初春の 心を千代の 鳥として 憎き渡世の 鏡ともせよ
*新年二日目ですので、お正月らしい歌を歌ってもらいました。
千代の鳥というのは、長い間人間の生きる道を導いてくれる星のようなものだと思いましょう。
年が改まると、だれでもいったんそれまでの暮らしをリセットして、新たな気分になるものだ。いろいろなことがあったが、もうそれは一旦忘れて、新しい自分になって、ものごとをまたやっていこうという気持ちになれるものだ。
そういう新しい気分というものを、鳥のように空に飛ばして、これから長い間生きていく、憎い渡世を映し返す鏡ともしてみなさい。空を見ればその鳥がいて、そこに自分が映っている。それを見て、間違っているなと感じたら、自分を直すこともできるだろう。
そういう感じですね。
まるで学校の先生に言われているようだ。まあ、そういう人が詠んだ歌だからです。
少々説教臭いが、馬鹿にしてはいけません。人間、つらいことがあれば、こういうものが役に立つのです。どこにでも転がっているような木の棒が、流れの中の杭になったり、歩けないときの杖になったりして、人間を助けてくれることがあるように。
なお、「千代」という言葉ですが、似たような意味で、字数の違う言葉を覚えておいたりするのは便利ですよ。「ちよ」とか「とは」は2文字ですが、3文字なら「ときは」、4文字なら「とこしへ」などを使えばよい。微妙に意味が違いますから、言葉を変えることによって、句や歌の趣が変わる。それを他の言葉で調整したりするのもおもしろい。
読みかえてみましょうか。
初春の むねを常盤の 色として 憎き渡世の 戒めとせむ 夢詩香
しめくくりを、命令形でなく、意志を表す助動詞にしたのは、わたしだったらこう詠みたいからです。「戒め」は「慰め」と詠みたかったが、原作者の意図を尊重して「戒め」にしました。
これもちょっとしたコツですね。