ムルマンスク便り

-夏の完全白夜、冬のオーロラ- ロシア連邦北西部にあり北極圏最大都市ムルマンスク市(ムールマンスク)の現地情報をお届け。

第66回戦勝記念パレード と 原子力砕氷船タイムィル放射線レベル上昇

2011-05-14 00:00:00 | ムルマンスク市・街の表情
2011年5月9日はロシアでは戦勝記念日。
厳か過ぎるセレモニーをすることで知られているロシアでは各地で、自国の強さを誇示すべく様々な戦車が登場、いつものように大々的に祝福していました。
今年のムルではネット生中継がされたのでわざわざ見に出かけなくてよく、筆者のように身長が低く見づらい人には朗報でした(写真)。ムルのパレードを見に来たムルマンチャーネは5500人とか。みんな楽しみにしてるんですね。
ネット生中継はコチラの放送局で実施されていました。
http://szkti.ru/


ところで日本でもロシアでもGWの最中、こんな事件が起こりました。
場所はロシア中部で北極圏内にあるエニセイ湾。近くにノーバヤゼムリャ島があります。そこに停泊中だった原子力砕氷船タイムィル号(Таймыр)の原子炉の送風システムの中で、放射線レベルの上昇があったことをメディアが伝えてました。

この砕氷船の船籍地はここムルマンスクなので、運用計画に基づいてムルマンスク港へ5月10日夜遅く帰港しました。
勿論入港するときは、原子力ではなくディーゼルを使用しています。
帰港してすぐメディアを呼び記者会見をし、機関室や原子炉室でガイガーを使用し実測値を公開。
 船内立入禁止区域内 0.25μSv/時(≒25μR/時)
 他作業区域 0.09~0.20μSv/時(≒9~20μR/時) → 自然界レベルの放射線
ロスアトムフロート社社長曰く「放射線レベルの上昇がありましたが、放射線拡大防止措置を既に施したので、人体や環境に影響は出ません。原子炉内第一室壁厚が1mmを下回る箇所があると専門家はみている。原因究明と修理に2週間~2か月間ぐらいかかる。」だそうです。
http://www.tv21.ru/news/2011/05/11/?newsid=32549
▲パニックは解除されている(地元メディアTB-21のニュースより)

タイムィル号は、1980年代にソ連のオーダーによりフィンランドの海洋技術会社バルチラ社が製造した原子力砕氷船です。運用開始当時の原子炉耐用年数は10万時間として設計されていましたが、ロシア側で17万5000時間に拡張していって使用していたそうです。・・・・・原因究明するまでも無い感じがしますが。早いとこ何とかしてください。


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ムルマンスク他の空間放射線量の話

2011-05-03 00:00:00 | 様々な話題
大震災後に原発事故。日本は今大変な時期にあります。筆者も毎日固唾を飲んで日本の行方を見守っています。
それでも炉心爆発がなかったのは不幸中の幸い。TEPCOにより工程表公開されたこと等を受け、海外での反応も徐々にひと安心に変わりつつあるようです。

ところで現在彼方此方のメディアで、放射線量の報道が頻繁に行われています。シーベルトだの、レムだの、シーピーエムなど・・・。放射線科学、量子力学などを学んでない方々にとっては???の連続でしょう。しかも「通常の▲●■倍」というとてつもなく大きい倍数を聞き、心臓が飛び出そうな思いをしたことでしょう。

科学の世界では、旧単位系(cgs)と国際単位系(SI)があり、世界では後者の方が使われます。
  旧単位系(cgs)・・・cm(センチメートル)、g(グラム)、s(秒) 等
  国際単位系(SI)・・・m(メートル)、kg(キログラム)、s(秒) 等
しかしロシアでは、研究機関を除き、前者がよく使われるようです。放射線分野は長年従事しているベテラン技師が多く、放射線という生物にとってナーバスな問題を考える際単位に振り回されたくないということで、従来の単位を使うようです。

というわけで、ロシアでは旧単位系の「レントゲン」という単位を使う慣習があります。レントゲンRとシーベルトSvの定義は厳密にいうと違いますが、レントゲン(単位:R)は、
  1[R] = 8.77[mGy] ≒ 8.77[mSv]
と換算されます。mはミリ(=0.001)。よく耳にするマイクロμはミリの下(1000分の1)の単位で、0.000001です。
上記を予め知識に入れたところで・・・


ここで、ロシアじゃ放射線どーなのよ、とお思いになっている方多いと思いますので、書いておきます。

ロシアの空間放射線量データは、ロスアトムが発表しています(といっても原発周辺での値で大まかですが)。単位はRでもSvでも見ることができます。
http://www.russianatom.ru/

ムルマンスク州に関してはムル気象センターが毎日発表しています。観測ポイントは50箇所。単位はμR/時。
http://mtrs.ecoinfo.ru/mtaskro/USR/w3dvmax.exe
ムルマンスク市では5[μR/時]が平均です。

参考までに、数年前の冬に撮影したムルマンスクの気象情報の写真(上)をご覧下さい。冬将軍様が来ムルしてたときの写真です。一番下が空間放射線量情報。4[МКР/Ч]というのは4[μR/時]ということです。
ちなみに電光掲示板上から順に、気温マイナス28℃、気圧755mmHg(≒1007hPa。水銀を基にした旧単位系)、風速6m/s、1時間あたりの空間放射線量4μR(マイクロレントゲン)。
Svに換算すると、大体0.035[μSv/時]となります。2011年5月3日現在の東海地方のそれと大体同じです。
ロシアでは、自然界レベルとして10[μR/時]≒0.09[μSv/時]前後が普通のようです。
でもなんだかんだ生きてます。

だから、報道でよくいわれる「通常の▲●■倍」とかいうアオリ情報に怖がらず、冷静に対応するように心がけましょう。


あと欲しいのは、水の情報ですね。
ロシアの水道水の放射性物質残留量データは、残念ながら見つけられませんでした。
ロシアには、もっとグラースノスチ(情報開示)してほしいですね。

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