すのは麻黄です。
西洋医学で一番有名なのはテオフイリンです。カフェインですね。
元々生薬です。カフェインを飲むと尿が沢山出て呼吸も楽になります。
テオフイリンはまさにここ(肺の粛降)に作用します。

それと、後で又お話しますけれども、
脾と肺は太陰ですが、腑で言えば陽明です。
陽明の主薬をここに足してあげると非常に良いのです 
陽明病の主薬は葛根です。
これは覚えておいてください。

陽明で使う薬はいっぱいあります。
今までで石膏がありますし、 大黄も出てきました。
ここ(下図)を賦活する一番の中心の薬は、
要するに大腸や胃を賦活して
肺や脾の動きを活発にする主薬は葛根です。
だから五苓散葛根湯(麻黄も葛根も入っている)を加えると、
非常に強い利尿剤になります

本来は利尿剤だったらここ(腎)だけの問題に思えるのですが、
代表的利尿剤である五苓散は、朮も茯苓も桂枝も沢瀉も猪苓も入っており、
麻黄は肺一腎を、葛根は脾一肺を賦活して利尿するのです。
しかし、あくまでも水は腎から排泄するのですから、
五苓散と葛根湯はあまり多くはいりません。
五苓散3.0、葛根湯2.0ぐらいで充分です。
脾一肺、肺一腎が主ではないのです。
最終的に重要なのは腎からの排泄です。

ほとんどの水の病証は、五苓散と葛根湯の組合せを使うと
何もいらない場合もあるぐらい良く効きます

現実にはいろいろなことをやります。
例えばメニエール病の時など、半夏白朮天麻湯を主処方にして、
頓服で五苓散葛根湯の組合せを出しておいて、
ひどい発作の時にはこれを飲みなさいと言っておきます。
二日酔いのときもこの組合せが一番です。
五苓散、黄連解毒湯というのはあまり良い飲み方とは思いません。
二日酔いというのはそういう事ですからね。

要するに普通の時は人間と言うのはそんなに水分を取れないのです。
お酒の肴というのは随分塩分が多いのです。
塩分と一緒に水とアルコールを飲んだら、ものすごい量の、
人間が処理できないほどの水分が入ってしまいます。
それはどこかに一時ストックしておくのですが、
それが後から痰になってくるのです。
だから五苓散と葛根湯の組合せを出すと、そこを処理します。


本態性高血圧なら、五苓散でなくても苓桂朮甘湯でだいたい良いですね。
婦人の特発性浮腫というのも大抵この五苓散葛根湯でおさまります。
それから膝関節症は本来は防已黄耆湯が主役ですが、
分からなかったら、とにかく五苓散をやってみて下さい。
水の病証であればそれで全然効かないということはないはずです。
五苓散は水を動かす一番基本の処方ですから。

薬で治すのではないのです
薬がさっき言った水のトライアングルに働きかければ、
後は体が勝手に治って行ってくれるはずなのです。
より親切な治療をするにはそこにターゲットを絞ったほうが良いのです。

肩関節周囲炎なら、水を動かす薬に鎮痛剤が入っているニ朮湯の方が良いです。
ニ朮湯は消炎剤は入っておらず、鎮痛剤だけが入っています。
肩関節周囲炎は炎症ではないのですね。ニ朮湯は特効薬なのですが。
でも水の病証を理解するためには、これはニ朮湯だなと思ったら
まず五苓散でやってみる事です。そうしたら分かります。

あと五苓散で問題になるのは小児の自家中毒に使うときです。
実は小児の自家中毒にもこの五苓散というのは特効薬なのです。
でも使い方を間違って、うまく使えない場合が非常に多いのです。
小児の場合、飲めないこともあるので、
坐薬として使っても効くという報告もあります。
でも僕は経験的にやってみて分かったのですが、
ゲーゲー吐いてきても五苓散なら飲める正しい方法があるのです。

要するに自家中毒になりかかっているときの嘔吐と言うのは、
水逆の嘔吐といって、心下に水が溢れていてもう処理できなくなつています。
これはもちろん陽明に傷寒が入って、心下が焼かれてしまって働かなくなって、
心下に水が溢れてしまった状態です。陽明だけが焼かれているのか、
太陽の影響で心から焼かれているのかも分からないのですが、
要するに心下に水が溢れているのです。

胃の中に水がいっぱいある状態なのに、お母さんも、
中途半端に理解した小児科のお医者さんなどもよくやる間違いは、
風邪薬と五苓散を大量の水などで一緒に飲ませてしまうことなのです。
水分が不足しているから何とか飲ませようとするのです。
心下に水が溢れているのですが、体全体が脱水状態になっていて
何も食べていないから食べさせようとするのです。そんなことをしたら
いくら飲ませたって吐くに決まっていますね。

五苓散を飲ませる時はまず絶食にして、そして
粉のまま舌に乗せてあげるのです
脱水状態になっていて心下に水が溢れている時は、
ほとんどの子供は五苓散を飲めます。

私は今まで飲ませられなかったというのはほとんど経験ないのです。
飲ませられなかったのは、ほとんどの場合、お母さんが良く理解できなくて、
ちょっとでも嫌がったら怖がって飲ませられないという様に、
親のほうに問題があった様な気がします。

皆さん二日酔いの時にお飲みになったら分かります。
水と一緒に飲もうとしたら飲めません。
粉のままか、最小限の水、それも氷水ぐらいで飲みます。

あるいは子供の場合だったら氷のかけらでも良いですね。
そうすると、ロの中で溶けてだんだん飲み込んでいってしまうのです。
まず吐かないですね。そういう心下に水が溢れている人には、
五苓散はおいしいのです。非常にさわやかでおいしい味がします。
しばらくすると何が起こるかというと、心下の水がなくなってきます
と同時にそれまで脱水だったのに尿が出たりします。
尿が出たら心下の水はなくなっています。
尿が出たら薬を飲ませないで水分を補給します。
この場合はポカリスエツトなど冷たくてよいですね。

これで大丈夫だったらごはんを食べさせるのです。
物を食べて吐かなかったら、初めてその時の薬を飲ませれば良いのです。
やたらと吐いている状態に、風邪薬から、食べ物から、水から、
五苓散から一緒に飲ませようとしても飲める訳がないのです。

ゆっくり順番に飲ませるようにすると、後で聞いてみると
「一日でほとんど治りました。」と 言います。
一日目は五苓散を飲ませて、二日目から風邪薬を飲ませるようにしたら、
ほとんど治まります。これだけを間違えないで下さい。

あと五苓散はいろいろなものと合方されています。 
小柴胡湯と合わせると柴苓湯です。二陳湯と合わせても使います。
あとは五苓散に人参だけを加えて、肝硬変の末期に使ったりします

これはいろいろな使い方が出来るのですが、最初に言ったように、
水の病証かなと思ったら黙ってこれを使うようにしてトレーニングしたら、
水の病証というのが感覚的に捉えられるようになります。

多少不備があっても、まず使ってみて下さい。
全く何の反応もなかったら、「診断が間違っていました。ごめんなさい。」
と言って別の処方に変えてください。
水の病証であってこれが全く無効ということは決してないのです。

第7回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda07.htm

五苓散


デジタル通貨による経済システムをスタート - ロシア

2022-03-23 | 日記

      https://twitter.com/hii29227409/status/1506064327484182531?cxt=HHwWhsCoidjhzuYpAAAA

      ※だそうな